岸辺露伴は、とある古美術商の家に呼ばれた。彼の名は、五山一京。性格は悪いが、審美眼には信頼を置いている。そんな彼が、「箱」を見て欲しいと言う。クサいものを感じつつ、好奇心を抑えられない露伴は、、、
原作者は荒木飛呂彦。
その代表作『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部の人気キャラ、
岸辺露伴のスピンオフ漫画『岸辺露伴は動かない』。
その『岸辺露伴は動かない』のスピンオフ小説の第二弾が、
本作『岸辺露伴は戯れない』です。
因みに第一弾は『岸辺露伴は叫ばない』です。
スピンオフのスピンオフという、
ちょっと頭がこんぐらがるかも知れませんが、
簡単に言ってしまえば、
原作漫画のキャラクター、
岸辺露伴が登場する短編怪奇ミステリ小説
です。
著者はそれぞれ、
『幸福の箱』『シンメトリールーム』:北國ばらっど
『夕柳台』:宮本深礼
『楽園の落穂』:吉上亮
となっています。
ジョジョ小説を言えば、
乙一の『The Book』
上遠野浩平の『恥知らずのパープルヘイズ』
舞城王太郎の『JORGE JOESTAR』
という、
有名作家が手掛けた、
小説としても面白い作品が多数あります。
この後に続く物として企画されたジョジョ小説ですが、
前回の有名作家陣と比べたら、
今回は無名の作家によるコラボ小説。
『ジョジョ』本篇自体が、勢いを失っている事もあり、
正直、「面白いのかな?」という危惧がある事と思います。
しかし、心配ご無用、
これが面白いのです。
漫画のキャラクター岸部露伴を、
どの作品も主役に据えている為、
それを意識して
漫画チックなちょっとクサい台詞が散見されます。
しかし、
それさえ気にしなければ、
至極真っ当な、
アイデア勝負の短篇怪奇小説といった趣です。
岸辺露伴といキャラクターが、
怪異に遭遇するというテーマにて作られたアンソロジー小説、
例えるならば、
昔懐かしの
異形コレクションみたいな読み味があります。
サクッと読めて、
ちょとひねりの効いた、
一発アイデア勝負の
面白い短篇小説。
漫画原作をいう事を抜きにしても、
怪奇小説として読む事が出来、
そして
本作は第二弾なのですが、
読み切り短篇形式なので、第一段を読んでいなくても普通に読めます。
コラボ小説という事で期待せずにいたら、
意外な拾いものをした感がしてちょっとお得感のある、
『岸辺露伴は戯れない』はそんな短篇小説集です。
因みに、
題名には、特に深い意味は無く、
語感の格好良さのみなのだと思います。
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『岸辺露伴は戯れない』のポイント
『ジョジョ』の人気キャラ、岸辺露伴のスピンオフ小説
一発アイデア勝負の、短篇怪奇小説
読み切りなので、何処からでも、何からでも読める
以下、内容に触れた感想となっております。
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作品解説
では、簡単に収録作品の解説をしてみたいと思います。
「幸福の箱」北國ばらっど
ちょっと奇妙な展開から、
岸辺露伴らしいというか、
『笑ゥせぇるすまん』の喪黒福造的なオチにニヤリとする作品。
「夕柳台」宮本深礼
保育園を建てようとしても、
近隣住民から「うるさい!」という苦情があって建てられないというニュースを聞いた事があります。
そういう世相を斬った(?)作品なのかな?
…まぁ、ご老人はこの小説を読まないから、
文句は来ないでしょう。
「シンメトリールーム」北國ばらっど
一つのことに没頭する事と、
一つのことに執着する事では、遥かに違いがあります。
執着する事のキモさが前面に出ているのが、面白ポイントですね。
「楽園の落穂」吉上亮
怪奇小説的なネタが面白い作品。
ただ、
食物のアレルギー反応というのは人それぞれで、
それこそ、人に拠っては、ちょっと摂取しただけで地獄の苦しみを味わう人もいます。
なので、
小麦アレルギーを小麦で治すという発想自体、
ちょっと受け入れ難い部分がありますが、
そういう治療って本当にあるんでしょうかね?
短篇怪奇小説の一発ネタとして読んだ場合、
それなりに面白い作品となっています。
傑作だ!というより、
短篇小説としてのアイデアの面白さを読む作品集、
しかも、登場人物は「岸辺露伴」。
その辺のポイントで読む作品なのだと思います。
*書籍の2018年紹介作品の一覧をコチラのページにてまとめています。
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