伝奇小説『キマイラ13 堕天使変』夢枕獏(著)感想  回想から回想へ!!極悪コンボ発動!!

 

 

 

空手部を隠れ蓑に、西城学園を影から支配する団体「もののかい」。空手部主将の黒堂雷と、九十九三蔵の戦闘が開始された。真壁雲斎より教わった円空拳を駆使して戦う三蔵だが、常人なら即死級の打撃にも、黒堂は耐えてくる、、、

 

 

 

 

著者は夢枕獏
数々の人気作を発表する作家、
なんと、2018年には紫綬褒章を受章した。
主な作品に
『キマイラ』
『餓狼伝』
「陰陽師」シリーズ
「闇狩り師」シリーズ
『神々の山嶺』
『大江戸釣客伝』
『獅子の門』
『荒野に獣慟哭す』
『空手道ビジネスマンクラス練馬支部』
『東天の獅子』他、多数。

 

 

作家、夢枕獏の原点にして頂点、
『キマイラ』。

…と、言われたのは過去の話。

 

長期連載の宿命か、
既に読者の期待する想定をアサッテの方向に超えた展開を続けています。

まぁ、
漫画の『はじめの一歩』程ではありませんが。

 

前巻を忘れた人の為のおさらい、

回想シーン発動!!

高校1年生時代の久鬼麗一と九十九三蔵が、
一夏の怪異、謎の組織「もののかい」に出会う。

…粗筋、終わり。

 

そうです。

回想の途中で終わった前巻、

つまり、本巻も回想で始まります。

またかよ!!

 

そして、回想が終わったと思ったら、
再び流れる様に回想が始まります

そうです、

最早回想シーンの方が本篇より長いのが「キマイラ」の作風なのです。

 

「キマイラ」は、
当初想定していたラストシーンが使えなくなった作品だと作者は言っています。

その影響でしょうか?

「キマイラ」という物語自体が、

「青春のやる方無いエネルギーの暴走」という作風から、

「人類の欲望がキマイラと絡む偽史」を描く作品へとシフトしています。

「キマイラ」は人類の歴史と共にあった。

その時々で、
時に畏怖され、時に忌避され、
様々な人間の人生を狂わせてきた存在としての「キマイラ」を描こうとしているのです。

 

その為の、
時と場所を越える、総合的な物語にせんが為に、

回想シーンが多くなっているんですね。

 

まぁ、、、それを、
長年の読者が望んでいるのかどうかは、分かりませんが。

 

まず回想、
そして、回想、
その後に菊地良二の話、
最後に「転章」。

ここ最近ずっと、
回想と、次巻に続く「引き」を意識した「転章」が入る為に、

実質的に、現代の話がちょこっとしかありません。

 

ストーリーが進まねぇ、、、

 

今回も、そのため息が出ます。

 

確かに、昔は面白かった。

今は、
何となく惰性で読んでいる。

かつて、無類の面白さを誇った作品が、
長期連載でその熱量がスポイルされ尽くしてしまったその末路。

どうあれ、
私はその最後まで見届ける所存です。

 

 

  • 『キマイラ13 堕天使変』のポイント

回想シーンから回想シーンの無慈悲なコンボ

菊地良二が活躍しそうで、活躍しない寸止め状態がまだ続く

名前を忘れたキャラの回想シーンで困惑

 

 

以下、内容に触れたツッコミをちょっとだけ入れます

 


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  • 闇狩り師

「もののかい」って『闇狩り師』っぽいなぁ、と思っていたら、
本当に『キマイラ』の中に『闇狩り師』を突っ込んできました

 

『闇狩り師』は、
オカルト探偵のアクション小説的な作品ですが、

本作ではアクション的な展開がメイン。

オカルト探偵の部分は、前巻の収録分にその痕跡が読み取れます。

 

しかし、『闇狩り師』のネタをぶっ込んできたものの、
その九十九乱蔵の活躍部分は、ダイジェストで解説するに留めるという手抜きぶり

がっかりですよ。

どうせコラボするなら、
ガッツリ書いて欲しかったです。

そういう所ですよ!

 

さて、
今回のエピソードにて、「伯爵病」の者は、
「D」ウィルスに感染しているある種の吸血鬼、
という設定が加えられました。

つまり、
龍王院弘が強いのは、
もしかすると吸血鬼だから、
という可能性も出て来ました。

これが、今後なんらかの伏線となるのか?

そこにも注目してみたいです。

 

  • 携帯電話

『キマイラ』の基本年代は何時?

時代的には、
確たる設定は無いものというか、
「サザエさん方式」というか、
外の時代が流れても、
作中は不思議空間で時間が流れないみたいな設定だと勝手に考え、

気にした事もありませんでした。

ですが、本巻でなんと、
1995」年と名言されました。
(p.234より)

 

1995年、
「まだ数は少ないが、高校生でも携帯電話を所持している人間はいた」
と書かれていますが、

私の感覚では、
殆ど居なかった印象です。

むしろその頃は、
ポケベルが流行っていた印象。

 

さて、前巻ですが、

その前巻の時点で、
携帯電話を使っていました。

「もののかい」の話は『キマイラ』の基本年代の2年前の話なので、1993年。

ハッキリ言うと、
1993年の時点で携帯電話自体持っている人はごくごく稀。

1993年当時、
高校生で携帯電話を所持している個人はまず居なかった様に思います

 

細かい事かもしれませんが、

現代に適合させる為に、携帯電話を話に出すのは、
ちょっと無理があったかな、と思います。

 

 

 

回想から回想へと流れる様にシフトする極悪コンボを決めてくる『キマイラ13 堕天使変』。

もう何年も菊地の活躍が寸止め気味に描かれています。

しかし、
ストーリーはちょっとずつでも進んでいるんだ。

そう、信じたい、
そして、面白くなって欲しいと願ってやみません。

 

 

書籍の2018年紹介作品の一覧をコチラのページにてまとめています

 


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