とある医療施設。そこに横たわるは犬神明の肉体。大和田医師は医学の発展と称し、実験体として犬神の死体を利用しようとしていた。いや、死体では無い、犬神の肉体は生命の兆候を示していた、、、
著者は平井和正。
SF小説から漫画原作まで多彩な才能を見せる。
代表作に
「ウルフガイ」シリーズ
「幻魔大戦」シリーズ
『死霊狩り』等がある。
先日『日本SF傑作選4 平井和正』も出版された。
「ウルフガイ」シリーズの第二弾、『狼の怨歌』。
前巻は学園モノの雰囲気もあったが、本巻では
中国の情報局にCIA、日本のヤクザが入り乱れ、
一気にスケールがデカくなる。
スパイアクション的側面を見せつつ、拡がった世界観に比例して
ヴァイオレンス度もアップ。
迫力ある人外アクションを楽しめる。
そして、スケールアップしたのはアクションのみでは無く、
人間の猟奇度もアップ。
狼の人間に対する不信の念が正に「怨歌」を奏でる。
息つく暇も無い怒濤の展開、
極上のエンタテインメントが楽しめる、それが『ウルフガイ2 狼の怨歌』である。
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『ウルフガイ2 狼の怨歌』のポイント
エスカレートしたアクションとヴァイオレンス
人間の薄汚さと狂気
スパイアクション的に拡がる世界観
以下、内容に触れた感想となっています
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ガッツリアクション&ハードボイルド
本作『ウルフガイ2 狼の怨歌』の開幕は冒瀆的なショッキング人体実験から始まる。
ベッドにくくりつけられた犬神明には意識が無く、代わりに神明視点にて話は進む。
犬神と違って軽いノリとニヒルな態度で軽快、前作のほの暗い雰囲気とはまた違った読み味を受ける。
しかし、もう一人の狼男たる神明すら震撼せしめる相手を冒頭にて登場させる事で、人外の能力者でも一筋縄では行かないと印象付けるのは上手い。
拘束され人体実験の対象となる犬神、
スパイの闘争に巻き込まれる神明、
学園内がメインの舞台だった前作『ウルフガイ1 狼の紋章』とは、シリアス度もスケールもグッと上げて来ている。
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人間の愚かさ
前巻で提起されたテーマ、「人間の残虐性」は本巻で更にエスカレートしている。
人類の発展の為などという「錦の御旗」を大義名分として、自らの嗜虐趣味を満たす為に人体実験をする医師。
過剰な自己防衛を行う一方、末端の人員を使い捨てにするスパイの親玉。
彼等と比べれば、暴力と欲望にただただ忠実なCIAの西城が爽やかに見える。
勿論、西城も欲に塗れた人間ではあるのだが。
哀しくも印象的なのは、犬神の世話をしていた三木看護士が輸血と感情の爆発で悪鬼羅刹と成り下がる場面だ。
心ある人間でも、その奥底には留めようも無い残虐性が潜んでいるのかと驚きと憂鬱になるシーンである。
神明も、特殊部隊員も、西城も、そして読者も三木看護士は化け物にしか見えない。
しかし犬神は、三木看護士の常軌を逸した残虐性は「俺を守為の行為なのだ」という、ある種の博愛の情を読み取る。
この場面には「ハッ」とさせられる。
三木看護士は化け物にしか見えないが、犬神の視点からしたら化け物の中からすら人間性を発見しているのだ。
この「異常な行動の裏にある、誰にも理解されない真意」を、孤独な魂を持つ犬神のみが理解するシーンは本巻の出色である。
狼とは、獰猛で狡猾な害獣である。
そういうイメージがありながら、本作において残虐性を発露するのは周りの人間ばかりである。
むしろ、誇りと博愛を持つ狼男の方が「ヒューマニティ」を持っているのが皮肉である。
悪意と残虐性に、誇りのみで何処まで対抗出来るのか?
狼男には安らぎや愛は得られないのか?
それは、続きにて語られる事であろうが、どうせならシリーズ全体を復刊して頂きたい。
電子書籍でも読めますが、やはり紙の本で手に取るのもまた一興なのである。
こちらで『狼の紋章』の感想を綴っております。
https://kansoublog.com/denki_wolfguy1emblem/
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さて次回は、諦めたら、そこでヒューマニティは終了ですよ!?映画『グレイテスト・ショーマン』について語りたい。