新進のモデル、進藤亜衣はエスカレートするストーカー被害に悩まされていた。警察に行っても、実害が出るまでは動いてくれず、悩んだ亜衣は、都市伝説として残っているヘルプメッセージ「XYZ」を、新宿駅の某所に携帯アプリで書き込む。直後、亜衣は暴漢に襲われるが、すんでの所で男に助けられる、、、
監督はこだま兼嗣。
TVアニメの『ルパン三世』『キャッツ・アイ』などに関わった後、
TVアニメシリーズ『シティーハンター』の監督を務める。
主な監督作に、
劇場版シティーハンターシリーズの、
「愛と宿命のマグナム」(1989)
「ベイシティウォーズ」(1990)
「百万ドルの陰謀」(1990)
名探偵コナンシリーズの
「時計仕掛けの摩天楼」(1997)~
「迷宮の十字路」(2003) 等がある。
原作は、北条司の漫画『シティハンター』。
「週刊少年ジャンプ」史上、
最も女性を美しく描く作家です。
声の出演は、
冴羽獠:神谷明
槇村香:伊倉一恵
野上冴子:一竜斎春水
海坊主/ファルコン:玄田哲章
美樹:小山芙美
進藤亜衣:飯豊まりえ
御国真司:山寺宏一 他
世に蔓延る、
悪党、権力者、
ヤツらの理不尽な暴力、圧力、横暴の数々に踏みにじりられる、
力無き者、か弱き者。
彼女達の、
声なき悲鳴を聞き止め、
その意思を代弁し、
弱きを助け、強きを挫く、
楯となり、剣となる男が存在した。
彼を呼ぶコードは、「XYZ」。
「俺を呼んだのは、君だろ?」
そう、
声なき悲鳴が溢れかえる現代に、
あのモッコリ男が帰ってきた!
まさかの、約20年ぶりの再誕、
『劇場版シティハンター 新宿プライベートアイズ』です。
さて、
昨今のアニメ映画というと、
3DCGがメインで、
映像的なハイクオリティさに目を瞠るものが多いです。
そういった観点では、
本作は、ぶっちゃけ、見劣りします。
映画の冒頭、
背景に居るモブキャラ達が動かない止め画である事に、
一抹の不安を感じる事、間違い無しです。
そして、
メインストーリーも、
まぁ、よくある、ハリウッド的テロリスト映画みたいな感じです。
では、
本作はつまらないのか?
これが、大違い、
面白いのです!
それは、
本作『劇場版シティハンター 新宿プライベートアイズ』が、
従来の『シティハンター』を知っていた、
オールドファンに向けた作品だからです。
まるで、
親戚の、ちょっと面白い、年上の兄ちゃんに、
20年ぶりに再会した、
それなのに、
昔と全然変わっていなかった、
そんな感じの、ある種の感動すら味わえます。
漫画も読んだ事がある。
アニメも観た事がある。
だけど、細かい所までは覚えていない。
そんな、私の様なタイプでも、
ああ、そうそう、
コレコレ、
このノリが『シティハンター』だよね
という、ツボを的確に突いて来るのです。
何と言うか、
あまりの懐かしさに、
少し泣けてきます。
1990年代にて黄金時代へと至る、
「週刊少年ジャンプ」、
その前夜を支えたレジェンド作品。
今観ても、面白い、
誰が観ても、面白い、
回顧ファンは勿論の事、
本作の独特のノリは、今でも通じる、
その事実が、
たまらなく嬉しい、
『劇場版シティハンター 新宿プライベートアイズ』は、
そんな作品です。
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『劇場版シティハンター 新宿プライベートアイズ』のポイント
懐かしくも、面白い、『シティハンター』のノリとお約束
温故知新
ヒーローの条件
以下、内容に触れた感想となっております
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ファン向け作品とは
『劇場版シティハンター 新宿プライベートアイズ』は、
面白い。
何故か?
それは、
本作が、従来のファン向けに作られているからです。
格好良く登場する冴羽獠。
しかし、
見た目は二枚目なのに、
美女を目にしたその言動は、完全に三枚目。
当時、「モッコリ」という言葉を流行らせただけあって、
下ネタに夜這い当たり前。
しかしそれを、
突如現われて100トンハンマーでツッコミを入れる香、
トゲ付き鉄球などのトラップで、
美女の貞操を守りきります。
依頼人の美女は、このノリを見て、
(獠は基本、女性の依頼しか受けません)
「何、この人達…」
と、背景に、あっけに取られた表情で、
トンボを飛ばしたり、
カラスを飛ばしたりします。
これは、もう、『シティハンター』のお約束、様式美、
水戸黄門の印籠くらい、必要なやりとりなのです。
カッコ良い見た目から、
軽いノリ、
獠と香の夫婦漫才に、若干不安を感じる依頼人。
しかし、
いざ、危険が勃発したら、
プロとして、的確に対処する。
美女は、獠の真の格好良さに気付きつつも、
彼と香との関係を微笑ましく、後ろ髪引かれる様子で見守りながら、
事件解決の礼を言い、去って行く。
そして、
獠も又、新宿の街へと帰って行く…
そこで流れる、『Get Wild』!
これぞ、『シティハンター』。
正に、
記憶に残っていた通りの作品なのです。
こういう、昔の作品の復活において、
どういうスタンスを採るか?
現代風にアレンジして、
今までの設定、キャストなどと捨て去って、
全て、再構築を図るのもまた、
一つの手です。
それで、面白かったならいいのです。
しかし、実際は、
従来の、その作品がヒットした時の、
それを支えたかつてのファンを切り捨てる行為でもあります。
その選択は、難しいですね。
本作は、
従来のファンに向けた作品です。
そして、
オールドファンを納得させ、高評価を得ました。
だからこそ、
劇場でのロングランに繋がり、
その高評価で関心を持った、元々『シティハンター』を知らない、
新規の顧客の獲得にも繋がる事になります。
現代の漫画作品は、
『賭博黙示録カイジ』
『DEATH NOTE』的な感じで、
弱肉強食のシビアな世界を描くことが、その主流になっている印象です。
しかし、
ジャンプの黄金期=漫画の黄金期の時代の作品のコンセプトは、
弱きを助け、強きを挫く
こういう展開の漫画が多かった印象があります。
『シティハンター』も、その類いの作品であり、
TVドラマで有名な『必殺仕事人』的なノリもあり、
温故知新、
現代ッ子には、逆に、
新しく、面白く感じるのではないでしょうか。
作品の評価というものは、
その作品自体の質も大事ですが、
それを支えるファンの評価をも大事、
その事を思い出させます。
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神谷明という声優
『劇場版シティハンター 新宿プライベートアイズ』。
本作の声の出演には、
TVアニメシリーズの、オリジナルキャストが再び勢揃いしています。
だからこそ、
オールドファンを唸らせる事が出来たのですね。
「ああ、あの頃と変わらないな」と。
個人的には、
特に海坊主が、当時と全然変わらなくて驚きつつ、嬉しく思いました。
コワモテで有りながら、
コミカルな所も前面に出したり、
また、美樹とのラブラブぶりを見せつけたり、
リョウとはまた、違った形で、
見た目と言動のギャップ、
そして、仕事振りのプロフェッショナルさで格好良さを見せつけるキャラクターです。
さて、本作が劇場版にて復活した背景に、
主人公、冴羽獠の声を演じた神谷明の奮闘があったと聞きます。
神谷明と言えば、
自身の事務所の名前が、
『シティハンター』内での冴羽獠の事務所の名前と同じ、
「冴羽商事」であり、
「自分が演じたキャラクターの中で、冴羽獠が一番好きだ」と公言している程です。
冴羽獠は、
二枚目と三枚目、
軽いノリと、その背後に隠された格好良さを同時に表現する必要があり、
その事がキャラクターを演じる上で、やり甲斐があるのだと思われます。
また、
「週刊少年ジャンプ」で大ヒットした漫画、
『シティハンター』の冴羽獠のみならず、
『北斗の拳』のケンシロウ
『キン肉マン』のキン肉マン
といった、
主役の声を軒並み担当したレジェンド声優でもあります。
しかし、故に、
声優のギャラという面において、
もっともお金がかかるクラスに属しており、
(声優のギャラは「ランク制」が導入されており)
神谷明が安いギャラで声を宛ててしまうと、
他の共演者が、それに応じて、
軒並みギャラが下がってしまい、
故に、
制作費の影響で、
逆に、神谷明が配役されないというのが、
現状だと言われています。
(噂によると、『名探偵コナン』の毛利小五郎の降板は、それが一因と言われています)
ゲームやパチンコで、
ケンシロウの声が神谷明では無い事が多いのは、
そういう理由があるのですね。
とは言え、
本作は劇場版、
ある程度資金が潤沢であり、
そして、神谷明自身が音頭をとった、
だからこそ、現代に冴羽獠が復活出来たのでしょう。
現在、御年72歳、
しかし、声優としてはまだまだ、現役、
今後も、活躍を期待したいです。
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ヒーローの条件
キン肉マン、ケンシロウ、冴羽獠、
彼達に共通するものとは、一体なんでしょう?
それは、
「弱き者達の為に、力を振るう者」
という点です。
「友情パワー」を標榜し、
他人の為に真価を発揮するキン肉マン、
襲われる村人を助ける為、
無表情にも、辛辣なユーモア感覚で、雑魚共を蹴散らすケンシロウ、
そして、
三枚目的な言動は、
依頼人をリラックスさせる照れ隠し、
その本性は、
弱き者の楯となり、剣となる、代弁者、
プロフェッショナルの冴羽獠。
人を騙し、
喰いモノにし、
上手く立ち回る事が利口、
グローバリズムに則した、
現代人の思考は、その風潮があり、
創作物にも、
その影響、傾向が見てとれます。
しかし、
バカ正直な真面目さで、
愛と正義を体現する。
こういう不可能性を実行する事が、
真のヒーローであるのではないでしょうか。
本作でも、クライマックスで香がこういう趣旨の事を言っていました。
「本当に強いのは、自分の力を、人の為に使える人よ」と。
そして流れる、
『City Hunter ~愛よ消えないで~』
最高にカッコイイシーンであり、
それこそ、
『シティハンター』で見たかった事、
そうだとは、皆さんも思いませんか?
弱き者が喰いモノになり、
それが「自己責任」として、当たり前とされる現代。
力無き者の悲鳴を聞きけ、復活した
『劇場版シティハンター 新宿プライベートアイズ』。
昔のまま、
何も変わる事の無い面白さ、
だからこそ、
ファンの支持を受け、
更には、新らしいファンをも獲得出来、
高評価を得る事が出来るのです。
リメイク作品では無く、復活、
過去作を現代に蘇らせる事の成功例、
今観ても、
いや、世知辛い現代だからこそ面白い、
『劇場版シティハンター 新宿プライベートアイズ』は、
そんな作品と言えるのです。
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