1985年、アメリカ、ジョージア州。麻薬の運び屋が、セスナ機から大量のコカインを投下していた。しかし間抜けな事に、自身が脱出する際に、事故ってパラシュートが開かずに墜落死してしまう。
森の中に放置されたコカイン。なんとそれを、野生のクマが食べ、キマっていた!!バックパッカー、森林警備員、ヤクの売人、刑事、少女と母親 etc… 森の中に入った彼達の運命は如何に、、、
監督はエリザベス・バンクス。
役者として活躍しつつも、監督業にも進出。
監督作に、
『ピッチ・パーフェクト2』(2015)
『チャーリーズ・エンジェル』(2019)があり、
本作が三作目。
出演は、
サリ:ケリー・ラッセル
ディーディー:ブルックリン・プリンス
ヘンリー:クリスチャン・コンヴェリー
ボブ刑事:イザイア・ウィットロック・Jr
リーバ巡査:アヨーラ・スマート
シド:レイ・リオッタ
エディ:オールデン・エアエンライク
ダヴィード:オシェア・ジャクソン・Jr
リズ/森林警備員:マーゴ・ティンデイル
ピーター/野生動物管理官:ジェシー・タイラー・ファーガソン
コカイン・ベア(モーションキャプチャー):アラン・ヘンリー 他
クマって、
結構人気の動物ですよね。
童謡の『森のくまさん』、
『くまのプーさん』
「テディベア」
などの作品、グッズで、
キュートで愛らしいキャラクターというイメージがあるのではないでしょうか。
…しかし、実際には、熊は、
その棲息地における頂点捕食者である事も多く、
野生で遭遇したら侮れないどころか、
死の危険性が伴う動物であります。
作中では、毛の色が
黒なら戦え、
茶色なら死んだフリしろ
と言っていましたが、
黒でも茶色でも、実際遭遇したらパニック間違い無しでしょう。
そんなヤバい生き物の熊が、
コカインを摂取してハイになっている!?
ヤバいヤツがキマっているという絶望状況、
薬物摂取クマの
何処かコミカルな大暴れ!!
それが本作『コカイン・ベア』なのです。
そんな本作は実話ベースです!!
と、宣伝文句では謳っていますが、
安心して欲しい。
ほぼ、創作ですから。
実話からインスパイアされて
その元ネタを使って好き放題描いた作品。
まぁ、ぶっちゃけ言ってしまえば、
ノリはB級モンスター映画です。
内容、カテゴリ的には、
完全にB級映画のノリ。
しかし、
本作のCGで描かれるコカイン・ベアが、
リアル過ぎて、
その凄さがB級感を消しています。
…が、
やっぱり、ノリ的に合う合わないはあるかも。
CGで作ったクマ、
1980年代を意識したファッション、音楽。
B級映画お約束的な展開 etc…
全体的に、
作り手の丁寧さが観られ、
その、ある種の上品さが、
B級映画感を薄めていると考えられます。
基本的には、
B級モンスターパニック映画。
それを、コメディタッチに描く『コカイン・ベア』。
それ程期待せずに観ると、
意外と面白い、拾いもの映画、
そんな印象なのではないでしょうか。
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『コカイン・ベア』のポイント
B級モンスターパニック映画
B級だけど、丁寧に作ってあって観やすい
個性的なキャラクターの群像劇
以下、内容に触れた感想となっております
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監督、エリザベス・バンクス
本作『コカイン・ベア』は、
B級パニックモンスター映画。
一般人が『北斗の拳』の雑魚キャラ並に
ボコボコと悲惨に、
バリエーション豊かにくたばって、
作品を盛り上げます。
正に、B級映画お約束のノリの作品なのですが、
そういう作品を作る方は
(観る方も)
監督自身がオタク気質というか、
若い頃モテなかったンだろうな~という、
オーラというか、見た目をしている事が多いです。
しかし、
本作の監督エリザベス・バンクスは美人であり、
役者として
サム・ライミ版の「スパイダーマン」三部作、
「ハンガー・ゲーム」シリーズ、
「ピッチ・パーフェクト」シリーズなど、
多くの作品に、
そこそこのレギュラーキャラとして出演しています。
そんな美人で成功している人物が、
何故こんな
世の中に不満を持つ人間が作りそうな作品を製作したのか?
甚だ謎であり、
その二律背反ぶりが、
本作の一番の奇妙な点と、私は個人的に思います。
パンフレットのプロダクションノートの記述によると、
エリザベス・バンクスは自身の事を先ず、
コメディ要素が得意だと言っていました。
監督一作目の『ピッチ・パーフェクト2』は、
ミュージカルとコメディ、
二作目の『チャーリーズ・エンジェル』は、
アクションとコメディ、
そして三作目の本作『コカイン・ベア』は、
ホラーとコメディ、という事です。
そして更に、
監督は特殊効果演出の映画を撮りたかったそうで、
女性監督はグリーンバックで演じる作品に興味が無いと思われている、
そういう風潮の打破にもチャレンジしたかった、
と、言っています。
又、
本作の舞台である1985年当時、
監督は11歳であり、
本作で主役の一人である
ディーディーの年齢設定は13歳。
また、実際に2児の母である監督は、
ディーディーの母であるサリに、
自分を投影しているとも言っており、
つまり、
子供目線、
母親目線、両方の視点で
個人的な思い入れを、作品に共有させているそうです。
確かに、
B級映画を作るには、
そういうスピリットが必要です。
しかし、
本作のエリザベス・バンクスは、
B級映画でありながら、
気質で作ったというより、
特殊効果演出に挑戦したいという自らの興味、
キャラクター設定における共感性などで、
作品に対する、思い入れ、熱量など、
製作に関する真剣さによって、
映画自体の強度、完成度を高める事で、
結果、
B級映画としても面白いモノに仕上げています。
監督と作品のテーマとの親和性が
良い作品を作りますが、
それには、
こういう形もある、
そう示されたのは、誠に興味深いものです。
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MVP、マーゴ・ティンデイル
そんな『コカイン・ベア』、
個人的なハイライトは、
やっぱり、前半の、
一般人がコカイン・ベアに容赦無く殺害されるシーンの連続であり、
そのハチャメチャっぷりが、
本作の面白さを際立たせていると思います。
そんな前半において気を吐いたのは、
森林警備員のリズを演じたマーゴ・ティンデイルでしょう。
太っちょで、
トロそうなオバチャンのリズ。
登場シーンからインパクトは絶大で、
似合わないド派手な口紅を付け、香水を振りまき、
煙草を吹かしながらガキの万引きを見破りつつ
しかし、説教中に別のモノを万引きされる間抜けぶりを晒していました。
まぁ、見た目とか、
キャラクターとか、
B級映画では派手に死んで物語を盛り上げる雑魚役ですよね。
…しかし、オバチャンは違った!!
コカイン・ベアの初見の襲撃から悪態を吐きつつ生還し、
山小屋に籠城し、間違ってガキの頭を銃で吹っ飛ばし、
それでも生き残り、
救命救急隊員を巻き込みつつ、
最後には、
ド派手に地面で顔面を大根おろし状態にされるという散華っぷり。
コカイン・ベア相手にサバイバルを展開するリズに、
オバチャン、何処まで生き残るの!?と驚愕、
派手な死にっぷりに喝采しつつも、
もしかして、クライマックスで顔面血だらけながらも復活して、
コカイン・ベアにトドメを刺すのかも!?
と、ジェイソンばりの活躍を期待したのもまた、事実。
漫画家のうすた京介の短篇作品に出て来たオバチャンみたいな、
或いは、
デヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』(2001)に出て来たオバチャンみたいな、
あっけなく死にそうで、
意外なしぶとさで大活躍し、
他の一般人がボコボコ死ぬのを傍目に、
何とか生き抜こうとしたその生命力で、
本作の前半を大いに盛り上げた立役者と言っていいでしょう。
後半のメインキャラが活躍するシーンより、
このリズ絡みのシーンが大好きで、
個人的には、
実は、
救急車から投げ出され、
顔面、膾におろされながらも、
もしかしたら、生きているのでは!?
とか妄想しているのですが、どうでしょうか?
B級のモンスターパニック映画である『コカイン・ベア』。
一般人が惨殺されつつも、
何処かコミカルなノリと丁寧な作りで、
気持ち良く観る事が出来る良作。
こういうコンパクトにまとまった面白さこそ、
映画作品の魅力だと改めて思わせる作品なのではないでしょうか。
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