映画『キャメラを止めるな!』感想  忠実なリメイクだからこそ、元映画の完成度が光る!!

山奥の廃墟にて、ゾンビ映画のラストシーンを撮影しているクルー達。監督のヒグラシは女優の演技にキレまくっており、スタッフは、一端休憩を提案する。
その休憩中、ヘアメイクのナツミは、ある噂話を語りだす。なんと、この撮影現場はいわく付きで、昔、日本軍が人体実験を行ったと言われているのだ。
そして、惨劇(?)が幕を開ける、、、

 

 

 

 

 

 

監督は、ミシェル・アザナヴィシウス
監督作の『アーティスト』(2011)は、
フランス映画として、始めて第84回アカデミー賞(2011)にて作品賞を獲得した。
他の監督作として、
『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』(2006)
『OSS 177 リオデジャネイロ応答なし』(2009)
『プレイヤー』(2012)
『グッバイ・ゴダール!』(2017) 等がある。

 

原作は、
上田慎一郎監督作、『カメラを止めるな!』(2017)。

 

出演は、
レミー/ヒグラシ:ロマン・デュリス
ナディア/ナツミ(メイク):ベレニス・ベジョ
ロミー:シモン・アザナヴィシウス

アヴァ/チナツ(女優):マチルダ・ルッツ
ラファエル/ケン(男優):フィネガン・オールドフィールド
フィリップ/ホソダ(カメラマン):グレゴリー・ガドゥボア
アーメル/ヤマコシ(助監督):セバスチャン・シャサーニュ
ジョナタン/アキラ(録音):ラファエル・クエナード

ジョアナ(助監督):ルアナ・バイラミ
ファティ(音楽):ジャン=パスカル・ザディ

ムニール(プロデューサー):リエス・セーラム
マダム・マツダ(日本プロデューサー):竹原芳子 他

 

 

 

2018年は、
結構、映画が豊作で、

その公開作の中でも、
群を抜いて面白かった作品の一つ、
カメラを止めるな!』。

低予算で、
ミニシアター系の映画でしたが、

芸能人がツイッターで絶賛したり、
口コミで話題沸騰、
実際に観に行った人に評価され、
全国公開にこぎ着けました。

私の住む地方でも、
上映が一日一回ながら、

連日、客席が全部埋まるという、
近年、稀に見る人気ぶり、

海外を含め、
その年の各種映画賞を獲得するという快挙を成し遂げました。

 

そんな『カメラを止めるな!』を、
フランス人で、
アカデミー賞を獲得したミシェル・アザナヴィシウスが、
リメイク版を撮影した、

それが本作『キャメラを止めるな!』です。

 

さて、
「リメイク」と一言で言っても、
色々種類がありますよね。

例えば、
ハリウッドリメイク!「ゴジラ」!
とか言っても、

実際は、
元映画のオリジナル『ゴジラ』(1954)を原作にした言うより、

まるで、
『ジュラシック・パーク』(1993)の安いパチモンみたいな映画になってしまった
『GODZILLA』(1998)みたいな作品もあります。

 

で、本作はどうなのかと言うと、

原作『カメラを止めるな!』に忠実、
ほぼ一緒!!

 

な作品に仕上がっております。

 

予告篇にて、
「そして、更なる展開が!?」
みたいな事を言っていましたが、

原作を損なう改変や、
ストーリーが変化する追加要素付みたいなものは、
無いです。

 

なので、
安心して観られる反面、

オリジナル展開みたいなモノも期待していた自分がいて、
その点は、ちょっと残念かな、と思いました。

まぁ、そこの所の判断は、人それぞれでしょう。

 

しかし、
元の映画がそもそも、
完成度、満足度が高い作品なので、

『カメラを止めるな!』のファンは、
フランス人監督バージョンの本作を、新しい気分で楽しめますし、

始めて観るという方も、
本作の「仕掛け」に驚愕する事間違い無しです。

 

映画として語る事は、
元映画の『カメラを止めるな!』のページで語っていますので、

以降は、
リメイク版である本作の、

オリジナルとのちょっとした違いとかを
語ってみたいと思います。

 

 

 

  • 『キャメラを止めるな!』のポイント

忠実なリメイク作

若干の違いを楽しめ!

追加されたメタ構造

 

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

スポンサーリンク

 

  • 原作との違いについて

本作『キャメラを止めるな!』は、

元ネタとなった、
『カメラを止めるな!』の忠実なリメイク作

原作を損なう改変や、追加要素はありません。

なので、
本作の、ちょっとしたオリジナルとの違いについて、
いくつか語ってみたいと思います。

 

先ず、
予算が違う。

『カメラを止めるな!』は、300万円で製作されたと言われていますが、
『キャメラを止めるな!』は、5億かかった(!?)そうです。

いったい、何処に予算を使ったのか!?

原作に「プロデューサー役」として出演し、
本作にも「日本のプロデューサー、マダム・マツダ役」として出演した竹原芳子によりますと、

ケータリングの食事が、
毎回、コース料理だったとの事なので、
そういった、福利厚生とか、なのかなぁ?

多分、役者のギャラなんかも、
違うと思います。

 

で、本作は、
冒頭のワンカットシーンから、
前日譚、
当日のトラブルのネタばらし

という、
三幕構成の展開は同じで、

そのメタ構造、

ゾンビ映画を撮影している
→その現場でゾンビが実際に出た!という内容の30分生放送のゾンビ映画
→という内容の日本の作品のリメイク作(new!!
→を、作る時の実際の現場の裏話

は踏襲しており、

そこに、
「日本の原作のリメイク作」という、
さらなる入れ子構造が追加されているのです。

 

更に本作、

監督のレミーの妻、
ナディア(メイクのナツミ)役のベレニス・ベジョは、
本作の監督、ミシェル・アザナヴィシウスの、実際の妻で、

レミーの娘のロミー役は、
監督の実際の娘(年齢的に前妻)、
シモン・アザナヴィシウスが演じています。

 

監督の過去作『アーティスト』もそうでしたが、
本作は、
映画を撮影する時の、紆余曲折、喜怒哀楽を描いた
「映画に対する、ラブレター映画」
です。

なので、
監督にとっては、
原作を観た時に「そうそう、あるある」的な、
共感があったのかもしれません。

そこで、
より個人的な思い入れというか、
「これぞ、正に自分が語りたい事だ」という自己投影を、
本作のレミーという監督役に担わせている事を窺わせます。

 

その意味で、
本作は、
原作に、より一層のメタ構造を追加していると言えるのではないでしょうか。

 

因みに、
カメラ助手のマノンを演じたのは、
ライカ・アザナヴィシウス。

監督の姪だそうで、
本作には、そういう家族要素を、より鮮明に付け加えられています。

 

また、
内容、構造とは関係ありませんが、

本作を観て、気付いた点があると言いますか。

レミーがマダム・マツダに愚痴る時、
「日本は良い事ばかりしている訳じゃない、真珠湾攻撃だってしただろう」
という台詞があります。

これは、つまり、
ヨーロッパにとっては、
日本という国の印象は、
未だに、第二次世界大戦の、連合国の敵というイメージなのでしょう。

これは、
ウクライナの公式アカウントがツイッターで上げた動画にて、
ナチスドイツのヒトラーと、
イタリアのムッソリーニと、
昭和天皇を並び、表記した事でも、うかがえます。
(後、日本側の抗議にて、削除)

まぁ、確かに、
未だに、映画における敵役として、
第一次、第二次世界大戦時のドイツは、擦られ続けていますからね。

 

そういった、日本に対するヨーロッパ人の共通認識というか、
笑顔の下に本音を隠し持つ、訳分かんない、奇襲してくるヤツ

みたいなイメージで、
マダム・マツダは描かれてたのかもしれませんね。

 

あと、
本作は、原作より、
劇中劇のクライマックスにて、
スプラッター要素と残酷描写が強化されているので、

そういった意味で、
B級映画好きには、堪らない場面もあります。

本作のフランス語原題は『coupez!』
直訳すると「切る」という意味なので、

映画の「カット」という掛け声と、
斧で直接切る「カット」を掛合わせているのでしょうね。

 

 

原作に忠実なリメイク作、
映画愛を描いた作品『キャメラを止めるな!』。

ラストシーンの組み体操で、
みんなが集まる!という展開が、
胸熱で、心地良いですよね。

 

『カメラを止めるな!』が、
海外有名監督によってリメイクされた事によって、
より、
多く人の目に触れる切っ掛けになればいい、

『キャメラを止めるな!』にはそういった期待を持ちつつ、

改めて、
楽しい映画だったと認識させられましたね。

 

 

 

コチラが、リメイク元の『カメラを止めるな!』です

 

 

 

スポンサーリンク