映画『インクレディブル・ファミリー』感想  悪党退治より困難なのは、家事!!育児!!

 

 

 

ドリル・マシンにより銀行強盗をしている悪党、アンダーマイナーを止めるべく、インクレディブル・ファミリーこと、一家が総出で出動した!!しかし、ヒーロー活動は法律で禁止されており、逆に一家の方が警察に拘束されてしまう、、、

 

 

 

 

監督は、前作同様ブラッド・バード
ピクサースタジオの専属では無い、外様の監督でもこの人気振り。

実写も経験あり。
主な監督作に
『アイアン・ジャイアント』(1999)
『Mr.インクレディブル』(2004)
『レミーのおいしいレストラン』(2007)
『ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011)
『トゥモローランド』(2015)

因みに、
本作の服飾デザイナー、エドナ・モード役で声優をしている。

 

日本語吹き替えの声の出演者は、

イラスティガール/ヘレン・パー:黒木瞳
Mr.インクレディブル/ロバート・パー(ボブ):三浦友和
ヴァイオレット・パー:綾瀬はるか
ダッシュ・パー:山崎智史
ジャック=ジャック・パー:イーライ・フシール(原語のママ)

フロゾン/ルシアス・ベスト:斎藤志郎

 

 

ピクサーの長編6作目として、
前作『Mr.インクレディブル』が公開されたのは、2004年。

あれから早14年、細かい内容が忘却の彼方に失われています。

ヴァイオレットの濡れた髪が凄かったのと、

「ヒーローはマントを付けてはいけない」
という、エドナの台詞くらいしか覚えていません。

 

そんな、

完全にニワカ勢の私でも楽しめる!!

 

それが、ピクサー・アニメーション・スタジオの長編第20作目である、本作『インクレディブル・ファミリー』です。

 

スーパー・パワーを操る一家の大奮闘、

対戦相手は、
悪党、法律、家事、育児!!?

 

いわゆるスーパーヒーロー映画は、
敵も仲間もチームを作っている事が多いです。

本作ではチームは家族、

いわば本作はファミリー映画とも言えるのです。

 

だからと言っても、
説教臭いという訳ではありません。

あくまでも、家族部分の悩みは等身大。

 

イマドキのアメリカン・ファミリーであり、

だからこそ、そこに共感出来る部分が多数あります。

 

一方のアクション場面はど派手。

 

スーパー・パワーを存分に発揮するパー一家の活躍を、

前作以上に観る事が出来ます。

勿論、赤ちゃんも!!

 

…まぁ、14年経ちましたが、

ジャック=ジャックは未だに赤ちゃん、

いわゆる「サザエさん方式」ですね。

 

タラちゃんが成長して、
校内暴力に巻き込まれたり、
癌になったりしたら興ざめでしょう?

それと同じですね。

 

アクションシーンで、ハラハラドキドキ、

ファミリーシーンで、共感しきり、

老若男女、誰が観ても楽しめる、

安心、安全、安定のアニメ作品、

それが『インクレディブル・ファミリー』です。

 

*毎度のオマケ、
今回も短篇アニメが付いています。

これも、ピクサー作品を観る楽しみの一つですよね。

 

 

 

 

  • 『インクレディブル・ファミリー』のポイント

乱舞するスーパー・パワー!

悪戦苦闘の家事・育児!!

原因と、結果と、責任の取り方

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


スポンサーリンク

 

  • パクリ上等!?面白ければ正義なのだ!!

『インクレディブル・ファミリー』。

本作は、
前作の『Mr.インクレディブル』の時から言われていますが、

その元ネタには『ファンタスティック・フォー』というアメコミ作品があります。

 

映画でも、
「X-MEN」シリーズや
「アベンジャーズ」シリーズで有名なマーベル・コミック。

マーベル・コミックのスーパーヒーロー漫画の元祖と言える作品『ファンタスティック・フォー』、

2度映画化した後、
リブートされて再び映画化されましたが、

イマイチ流行りませんでした。

 

しかし、その元ネタの『ファンタスティック・フォー』を遙かに越える人気と評判を博したのが、

『Mr.インクレディブル』であり、
『インクレディブル・ファミリー』なのです。

元ネタより、
評価も観客動員数も高いパクリ

身も蓋も無い結果ですが、

その理由は明白。

観客という消費者は、
元ネタとか元祖とかにはあまり注意を払いません。

単に
一本の映画として面白いか否か、

それに尽きるのです。

 

グダグダと設定の説明が多く、
悩んだり、内容が暗かった映画版『ファンタスティック・フォー』。

一方、
スーパー・パワーはそこに有る物という前提の上に立ち、
無駄な説明を省き、

単純明快で勧善懲悪、
ど派手なアクションでスカッと面白い『Mr.インクレディブル』。

どっちが観たいか?って話ですよね。

 

  • 内と外

こう書いたら、話がアホらしいのじゃないのか?
と、思われるかもしれません。

しかし、テーマ的にも面白い物があるからこそ、
万人の支持を得られているのです。

本作『インクレディブル・ファミリー』のテーマは、

仕事と家庭、です。

 

かつて、スーパーヒーローは特殊能力を活かし活躍していました。

しかし、その能力やスーパーヒーロー活動が、
一般市民の生活を脅かす部分が多いとの事で、
「スーパーヒーロー保護プログラム」が発動、

全てのスーパーヒーローは、その活動を法律で禁止されている世界です。

そんな状況の中、
仕事もなく、悶々としているボブとヘレン達のパー一家。

そこに、ヒーロー大好きの大富豪のパトロン・ウィンストンが現われ、
世間にヒーローの活躍を認めさせ、
法律の改正を目指すという計画を聞かされます。

そのミッションを主導する人物として白羽の矢が立ったのが、
イラスティガールこと、母親のヘレン。

イラスティガールはヒーロー活動時代も市民に対する被害を最小限に抑えており、

正に今回の計画にうってつけとの事。

彼女を送りだし、
世間にヒーローを認めさせるため、

ボブは主夫業を営む事になります、、、

 

危機を乗り越え、困難を克服し、敵を打ち倒し、

世間にもてはやされるのは、いつだって外で活躍する人間

本作では母のヘレンです。

一方、今回のボブは家庭は家庭を守る役。

いつもは敵をスカッとぶん殴って活躍していますが、
今回は家事と育児に奮闘します。

 

当初は、ヘレンを羨みながらも、
家事、育児は俺に任せろと大言壮語を吐いていたボブ。

しかして、その実態は、
ヒーロー活動をしているヘレンよりもボブは悪戦苦闘

ボーイフレンドと上手く行かず、拗ねるヴァイオレット、

ダッシュに算数の宿題をキチンと教える事が出来ず、

特殊能力を乱舞するジャック=ジャックにほとほと手を焼く始末。

 

家事、育児は終わる事がありません。

それなのに、
誰に感謝される事も無く、休みも無く、
日々、延々と続いて行くものです。

外に出て働く事も大事、
しかし、
他人から脚光を浴びている人間を支えているのは、

そんな家庭を守っている主夫(主婦)業のおかげなのです。

 

外の敵よりも困難なのは、

実は快適な家庭環境の維持、

『インクレディブル・ファミリー』とは、
ヒーロー活動と家事・育児を並立する事で、

その事を思い出させてくれます。

 

  • ヒーロー不要論を対抗してみる

さて、本作の敵役「スクリーンスレイヴァー」はこんな事を言います。

「ヒーローが居て、守ってくれる。その存在や憧れが一般市民の甘さを生み、人を弱くする」と。

スーパーヒーローが提供する大活躍を画面越しに観る事で、その疑似体験に耽溺し、自身を高める事を怠っている」と。

これは耳が痛いセリフです。

特に、
映画、小説が大好きな私自身にとって、
その趣味、存在自体を否定されるセリフと言っていいでしょう。

 

まぁ、

『ファンタスティック・フォー』をパクリ、
「X-MEN」のアイスマンをパクリ、

「007」や「スパイ大作戦」的な音楽を流し、

X-MEN:ファースト・ジェネレーション』や
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』的なストーリー展開で、

「X-MEN」シリーズや
『ウォッチメン』的なテーマを流用している、

過去のスーパーヒーロー物をパクリにパクリまくっている本作が、

どの口で「他人の人生(アイデア)で喜ぶな」と言うのか、
というツッコミはありますが、

その事も込みで、
自覚して発言しているだろう事に、
メタ的な面白さを感じます

 

しかし、作品を観たり、読んだりする疑似体験というのは、
実は重要な事だと私は考えます。

 

人は、
あらゆる状況、
あらゆる職業、
あらゆる場所、

限られた人生の中で、全てを網羅する事は不可能です。

その中で、
未だ見ぬ想定される状況において、

自分がベストを尽くすには、どうすれば良いのか?

映画や小説などの疑似体験というのは、
その指標になってくれるのです。

 

せこい登場人物や、
現実の人間の様に、

こすっからく、逃亡したり、
スルーするのか?

それとも、
敢えて困難に立ち向かい、奮闘するのか?

 

創作物に触れて、
心の中にヒーロー像がある場合、

困難に当たって、
そのヒーローに自分も成ろうと、努力、奮闘する事が出来るかもしれません。

その覚悟が、行動を伴った時
それは他人の人生では無い、

自分が思い描いた憧れのヒーローに、
自分自身が成るチャンスでもあるのです。

 

全ての人間が、
アドリブでヒーローに成れる訳ではありません。

ある意味、
ヒーローになる為の予習」、

創作物に触れる疑似体験は、
そういう意味合いもあるのです。

 

本作では、
「ヒーローに頼った事が、父が死んだ原因だ」という台詞がありました。

ヒーローの存在が、そもそもの間違いだという主張です。

しかし、
実はその主張自体が自家撞着を起こしているのですね。

 

「ヒーローに頼った事」が死の原因では無く、

「選択を誤った」事が原因なのですね。

これは、個人の資質であるし、
また、時の運でもあるのです。

その原因を、
無理矢理「ヒーローの所為だ」と関連付けているのです。

 

「ヒーローという存在を信じて頼った為に、自分で解決する能力と機会を失った」という主張自体が、

その責任をヒーローに押し付けている、
謂わば責任転嫁となっているのですね。

ヒーローの存在を肯定しないと、
ヒーローを否定する発言にならないのです。

この複雑さを内包し、
それでも、自己の主張を曲げない「スクリーンスレイヴァー」の複雑さは、

本作の面白さの一つでもあります。

 

  • 声の出演、解説

本作は声の出演に、
イラスティガール:ホリー・ハンター
フロゾン:サミュエル・L・ジャクソン
セリック大使:イザベラ・ロッセリーニ 等、
結構豪華なメンバーがいます。

そして、日本語吹き替え版もこれまた豪華。
前作と同じキャストが続投しています。

イラスティガール:黒木瞳
Mr.インクレディブル:三浦友和
ヴァイオレット:綾瀬はるか

皆、上手くてビックリします。

黒木瞳の声はセクシーだし、
三浦友和は実年齢(66歳)よりも若々しくてコミカルです。

そして、綾瀬はるか。

今では女優としての確固たる地位を築いていますが、

『Mr.インクレディブル』が公開された2004年当時は、

ちょうど、TVドラマの『世界の中心で、あいをさけぶ』で、
綾瀬はるか自身がブレイクした年でもあります。

当時は未だ、グラビアアイドルだったのですが、

今ではそのイメージを脱却し、
むしろ、グラビアアイドル出身の女優としては、

宮沢りえや、
広末涼子、
小池栄子などと比べても、
随一の活躍をみせているのではないでしょうか。

 

14年経っても変わらない、
むしろ、成長すらしている、

何だか、感慨深いものです。

 

 

 

悪党をやっつけて、大活躍、

しかし、それと並行して描かれるのは、

スーパーヒーロー活動より困難な、
家事と育児!!

素敵な家庭を築くのって、難しい、

しかし、それがあってこそ、外での仕事で脚光を浴びる事が出来る。

みんなで安心して観る事が出来る作品で、
こういう大事な事を思い起こさせてくれる。

だから、ピクサー作品って、
面白いんですよね。

 

 

 

現在公開中の新作映画作品をコチラのページで紹介しています。
クリックでページに飛びます

 

 

前作も面白いです!!

 

 


スポンサーリンク