映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』感想  焦りは禁物!ちょっとずつ理解し合うべし!

 

 

 

バツイチで再婚、三年目の結婚生活を送る加賀美じゅん。ある日、家に帰ると、妻のちえが血塗れで倒れていた!…しかし、それは死んだふり。その日から、じゅんが家に帰るとちえが死んでいる日々がスタートする、、、

 

 

 

 

監督は李闘士男
TVの演出家を経て映画監督となる。
主な監督作に
『デトロイト・メタル・シティ』(2008)
『ボックス!』(2010)
『神様はバリにいる』(2015)等がある。

 

出演は
加賀美ちえ:榮倉奈々
加賀美じゅん:安田顕

他、大谷亮介、野々すみ花、浅野和之、品川徹、螢雪次朗、等。

 

 

先ずは、題名を見てみましょう。

『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』

このインパクトが大。
題名だけで観に行きたくなります。

だって、死んだふりしてるんですよ、
面白いじゃない!!

 

しかし、それを面白がれるのは、他人だから。

夫のじゅんには他人事で済まされません。

一体何が起こった?
何か悪い事したのだろうか?
何か、不満でもあるのかな?

色々な事を考えながらも、
妻の用意したシチュエーションに付き合います。

この、

死んだふりのバリエーション、

そして、何故死んだふりをしているのか?

 

この二点の興味で物語を引っ張ります。

 

ある意味ワンアイデア。

しかし、そこから派生して思う事は、

夫婦って何だろう?

 

 

面白くて、
ちょっとしんみり考える事もある、
そんな夫婦の物語、それが
『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』なのです。

 

 

  • 『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』のポイント

バリエーション豊かな死んだふり

何で死んだふりしているの?

夫婦のあれこれ

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 死んだふりというコスプレパーティー

本作『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』は、
まず、この題名通り、
妻の死んだふりのバリエーションがウリとも言えます。

今日は一体何してくれる?
(ちょっと不謹慎ですが)どんな死に方?

これに期待せざるを得ません。

そして途中からは、
妻の死んだふりに付き合う夫じゅんの、

どんなリアクションしてくれる?

という興味も湧いて来ます。

この単純なとっかかり、
この興味から映画に引き込むんですね。

 

元々は「Yahoo!知恵袋」の相談が元ネタだったという本作。

まぁ、流石にネタでしょうが、
それが漫画化され、書籍化され、実写映画化までされる。

ここまでの訴求力が、
この題名には込められているのです。

 

  • 夫婦関係

興味のとっかかりから入って、
実は本作で描かれるテーマは、夫婦関係

結局、夫婦って何なの?

これについて語っているのです。

 

血が繋がった家族でも、完全に理解し合うのは不可能。

況してや、
元々は他人だった夫婦ではなおさら。

しかし、
お互いが選んで夫婦関係のなったのなら、
(勿論、お見合いとか政略結婚とかでも)
その、理解し合えない状況さえも受け入れる覚悟が必要です。

 

本作で、妻のちえが言う印象的な台詞があります。

お互いの事は、日常生活で、少しずつ知って行けば良い

この台詞こそ、本作で最も言いたい事なのだと思います。

 

ちえは、じゅんにプロポーズされた時
「月が綺麗ですね」
と言います。

じゅんは「何言ってんだ?」と
不思議がっていながら、
しかし、そんなもんか(=不思議ちゃんか)、
位の認識で流していました。

しかし、
この台詞の元ネタは夏目漱石のが訳した「I love you」の意訳

知っていたら分かる、
そして、知らなくても、後から気付けば、それが夫婦関係を深める一助になる
お互いを理解し合う、その道筋の一つを、ちえは用意していたのですね。

 

じゅんはそれに気付き、
突然「死んでもいい」と言います。

実はこの台詞も、二葉亭四迷がツルゲーネフの作品を訳すときに、
「私はあなたのもの」という意味の台詞を「死んでもいい」と意訳した台詞。

「月が綺麗ですね」の返答として、有名なのだそうです。

(私は知りませんでした)

 

突然、配偶者が奇矯な事をやりだしても、
それには何らかの意味があるのかもしれない。

しかし、それを「何故?」なんて聞くのは野暮なんですね。

ちえが持つ「夫婦関係の美学」によると、
お互いが自然に気付くのがベスト。

こうやって、お互いの事を徐々に知って行くことが、
夫婦になる事、とちえは思っているのです。

 

でも、何故死んだふりしていたのか?
それは気になりますよね。

その答えは、
映画を観た各人が思う、それが正解なのでしょう。

因みに、私の解釈は、

やはり、
幼少時に母を失ったちさは、自分より先に死なないで、とじゅんに言っています。

つまり、親しい人を喪う気持ちを、もう味わいたくないと思っているのです。

しかし、
自分が先に死んだとして、相手はどういうリアクションをとるのか?
それが気になったのかもしれません。

つまり、
ちさが死んだふりをするのは、
自分が愛されているかどうか確認する、
謂わば愛情確認の手段であると言えるのでは無いでしょうか。

 

勿論、
これは私の考え、正解では無いです。

でも、こうやってあれこれ考えて、
相手の事を理解せんとする事が夫婦関係を深める事にもなるのです。

 

 

 

題名のインパクトが強い『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』。

ここの興味から入って、
夫婦関係のあれこれを考える、

正解に行き着くことだけが、
必ずしも正しい道では無い。

その過程こそが、夫婦関係を築く、

そういう事を考えさせられる映画なのです。

 

 

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