映画『カイジ ファイナルゲーム』感想  面白さ、悪魔的だ~、とまでは行かねども、、、

東京オリンピック終了後、日本の景気は急落し、物価は上昇、失業率も増加していた。
相変わらずうだつの上がらないカイジは、かつての「班長」こと大槻に誘われ、一発逆転の「バベルの塔」というギャンブルに挑む。
そこで勝ち抜くのだが、カイジは「現金獲得」を放棄して、「情報」を得る事を選択するのだが、、、

 

 

 

 

監督は、佐藤東弥
劇場版一作目『カイジ 人生逆転ゲーム』(2009)
二作目『カイジ 人生奪還ゲーム』(2011)に引き続き、監督を務める。
他の監督作に、
『ごくせん THE MOVIE』(2009)
『ガッチャマン』(2013)
『映画 ST 赤と白の捜査ファイル』(2015)がある。

 

原作は、福本伸行の『賭博黙示録カイジ』から始まる、
「カイジ」シリーズ。

 

出演は、
伊藤開司:藤原竜也
桐野加奈子:関水渚
廣瀬湊:新田真剣佑
東郷滋:伊武雅刀

黒崎義裕:吉田鋼太郎
高倉浩介:福士蒼汰 他

 

 

苛酷な人気商売である、
週間連載漫画。

一発当てる事が出来るのは極、極、少数なれど、

それを為しえた者は、
正に、巨万の富を得る事が出来ます。

しかし、
人気商売であるが故に、
作者のコントロールを徐々に外れて行き、
連載の止め時を失う事で、
作品そのものが、迷走してしまう事もしばしば。

 

そう、『賭博黙示録カイジ』から始まる、
漫画の「カイジ」シリーズは、その典型例。

初期のキレッキレの展開、アイディア。
その後の、利根川、兵藤戦の面白さ。
大槻班長の「ノーカン」。
位までは、個人的に、純粋に楽しめました。

しかし、その後の、
「沼」は、まぁまぁ、
「17歩」は冗長、
「和也編」「ワン・ポーカー」はイマイチ、
そして現在の「逃亡篇」に至っては、読んですらいないという体たらくです。

 

しかし、映画版なら…

藤原竜也なら、何とかしてくれる…

その、一縷の望みを胸に、
映画版第三作『カイジ ファイナルゲーム』を観に行きました。

 

で、

端的に言うと、

いつものカイジ!!
アイディアは面白いのかもしれないが、
展開が冗長!!

 

そんな作品でしたね。ええ。

アイディアの奇抜さ、突飛さ、意外性で読ませていた初期と違って、
現在のカイジは、
展開による、人間心理の描写に注力されている印象。

まぁ、確かに、
絶体絶命で右往左往する人間の有様を眺めるのは興味深いですが、

それが、面白いかどうかは、
また、別問題なんですよね。

で、
本作の脚本は、
原作の福本伸行が関わっているという事なので、

良くも悪くも、
原作のテイストが忠実に再現されています。

 

 

…ぶっちゃけ、
映画の「カイジ」シリーズは、
「カイジ」ファンが本当に観たいものを、
微妙に、ハズして作られているんですよね。

第一作目なんて、
普通に「限定ジャンケン」を、
2時間フルに使って描いたら、
日本映画史に残る傑作になっていたでしょうが、

それを、
敢えて「やらない」という選択。

まぁ、ガッカリですよね。

第二作目の
「地下チンチロ」も、あっさり流すし、

私が観たくて、期待していたものを、
徹底して観せてくれない展開でした。

 

そんな印象なのに、
何故、今回の第三作目を観に行ったのか?

敢えて、地雷を踏みに行ったのか?

いいえ、違います。

私が本作で期待していたのは、

主演:カイジ役の、
藤原竜也の演技です。

 

 

漫画のカイジって、
アゴが尖ってるじゃないですか。

まぁ、それは、カイジに限りませんが、

しかし、
藤原竜也は、どちらかというと、丸顔系。

パッと見の印象は、
カイジ要素は皆無。

だが、
それでも、
藤原竜也の演じるカイジは、
原作とか、漫画云々とかの次元を超えて、

藤原カイジを演じきっているのです。

 

名言飛び交う、漫画原作「カイジ」。

それを、実際の役者が発すると、
ともすれば、臭い台詞になってしまいます。

しかし、
青筋立てて、
藤原竜也が体の芯からがなり立てるその名言の数々に、

もう、
画面に喰い気味でニヤニヤしながら観ずには居られません。

 

本作で描かれる、
原作には無い、
映画オリジナルのギャンブルの数々。

「最後の審判~人間秤~」を中心として、

「バベルの塔」
「ドリームジャンプ」
「ゴールドジャンケン」というゲームを上手く絡め、

意外性というよりむしろ、
人間同士の絡み合いという展開の中に面白さが潜んでいる作品『カイジ ファイナルゲーム』。

過去作から、
ゲストキャラが多数出演し、
豪華感もありながらも、

やはり、
藤原竜也の演技が際立つ本作は、

内容云々言うよりも、
その怪演を、是非、観て欲しい作品と言えるのです。

 

 

あ、因みに、
第一作、第二作目で船井を演じた、
山本太郎は今回は出ません。

 

 

  • 『カイジ ファイナルゲーム』のポイント

知力、運より、人間力を競い合うゲーム(ギャンブル)の面白さ

意外と(?)社会風刺的なストーリー

藤原竜也の圧倒的な怪演

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 社会風刺としての、『カイジ ファイナルゲーム』

本作『カイジ ファイナルゲーム』で描かれる世界観は、
オリンピックバブルが弾け、
景気が後退した、日本の近未来という設定。

漫画原作版のカイジにおいては、
徹底して、
搾取する側と、される側の戦いを描いてきましたが、

その構図は昨今、現実の世界における、
上級国民vs.下級国民として、
ひろく、皆に認識されています

正に、
時代がカイジの世界観に追いついてきた感があります。

 

そんな本作で、
私が最も印象に残った台詞は、
吉田鋼太郎演じる、黒崎義裕の台詞です。

給料から、実に七割のピンハネを行う派遣会社社長の吉田に、
カイジ達は、非難囂々浴びせますが、
そんな言葉は何処吹く風、

嫌なら、辞めろ」と言い放ちます。

 

「嫌なら、辞めろ」。

この、雇用主側の、
労働者に対する、圧倒的な上から目線

「働き方改革」が叫ばれる昨今、
しかし実際は、
「お前の代わりはいくらでも居る」という、雇用主側の思考が改められなければ、
日本の労働体質は変わらないでしょう。

 

この黒崎の言葉に共感するか、
反発を覚えるかで、

鑑賞者が、
上級か、下級か、「どっち側」かに分かれるというのが、面白い所。

実際、
劇中の黒崎や高倉の行動は、
現実での「お上」的な行動を彷彿させるものであり、
無批判に受け入れられるものでは無くとも、
切り捨てられる様なものでは無いのです。

ああいう人は、
実際に居ますからね。

 

そういう観点で、
「最後の審判~人間秤~」というギャンブルを眺めると、
なかなか、面白いです。

あのギャンブルは、正に、
金は、低い所から、高い所へ流れるという、
社会風刺的なゲームとなっているのです。

 

下級国民は、
上級国民を勝たせる為に、
自分の身銭を切って、相手を支援している。

しかし、散々搾り取られた後、
上級国民の都合が悪くなったら、
恫喝され、
下級国民は、投資を辞めさせられてしまう。

 

確かに、かつての「カイジ」シリーズの様に、
アイディアと意外性で読者を熱狂させたタイプのギャンブルではありません。

しかし、
社会風刺的な内容、
人間同士の総合力を試すかの様なシステム、
そして、時には罵声すら飛び交う、対決者同士の絡み合いなど、

現在の、物語展開重視のギャンブルにも、
観るべき所はあると、

本作を観て思いました。

 

  • ツッコまずにはいられない部分

青筋立てて怒鳴りあうギャンブリングアポカリプスである、
『カイジ ファイナルゲーム』。

全然、
本作で「ラスト」感はありませんが、
一つ、
ツッコまずにはいられない部分がります。

 

それは、
ラスト近く、
雨のスタジアムで、
カイジと高倉が対峙するシーン。

あのシーン、
雨が降っている風ですが、

カイジも、高倉も、
服も、髪も、全く濡れていない所に、
強烈な違和感があります。

パンフレットには、
「偶然雨が降って来て良い雰囲気になった」と書かれていましたが、

あれは、どう見ても、
雨を後から合成している様にしか思えません。

こういう細かい所を蔑ろにするのは、
残念な所ですね。

 

あと、
新田真剣佑のスーツ姿ですが、
全く似合ってないのがウケます。

服の上から筋肉モリモリ具合が丸分かりで、
まるで、
『北斗の拳』の巨大ババアみたいな趣があります。

新田真剣佑は、
十二人の死にたい子どもたち』(2019)とか本作みたいな大人しい役柄より、
OVER DRIVE』(2018)みたいな激しい役の方が似合ってると思うのですが、
どうですかね?

 

 

 

なんだかんだ言っても、
ギャンブルの面白さや、
役者のキレキレの演技が面白い『カイジ ファイナルゲーム』。

ファイナル要素が皆無の本作、
当然、
続きが作られるんでしょ?と、
期待したいですね。

 

 

 

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