映画『孤狼の血』感想  アウトロー達の挽歌!!肩で風切る男達のイキリ合い!!

 

 

 

広島、呉原東署、刑事二課のマル暴のベテラン刑事大上と組んだ新米エリート刑事日岡。型破りな捜査方、ヤクザとズブズブな関係に日岡は反発するが、大上は何処吹く風。そんな折、広島仁正会の下部組織「加古村組」が、対立組織の「尾谷組」の構成員を殺した事で、抗争がエスカレートして行く、、、

 

 

 

 

監督は白石和彌
主な監督作に
『凶悪』(2013)
『日本で一番悪い奴ら』(2016)
『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017)等がある。

 

原作は柚月裕子の同名小説『孤狼の血』。

 

出演に

広島県警
大上章吾:役所広司
日岡秀一:松坂桃李

ヤクザ、広島仁正会
五十子正平:石橋蓮司
加古村猛:嶋田久作
野崎康介:竹野内豊

ヤクザ、尾谷組
尾谷憲次:伊吹吾郎
一之瀬守孝:江口洋介

他、ピエール瀧、真木よう子、阿部純子、中村獅童、等。

 

 

オールスターキャストで贈る、

アウトロー達のイキリ合戦

 

それが本作『孤狼の血』です。

 

主役や目線は広島県警、

しかして、

本作の実態はヤクザ映画の系譜と言っていいでしょう。

 

本作は、プロデューサーの紀伊宗之と天野和人が、
かつて東映が担った『仁義なき戦い』(1973)等の実録ヤクザ映画の系譜を現代に復活させんと企画し、

『凶悪』や『日本で一番悪い奴ら』を撮った白石和彌に白羽の矢を立て、
撮影に挑んだ作品です。

『クローズZERO』(2007)や『アウトレイジ』(2010)の様な作品があるのに、
東映がアウトローを描かなくてどうする?

その思いから作られた本作、

とにかく、気迫がこもった作品です。

 

 

舞台は広島、呉原市。

架空の町だが、勿論意識しているのは「呉」

実際、

呉でのオールロケで撮影された本作、

 

『仁義なき戦い』等の実録ヤクザ映画の影響が多数見られます。

 

しかし、
確かに、ヤクザの抗争を描いたヤクザ映画である事は揺るぎない事実ですが、

あくまで軸足は警察目線。

 

組織暴力に対抗し、奮闘する様子が描かれます。

 

暴力団に対抗する為、
暴力、賄賂、情報操作、違法行為、
何でもござれで綱渡りする大上、

広島大学出のエリート、
新人の日岡

この二人が織りなすバディムービーでもあります。

 

アウトローに対して、
型破りな方法で対抗する大上。

毒を以て毒を制しようとする大上の捜査方法に反発する日岡。

この二人の想いが、どう交錯するのか、その辺りも見どころです。

 

劇場に映画を観に行った一般人が、
出てくる頃には肩を怒らせて歩いて行く。

そんなパワーに満ちた作品、
それが『孤狼の血』なのです。

 

 

  • 『孤狼の血』のポイント

現代に復活した東映アウトロー映画

ヤクザ同士のイキリ合いと、首を突っ込む警察

ベテランと新人のバディムービー

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • アウトロー映画、復活なるか!?

『凶悪』、『日本で一番悪い奴ら』
という、実録のアウトロー系映画を撮ってきた白石和彌監督。

監督は、今回のオファーを受けるかどうか、
少し迷ったそうですが、原作の面白さもあり、
仕事を受けたとの事。

そうして作られた本作は、
キャストの豪華さもあり、
かなりの力のこもった作品となっています。

 

さて、聞くところによると、
出演陣はヤクザ役をやる事を、大いに楽しんでいたとの事。

普段、抑制のかかった日常で抑えつけられたものを解放するかの様な、
好き勝手振る舞う負の魅力的なものがある、

それが、アウトロー映画の醍醐味であると言えます。

演じる方も、観る方も、等しく非日常を享受しているのです。

 

娯楽作品の流行廃りは、ある程度サイクルがあり、
そして、世相を反映したものでもあります。

現代にアウトロー映画を復活させる意義とは?
その意味は?

一部の人間だけ好景気を享受し、
残りの庶民は少ないパイを取り合って、イキリ合い、
マウントを取り合う事に躍起になる。

そんな社会に対する鬱屈、憤懣、
それらを怒りでぶっ飛ばす

そんな作品が望まれ、そして作られたのが本作なのかもしれません。

 

  • 役所広司という存在感

『孤狼の血』の起承転結。

その「起承転」までを担うのは役所広司演じる大上の存在感です。

 

日本屈指というより、
現代日本ナンバーワンの俳優と言える役所広司。

彼が画面に出るだけで、その存在感で映画を支配している感じがありますが、
本作はそれが顕著です。

 

無茶苦茶やってる大上に説得力を持たせる、役所広司の存在感。

悪い事、突飛なことをしているのに、
むしろ観ている間は、「次は何をしてくれるんだろう?」
そういう期待感で一杯にしてくれるのは流石です。

 

しかし、大上の実際は、
本人自身が綱渡りをしていると自覚する程に戦々恐々

警察には裏切られない様に、汚職を書きためたノートを綴り、

ヤクザ相手には
強い方には居丈高に、
弱い方には宥めすかして、
なんとかバランスを取ろうと奮闘します。

 

そんな役所広司演じる大上の最大の見せ場は、
日岡との最後の会話のシーン。

長回しで自らの覚悟と心情の一部を吐露する、
あの粘り着く様な緊張感に痺れます。

 

その後、「起承転結」の「転結」では、
主に日岡の目線で物語が進みます。

このパートになると、
やや画面がキレイになった感があり、
映画の雰囲気自体も少し変化しています。

役所広司という俳優が一人居ないだけでこれだけ変わるのか、
その存在感の凄さを感じます。

 

物事を教えたり、継承したりする事は、
ただベタベタと関わり合うだけでは無い。

その生き様を見せ付ける事も、
後の人間にどれ程影響を与えるのか

こういうやり方もあるのだと、
大上と日岡の関係によって改めて知らされます。

 

 

 

上品でお利口な建前を強要され、

ルールやコンプライアンスに縛られ八方塞がりになり、生きにくさを感じる現代社会。

そんなストレスフルな現代だからこそ、
ある種型破りが望まれる、

そのニーズに応える、
温故知新のアウトロー映画、
それが『孤狼の血』と言えるのではないでしょうか。

 

 

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