映画『イップ・マン外伝 マスターZ』感想  使え!!そして燃えろ、詠春拳!!


 

かつてイップ・マンに挑戦し、敗北した男、チョン・ティンチ。彼は詠春拳を封印し、武術界から引退した。時は1960年代、イギリス統治下の台湾、息子と市井で暮らすチョン・ティンチは、ある日、ヤクザ者に追われていた女性二人を成り行きで助けるが、、、

 

 

 

 

監督はユエン・ウーピン
映画監督のみならず、
武術指導、アクション監督として多くの映画に携わる。
主な監督作に
『スネーキーモンキー 蛇拳』(1978)
『ドランクモンキー 酔拳』(1978)
『キョンシー・キッズ精霊道士』(1986)など、

アクション指導に、
「マトリックス」3部作(1999、2003)
『グリーン・デスティニー』(2000)
『キル・ビル』(2003)
『イップ・マン 継承』(2016)等がある。

 

出演は、
チョン・ティンチ:マックス・チャン
ジュリア:リウ・イエン
フー:シー・イェンネン(シン・ユー)

クワン:ミシェル・ヨー
キット:ケビン・チェン
殺し屋:トニー・ジャー
デヴィッドソン:デイヴ・バウティスタ 他

 

 

香港映画。

それは、
ある一定の年齢層の人にとっては、
特別な意味のある映画ジャンル。

カンフー映画、
そして、キョンシー映画。

この二つで、
当時のちびっ子のハートを鷲づかみにし、天下を獲ったのである。

単純に、映画を楽しんでいた、かつての日々を思い起こしながら、
思い出に耽る…

 

そんな遠い目をしている所、恐縮ですが、
香港映画 is not dead !

そう、

かつての子供達が心振るわした、
あのカンフー映画が帰って来た!!

 

それが本作『イップ・マン外伝 マスターZ』です。

 

とは言え、
「イップ・マン」シリーズは、
これまで3作作られています。

その外伝の本作は、
過去作を観ていないと楽しめないのか?

そんな事はありません。

主人公チョン・ティンチは、
イップ・マンの第3作目、『イップ・マン 継承』に出ていたキャラクターですが、
本作はスピンオフ、

過去作を全く観ていない、私の様な人間でも、存分に楽しめます。

 

過去の回想シーンが、チラッと挿入されますが、
それで充分、何があったのかを推測出来ます。

確か、主人公チョン・ティンチの流派の詠春拳って、
ブルース・リーが学んだ武術で、

そのブルース・リーの師匠がイップ・マンなんですよね。

そして、1960年代の香港、
イギリス統治下なので、
使用言語は、中国語と英語が混淆したものとなっております。

まぁ、知識はこれくらいで、充分楽しめるのですね。

 

そして、対戦相手は、

拳銃、
ムエタイ、
ギャング、
店長、
刀、
筋肉モリモリのデカい白人!!

 

さぁ、戦えと言わんばかりに、
強敵が次々と現われます。

 

あ、デカいと言えば、
ヒロインが、
あの、
デカいですね、ええ。

折角、マックス・チャンが繊細な表情をしていても、
どうしても、胸に目が行ってしまいます。

まるで、
柴田ヨクサルが書く漫画の女性キャラくらい
デカいですね、ええ。

 

それはともかく、カッコ良いアクション、

そう、本作を観終わった後には、
きっと君も、
詠春拳の構えをとっている事でしょう。

それが本作、
『イップ・マン外伝 マスターZ』なのです。

 

 

  • 『イップ・マン外伝 マスターZ』のポイント

カンフーアクション、詠春拳の格好良さ

次々と現われるライバル、テンポの良い展開

人は、過去があるから、現在がある

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 詠春拳の格好良さ

『イップ・マン外伝 マスターZ』。

使う中国武術は、詠春拳。

映画の「イップ・マン」シリーズは気になっていましたが、
今まで観ていませんでした。

しかし、
本作はスピンオフ。

私の様な初見でも、
シリーズの入門篇として入りやすいのではないでしょうか。

 

マックス・チャンの演じる主人公チョン・ティンチは、
あのブルース・リーが十代の頃に修行したと言う、
詠春拳の使い手。

この詠春拳が格好良いのです。

パッと観た感じ、
受けに特化した接近戦を主体にした武術の様です。
(あくまでも私の私見であり、本質という訳ではありません)

相手の攻撃を受けて、
流してからの反撃(カウンター)。

そして、
接近戦での、寸打での連撃。

本作を観終わって、劇場から出た後は、
誰も居ない場所、
例えば、エレベーターの中とかで、
詠春拳の構えをとって
漫画のバキのように、
エア対戦に勤しむ事になります。

 

その対戦相手もふるっています。

殺し屋役を演じるのは、

ワイヤー無し、
スタント無し、
早送り無しのガチアクションで一世を風靡した、

ムエタイの使い手、トニー・ジャー

『マッハ!』(2003)や
『トム・ヤム・クン!』(2005)の面白さは特筆に値します。

 

そして、ラスボスであるデヴィッドソンを演じるのは、
元WWEのプロレスラーデイヴ・バウティスタ

力こそパワー」的な攻撃方法で対戦相手を圧倒します。

チョン・ティンチとの対戦では、
まるで、『グラップラー刃牙』での、
愚地克己 V.S 花山薫の様相、
受けが通用しない!?
的な展開が熱かったですね。

デイヴ・バウティスタは、
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)でブレイクした印象。

他にも、
『アイアン・フィスト』(2012)では、
変わり種のカンフーアクション映画で、敵役で出演したり、

ブッシュウィック ー武装都市ー』(2017)では、
長回しの多い映画に挑戦したりしています。

ヒーロー役も、
敵役も、
等しく演じられる、希有なアクション俳優として、
今後も期待大の役者です。

 

対戦相手が、
主役を張れるレベルのアクション俳優
この豪華さが、
本作の面白さを支えているのですね。

 

  • 過去は、否応無くその身にまとわりつく

『イップ・マン外伝 マスターZ』のキャッチコピーは、

「イップ・マンに敗れた男、その再生と復活の物語」
とあります。

この言葉は、
正に本作のテーマを反映したものとなっています。

 

「イップ・マン」シリーズの第三目、
『イップ・マン 継承』(2015)。

この作品で、イップ・マンに敗れた(らしい)チョン・ティンチ。

彼は、武術界から去り、
現在は食料品店を経営し、市井で過ごす身となっています。

 

乾坤一擲の勝負に負けた後、
人間は失意の元で過ごしてしまいます

チョン・ティンチも、
イップ・マンに敗北し、
自らの詠春拳を封印するのです。

しかし、
過去の経歴が、運命を導くのか、
揉め事というか、
荒事が、チョン・ティンチに纏わり付きます。

しかし、
成り行きでギャングと渡り合ったり、
酒屋の雇い主のフーから喧嘩を吹っ掛けられたりしても、
武術は使えど、
詠春拳は使わずに対処するのです。

 

本作は、
チョン・ティンチだけでは無く、
過去に囚われる者、
振り切ろうとする者、
過去を捨て去ろうとする者などが多く登場します。

 

街を仕切る「長楽グループ」のボスであるクワンは、

今までのヤクザ稼業を卒業して、
堅気として事業転換する事を目指します。

しかし、
過去の行状が災いして、
街の有力者からハブられたり、
内ゲバが発生し、
組織が崩壊したりしてしまいます。

 

そのクーデターを起こしたのは、
クワンの弟のキット。

彼は、
姉の影響力の強い現状を打破しようと、
クワンの言いつけに背いたり、
より仁義に悖る行動をとったりします。

しかし、姉との絆は断てず、
手痛い手打ちを受ける事になるのです。

 

酒場街でナイトクラブを経営するフーは、

ギャング稼業から足を洗えでも、
結局、揉め事を力づくで解決し、

結果、その因果で、
麻薬取引を裏で操るデヴィッドソンの報復を受ける事になります。

 

皆、過去を振り切ろうとし、
しかし、果たせずにいるのです。

 

作中、フーは言います。

「過去を振り切ろうとして、バーの経営を始めたが、難しいものだな」と。

チョン・ティンチは、それを聞いて、
フーも自分と同じだと気付き、告白します。

「俺は、出世欲と金儲けの為に、武術を使っていた」
だから、武術界から引退したのだと。

しかし、それを聞いたフーは言うのです。
「それでも(敗けた)からと言って、武術は辞められるものでは無いだろう」と。

 

登場人物達は、
過去の行状や、現状の不満を晴らそうとして、
それが出来ずに、
結局、因縁により運命に翻弄されます。

チョン・ティンチもそうです。

過去を振り払って堅気になっても、
結局揉め事に巻き込まれています。

しかし、
ラストのデヴィッドソン戦は、少し違います。

彼は、
己の為では無く、
力無き人の代理として、
恩のある人間の弔い合戦として、向かうのです。

デヴィッドソンに向かって言った
「お前に勝つ為にやって来た」とは、

「己に克つ」という事と同意。

ジュリアがバットマンのオルゴールを直すのと期を同じくして、
チョン・ティンチは、木人樁を組み直すイメージを得ます。

それは、
自らのルーツの基本に立ち返るという事。

人は、過去の失敗や行状からは逃れられません

しかし、
手痛い失敗や悪行があっても、
それにより現在の自分が形作られていると受け入れる事で、

現状の危機を乗り越える事が出来るのです。

 

過去は、忘却や逃走によって否定するものでは無い、

むしろ、
そこから、新しい現在の自分が生まれる。

『イップ・マン外伝 マスターZ』には、
そういうメッセージが込められていると、私は思います。

 

 

 

主人公チョン・ティンチの使う詠春拳の格好良さ、

登場人物や、ライバル達のキャラ立ち、

そして、
敗北からの再生というテーマ性。

アクションのみならず、
誰が観ても面白い、エンタテインメントとして仕上がっている作品、
『イップ・マン外伝 マスターZ』。

カンフーアクション映画は、
未だに面白いものなのだと、
改めて感じさせてくれる作品です。

 

 

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チョン・ティンチ(マックス・チャン)も出演する、
イップ・マンの第三作目は、コチラ 


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