映画『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』感想  リメイクとは何か?そのアイデンティティを問う!?

世界最古の伝説ポケモンと言われている「ミュウ」。その睫毛の化石を発見したフジ博士は、ミュウの遺伝子より、最強のポケモンたる存在「ミュウツー」を産みだした。しかし、自らのアイデンティティに悩むミュウツーは問う「私は、何だ?何故、生まれた?」と、、、

 

 

 

 

監督は、湯浅邦彦榊原幹典

湯浅邦彦は、
TVアニメシリーズの「ポケットモンスター」を長らくプロデュースした、初代監督。
『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』(1998)の監督でもある。

榊原幹典は、
ゲーム、「ファイナルファンタジー」シリーズの「8」「9」においてCGムービーを手掛け、
世界初のフル3DCG映画と言われる『ファイナルファンタジー』(2001)で、坂口博信と共同監督を務める。
監督作に、
『ルドルフとイッパイアッテナ』(2016)等がある。

 

出演は、
サトシ:松本梨香
ピカチュウ:大谷育江
タケシ:上田祐司
カスミ:飯塚雅弓
トゲピー:こおろぎさとみ
ゼニガメ:愛河里花子

ムサシ:林原めぐみ
コジロウ:三木眞一郎
ニャース:犬山イヌコ

ナレーター:石塚運昇

海賊風トレーナー:レイモンド・ジョンソン

ボイジャー:小林幸子

ミュウ:山寺宏一

ミュウツー:市村正親 他

 

 

 

『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』(1998)は、
伝説の映画。

アメリカにおいて、週間興行ランキング
いわゆる、「全米初登場1位」を獲得した、
日本初の映画です。

また、
全米興行収入も、
日本映画で最も高い作品。

それが『劇場版ポケットモンスター ミュウツー』です。

 

内容的にも、
子供向けとは思えぬテーマを孕んでおり、

また、
当時、
「ポリゴンショック」(1997/12/16:ポケモンショックとも言われる)にてバッシングを受けていた「ポケモン」というコンテンツを生き返らせた起死回生の作品であり、

この映画のヒットがなかったら、
現在の「ポケモン」という巨大マーケットは存在しなかった

そう言えるランドマーク的な作品なのです。

 

内容的、興行的、存在意義としても、
傑出した作品であった、
『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』。

これが、リメイクされるという事で、
ファンの期待は、
否が応にも高まるというものです。

 

 

さて、
現在においては、
既に珍しくなくなったフル3DCGでのアニメ映画。

その形式で、リメイクされた本作、
『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』は、どんな作品となったのでしょうか?

 

いやぁ、
率直に言うなら、

全く一緒。

 

セルアニメだった『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』と、
ほぼ、全て一緒です。

 

声優も、
メイン所は、前回と統一されており、
これは、嬉しい所。

更には、
内容、展開、台詞、画、

正直『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』を、
全て覚えている訳ではありませんが、

それでも、
覚えている限りにおいては、
ほぼ、前回を踏襲
完コピだと言えます。

ただ、音楽に関して言えば、
ゲームの『ポケットモンスター ウルトラサン/ウルトラムーン』のBGMのアレンジバージョンが使われている部分がありました。

 

これは、実際、
賛否両論だと思われます。

作品をリメイクする場合、

新しい物を観たい、という思いがありつつ、
変えて欲しくない、という思いもあり、

 

どういう比率で、
どれだけ手を加えるのかが、

リメイク作品の評価の分かれ目となります。

本作においては、

変更点を、
ビジュアルをフル3DCGにする事に留め、

その他の部分は前回を踏襲する事にしています。

 

ポケモンのファンであり、
そして、
『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』ファンである私としては、

正直、ちょっと物足りない感も否めず。

 

ビジュアル以外を変えなかった、という選択は、

ぶっちゃけ、
作り直した事実は評価はされども、
それ以上の物は無く、

下手な事をして批判されるのを避けた
との謗りも免れず。

 

とは言え、
元々、作品の内容、テーマは傑作なので、
観ている間は、夢中になる事間違い無し。

3DCGとなったポケモン達を観るだけでも幸せですし、
特に、
3Dに成った事で、アクションシーンの躍動感が、
格段にアップした印象を受けます。

また、
声優の演技、
ピカチュウ役の大谷育江や、
ミュウツー役の市村正親の演技を聞くだけでも、
本作の価値は十二分にあります。

他にも色々と、
ミュウツーを演じた声優はいますが、
個人的には市村正親バージョンがナンバーワンだと思うので、
今回の復活は嬉しい所です。

 

ほら、『ドラゴンボール』の人造人間セルも、
最初、声を聞いた時は、ちょっと違和感がありますが、
それでも、聞き慣れると「若本規夫」以外有り得ないのと同じで、

ミュウツーも、
最初聞いた時は「こんなにシブいタイプなのか!?」と思いますが、
やっぱり、聞き慣れると「市村正親」こそベストなのだと言えるのです。

 

前回とほぼ一緒だと言う事は、

前作を知っている人は、
間違い探し的な面白さを追求出来ますし、

前作を全く知らない新規に人は、
純粋に、作品を楽しめる事と思います。

 

私としては、
『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』は、
偉大な作品だったのだなぁと、

思い出に浸る事になった作品、

それが本作『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』だと言えます。

 

 

…あと、
本作では、
恒例となっていた「劇場でのポケモン配布」はありませんね。

「ポケモンGO」では、
映画公開に併せて「アーマードミュウツー」のレイドバトルが開催されていますが、

正直、ゲームの方でも、
「アーマードミュウツー」を配布して欲しかったなぁ、
とも思いました。

 

 

 

  • 『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』のポイント

相変わらずの、傑作のストーリー、テーマ性

間違い探し!?ほぼ一緒の内容

リメイクの意義とは?

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • リメイクの意義と難しさ

本作『ミュウツーの逆襲 EVOLUTIONは、
傑作『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』のリメイクです。

リメイクするにあたって、
本作は、
前作を殆ど変えないという安全策を採りました。

極端な批判はされずとも、
特別な評価もされない

それが、
ポケモンファンである私の、
嘘偽らざる、本作の印象です。

 

何も情報を仕入れずに観に行ったので、

序盤に出て来た、
まるで「プレデター」の様な「アーマードミュウツー」のビジュアルに、
期待が高まりました。

鎧でありながら、
本来の力を抑える為の拘束具でもある、
という設定が、
まるで『新世紀エヴァンゲリオン』の
エヴァの様で、厨二度が高いですよね。

 

しかし本作では、
個人的に、密かに期待していた、

メガシンカも、
ゼット技も、
キョダイマックスも、

何も無し!!

ビジュアルのエフェクト、
アクションの躍動感など、
進化した部分は多数あれども、

サプライズ的な隠し球が皆無だった事が、
残念な所です。

個人的に、リメイクの意義とは、
現代に合わせ、テーマ、本質を変えずに、
新しい側面を加えたり、
予想を超える方面でのサプライズを仕掛ける事だと思っています。

本作にはそれが無かった、
残念な所です。

 

折角、
ミュウツー、
フシギバナ、リザードン、カメックス、
ギャラドスなど、

メガシンカ出来る人気ポケモンが揃っているのだから、

その辺り、
派手に進化してみても、面白かったと思います。

 

…まぁ、しかし、
例えば、ミュウツーのポケモンのみが、
メガシンカとかをしてしまったら、

「同じポケモン」でも、
「コピーの方が優秀だ」というミュウツーの主張がブレる事になるので、

その辺りの変化をテーマを変えずに行うには、
実際は難しかったというのが本音だと思われます。

 

また、
本作が、内容を変えなかった一番の理由は、
『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』や、
TVアニメシリーズの「ポケットモンスター」の初期の脚本を務めた、
首藤剛史が逝去していた為だと思います。

 

自らのアイデンティティと居場所を求め、
世界全てを敵に回しても、自己探求を為さんとするミュウツーの姿は、

全ての人間が、
思春期、青年期、老年期問わず、
死ぬまで突き詰める事になるテーマであり、

これがあるからこそ、
ミュウツーの行為は復讐でも宣戦布告でも無く、

世の理不尽さに対して、
自分の人生を
ここから始め、乗り越え、獲得しようとする「再起=逆襲」と言えるのです。

 

「生を受けたからにはなぜ生まれてきたのかという自分への問いかけをしながら、その答えを出すためには自分からいろんな行動をしていかなければならない」
(ミュウツーを演じた市村正親の言葉:パンフレット p.18 より抜粋)

 

そういう完成された世界観を、
下手にいじって崩す事は、

それを産みだした首藤剛史以外には、
尊大な行為と解釈した、

いわば、脚本家の首藤剛史に義理立てして、
内容を変えなかったのだと思います。

 

完成されているが故に、
内容を変える事は出来ず、

それでも、
新しいモノを観せんと努力した、

それが、本作『ミュウツーの逆襲 EVOLUTIONだと言えます。

 

  • 21年後の現在

劇場版ポケットモンスターの第一作目をリメイクした、
第22作目である本作『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION。

殆ど一緒の内容ですが、

本作、
個人的には、
エンディングの印象が、変わっている様に感じました

 

「自分とは何か」を問い続けるミュウツーは、

「自分」が、
世界に蔓延る人間達より優秀であると証明する為に、
「ポケモントレーナー」として人間と対決し、

更に、

「自分=コピー」が、
オリジナルより優秀だと証明する為に、
ポケモンのコピーを産みだし、オリジナルを打ち負かさんとします。

しかし、
サトシの無私無欲な行為と、
ポケモンやトレーナー達の涙を目の当たりにし、

自分の行為の虚しさを知ったミュウツーは、
自らの過ちを認め、
「生まれたものは、既に生命」と知り、
反省し、

生まれたコピーポケモン達を連れ、旅立ちます。

 

その時、
サトシ達、関係者の記憶を消すのは、

自らの過去の過ち、
即ち、
自分のオリジナルである「ミュウ」に対する劣等感、憧れとの訣別をも意味し、

過去の恩讐を乗り越え、
新しい道へと踏み出す行為の象徴であるとも言えます。

 

オリジナルにおいては、
エンディングは、

自分の非を認めつつ、
しかし、
自分達の安息の場は、今はここには無いという事を悟った為に、
静かにその場を去った、

という様な、
何処か、虚しい印象を、初見時に受けました。

 

しかし今回、
その同じ場面にて感じたのは、
新しい事が始まるという、晴れやかな印象

昔、視聴した時には、
見落としていたのか?
ミュウと共に、記憶を消す描写があったり、

エフェクトが派手で綺麗だったり、

市村正親の声のトーンが違ったのか?

自分の加齢によって、
世の中の受け止め方が変わったからなのか? etc…

おそらく、
その全ての、ちょっとずつの変化の積み重ねが、
作品に対する印象を変えたのだと思われます。

 

虚しさを纏えども、
新しい事を知って、
新しい事が始まるという、
希望へ向かう再出発。

そんなミュウツーの姿に、
俺も、お前も、大人になったんだなぁ、

そう、しみじみ、思いましたねぇ、、、

 

 

 

『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』という名作をリメイクした、

本作『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION。

 

前作と、ほぼ同じという形式のリメイクで、
サプライズが無かった事は残念ですが、

それでも、
名作はやっぱり、いつ観ても面白いと、
再認識させられました。

 

また、エンディングの印象も少し違い、
また、新たなミュウツーも姿が見られた事も、

本作も収穫だった。

そう、思いますね、

チュッキプリュリイイイイ!!

 

 

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