映画『蚤とり侍』感想  ボロは着てても心は錦!真面目一本で状況打破!?

 

 

 

長岡藩の勘定方書き役の小林寛之進は、ある日、藩主の牧野忠精が詠んだ短歌をパクリと指摘してしまい、逆鱗に触れる。「明朝より、猫の蚤とりとなって無様に暮らせぃ」と命じられた寛之進、それが何だか知らないが、それでも主の命ならばと猫の蚤とりとなるのだが、、、

 

 

 

 

監督は鶴橋康夫
数々のTVドラマを手掛けたベテラン。
映画監督作品は
『愛の流刑地』(2007)
『源氏物語 千年の謎』(2011)
『後妻業の女』(2016)がある。

 

主演の小林寛之進に阿部寛

共演に、
寺島しのぶ、豊川悦司、斎藤工、風間杜夫、大竹しのぶ、前田敦子、松重豊、桂文枝、他。

 

 

猫の蚤とりとは一体何だ!?

それは、猫の蚤を取る、との建前の元、

独り寝の寂しさをかこつマダム達のベッドのお相手をするお仕事なのです。

 

武士の本懐は、主君の命を遵守する事。

藩主の牧野忠精に命じられるまま、
猫の蚤とりとなったクソ真面目な寛之進。

 

性交とは、
ちょっと大っぴらにするには気恥ずかしい事。

しかし、主君の命とあらば、
寛之進はその道を究めるべく、奮闘します。

なんせ、

初めての客に、「へたくそ」言われてしまったから、、、

 

正直、ちょっと滑稽、
しかし、

本人はくそ真面目。
だから、そこに「おかしみ」があります。

 

不遇を託っても、
その場所、状況でベストを尽くす者達の話。

秘め事を扱った映画なのに、
何だか、ちょっと勇気と元気が出てくる。

そして、笑えて、スカッとする映画、
それが『蚤とり侍』です。

 

 

  • 『蚤とり侍』のポイント

義理人情の尊さよ

左遷されても、挫けるな

百聞は一見に如かず

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 悲観するより、楽しく生きよ

『蚤とり侍』の登場人物、
長屋に転がり込んだ三人の男は、一様に不遇を託っています。

小林寛之進は、
主君の逆鱗に触れ、お役御免となってしまい、
「猫の蚤とり」、言うなれば「男娼」にまで身をやつしてしまいます。

清兵衛は、
婿養子という身分に何となく窮屈なモノを感じ、
嫁に縛られ、御店の皆の笑いものになる生活にウンザリしています。

佐伯友之介は、
親が張った「武士の意地」の煽りを受け、
貧乏が骨身にまで染みています。

 

左遷された男、笑いのネタにされる男、貧乏、

今風に言うと、完全に負け組の男達

しかし、彼等は
端から見たら悲惨な状況で惨めでも、
そこで腐っているだけじゃ無いのです。

 

窓際に追いやられても、
左遷されても、

そこでいじけている訳では無い。

良く考えたら、ちょっと悲惨、
でも、その状況を腐る事なく受け入れ、
今現在出来る事に、愚直に真面目に取り組んでいる。

その姿が、何処か崇高な感じがします。

そう、彼等は、楽しそうなのです。

 

「猫の蚤とり」となっても、
その道を究めるべく、一意専心する寛之進。

意外と順応しているのが笑えます。

特にのぞきのシーン、
まるで松重豊の『孤独のグルメ』の独白のシーンの如くに饒舌に貪ります。

その様子が、ちょっと滑稽ながらも、
真摯な様子に応援したくなるものまた、事実。

 

清兵衛は、ついにキレて、言い渡されていた通り、
婿入りの時持って来た、唐傘一つを持って家を飛び出します。

無宿人で、金も無い。

しかし、むしろ束縛から逃れ自由になった良い表情をしています。

 

拾い食いして、猫に引っかかれ、寝込んでしまった佐伯友之介。

しかし、長屋の皆から愛されている彼は、病気を機に、
「武士の誇り」みたいなものを卒業するに至ります。

きっと、ちょっと丸くなって、
長屋の人の食事の御相伴に与る事も多くなるでしょう。

彼は、そんなプライドより、
自分が人に必要とされている、
子供に教育を施すという事が、どれほど人の役に立っているのか、気付いたのだと思います。

 

状況に真面目に取り組み、順応した寛之進。

現在の状況を、むしろ好機と楽しむ清兵衛。

自分が人に必要とされていると知った友之介。

ボロは着てても、心は錦
どんな状況下にあっても、
本人の気の持ち様で、いくらでも充実出来る

それこそが、楽しい人生と言えるのではないか?

『蚤とり侍』はそんな事を訴えている映画なのだと思うのです。

 

 

左遷され、
窓際に押し込まれる。

ここは、自分の居場所じゃないと、
腐っていじけても、道は拓けない。

どんな状況下にあっても、
自分のベストを尽くし、道を究めんと努力し、真面目に生きる。

むしろ、その真摯な態度が呼び水になり、
状況が一変、
人の義理人情を呼び起こし、前より素晴らしい人生を送る事になる事もあるやもしれません。

 

瓢箪から駒が出てくる様な、人生一発逆転が必ず起こる訳ではありません。

しかし、
一見悲惨な状況になっても、
その時々で、腐る事なく、真面目に楽しく生きる

そうしたら、それが幸せなのだと提案してくれる映画、
それが、『蚤とり侍』なのです。

 

 

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