パシフィック・リム:アップライジング ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
怪獣撃退から10年。復興を果たした場所もあれば、そうでない所もある。そんなスラムで盗品売買の闇取引をしているジェイク。彼はひょんな事から出会った少女、アマーラと出会う。彼女は盗品でお手製のイェーガーを作っていた、、、
監督はスティーヴン・S・デナイト。
本作で長篇映画監督デビュー。
テレビドラマシリーズ
『スパルタカス』で脚本、製作総指揮、
『デアデビル』で監督を務めている。
主演はジョン・ボイエガ。
現在、若手黒人枠と言えば、この人。
本作ではプロデューサーも兼務している。
主な出演作に
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)
『ザ・サークル』(2017)
『デトロイト』(2017)
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)等。
他、出演に、
スコット・イーストウッド、ケイリー・スピーニー、ジン・ティエン、チャーリー・デイ、バーン・ゴーマン、菊地凛子、他。
ガチのマジで面白かった前作『パシフィック・リム』。
何を思ったか、事前に予習で3回も観てしまいました。
*前作の感想はコチラをクリックするとページに飛びます。
そして臨んだ本作『パシフィック・リム アップライジング』。
自分の中でハードルが上がりに上がりまくっていました。
結論から言うと、
まぁ、こんなものかな、、、
といった印象でした。
前作にそれ程思い入れが無い方が、楽しめると思われます。
そんな本作を一言で言い表すなら、
CGロボアクション映画です。
前作は怪獣映画でしたが、本作ではその要素は抜け落ちています。
細かい事に拘るより、
とにかく暴れようぜ、ロボで!!
そんな映画です。
対象年齢がグッと下がって、子供も見やすくなっていると思います。
出演者も、前作はオッサンが幅を利かせていましたが、
本作は若者が頑張っています。
ノリとしては、
勢い重視
そんな感じですね。
名作の続篇を作るのは難しい。
ハードルが上がりに上がっているからです。
思い入れがあればあるほど、
それがフラットな観賞の妨げになるのかもしれません。
前作の出来を忘れて、真っさらな心で観たら面白いのかもしれませんね。
- 『パシフィック・リム アップライジング』のポイント
CGロボでバトルだ!!
若者がノリで世界を救う
監督が違うと映画は別物になる
以下、内容に触れた形で、前作ファンが今作との比較について語っています。
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名作の続篇の在り方とは
映画『パシフィック・リム』。
私個人の好きな映画ベスト10を作ったなら、その中に入ってくる作品です。
その続篇の本作『パシフィック・リム アップライジング』。
正直に言うと、期待外れでした。
私の感想としては、
前作と今作の関係は、
鳥山明の『ドラゴンボール』と
びわたろうの『ドラゴンボール超』と同じ印象、
と言ったら一番分かり易いと思います。
やはり、上がりに上がったハードルを越えるのは難しいですね。
近年で言うと、
『マッドマックス 怒りのデスロード』(2015)
『シン・ゴジラ』(2016)
と言った、こちらの期待を遙かに越える続篇の名作が出ていただけに、ちょっと残念ではあります。
続篇、という物を作る場合、
やはり、監督のマネジメントが重要になってきます。
作品の世界観、方向性はどうするのか?
テーマ、ストーリー、キャラクター、構成、演出、アイデア、
これらをどの様なバランスをもって配置し、映画を作り上げるのか?
続篇と言うのなら、それを受け継ぎ、共通した面白さを突き詰める必要があります。
本作ではそれを「CGロボアクション」という方向性で受け継いでいるんですね。
これが、実は私が本作を残念だと思う点なんです。
何故なら、
前作は怪獣映画だったのですが、本作では怪獣は単に、やっつけるべき敵役に堕しています。
ロボが活躍するのと同じかそれ以上に、
怪獣自体に個性があったのが前作でした。
前作は、怪獣とロボのガチンコプロレス映画だったんですが、
本作では、この前作を名作たらしめた要因がソックリ抜け落ちています。
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方向性の違いが演出の違い
前作では、怪獣が開始(1:14)で登場します。
カップラーメンを作る暇も無いほどのスピード感です。
イェーガー出動が(8:10)、
実戦が(10:24)、
初っ端から面白過ぎて、観ているこっちが心配になりますが、
実は終始このテンションが続いているのが『パシフィック・リム』であり、
この出し惜しみを拒む感性こそが前作を名作たらしめていました。
一方、本作はなかなか暴れないです。
ストーリーとキャラ設定を紹介した後にアクションという、ありふれた普通の映画の演出となっています。
また、本作では、怪獣は中々でて来ません。
出てこないどころか、ラストまで待たなければなりません。
「怪獣映画」を観に来た人間からすると、このお預け感は頂けないのですね。
しかも、出て来た怪獣も、ちょっと個性が薄いというか、、、
イェーガーと鎬を削る存在というより、
単なる敵キャラ、倒されるだけの存在になっちゃっているんですね。
その代わり、本作にて主に暴れる敵キャラは、同じロボットです。
海から、謎の存在がザブーっと現われて、
「怪獣キター」と思ったら、イェーガーだったのは、面白かったですね。
このジプシー・アベンジャーVS.オブシディアン・フューリーの二連戦の部分がバトル的には一番面白く、
中から脳みそが出てくる意外な展開も含め、
本作で最も楽しめる部分です。
しかし、まさか終始ロボVSロボの、謂わば内戦を延々と見せられるとは、、、
結局、本作が目指した形は、
ロボが味方も、敵も暴れ回る姿を見せる事であり、
その事を意識した演出となっているのですね。
前作では、
イェーガーと怪獣が戦う時、
基本的に先ずがっぷり四つに組みます。
この肉弾戦メインのバトルが面白いのですね。
特撮の『ウルトラマン』系のノリですよ。
先ずは、プロレスをやって、
最後に必殺技で締める、みたいな。
一方本作はギミック重視、
プラズマキャノン、
チェーンソード2.0、
重力スリング、等の武器を駆使しています。
これは、怪獣相手ではガチンコ感が出ませんが、
同じロボ同士となると、見映えがします。
このバランスも、
怪獣は「狩る」相手であり、
ロボ同士こそが比肩する相手という印象を与えています。
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スケール感の縮小
前作から10年。
最早戦後では無いハズなのに、
本作ではPPCD(Pan Pacific Defense Corps:環太平洋防衛軍)が存続しており、
しかも、イェーガーがウロチョロしています。
まぁ、これはおそらく、世界を救ったPPCDがその後、
国連軍の様な感じで、多国籍からなる連合軍という意味合いを持ったのかもしれません。
それは置いておいて、
前作と本作を比べると、スケールダウン感が否めません。
先ず冒頭、
前作は決死のガチンコバトルだったのが、
本作では人間同士のぬるい鬼ごっこ。
バトルのメンバーも、
前作では歴戦の英雄を集めたという設定だったのに対し、
本作はガキんちょ。
ペントコストの演説も、
前作は重厚感があり、大勢を前に喋っていたのが、
本作では数人の前で怒鳴っているだけ。
特に、出撃メンバーに「強さの説得力」が無いのが致命的なのです。
未熟な若者を使うのはいいですが、訓練生なら、もっと修行の様子を演出すべきだったと思います。
VRのバーチャルバトルと、アマーラのドリフト失敗程度では、ちょっと少なかったですね。
これなら、他のメンバーはただ、
沢山のイェーガーを出したかった為の数あわせでしか無いのですね。
メンバーがありがちに喧嘩するのも、
ベタ過ぎて臭いですね。
また「未熟な若者」を兵士として使うなら、
それが原因の困難などもあって欲しかったですが、
それもナシ。
キャラ設定の必然性が弱いのです。
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予想を裏切り、期待も外す
意外なストーリー。
それが面白いのは、「予想を裏切り、期待に応える」からです。
しかし本作では、「予想を裏切り、期待外れ」な展開に終始しています。
第一線を離れ、司令官的な立場でイェーガーに関わると思ったら、ヘリコプターの事故であっけなく死んだ森マコ。
前作ではコメディパートを務め、
本筋とは別の「怪獣とのドラフト」という重要なシークエンスを担ったニュートンを闇堕ちさせた事。
展開の意外性の演出の為に、
前作で活躍したキャラクターを生贄にするのは残念至極です。
映画において、
というより、漫画も小説も、
テーマやストーリーと同じ比重でキャラクターは重要なものです。
本作では、そのキャラクターの描写が弱かったのが残念ですね。
(過去を映像として描写せず、台詞だけで簡単に説明し、映画的には手抜き感が漂っている事など)
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「溜め」の必要性
陰影の付け方、
光の演出、
水しぶき、埃などによる立体感の創出、
カット割り、カメラワーク、
前作と比べると、こういった演出で明らかに差がある本作。
中でも一番の違いは、「溜め」の有無です。
本作はロボ同士のバトルがメイン。
スピーディー且つアクロバティックにイェーガーが躍動します。
しかし、その動きの素早さが、バトルの面白さと同意ではありません。
むしろ、せかせか動くより、
重厚感のあるゆっくりとした動きを混ぜた方が、
よりダイナミックであると思います。
いわゆる、「溜め」が必要なのです。
前作で言うなら、
マコがローリーと棒術で戦う時の始めのシーン(39:44)、
ジプシー・デンジャーが船を引きずってオオタチと対峙するシーン(1:24:14)などです。
ゆっくりとした動きの中にこそ、
その後に解放されるエネルギーの発露が見出されるのです。
気軽にピョンピョン飛び跳ねるのは、巨大ロボという存在からリアリティが欠如してしまいます。
むしろ、動きの緩急によって重厚感を出した方が、スケール感が出て面白さがあると思います。
またこれは、CGアクションか、怪獣映画か、というスタンスの違いでもあります。
CGなら、どんなアクロバティックな動きでも可能でしょう。
しかし、前作の場合、
CGの怪獣であっても、その中にスーツアクターが居る様な動きを意識して作ったと監督(ギレルモ・デル・トロ)は言っています。
これは勿論、イェーガーにも当てはまっているんですね。
この認識の違いが、
イェーガー自体の動きに如実に表われているのですね。
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役者補足
本作でシャオ産業の社長・リーウェン・シャオを演じたのはジン・ティエン。
キツめの美人なので、その筋の方には堪らない存在かと思われます。
主な出演作に
『グレートウォール』(2016)
『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)等があります。
『キングコング:髑髏島の巨神』では「叫ぶ美人」役をやっていました。
同じレジェンダリー系の映画なので、
今後、キングコングとイェーガーが絡んだりしたら面白いなぁと、考えるのは私だけでは無いハズです。
そしたら、ゴジラ(アメリカ版)とも戦う事もあるでしょうし。
随所に光る部分があっても、面白過ぎた前作と比べるとどうしても見劣りしてしまう『パシフィック・リム アップライジング』。
上がり過ぎた「理想」というハードルを越える事は難しい。
そういう目線では無く、もっとフラットな視点を持ってさえいたら、もっと楽しめたのかもしれません。
ラーメンマンもブロッケンJr.に言ってました。
「オヤジの事は忘れろ、そうしたらお前はもっと強くなる」と。
本作も同じです。
「前作の事は忘れろ、そうしたら『アップライジング』を楽しむ事が出来る」。
そんな事を、春の日の日本晴れに思った作品でした。
*現在公開中の新作映画作品をコチラのページで紹介しています。
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*前作について語ったページです。コチラも是非ご覧下さい。
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