映画『プーと大人になった僕』感想  まさかの禅問答!?ぬいぐるみと語らう人生!!

 

 

 

かつて100エーカーの森で、プー達と幸せな日々を送っていたクリストファー・ロビン。今は大人になり、妻と娘の為に仕事に邁進する日々。しかし、業績悪化の為、改善策が示されなければ部下のリストラを上司から迫られる。悩むクリストファー・ロビンは休日返上で働くが、、、

 

 

 

 

監督はマーク・フォスター
作品的に多彩な印象。
代表作に
『チョコレート』(2001)
『ネバーランド』(2004)
『ステイ』(2005)
『君のためなら千回でも』(2007)
『007 慰めの報酬』(2008)
『マシンガン・プリーチャー』(2011)
『ワールド・ウォーZ』(2013)等。

 

主演のクリストファー・ロビンはユアン・マクレガー
日本語の吹き替えは堺雅人

他、出演に
ヘイリー・アトウェル、ブロンテ・カーマイケル 他。

声の出演は、(役:声:日本語)
プー:ジム・カミングスかぬか光明
ティガー:ジム・カミングス:玄田哲章
イーヨー:ブラッド・ギャレッド:石塚勇
ピグレット:ニック・モハメッド:小形満 他。

 

 

「くまのプーさん」と言えば、世界的に有名なキャラクター。

そのキャラクターグッズの売り上げは、
ハローキティやミッキーマウスに勝るとも言われています。

さて、しかし、
私は名前は知ってはいましたが、
今まで「プーさん」の作品には、
グッズはおろか、映像作品すら触れた事が無い人生を送って来ました。

いわば、
今回が、「プーさん」初体験

その人物が、映画『プーと大人になった僕』を観て何を思うのか?

生まれて初めて「プーさん」の映像作品を観た人間の感想です。

 

 

原作やアニメはどんな作品かは知りませんが、

本作『プーと大人になった僕』は、
完全に大人向け。

 

勿論、
子供が観ても楽しめる部分がありますが、

相対的に、
映画のクリストファー・ロビンと同年代かそれ以上の人間が一番楽しめるターゲットという印象の作品作りです。

 

娘のマデリンはもうすぐ寄宿舎に行きます。

その前に、家族でクリストファー・ロビンの田舎でゆっくり過ごそう、
そう約束していたにも関わらず、

クリストファー・ロビンは仕事を入れてしまいます。

しかし、
その仕事は無理難題。

旅行鞄が売れず、
コスト削減案でも目標を達成出来ない、
残る手段はリストラしか無いのか、、、

悩むクリストファー・ロビンの前に、
ひょっこりとプーが現われます。

もうすっかり忘れていたのに、

自分はすっかり大人になったのに、

プーは一目でクリストファー・ロビンだと気付きます。

しかし、
どうしてロンドンにプーが?、、、

 

かつて、子供時代を共に過ごした親友。

久しぶりに出会って語らう二人、

しかし、
一人は大人に、
一人は昔のままに。

そして始まる禅問答、

生きる事、
幸せって、何?

 

答えの出ない問いに、
クリストファー・ロビンのみならず、
観客も困惑に囚われる事間違い無しです。

 

しかし、
その語らいこそ、本作のメインテーマ。

今、生きてて楽しいですか?

 

そうでは無いのなら、
本作を観て、
かつて幸せだった子供時代を振り返ってみるのもいいかもしれません。

 

こう言ってしまうと、
ちょっと説教臭く感じるかもしれませんが、

とは言え、
キャラクターの可愛さで、
そんな雰囲気もなんのその。

まるで、
生きているぬいぐるみです。

 

プーやティガー達の質感、その見た目は、
かなり衝撃的です。

禅問答が終わればお楽しみタイム、

はちゃめちゃな冒険が始まりますので、

ぬいぐるみ達の活躍を堪能しましょう。

 

 

  • 『プーと大人になった僕』のポイント

プーがクリストファー・ロビンに仕掛ける禅問答

子供の頃の好きなものは、大人になったら忘れるものなの?

ぬいぐるみ達の驚異のもふもふ感

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 衝撃!!驚異のぬいぐるみ軍団!!

さて、「くまのプーさん」に関しては、
元々、ふわっとした印象しか持っていなかった私。

どんなものかな、
と思い、映画を観に行ったのですが、

先ず、
プーさん達の外見にビックリしました。

 

え?プーさんって、ぬいぐるみなの!?

 

私個人の印象では、
ディズニーランドの着ぐるみとか、

若しくは、
リアルベースの「熊」や「虎」「豚」といった感じでCG化するのかと思っていました。

それがまさかの「ぬいぐるみ」ベース

 

確かに、
聞くところによると、
元々、原作の『くまのプーさん』のプーさんのモデルは、

これまたクリストファー・ロビンのモデルとなった、
作者A.A.ミルンの息子、クリストファー・ロビン・ミルンが持っていたテディベアだと言います。

イーヨー、ティガー、ピグレット、カンガも、同様に、
元々は息子が持っていたぬいぐるみがモデルであり、

それを物語に出して息子を喜ばせようとしていたのだと思われます。

 

つまり、それに倣った本作は、
言わば原作の雰囲気(コンセプト)を重視したものだと言えるのですね。

 

しかし、
CGと解っていても、
まるでリアルにぬいぐるみが喋っている様な臨場感

最近はCGを見慣れてきた感がありましたが、
本作のビジュアルは久々にビックリしましたね。

 

また、
映画の『ピーターラビット』でもそうでしたが、

主人公は普通に接していても、

モブキャラの一般人からすると、
ぬいぐるみが喋る事の異常性にビックリする。

ぬいぐるみが当たり前に喋る世界、
と思わせておいて、

実は、そうでは無いのですね。

この、
観客(や読者)が、
物語の設定を説明される前に、
それを予め「フィクション世界」だと割り切って楽しむ、

この先読み能力を逆手にとったメタ的な笑いが本作でも観られました。

それもまた面白い所です。

 

  • 禅問答で省みる人生の意義

『くまのプーさん』の原作は児童小説です。

私は『くまのプーさん』自体は読んだ事ありませんが、
児童小説だからと言って、
それは完全に子供向けの作品では無い事は解ります。

 

子供が読んで、
「楽しい」と思う感性。

それは、
成長するにつれて徐々に失われて行くものです。

ですが、
そういう感性を捨てて大人になった今、
幸せですか?

お金を稼ぐ為だけに生きて、
楽しいですか?

何かする事って、
そんなに大事ですか?

 

大人になって、
成長して、
子供が出来て、

そういう今だからこそ、

かつて当たり前のように享受していた幸せな日々、
それを思い出してみるのも良いのではないでしょうか?

もしかしら、
そこに、今を幸せに生きるヒントが隠されているのかもしれません。

 

問わず語らず、
プーはそんな事を言っている様な気になってしまいます。

 

実際、
クリストファー・ロビンの思考は、完全にブラック企業に勤める従業員のそれ

上司が丸投げした仕事を、
「俺がやらねば誰がやる」と言わんばかりに責任感を持ってこなそうとしています。

しかし、
そんな切羽詰まったクリストファー・ロビンを、
プーやかつての仲間達は怪物だと勘違いし、

そして、
怪物に食べられちゃうと心配します。

 

本人は必死に仕事をしている状態でも、

それは端から見たら、異常な状況であり、
そして、最終的には怪物に飲み込まれる=壊れると言っているのですね。

 

そういう視点で観ると、
禅問答を仕掛けるプーのみならず、

他のキャラ達も
一見、子供っぽい直接な言いぐさなれど、侮れない事を言っています。

皮肉に満ちて、
直接的なツッコミを続けるイーヨーの可笑しさ。

お調子者で、自信過剰ですが、
そういう意識こそ人生を楽しくするのだと思わせるティガー。

自分の事を臆病だと告白し、冒険に二の足を踏むピグレットですが、
「自分が臆病」と自覚しているだけでも勇気があるのだという気がします。

 

幼い子供と接した時、

子供が持つ真っ直ぐな感性に触れて、

如何に自分が曲がりくねっているかを気付かされて、
ハッとする事があります

本作でのぬいぐるみの言葉は、
まさに、そんなアハ体験の宝庫。

子供はぬいぐるみの可笑しな言動で笑えますが、

その親はむしろ、
そんなぬいぐるみの言動に、いちいち身につまされるのですよね。

それを意識して二重性を持たせているのが、
本作の面白さであるのです。

 

  • 出演者補足

クリストファー・ロビンの妻、
イヴリンを演じたのは、ヘイリー・アトウェル

『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)にて、
第二次世界大戦時でのヒロインを演じていました。

ちょっと時代がかった服が似合うのでしょうか、
そういう役が多い印象ですね。

 

娘のマデリンを演じたのはブロンテ・カーマイケル

追想』(2017)や
ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017)にチョイ役で出演しています。

気の強そうな所が可愛らしいですが、
今後、活躍して行く子役となるのか?
期待して見守りましょう。

 

 

 

児童向けの作品を原作にしながら、

クリストファー・ロビンを大人に設定する事で、

かつて子供だった人間をメインターゲットに据えた作品、
『プーと大人になった僕』。

 

大人になる事って何だろう?

それは、子供時代を脱する事と同義ですが、しかし、

子供時代の良き心までも、
その時捨て去ってしまう事でもあるのかもしれません。

 

本作では、
その捨て去ったもの(プー達)と再び出会う事が、

自らの過去、
そして、妻や娘との絆を再発見する事になります。

 

本当に幸せっていうのは、

「何にもしない」
つまり、
今ある幸せを享受する事

そういう気付きを教えてくれる、
『プーと大人になった僕』はそういう作品なのだと思います。

 

 

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