映画『RRR』感想  友情こそ至宝!!筋肉こそ全てを解決するのだ!!

1920年、インド。植民地支配を横行するイギリス人に対し、民衆の怒りは沸点を迎えつつあった。
英国領インド帝国総督のスコット・パクストンは、その妻キャサリンの要望で、純朴なゴーンド族の少女マッリをコイン二枚で買い上げる。しかし、温厚なゴーンド族の中にあって、牙たるリーダー、コムラム・ビームはマッリ奪還を誓っていた。
一方、インド人でありながら英国支配を助ける警察官のA・ラーマ・ラージュは、昇進の為に同胞の逮捕も厭わない人物で、、、

 

 

 

 

 

 

監督は、S.S.ラージャマウリ
インドのテルグ語映画の監督。
『バーフバリ 伝説誕生』(2015)に続く
バーフバリ 王の凱旋』(2017)が日本でも大ヒットした。
他の主な監督作に
『チャトラパティ』(2005)
『マガディーラ 勇者誕生』(2009)
『マッキー』(2012)等がある。

 

出演は、
コムラム・ビーム:NTR Jr.
A・ラーマ・ラージュ:ラーム・チャラン
シータ:ラーリヤー・バット
ヴェンカタ・ラーマ・ラージュ:アジャイ・デーヴガン

スコット・パクストン:レイ・スティーヴンソン
キャサリン・パクストン:アリソン・ドゥーディ 他

 

 

 

日本でも大ヒットした『バーフバリ 王の凱旋』。
荒唐無稽、破天荒、自由奔放、そして、
大団円に拍手喝采。

これぞ、物語の面白さ!が詰まっている、と言える作品でした。

 

その「バーフバリ」シリーズを製作した
S.S.ラージャマウリ監督の最新作が本作『RRR』です。

 

まぁ、先ず、
インドの大作映画のお約束と言いますか、

友情、恋愛、ギャグ、親子関係、
アクションと復讐、因果応報
歌と踊りと大活劇

 

 

映画の面白さ満漢全席というのは、
本作にも盛り込まれています。

当たり前の様に享受していますが、
数年毎に、このクオリティの作品を提供してくれるインド映画のパワフルさは、
他に例を見ません。

 

何と言いますか、

日本や、ハリウッド映画には無い、

ハッタリのスケールのデカさを、
勢いでねじ込んで来る感じ、

 

 

コレが面白いンですよね。

 

少女の奪還を至上命題とし、
スコットを付け狙うビーム。

英国の犬として、
警察官の職務に邁進するラーマ。

この二人が、ひょんな事から知り合い、
互いに、その素性を話さず、
しかし、
馬の合う二人は、
無二の親友となるのだが、、、

 

このストーリー展開も、
ベタと言えばベタですが、

王道であるが故の、
頑強な面白さに貫かれています。

 

で、本作にはCGの動物とかも出て来るんですが、
こちらのクオリティも高いです。

イドリス・エルバが主演した『ビースト』(2022)という映画があり、
こちらに出て来るライオンが、
本物にしか見えないCGだったのですが、

それに引けを取らず、
本作に出て来る虎やヒョウも、本物と見紛う程です。

流石、
インド映画史上、最高の製作費がかかったというだけあります。

 

また、昨今のインド映画は、
歌とダンス離れが叫ばれて久しく、

本作も、一昔前みたいに、
ガッツリダンスシーンがある訳ではありませんが、

『RRR』の見せ場とも言えるシーンの一つに、
「Naatu Naath」(ナートゥダンス)があり、

それが最高に盛り上がります。

インド映画のダンスシーンが好きという方も、
必ずや、満足の行く出来です。

 

インド映画の大作が観たいな~
と、いう方の期待に確実に応えてくれる作品、
『RRR』は、

しかし、
今までインド映画を観た事の無い方でも、
必ずや虜になる面白さに満ちた作品と言えるでしょう。

 

 

  • 『RRR』のポイント

熱き漢の友情!!

満漢全席の面白さに酔い痴れる!!

本懐と、目的の為に手段を選ばぬ本末転倒と

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

 

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  • 題名の由来

本作『RRR』、
その読み方は「アールアールアール」。

本篇の冒頭にて、
「The Story」
「The Fire」
「The Water」と、
それぞれの「R」が特徴付けられていました。

また、
英題では、
「Rise」(蜂起)
「Roar」(咆吼)
「Revolt」(叛乱)の頭文字からとられており、

テルグ語などでは、
「怒り」
「戦争」
「血」を意味する単語が、
それぞれ「R」を含んでいるそうです。

 

しかし、
実際の所は、
監督のS.S.ラージャマウリ(Rajamoulei)
ダブル主演の二人
ラーム・チャラン(Ram Charan)と
NTR Jr.の名前の「R」から取って

「トリプルアール」と呼ばれてスタートした企画が、
そのまま、題名として採用され、
読み方だけ、
「アールアールアール」に変更されたというのが本当の所だそうです。

 

何だか、
題名に深そうな意味があって、別にそんな事無いというのが、
夏目漱石の『彼岸過迄』みたいなノリで、
趣がありますね

 

  • 圧巻のダンスシーン「Naatu Naatu」

本作『RRR』は見処の多い映画ですが、
恐らく、鑑賞した皆の意見が一致する所として、
最も盛り上がったシーンとして上げられるのは、

中盤のダンスシーン「Naatu Natatu」の場面ではないでしょうか。

 

個人的に、
映画のダンスシーンで最も凄いのは、
マイケル・ジャクソンの『ムーンウォーカー』(1988)の、
「Smooth Criminal」の群舞のシーンが至高だと思っているのですが、

それに比肩する位、
「Naatu Naatu」ダンスのシーンは素晴らしいです。

 

そのシーンは、YouTubeにて丸ごと観る事が出来ます

 

 

まぁ、本当ならば、映画の流れの中で観て欲しいシーンではあります。

まぁ、私なんかは、
鑑賞済みなのですが、

毎日、この「ナートゥダンス」を観て、テンションを上げています。

 

個人的には、
特に、2:30~からのシーン、

まるで、
ナイフで喧嘩していた相手と急に一緒に踊り出す、
マイケル・ジャクソンの『Beat IT』の様に、

或いは、
踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら、踊りゃな損損」と言わんばかりに、

結局、
みんなで踊り出すのが凄く、好き!!

 

来日したNTR Jr.に
「ナートゥダンスの音楽を聴くだけで、足が痛くなる」と言わしめたこのシーンは、

練習に6日間、
一日12時間の撮影を、
14日間続けたそうです。

4分30秒ほどのシーンに、
これだけの情熱。

こりゃ、凄いコトになる訳だ。

 

また、この撮影は、
2021年に、ウクライナの首都、キーウで行われたそうで、

敵対した者同士が、
ダンスで何となく分かり合う(?)このシーンを思うと、
何とも言えない気持ちになりますね。

 

因みに、エンディングのダンスシーンも、
大団円で感無量ですが、
その中に、一人、
知らない髭のオジサンが混じって居るんですよね。

「え?君、誰?」
と、
終始、自分の記憶を確認しながら観ていたのですが、

実は、その知らない人、
本作の監督のR.R.ラージャマウリだそうです。

 

  • 二人の主人公とインドの二大叙事詩

本作の監督、R.R.ラージャマウリの前作、
「バーフバリ」シリーズでは、
『マハーバーラタ』がその底本とされていました。

そして本作は、
同じく、インドの叙事詩の
『ラーマーヤナ』が底本にあります。

 

本作の主人公の二人、
A・ラーマ・ラージュとコムラム・ビームは、
共に、インドの独立運動の英雄として知られる人物ですが、

実際には、遭遇する事がなかった二人だそうです。

その二人を、
ある種の「偽史」的に、
バディムービーとして出会わせるのが
フィクションの面白い所です。

 

さて、
その内の一人、
A・ラーマ・ラージュは、
その名前から連想される通り、
『ラーマーヤナ』の主人公、
ラーマの性質を受け継いでいます。

『ラーマーヤナ』のラーマの妻の名前はシータで、
本作のラーマの幼馴染みの婚約者シータと、
名前が共通していますね。

又、
ラーマがお参りする青い肌の像、
ビームが、弓矢を見つける像、
それが、『ラーマーヤナ』のラーマ像でもあります。

 

一方、
コムラム・ビームの方も、
『マハーバーラタ』の登場人物のビーマをイメージしているとされ、
本作は、
インドの二大叙事詩を下敷きになっている事が解ります。

 

  • 真に大切なものとは

その主人公の一人、
A・ラーマ・ラージュは、
英国の犬として、警察官の職務を全うしています。

しかしそれは、
ある種のペルソナであり、

本当の腹案は、
英国に信頼され、
その英国軍から武器弾薬をゴッソリ奪おうという目的の為の
手段であったのです。

 

父が反英国独立運動の指導者であり、
その遺志を継いで、
「村の皆に銃を持たせる」事を至上命題としているラーマ。

その最終目標の為に、
ラーマは親友のアクタル(本名はビーム)を英国に売ります。

しかし、
囚われのビームが拷問にも屈せず、
その不屈の闘志と情感揺さぶる歌声を耳にし、

そして、
それに感情を揺さぶられた民衆の怒りの爆発を目にした時、

ラーマの考えは変わります。

 

目的の為に手段を選ばぬ事、
即ち、
親友を「売った」事は正しかったのか?

父の遺志として、
民衆に武器を届けようとしていたが、

ビームの様な人物こそが、
民衆の武器、たり得る存在なのではないだろうか?

いつしか、自分は、
手段が目的化してしまっているのではないのか?

そう自問自答し、

窮極的には、
彼は、親友のビームを逃がし、
自らは目的寸前で、
英国に囚われる事になります。

 

その虜囚となったラーマは、
処刑間近に迫りつつも、懸垂で自身を鍛えており、
牢に訪れた、首を狙うスコット・デリクソンに言います。

「どの様な結果になろうとも、そこは重視しない」
「目的を達成する為の努力こそに、価値がある」と、
この様な趣旨の事を述べるのです。

 

よく、言われる事があります。

過程を重視するのか、
結果が全てなのか。

ラーマが辿り着いた答えは、

結果へ向かう為に、
手段を選ばないという行動は、本末転倒。

結果がどうあろうと、
目的へと向かう努力と決意こそが、
その本懐なのだ、と。

 

本作においては、
「結果が全て」として行動していたラーマが、
「過程が大事」と改心して、

窮極的には、
正しき道を進む事になり、
本懐を遂げるという結果に至ります。

 

「結果が全て」として、
安易な方法を取れば、
簡単な勝利を得る事が出来ます。

一方、
「過程が大事」として、
困難な道を進めば、
より、成果が出にくいです。

しかし、
最終的には、
理想の勝利を得るのは、
過程を重視した方なのではないでしょうか

 

勧善懲悪を地で行く物語であるが故に、
この正論パンチには、
グゥの音も出ず、

そして、
やっぱり、
その潔さに、憧れるのです。

 

 

バトルと友情と、
ギャグと恋愛と、
親子関係と因縁と、復讐と因果応報と、

これぞ、インド映画たる『RRR』。

筋肉で全てを解決する本作は、
期待通りの期待以上と言えます。

 

 

 

 

 

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