映画『シャザム!』感想  キッズの願望充足ヒーロー爆誕!!


 

孤児のビリーは、里親に預けられれば、即脱走を繰り返す問題児。何故なら彼は、未だ、何処かに居る母親を捜しているからだ。今回預けられた里親は、孤児を他にも5人預っているバスケス夫婦。成り行きで、同室のフレディをいじめっ子から助けたビリーは、逃げ込んだ地下鉄が、いつの間にか見知らぬ風景に変わっている事に気付く、、、

 

 

 

 

監督は、デヴィッド・F・サンドバーグ
スウェーデン出身。
監督作に
『ライト/オフ』(2016)
『アナベル 死霊人形の誕生』(2017)がある。

 

出演は
ビリー・バッドソン:アッシャー・エンジェル
シャザム:ザッカリー・リーヴァイ
フレディ:ジャック・ディラン・グレイザー
メアリー:グレイス・フルトン

魔術師:ジャイモン・フンスー

ドクター・シヴァナ:マーク・ストロング 他

 

 

 

今年も「劇場版名探偵コナン」である『名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)』が公開され、
アニメ映画随一の人気を誇っております。

しかし、
今年は、新海誠の新作『天気の子』が公開されるので、
アニメ興行収入ナンバーワンの座を懸けて、
熾烈な争いが繰り広げられそうです。

 

さて、翻って『シャザム!』ですが、
本作のキャッチコピーが奮っています。

見た目は大人、
中身はコドモ!?

 

この時点で、
もう既に面白い!

コナン君の逆じゃねぇか!
と誰もが突っ込んだ事でしょう。

 

まぁ、現実では、
大人どころか、
中身がコドモの老人も多くて困りものですが、、、

少年が変身した「シャザム」バージョンの時、
筋肉ムキムキの、アメコミ特有のぴちぴちスーツという見た目がまた、
面白いですね。

 

何となく、
映画という事で、
普通に大人も観られる作品であるのは間違い無いのですが、

元々は、アメコミ由来。

子供が観て楽しいのが、本来の目的というか、意義。

その点本作は、

子供の願望充足の様なストーリーとなっております。

筋肉ムキムキで、
電撃をバリバリ発射する、
無敵のスーパーヒーローに変身!

 

正に、
小学生レベルの妄想を具現化したと言えるでしょう。

 

しかし、
これがまた面白い。

頭カラッポの方が、夢詰め込める!

ギャグを混ぜつつ、クスリと笑わせ、
ストーリーも、ちょっと考えさせる所があります。

 

気軽に観る事が出来て、
そして、
楽しい一時を過ごせる。

これぞ、本来の映画におけるエンタテインメント。

プリミティブな願望が詰まった作品、
それが『シャザム!』と言えます。

 

 

  • 『シャザム!』のポイント

ニンニクモリモリ筋肉マン!

欲しいものを手に入れるという事

力を持った者が取るべき行為とは

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 欲しいものを手に入れるという事

本作『シャザム!』は、
「少年がスーパーヒーローに変身する」という、

正に、
少年がストレートに妄想する、
王道の少年漫画的な内容となっております。

 

純粋な少年が、選ばれてスーパーパワーを持ち、
最初は浮かれイキってしまうが、
家族との関わりの中で、
正しい道に進む。

敵は、
自分と正反対な、
自分勝手な邪悪な能力者。

しかし、
正義のビリーと、
悪のシヴァナには共通点ある事が、
本作の面白い所です。

 

それは、
「人生において、手に入れたいと欲するものがある」
と、いう事です。

ビリーは、
生き別れた母親を欲し、
シヴァナは、
「シャザム」の力を欲しています。

求める物は違いますが、
この二つは同じもの。

二人は、
承認欲求を満たしたいのです。

 

ビリーは、
母親と再会すれば、
自分は捨てられたのでは無いと、
喪失感を埋め合わせられると、
そう考えて生きてきました。

シヴァナは、
事故は彼の所為だと詰る父、兄の影響なのか、
「チャンピオン(=シャザム)」に選ばれなかったという、
自分の「無能」さを払拭したいと考えていました。

二人は、
他人に認められるというより、
自分自身が納得したかったのです。

 

しかし、
本作でも描かれている通り、
自己実現の為の承認欲求というものは、
案外、
達成しても、喜びはありません

 

ビリーは、
自己実現が転じて、
シャザムのパワーを見せびらかす、
即物的な大道芸にて、
人の注目を集めて浮かれていました。

シヴァナは、
魔術師から否定された、過去の自分が許せなくて、
逆に、
魔術師が否定する、「七つの大罪」の力を手にしてしまいます。

 

自己実現の欲求が転じて、
二人の行動は歪んでしまっています。

しかし、
ビリーはシヴァナに先駆けて、
自分の欲求を満たします。

それは、
母親と再会するという事。

その場でビリーは、
控え目ながら、明らかな拒絶を、母親から受けます。

望んでいたハズの状況が、
自分の思い通りの幸せでは無かったのです。

 

しかし、
ビリーは知ります。

その母親と再会出来たのは、
同じ里親の家族の、控え目な助力があったからこそだという事に。

心情的に遠くにいる肉親より、
近くに、より自分を愛してくれる家族が居たのです。

ビリーは、
実は、自分の望む幸せというものは、
直ぐ側にあった事に気付きます。

それが、幸せだと気付いたなら、
ビリーは、それに手を伸ばせば良いだけの事だったのです。

だから、
ビリーはクライマックスにて、
家族に自分の力を分け与えるという選択を採れたのですね。

 

自分が、母親に会って、
それが満たされない欲求だと知っていたからこそ、

シヴァナの、自己実現の為の力の欲求が、
虚しい結果に終わるというのは、
ビリーには分かっていたのです。

人は、
長く生きているから、経験があるからといっても、
必ずしも、
幼い少年よりも自分が上だとは限らないのですね。

客観的に見れば、
利用されていると明らかに分かる事でも、
主観的には、自分を見失う。

ビリーとシヴァナの二人の行動とその結果にて、
そういう教訓を、本作から観て取る事が出来ます。

 

  • 映画の小ネタ

本作『シャザム!』の舞台は、フィラデルフィア。

という事で、
同じフィラデルフィアが舞台の映画、
「ロッキー」シリーズのネタが数多くあります。

 

ロッキーがジョギングのゴールとして、
階段を駆け上がるシーンで有名なフィラデルフィア美術館が出て来たり、

そのフィラデルフィア美術館の前で、
『ロッキー3』(1982)のテーマソング
「アイ・オブ・ザ・タイガー」の替え歌を披露したりしています。

 

思えば「ロッキー」も、
家族や愛する人関わりによって、自分の居場所を確立する物語。

その意味では、
『シャザム!』のテーマと共通するものがあります。

 

もう一つ、
本作のテーマと共通するネタとして挿入さてている作品として、
『ビッグ』(1988)があります。

 

本作、
ドクター・シヴァナとの初戦闘の場面にて、
ショッピングモールのオモチャ売り場で、
鍵盤の床を踏みならすシーンがありました。

トム・ハンクス主演の『ビッグ』でも、
これと同じ様なシーンがありました。

『ビッグ』には、
ひょんな事から、少年から大人になった主人公のジョッシュが、
鍵盤の床をリズミカルに、楽しげに踏み鳴らすシーンがありました。

『ビッグ』のジョッシュも、
見た目はトム・ハンクス、中身は少年という、
『シャザム!』と同じ状況。

「少年の感性で仕事をする」という描写が、
「中身は少年だが、筋肉モリモリ」という『シャザム!』の持つ、
「違和感故の面白さ」に繋がるものがあります。

明らかに、
意識して、鍵盤の床のシーンは入れられているのですね。

 

  • シャザムとキャプテン・マーベル

本作は更に、
他のアメコミのネタも多く観られます。

コラボこそしませんが、
本作は、「DCエクステンデッド・ユニバース」の作品に属しています。

なので、
スーパーマンや、バットマン、ワンダーウーマンが実際に居る世界なのです。

 

なので、
作中で出て来る、
まことしやかな「スーパーマンを撃った銃弾」なんかが流通しているのですね。

 

また、エンドクレジットの後のオマケシーンは、
明らかに『アクアマン』を意識しています。

お魚と話せる能力も、
シャザム(ビリー)とフレディの二人は一応試したのですね。

 

また、
二人が作中でするゲームが「モータルコンバット」なのにも注目です。

「モータルコンバット」という対戦格闘ゲームを開発した会社
「NetherRealm Studios(ネザーレルム・スタジオズ)」は、
DCヒーローが出演する対戦格闘ゲーム、
『injustice: Gods Among Us』(インジャスティス:神々の激突)という作品を作っています。

こういう繋がりで、
二人は「モータルコンバット」をプレイしていたのでしょう。

因みに本日(2019年4月23日)は、
海外で、モータルコンバットの新作『Mortal Kombat 11』の発売日です。

 

また、
原作の「シャザム」は、
元々は「キャプテン・マーベル」という名前のスーパーヒーローだったそうです。

Wikipediaの記述によると、
「キャプテン・マーベル」は「スーパーマン」の盗作であると訴えられ、売り上げが激減、
廃刊した後に、DCコミックに版権を買われますが、

その時、
マーベルコミックの商標登録の影響で、「マーベル」という言葉が使えなくなり、
故に、
「シャザム」へと改名したという経緯があるそうです。

そういう意味では、シャザムは、
DCコミックの「スーパーマン」と、
マーベルコミックの「キャプテン・マーベル」と、
ガチの盤外戦を繰り広げたと言えるのかもしれませんね。

 

 

 

子供の妄想を具現化した作品、『シャザム!』。

王道のストレートな面白さに、
ストーリーにはテーマ性も持ち、

それに、
映画ネタとアメコミネタを加えた楽しい作品。

気軽に楽しめて、
面白い、

こういう作品はもっとあってもいいと思いますね。

 

 

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