映画『シン・ウルトラマン』感想  特撮とアクション、そしてキャラクターで魅せる完成度の高さ!!

日本に次々と現われる巨大不明生物。政府はそれを「禍威獣(カイジュウ)」と名付け、防災庁を設立。専従班として「禍威獣特設対策室」(通称・禍特対(カトクタイ))を設けた。
そして、禍威獣第7号・ネロンガ出現。電気を食い、透明化する能力に苦戦する禍特対の面々。その時、謎の飛翔体が降着。それは銀色の巨人だった、、、

 

 

 

 

 

 

監督は樋口真嗣
特技監督として平成ガメラシリーズに参加。
シン・ゴジラ』(2016)では総監督の庵野秀明と共に、監督として携わる。
監督作として、
『ローレライ』(2005)
『日本沈没』(2006)
『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』(2008)
『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(2015)
『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』(2015)等がある。

 

出演は、
「禍威獣特設対策室」
神永新二(作戦立案担当官)/ウルトラマン:斎藤工
浅見弘子(分析官):長澤まさみ
滝明弘(非粒子物理学者):有岡大貴
船縁由美(汎用生物学者):早見あかり
田村君男(班長):西島秀俊
宗像龍彦(室長):田中哲司

小室肇(防災大臣):岩松了
大隈泰司(内閣総理大臣):嶋田久作

メフィラス:山本耕史 他

 

 

 

樋口真嗣という監督は、
特異な存在である。

特技監督として携わった、
平成ガメラシリーズ
『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995)
『ガメラ2 レギオン襲来』(1996)
『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』(1999)や、

総監督・庵野秀明を補佐した、
『シン・ゴジラ』(2016)は高い評価を受け、

「実質、樋口真嗣の映画」と呼ばれてすらいました。

 

しかし、
樋口真嗣自身が、実際に監督をした作品、

『ローレライ』(2005)
『日本沈没』(2006)
『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』(2008)
『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(2015)
『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』(2015)は、

揃いも揃って、酷評の嵐

結局、
「監督の補佐」と「監督」では、
雲泥の違いがあるのだと思い知らされました。

 

それでも、映画界で仕事が無くならず、
何度もチャンスが巡って来るのは、

樋口真嗣監督自身の人柄だと思われます。

作品の評価はともかく、
毎回、スタッフは、
樋口真嗣監督を褒めており

人当たりが良いのか、
情熱があるのか、
一緒に仕事をしていて、やりやすいタイプなのだろうと推測します。

 

そして、今回、
『シン・ウルトラマン』の監督として、
樋口真嗣は何度でも蘇る。

 

映画の面白さは、
その大部分が、監督が占めていると言っても過言ではありません。

故に、
監督・樋口真嗣と言われれば、
それは、地雷として、本来は回避すべき案件であります。

 

それでも、
敢えて踏み抜きに行くのは、
「エヴァンゲリオン」の監督の庵野秀明が企画・脚本で関わっており、
大傑作だった『シン・ゴジラ』のスタッフが多く携わっているからです。

 

庵野秀明も、アニメーションでは高い評価を得ながらも、
『ラブ&ポップ』(1998)
『式日』(2000)
『キューティーハニー』(2004)などの実写作品では見向きもされず、

しかし、
『シン・ゴジラ』にて、その評価が一変していました。

 

果たして、樋口真嗣はどうか?

 

法と正義の女神の持つ天秤は、
どちらに傾くのか?

傑作か?
駄作か?

満を持して、観に行った訳ですよ。

 

 

そしたらねぇ…

 

 

お!?結構、オモロイやん、コレ!!
(でも、既視感アリ)

 

という感想を受けました。

 

さて、
私は、日本に長らく住んでおりながら、

「ウルトラマン」のシリーズを、
ちゃんと通して観た事は、一度もありません。

何となく、
知識として、
「バルタン星人はセミみたいな見た目」とか
「ゼットンがラスボス」位が分かる程度です。

そんな私が観ても、
本作は面白かった。

 

先ず、テンポが良いです。

 

映画は、
冒頭の展開が命。

そこで、観客の心を、如何にガッチリ掴むかで、
ノリが違ってきます。

その点本作は、
序盤から怒濤の展開

寧ろ、
展開が早すぎて、
付いて行くのがやっとの状態。

イキナリ、
禍威獣が現われ、
更に、出し惜しみ無しに、ウルトラマンも登場する。

 

そうそう、
コレだよ。
こういうのが良いんだよ。

 

私は、ちゃんとTVシリーズを観ていないので、
何とも言えませんが、

どうやら、
本作の展開は、
元ネタのシリーズの名場面を上手く繋ぎ合わせている形、

つまり、

ウルトラマン初体験の人は、
豪華に楽しめ、

TVシリーズファンの人は、
懐かしさと新しさに興奮する、

 

そういう作りになっている様ですね。

 

私の観た感じの印象は、

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』+
『シン・ゴジラ』みたいな感じ。

 

これで、面白く無いハズが無いですよね。

 

…しかし、
だからこそ、故に、

な~んか、観た事ある展開だよなぁ

という印象も、
同時に受けるという事も、
なきにしもあらずというか。

 

面白い!
面白いけれど、
おんなじじゃん!!

と思ってしまいます。

 

とは言え、
特撮とか、
アクションとか、
人間関係のドラマとか、
キャラクター性とか、

諸々、
完成度が高い作品なので、

元ネタが好きな人は勿論、
SF系や、
アクション映画が好きな人には、
安心してオススメする事が出来る作品、

それが
『シン・ウルトラマン』と言えるのです。

 

 

  • 『シン・ウルトラマン』のポイント

テンポの良い怒濤の展開!

キャラクターの面白さ

郷に入っては郷に従え

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

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  • 登場「禍威獣」の拘り

本作『シン・ウルトラマン』は、
いわゆる、「怪獣映画」です。

いままで、
SF系の映画作品を多く手掛けながらも、
何とも、評価を得る事が出来なかった樋口真嗣監督ですが、

特技監督としては高い評価を得てきた身としては、
本領発揮出来るジャンルだと言えるのではないでしょうか。

 

特に、
禍威獣の質感。

CGでありながら、
着ぐるみ感をも持たせる事で、

絶妙な塩梅の仕上がりというか、
邦画のレベルでは最高級の、
違和感の無い仕上がりになっていたのには、感動しました。

 

また、
登場「禍威獣」にも、拘りが見られます。

冒頭で、駆け足で解説される、
日本と禍威獣との対決エピソード。

ゴメス
マンモスフラワー
ペギラ
飛翔禍威獣ラルゲユウス
溶解禍威獣カイゲル
放射性物質禍威獣パゴス は、

元々は、『ウルトラマン』の前身のTVシリーズ、
『ウルトラQ』に登場する怪獣。

本篇が始まり、
ウルトラマンが実際に戦う事になる禍威獣、
「ネロンガ」と「ガボラ」が、
TVシリーズの『ウルトラマン』の第3話と第9話に、
それぞれ登場する怪獣という事です。

 

冒頭、ゴメスが登場した時、
「すわ!?ゴジラか!?」
と、一瞬思いましたが、

元ネタのゴメスは、
元々、ゴジラの着ぐるみをレンタルして改造して作った怪獣。

その意味で、
ゴジラ的な見た目をしているのです。

 

また、本篇で
禍特対の汎用生物学者・船縁由美が、
「パゴスとネロンガ、ガボラには共通点がある」
「アタッチメントの様に、首だけすげ替えている様だ」
という感じの台詞がありました。

これは、
実際、元ネタの『ウルトラQ』『ウルトラマン』では、
使った着ぐるみを、
予算の都合上で、使い回しにしているというエピソードを再現し(?)

本作でも、
CG予算の削減の為、
「使い回し」の再現をしているとの事です。

 

ウルトラマンのスペシウム光線も、

元々のTVシリーズは手書きだったそうですが、
本作では、手書きをCGに取り込んで再現しているとの事。

 

『シン・ウルトラマン』では、
そういう、
マニアじゃないと、聞かなきゃ分からない拘りが多数詰め込まれており、

そういう、細部に宿った心遣いこそが、
作品への愛であり、
完成度を高めている要因なのだと思われます。

 

  • キャラクターの面白さ

本作『シン・ウルトラマン』は、
TVシリーズのアレンジ版ダイジェスト総集篇的な展開であり
そこは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(2009)を、

日本政府、日本社会の批判というか、風刺的な描き方は、
『シン・ゴジラ』(2016)を踏襲しており、

過去の成功例をそのまま持って来たのは、
面白さが保証されている反面、
「観た事がある」という既視感が催されます。

 

しかしながら、
本作には、『シン・ゴジラ』より特化している部分があって、

それは、
登場人物のキャラクター性の描き方だと思います。

 

『シン・ゴジラ』は、
先に、ストーリーというか、ゴジラありきで、

ゴジラの驚異にどう対処するのか?

その「仕事」を請け負う各人の奮闘を描き、
個人というよりも、群像劇であるので、
チームとしての連帯にフォーカスされていました。

 

一方『シン・ウルトラマン』は、
驚異の最前線に立つのは禍特対の面々であり、

メインの登場人物が絞られている分、
より、登場人物の個性を描く事が出来ていると言えます。

 

偉ぶらず、
どんと構えた調整役、
地球の危機より、
ウルトラマンである神永の命の心配をした、
チームの頼れるリーダー田村君男。

職場に「サンダーバードのグッズ」などの、私物を持ち込む、
オタク気質の非粒子物理学者の滝明弘。

机の上には何も無い、
神永新二のバディである浅見弘子。

一方、神永新二の机には、
消波ブロックが置かれており、
これは、彼が、
禍威獣という「波」から
人類を守る「防波堤」である事を示唆しています。

 

また、
ウルトラマンと融合した直後の神永新二の机の上には、
本が山と積まれていました。

ウルトラマン(本名:リピア)は、
書籍から知識を得るタイプだった様で、

それが、彼の人類に対する理解の根源となっています。

 

漫画の『寄生獣』でも、

書籍で知識を得た寄生生物「ミギー」と、
TVで知識を得た寄生生物「ジョー」では、
そのキャラクターが違っていた様に、

理想が描かれがちな書籍で得た知識を、
実際の人間関係にて擦り寄せた結果が、

神永新二の行動として反映されているのだと思われます。

 

作中、
コーヒーを手にデスクに戻った神永は、
浅見に言われます。

「自分の分だけじゃなくて、何も言わずに私の分も持って来たらスマートよ」と。

実際に、後半、
班長の田村はそういう行動をしており、

また、
クライマックスにおいては、
コーヒーではありませんが、
打倒ゼットンのヒントを、
何も言わずに滝のデスクにおいていたのは、

浅見から言われた「嫌味」があってこその
行動なのではないでしょうか。

 

この浅見弘子ですが、

初対面でも物怖じせずに接してくれて、
元気で明るく、
ズバズバものを言う性格。

キャラクター的には、
正に、オタク男子が好きそうな、理想像と思うのですが、どうでしょうか。

物語の後半、
神永と浅見のキスシーンがあったけれど、
編集でカットしたという話を聞きましたが

もし、それが本当だとしたら、
カットして大正解だと思います。

 

また、キャラクター性で言うなら、

同じ「宇宙人」でありながら、
メフィラスと神永で、
そのスタンスが違う所も、
面白いです。

 

  • 郷に入っては郷に従え

メフィラスは、
長らく日本に潜伏していた様で、

と、言うより、
元々、今回の「禍威獣騒動」を引き起こしたその張本人こそが、
メフィラスであると描かれています。

禍威獣が日本にしか現われないのは、
メフィラスの潜伏先が日本であり、
その現地に元々「埋もれていた」
原生生物制圧兵器(=禍威獣)を利用したに過ぎない、

と彼自身が解説してくれます。

 

メフィラスの言説により、
元々、地球には、
人間が反映するより先に、

文明の発達した外星人が、
橋頭堡として、
「禍威獣」を仕込んでいた事が窺えます。

 

さて、

メフィラスは、
日本文化・社会の習慣に精通しており、
自分の好きな言葉、嫌いな言葉として、
ことわざや警句を連発し、

人類との初対面時には名刺を差し出し、

神永との対談では、
居酒屋で横隣に座って飲みニケーションするという適応ぶりを見せます。

 

しかしながら、
メフィラスの目的は、
あくまでも地球人類の支配であり、

その為に、禍威獣を繰り出し、

又、
ザラブの暗躍を看過し、

そして、
人類が外星人と融合可能で、
それ故、兵器として転用可能であると判明したなら、
速やかに計画を変更し、
人類を抹殺して更地の地球を手に入れるよりも、
人類の生産、管理を自分が手掛けた方が有意義だと言い出す始末。

 

メフィラスは、
「郷に入っては郷に従え」が好きな言葉であり、
自分もそれに従うと言っていますが、

それはあくまでも、
支配のやり方を、現地の状況に併せているという意味なのですね。

 

一方、
人間である神永と融合してウルトラマンは、

その神永の経験、
書籍として得た知識、
浅見を筆頭とした、禍特対の面々との交流、友情から、

外星人の理屈では無く、
現地に生きる人間としての選択を繰り返します。

「郷に入っては郷に従え」を、
体現して行くのです。

 

ウルトラマンは、
自己犠牲を伴う行動で、
地球を救う事を選択します。

さて、物語で描かれる「自己犠牲」は
第二次世界大戦における、「特攻」の様に、
手段を正当化する為の「美談」として扱われがちです。

 

しかし、
権力者の命令や、時の社会の同調圧力により、
従わざるを得なかった、
屈服という結果を転用した意味での「自己犠牲」では無く、

自らの選択で、
余人では成し遂げ難い道に進む、
本来の意味での「自己犠牲」を、
『シン・ウルトラマン』では描いているのではないでしょうか。

 

この、
「そこまでやる」という説得力が、
外星人でありながら、神永が物語の実質のリーダーであり、

本来は地球を滅ぼしに来たゾーフィの心をも変えた所以だと言えます。

 

本作においては、
キャラクター性を重視する事で、
異国の地で孤軍奮闘するウルトラマンのメンタリティを描く事に成功し、

結果、
浪花節というか、
物語の面白さに集約されたのだと言えるのです。

 

 

因みに、
メフィラスのデザインって、
原作とは全然違うもので、

寧ろ、
「エヴァンゲリオン」みたいな感じだったのが、
興味深い所ですね。

 

 

さて、
『シン・ウルトラマン』には、
「政府の男」役として、竹野内豊が登場します。

竹野内豊は、
『シン・ゴジラ』では、内閣総理大臣補佐官の「赤坂秀樹」役として登場していました。

また、
他の星の社会の事を、
本作では「ユニバース」と表現していました。

 

「マーベル・シネマティック・ユニバース」においては、
「ユニバース」は、
「多世界解釈」の意味で使われています。

もしかして、本作でも、
『シン・ゴジラ』
『シン・ウルトラマン』
『シン・仮面ライダー』という

「シン・~」シリーズがリンクするという未来が、あるのかもしれません。

 

更に、
企画としては、
3部作の構想も、あるとか、ないとか…

これからの展開にも期待が持てる作品です。

 

 

原作『ウルトラマン』を上手くアレンジし、
現代版に置き換え、
息も吐かせぬ名場面の怒濤の連続にて、
特撮の面白さを見せつける『シン・ウルトラマン』。

物語を、キャラクター性を「魅せる」事にフォーカスし、
ウルトラマン自身のメンタリティを描く事で、
ストーリー的にも、興味深い作品になったと言えるのではないでしょうか。

今後の展開にも期待しつつ、
樋口真嗣監督の逆転ヒットを祝いたいと思います。

 

 

 

原作の『ウルトラマン』は、コチラ

 

 

 

 

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