映画『”それ”がいる森』感想  全て想定内の展開という、想定外の内容に驚愕せよ!!

家族と離れて3年、故郷の福島にてオレンジ農家を営む田中淳一。彼の下に、母親と仲違いした息子の一也が突然訪ねて来た。
地元の小学校に転入した一也は、サッカーを通じて友人になったクラスメートと森の中で遊んでいる時に、奇妙な銀色の巨大物体を発見する、、、

 

 

 

監督は中田秀夫。
『リング』(1998)があまりにも有名な監督作品。
他の監督作に、
『リング2』(1999)
『ザ・リング2』(2005)
『スマホを落としただけなのに』(2018)
『貞子』(2019)
事故物件 恐い間取り』(2020)
『嘘喰い』(2022) 等がある。

 

出演は、
田中淳一:相葉雅紀
赤井一也:上原剣心
赤井爽子:江口のりこ
北見絵里:松本穂香 他

 

 

今年(2022)はホラー映画が豊作の年です。

人が堕落して行く様をご丁寧に描く、
人生転落映画『ナイトメア・アリー

密室サスペンスからの、
モンスターとの空中アクションが始まる『シャドウ・イン・クラウド

カンヌ国際映画祭でも絶賛された、
サスペンススリラーからの、肉体改変ホラー『TITANE/チタン

マーベル・シネマティック・ユニバースのカテゴリの中で、
ホラー風味の作品に仕上げた『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス

ジュブナイル・ホラーであり、
クライマックスでの回収が気持ち良すぎる『ブラック・フォン

正統派のスラッシャー映画、
からの熟年夫婦の愛の形を描く『X エックス

祈祷師のドキュメンタリーが一転、
怒濤の展開で絶望させ、観る者さえも「憑かれる」ホラー作品『女神の継承

使い古された「UFO」ネタを、
テーマ性、映像クオリティ、意外性で蘇らせた『NOPE/ノープ

幸せとは何かを考えさせる、
異形との生活を描く『LAMB/ラム

ベタな「幽霊屋敷」ネタを
水中でやるという設定の面白さ『ザ・ディープ・ハウス

本当に、面白い作品が目白押しとなっております。

 

さて、
そんな本年において、
かつて『リング』にて、
ホラー映画にて、日本のみならず、世界でもインパクトを残した
中田秀夫監督の最新作が、
『”それ”がいる森』です。

 

で、ちょっと話は変わりますが、
映画において、
「予告篇」はかなり重要な意味を持ちます。

劇場での映画上映前、
或いは、TVやYouTubeなどの広告にて放映される予告篇を観て、
「あ、次、これ観たいな」
「へー、ちょっと面白そうじゃない」
「アクション映画は外せない」とか、
又は、
「…コレはスルー確定」など、
作品に興味を持つ(切り捨てる)切っ掛けとなります。

 

で、
予告篇で感じた「面白さのメーター」が、
実際に観た作品の「面白さそのもの」と同期する事が殆どです。

その中でも、
予告篇の期待値を超える作品が、
名作となって行くのです。

 

さて、
本作においては、
予告篇を観た時の直感は「スルー」

しかし、
今年はホラー映画の当たり年であり、

又、
中田秀夫という監督が知名度を持っている事もあり、

一応、
鑑賞してみる事にしました。
観ないと、正当な評価が下せませんからね。

 

で、
実際に観た感想を率直に言いますと、

想定内の展開しか起きないという、
想定外の内容に逆に驚愕する作品です。

 

私も年を取り、
映画上映中に眠くなる事もしばしばですが、

本作においては、

「まさか、このままどうでもいい話が続くハズが無い」
という期待を裏切り、
終始、予想外の事が起きないという展開に、
逆に、眠気が吹っ飛びました

 

何と言うか、

私はかつて、
深夜映画が大好きでした。

それは
過去の名作映画や、
誰も知らない様なB級映画など、
様々な玉石混交の中に、
意外な傑作が紛れ込んでいたからです。

で、
その中にも、駄作がありますが、
そこは、深夜テンションで、
夢現(ゆめうつつ)状態ならば、それなりに楽しめるものです。

言ってみれば、
本作は深夜に夢現で観るべき作品のカテゴリに入ります。

 

ノリというか、
演出としては、

M・ナイト・シャマラン監督的。

「何か」起きそうで、
「何か」がいそうで、
それを、中々みせないという感じ。

で、
そのシャマラン・ムービー的な展開から、
意外性と独創性を抜き取ったのが、本作です。

まぁ、
シャマラン・ムービーのウリって、
意外性と独創性なんですがね。

 

本来、
本ブログでは、
映画作品を、兎に角褒めるのが方針。

しかし、
物価高で喘ぐ昨今、

貴重な時間と鑑賞料金を、
本作に使っていいかどうか、と言うと、

私は、
再考を求めます。

鑑賞後、「どうしてこの作品を観てしまったんだろう」と、
自問自答を余儀なくされるからです。

 

 

ホラー映画豊作の年に咲いた徒花、
『”それ”がいる森』。

これを観た自分の価値観の方がホラー的だと思わずにはいられません。

 

 

  • 『”それ”がいる森』のポイント

想定内の展開しか起きないという、想定外の内容

今更ネタ

何故、こうなったのかという事を考えるのも良いかもしれませんね

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

スポンサーリンク

 

  • 何故、つまらないのか

本作『”それ”がいる森』は、
まさかの「宇宙人」ネタ。
ジャンルとしては、SFホラーになるのかな?

まぁ、宇宙人ネタ自体、今更感がありますが、
ストーリー展開すらもベタで、
起きる事全てが想定内という映画となっております。

 

しかし、
今年公開されたホラー映画でも、

例えば
『NOPE/ノープ』も、
今更ながらの「UFO」ネタでしたし、

『X エックス』は、
よくあるスラッシャー映画ですし、

『ザ・ディープ・ハウス』も、
何度も、何度も、
映画では使い古された「幽霊屋敷」ネタです。

それでも、これらの映画は、
面白かった。

何故、
同じ使い古されたネタを使いながら、
面白さに、こうも差がついてしまったのでしょうか?

 

私が思うに、それは、

もう既に言ってますが、
1:展開が予想通りだった事、
2:この映画特有のテーマ性、独創性が無かった事、

そして、
3:古いネタを使うにしても、やり方が悪かった事

が上げられます。

 

説明しますと、

先ず、
この映画には、独自性というか、
作品で述べたいテーマがありません

 

『サイコ・ゴアマン』(2011)というB級SF映画があります。

『サイコ・ゴアマン』は、
復活した凶悪宇宙人を、
偶然手に入れたアイテムで思い通りに支配する少女が主人公。

舞台が殆ど変わらない、
予算の限られたB級映画なのですが、

登場人物のぶっ飛んだ性格にて、
忘れ難いインパクトのある作品となっております。

 

『ザ・ディープ・ハウス』は、
内容は、昔から使い古された「幽霊屋敷」ネタ。

しかし、その舞台を
「湖に水没した幽霊屋敷」とする事で、
独自のシチュエーションを演出し、
古いのに新しい作品となっております。

 

『NOPE/ノープ』は、
まさかの陳腐なUFOネタなのですが、

それを陳腐にさせない映像クオリティと、
意外な展開

また、
ジョーダン・ピールならではの意外性というか、
見るものと、見られるものとの関係というテーマ性を盛り込み

馬鹿馬鹿しいと思われるネタが、
終わってみたら、
真面目に楽しめるエンタメ映画へと変貌しております。

 

で、本作には、
テーマが何も無い。
本当に、無い。

いや、あるにはあるのですが、
(友達を失いたくない息子の主張)
それって、映画のメインテーマになっていません。

映画で一番大事なのは、
私は、何が語りたいのか、表現したいのかというテーマだと思います

ただ、
宇宙人が出て来るというだけの映画なのです。

 

で、
語りたい事、表現したい事が無いので、
必然、
その展開、内容も、
過去の映画作品等からの流用となっております。

宇宙人の造型も、
最も一般的なイメージである、
リトルグレイがベース。

森に陳腐な銀の塊があり、
それが宇宙船という、投げやり感。

信じてくれない大人達に邪険に扱われる
主人公一家。

昔、同じ事件に遭遇した人から貰うアドバイス。

宇宙人の弱点が、
ご都合主義的な、植物が感染したウィルス(?)的な何か。

で、何だか、めでたしめでたしのエンディング。

 

いや、
昔のネタを使うのは、
良いんですよ。

しかしね、
宇宙人の造型をリトルグレイにしたり、

その弱点がなんかウィルスとか、

何と言うか、
「その展開はもう、何度も観たよ」
「昔あったネタで、これは理不尽だったな」
という、
観客目線の低評価の地雷ポイントを、
確実に踏み抜いて行くというセンスが、

ある意味、
この作品の特徴となっているのです。

 

展開が予想通りだというだけでも、面白味がありませんが、

それに尚且つ、

パクった展開が、
よりにもよって
「面白く無いネタ」をパクってしまっているのです。

 

こんな事を指摘した私は、
大人げないのかもしれません。

しかし、
私は『”それ”がいる森』を観て、

想定外の事が全く起こらないという驚愕の展開に、
逆に、眠気が全く起きませんでした。

その位、つまらなかった。

恐らく本作は、
ターゲットとしている対象が違うのでしょう。

私の様な、
映画好き、ホラー好きでは無く、

主人公の息子の一也と同学年が下くらい、
小学校低学年の、映画を見慣れていない年代の層でしたら、
それなりに、楽しめただろうとは思います。

 

それでも、
予告篇を観て「つまらない」と思った作品を、
敢えて観に行くという行為は、
一定の意味があります。

先ず、
自分の感覚が間違っていなかったとの確認になる事。

そして、
他の良作と比較し、
如何に、
良作が工夫して作ってあるのかと、再確認出来る事などです。

 

故に、
『”それ”がいる森』の様な作品を鑑賞する事にも、
無駄にはならないのです。

 

まぁ、
人に鑑賞は勧めませんがね。

 

 

 

スポンサーリンク