映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』感想  新たなるヒーローを、人は待ち望む!!

夏休み!!学校の「科学史ツアー」に参加するスパイダーマンこと、ピーター・パーカー。友人のネッドと、気になる女の子「MJ」への告白大作戦を練る。そんな彼の元に、ハッピー・ホーガンが訪ねて来る。「ニック・フューリーの電話に出ろ」と。しかしピーターは着信を無視、荷物をまとめてヴェネツィアへと旅立ったのだが、、、

 

 

 

 

監督は、ジョン・ワッツ
前作『スパイダーマン:ホームカミング』に引き続き、
監督を務める。

 

出演は、
スパイダーマン/ピーター・パーカー:トム・ホランド
MJ:ゼンデイヤ
ネッド:ジェイコブ・バタロン
ベティ:アンガーリー・ライス
メイおばさん:マリサ・トメイ
ハロルド・”ハッピー”・ホーガン:ジョン・ファブロー

ミステリオ/クエンティン・ベック:ジェイク・ギレンホール
ニック・フューリー:サミュエル・L・ジャクソン
マリア・ヒル:コビー・スマルダーズ 他

 

 

 

マーベル・シネマティック・ユニバースのフェーズ3のラストの作品であり、
「インフィニティー・サーガ」の最後を飾る作品、

それが本作
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』です。

 

割と、重めのテーマが続いた、
「マーベル・シネマティック・ユニバース」、

そのクライマックスの作品、
アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』に続く作品にて、
どんなテーマを描くのか?

そこに、注目が集まります。

 

…なのですが、
特に、何か、重大なサプライズとかがある訳ではありません。

その辺は、あしからず。

 

しかし、
むしろ本作、

ギャグ大目の
王道のヒーローストーリー

 

となっております。

なので、
シリーズをずっと追っている人は勿論、

何となくスパイダーマンを知っている人でも、
ノリで楽しめる所があります。

いわゆる、
「能ある鷹が爪を隠している」状態の高校生が、
青春のドタバタ喜劇を演じているという、

等身大の面白さも、本作にはあるのです。

 

その一方、
勿論の所ですが、
ヒーロー映画、

とりわけ、
「スパイダーマン」シリーズで追求されて来たテーマは本作でも健在、

即ち、

ヒーローとは、
どうあるべきなのか?

 

この永遠たるテーマは、
本作でもちゃんと継承されています。

 

更には、
ド派手なアクション、CGも随所に登場。

舞台は、
ヴェネツィア、
プラハ、
ロンドンと、
ヨーロッパの観光スポットを巡りつつ、

アクションあり、
笑いあり、
青春あり、
中々考えさせられるテーマ性もあり、

本作には、

エンタテインメント映画の面白さが詰まっている

 

と言っても過言ではありません。

 

劇場における観客の入りから考えるに、

日本人って、スパイダーマン好きですよねぇ~

多分、
日本で、一番有名なアメコミキャラって、
今は、スパイダーマンだと思うのですが、
どうでしょうか?

 

「スパイダーマン」シリーズを何となく敬遠している人でも、
本作の面白さに触れて欲しい。

勿論、
ずっと「マーベル・シネマティック・ユニバース」を追っている人にも存分に楽しめる、

それが本作
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』です。

 

  • 『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のポイント

絶妙のブレンドの、ギャグとシリアス

世界はヒーローを求める

ヒーローの何たるかと、等身大の高校生

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 『オールウェイズ・ラブ・ユー』

本作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』、
その冒頭に流れる楽曲は、

I Will Always Love You」(オールウェイズ・ラブ・ユー)です。

 

「オールウェイズ・ラブ・ユー」と言えば、

ケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストンが出演した、
映画『ボディガード』(1992)の主題歌です。

映画自体のヒットもさることながら、
ホイットニー・ヒューストンが歌う主題歌は、

映画史上屈指のヒットを誇りました。

 

いわゆるラブソングなのですが、

別れてしまっても、
あなたを永遠に愛するといった意味合いがあり、

冒頭にて、
トニー・スターク(アイアンマン)と、
スティーブ・ロジャース(キャプテン・アメリカ)への弔辞として、
学園放送にて流れているという設定でした。

(実際は、スティーブは死んではいませんが)

 

この楽曲、
冒頭に持って来た事もあり、

本作のテーマを端的に物語っているものと言えます。

 

「別れた相手を、永遠に悼む」
という「オールウェイズ・ラブ・ユー」、

そして、
その「オールウェイズ・ラブ・ユー」を主題歌としたのは、
映画『ボディガード』。

つまり、
世界は、守護者たるヒーローを失い、喪失感を抱いている
という事を物語っているのですね。

本作では、
そこから派生して、
世界は、新しいヒーローを求めている
そこをテーマとして描かれるのです。

 

  • 強敵、ミステリオ

そこで、本作にて登場するヴィラン(悪者)は、
ミステリオ。

 

ミステリオは、
かつて、トニー・スタークによって馬鹿にされた科学者集団を、
クエンティン・ベックがまとめ上げた、
いわゆるチームのヒーローと言える存在です。

「マーベル・シネマティック・ユニバース」の中では、
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)の冒頭、トニー・スタークが講義をしている場面に登場した、

「BARF」
(Binarily Augmented Retro-Framing)
脳の記憶を司る「海馬」と繋がり、
人の思い出、体験を基に、
リアルな立体映像を再現するという技術、

それを製作したというのが、クエンティン・ベックの来歴です。

 

本作のミステリオという存在は、
そのBAFRを駆使し、

ドローンによってホログラム(立体映像)を投射する事で、

人の記憶、体験に即した、
よりリアルな映像体験を、
その場に居る人に見せていたのです。

だから、
ミステリオが居る時は、人は、いとも簡単に騙され、

映像投射器のみの画像だった場合は、
リアルであっても、
それがフェイク(偽物)であったのだと、
ピーターとMJは気付いたのでしょう。

 

リアルな立体映像の幻覚にて、
ピーターを窮地に陥れるミステリオ。

この虚実入り交じる戦闘方法が、
映像的には抜群に面白いです。

同じ「マーベル・シネマティック・ユニバース」では、
『ドクター・ストレンジ』にて、
空間の歪みを駆使して戦う描写がありましたが、

本作のフェイク映像で戦うという戦闘法は、

それとはまた違った、
直接、間接的に精神そのものにダメージを与えるものです。

ミステリオが興味深いキャラクターなのは、
自身の特殊能力(戦闘法)を、

ドローン操作、
映像操作、
台詞担当、
衣装係と、

それぞれ受け持ちを別にして、
チームワークで戦っているという点です。

ロボットものの映画やアニメではよく見る描写ですが、
それをヒーローモノの悪役がやっているのが斬新です。

 

お気に入りのシーンは、
クライマックスでの、タワーブリッジ襲撃。

チームに指示を出しながらも、
戦闘には全く意味の無い「衣装係」の、コスチュームのアイロンがけの様子を、
ちょくちょく挟む点です。

他のチームと同様に、
シリアスに対応しており、
一瞬、ギャグには見えない辺りに、趣のあるシーンです。

 

パワーよりも、知略や謀略を駆使し、
相手の精神を狙い戦うというタイプは、

派手ではありませんが、
そのダメージが目視出来ないという点において、

気付いたら、致命傷だという危険性があります。

 

精神攻撃と言えば、
あの、漫画の名作『デビルマン』においても、

肉弾戦においては無類の力を持つ、
アモンと合体したデビルマン不動明を、

精神攻撃を駆使するサイコジェニーが、
あっさり粉砕したというエピソードも、思い出します。

 

そして、
「マーベル・シネマティック・ユニバース」においても、

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』における黒幕、
ヘルムート・ジモがのタイプです。

何もスーパーパワーを持たない一般人でありながら、
謀略を駆使する事で「アベンジャーズ」というチームを崩壊させ、

後々まで尾を引くトニーとスティーブの不和の切っ掛けを作った事を考えると、

精神攻撃というものが、
如何に厄介なのか、それが分かると思います。

 

クエンティン・ベックの初登場が、
謀略を駆使するジモが登場した『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』である辺りにも、

共通点が見出せますね。

 

  • マッチポンプ、そして、レッテル貼りの恐怖

ミステリオが恐ろしいのは、
その幻覚のみならず、
謀略の部分も、際立っているからです。

 

ミステリオは、
「BARF」を駆使するだけあって、
的確に人の欲求を突いています。

即ち、
「世界はヒーローを求めている」

この欲求に応える形で、
完璧なタイミングで登場したと言えるのです。

 

今後、「You Tuber」になろうとしても、
誰も成功しないと、よく言われます。

では、
今You Tuberとして成功している人と、
そうで無い人の差は何かと言うと、

それは、参入時期だという意見もあります。

これと同じで、
ミステリオも、
世界を救ったヒーローが、
既に、世界に居ない。

その、
世界が喪失と、
身を守ってくれる人が居ないという、恐怖に怯えているタイミングにて

「自分がスーパーヒーローだ」と、登場しているのです。

 

これは、
不安を煽って「壺」を買わせる、
心霊詐欺の手口と一緒

自作自演の恐怖(エレメンタルズ)にて世界に恐怖を煽っておいて、
俺が解決したと、
マッチポンプで世界を騙しているのです。

 

冷静に考えると、
ミステリオって、普通にすれば、
普通にヒーローなんですよね。

しかし、
その活動の根っこに、
「トニー・スタークへの怨念」があり、
トニーの技術を横取りしようという意図があった事から、
道を踏み外してしまう事になります。

それ故、潔さも無く、
その退場の間際に、最後ッ屁と言わんばかりに、
世界に疑心暗鬼を植え付けます。

「世界の救世主たる、スーパーヒーローのミステリオを殺したのはスパイダーマン」
だと。

更には、
「スパイダーマン=ピーター・パーカー」
とまで、ぶっちゃける始末。

 

世間というのは、
声の大きい人間が展開するレッテル貼りに弱いというか、
その影響を、直ぐに受けてしまいがちです。

とりわけ、
メディアのレッテル貼りは、
覿面な効果があります。

良い効果も、
悪い効果も。

 

ミステリオが危険な強敵である所以は、

そういった、
「虚」を駆使して、
「実」を支配してしまう点にあるのです。

 

  • スパイダーマンと「父親」

舞台は故郷のクイーンズから遠く離れたヨーロッパ、
そして、
物語のラストで、世間に正体がバレバレになった、ピーター・パーカー。

「親愛なる隣人」として振る舞うのが信条のハズが、

物理的にも、
状況的にも、

ご近所ヒーローという範疇を超えてしまった感のあるのが、
本作が、「ファー・フロム・ホーム」(家から遠く離れて)たる所以なのでしょう。

 

さて、
スパイダーマンのヒーロー論という話で言うと、

本作においても、
スパイダーマンは、そのヒーロー像に、
「父性」が影響を色濃く表われています。

 

元々、
他のスパイダーマンの映画においては、
ピーターを引き取ったベンおじさんの存在が大きく、

ベンの死によって、
「ヒーローの責任は何たるか」
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」
というテーマを獲得して行くのです。

 

しかし、「マーベル・シネマティック・ユニバース」と連動している今回の「スパイダーマン」シリーズでは、

ベンおじさんの存在は、ほのめかされる程度になっています。

メイおばさんも、
必要以上にセクシーですしね。

 

では、今回は、
そういう父性が無いのかと言うと、
そうではありません。

今回、
ピーターが、ヒーローの「責任」について学ぶのは、
ベンおじさんでは無く、
トニー・スタークの死が切っ掛けとなっているのです。

 

アイアンマンの死によって、
スパイダーマンとしてのピーターは、
行く先々で、
「Next アイアンマン」となる事を強要されます。

しかし、
力は持っていても、
ピーターはまだ、16歳。

その責任の何たるかを背負う事も、理解する事も拒否するのです。

 

そんな彼を支えるのが、
ミステリオというのが、また本作の皮肉な面白さです。

心情的には好ましいものを持ち、
まともなアドバイスを与える事が出来る、

それは、
相手が見たいモノを与える、
幻影師たるミステリオの面目躍如たる能力ですが、

本作においては、
嘘によってピーターを操る存在、
つまり「超えるべき父性」として側面が、
ミステリオには持たされているのです。

 

本作においては、
ピーターは、
未だ、アイアンマンの後を継ぐ、

覚悟も、意思も持ってはいません。

しかし、
自らの隣人、
愛する人や、友人を救出するという所から派生して、
世界が直面する悪意と戦う、

結果的には、そういう役割を担いました。

ここから、
自らが、更に困難な状況に陥るに至って、

ピーターが今後、
どの様な成長を見せるのか?

そういう、
未完成のヒーローの成長物語こそが、
「スパイダーマン」シリーズの魅力であると言えます。

 

本作のピーター・パーカーのスーツ、
クライマックスにおいては、
自作した「アップグレードスーツ」を着て戦います。

この「アップグレードスーツ」の配色は、
いつもの「青と赤」では無く、

スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)にて、
主人公のマイルス・モラレスが着ていた「黒と赤」のスーツを想起させられます。

 

マイルス・モラレスは、
死んだピーター・パーカーに代わり、
自分が町を守るのだと決意、

力に伴う責任に自覚するというのが、
「~スパイダーバース」の物語でした。

 

そういう、
「死した人間の遺志を継ぐ」というテーマは、本作と共通するものであり、

ピーターが自作したスーツの配色が、
マイルス・モラレスのスーツと同色というのは、

自らの意思で、
責任の継承を受け入れる、

そういう意図も、
含まれているのかもしれません

 

  • マーベル・シネマティック・ユニバース、今後の展開は?

さて、
マーベル・シネマティック・ユニバースとしては、

サノスの話が一段落し、
今後、どの様な展開が待ち受けているのか?

そのヒントが、
本作には無いのか?

血眼になって観た人も多いでしょうが、

そういう、
次に繋がる示唆みたいなものは、

本作には、殆どありませんでした。

 

しかし、
乏しい情報から判断するに、

メインのヒーローの一人として、
スパイダーマンの成長物語が描かれる、

ニック・フューリーの台詞から、
ソー、
ドクター・ストレンジ、
キャプテン・マーベルはメインでは無い、

という事が、推測されます。

 

また、ラストの描写から、
どうやら、ニック・フューリーは、
キャプテン・マーベル』の展開から続き、
スクラル人とも昵懇の間柄を続けている様です。

そこで、宇宙の描写がなされていましたが、

次回は、
スクラル経由で、
宇宙からの来訪者が表われるのでしょうか?

妄想が尽きないですね。

 

個人的には、
今後、「マーベル・シネマティック・ユニバース」に、
「X-MEN」が合流すると予想していますが、

スパイダーマンと、
デッドプールの絡みが観たいと私は思っているのですが、
どうでしょうか?

 

 

 

等身大の高校生を描き、

青春のあれこれ、

旅行の面白さ、
恋の悩み、などを描写、

それでいてアクションも、
派手なものもあり、
奇妙な映像体験もあり、

さらには、
ヒーローの責任まで追求する、

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』。

 

よくぞここまで詰め込んだという、
納得の充実ぶり。

このクオリティで、
今後も「マーベル・シネマティック・ユニバース」を楽しみたいと、
期待しています。

 

 

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