高級料理店にて、金融アナリストの婚約者の顧客と共にディナーを採っているジャネット。ふとした切っ掛けで両親の事を尋ねられ、彼女は自分の幼少時代を思い出す。現在は新聞にてコラムを執筆している彼女。しかし、子供時代は、規格外の両親と、根無し草の如くに放浪生活を送る日々だった、、、
監督はデスティン・ダニエル・クレッソン。
ハワイ・マウイ島出身の、日系三世。
監督作に
『Darkmar: A Vassal’s Journey』(2006)
『ヒップ・スター』(2013)
『ショート・ターム』(2017)がある。
『ショート・ターム』は、
主演のブリー・ラーソンの出世作でもある。
原作は、ジャネット・ウォールズの自叙伝『ガラスの城の約束』。
出演は、
ジャネット:ブリー・ラーソン
ジャネット(8歳):チャンドラー・ヘッド
ジャネット(11歳):エラ・アンダーソン
レックス:ウディ・ハレルソン
ローズマリー:ナオミ・ワッツ
ローリ:セーラ・スヌーク
ブライアン:ジョシュ・カラス
モーリーン:ブリジット・ランディ=ペイン
デヴィッド:マックス・グリーンフィールド 他
次代の「マーベル・シネマティック・ユニバース」を担う一人と目されている、
「キャプテン・マーベル」役を演じるブリー・ラーソン。
彼女の出世作とも言える作品は、
本作の監督、デスティン・ダニエル・クレッソンの『ショート・ターム』。
そして、
ブリー・ラーソンがブレイクしたのは、
アカデミー賞主演女優勝を受賞した『ルーム』(2015)でした。
いずれも、
個人と社会と他人との関わりがテーマに作られた作品です。
そんな、
1989年生まれのブリー・ラーソンが、
1989年が舞台の人間ドラマに出演、
見る前から期待が高まる、
それが本作『ガラスの城の約束』です。
本作は、
端的に言うと、家族の物語。
とりわけ、
否応無く、切っても切れない、
両親との関わりの話なのです。
その日の気ままに、放浪生活を送るウォールズ一家。
博識でユーモアがあり、受け答えも軽妙、
しかし、定職には就いていない父のレックス。
画家を自称し、
家事より絵描きを優先する母のローズマリー。
結婚を控えたジャネットは、
そんな型破りな両親に育てられた、自分の幼少時代を思い出します。
子供の頃は楽しかった。
「ガラスの城を作るぞ」という父の大言壮語も、
学校にも行かず、自然と経験から学べという方針も、、、
しかし、
徐々にジャネットら、子供達は気付きます。
金を酒に使ってしまう父、
それを容認してしまう母、
彼達の元に何時までも居る訳にはいかない、
私達は、学校に行って、お金を稼いで、自立しなければならない、と、、、
家族と自分の関係、
とりわけ、親と自分の関係性というのは、
人生を規定しかねない、重要なものです。
そんな、
親との関わり合いを、
幼少次代、
少女時代、
そして、結婚間近の現代、
この3つの視点にて描いているのが本作です。
親との関係は良好ですか?
それとも、音信不通ですか?
どうあれ、
親と自分との関係と言うと、
良いこともあれば、
悪いこともあるでしょう。
本作のジャネットは、
両親と、どういう関係を築くのか?
それに大して、
観客たる自分は、何を思うのか?
そういう、
過去の自分の思い出の、パーソナルな部分と結びつくからこその印象がある、
『ガラスの城の約束』は、
そういう作品と言えます。
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『ガラスの城の約束』のポイント
良い事も、悪い事も含めての、過去であり、親子関係
親離れと、自立
子供が居るから、親となれる
以下、内容に触れた感想となっております
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ウディ・ハレルソンという俳優
本作『ガラスの城の約束』は、
自由気ままな親に育てられた子供が、
その影響を受けつつも、
親から自立し、
自分の新しい人生を獲得せんとするまでの物語です。
両親、
特に、父親のレックスとジャネットの関わりが、
本作のメインストーリーとなっています。
その、父を演じたのは、ウディ・ハレルソン。
ウディ・ハレルソンは、
役柄として、
アウトロー、
型破り、
危険な男、
ニヒルでクールな紳士、etc…
色々な役を演じますが、
いずれも共通するのは、
世間の常識の埒外に居るタイプの人物を演じる事が多いです。
そして、
実は本人自身も、
ちょっと、変わっているというか、
トラブルメーカーという印象があります。
警官を殴って逮捕、
マリファナを栽培して逮捕、
ゴールデンゲートブリッジに登って逮捕、
また、Wikipediaによると、
彼の私生活は、
妻と3人の娘と共に、コスタリカにて原始的な生活を送っているそうです。
…こう聞くと、
ウディ・ハレルソンという存在自身が、
実は、
本作のレックス・ウォールズそのものであるのかもしれません。
実際、
本作のエンディングで流れる、
レックス・ウォールズ本人の映像を見ると、
ウディ・ハレルソンが、
喋り方から姿勢まで、
彼の現し身の様に見えます。
原作者であるジャネットは、
ウディの演技を見て、
まるで、父がそこに居る様に見えたと言います。
何処か、
自分と共通するものを、
感じているのかもしれません。
年代によって、
表情から、体型まで変えていた、
母親役を演じたナオミ・ワッツも含め、
役者の演技というものの凄さを感じます。
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親と自分の関係を考える
『ガラスの城の約束』は、
親と自分との関わりを描いた作品です。
幼少期、
子供にとっては、親は絶対であり、
世界は、親と共にあり、
「親=神」と言えます。
しかし、
自我が芽生える10歳くらいから、
徐々に、親も「人間」である事に気付いて行くのです。
本作における、レックスという人物は、
博識と独特なユーモアを持っており、
理想と正論を掲げます。
そういうプラス面もありながら、
マイナス面として、
世間との折り合いを付けず、
自由と言う名の「無責任」に逃げ込み、
何時までもモラトリアム気分、
いつかやる、俺はまだ本気出していないと、大言壮語を繰り返す、
いわゆる、口だけ男です。
「親」という存在になる時、
多くの人間が、
心身金銭面、いずれも完璧な準備を整えて、
子供と迎える訳ではありません。
「子供」が生まれ、育てる為に、
ある日突然、親の役割を担う事になる、
そういう人が多いのではないでしょうか。
そういう、
子供との関わりから、
徐々に「親」として自分が形成されて行くのですが、
しかし、
本作のレックスとローズマリーは、
その「子供との関わりにおいて親と成る」のではなく、
「自分達の生き方を通じて、子供を育てる」
というスタンスです。
勿論、子育てというものは、
人それぞれ、家庭それぞれではありますが、
「親として変化するより、自分で居る事を選んだ」
タイプの親に育てられる子供というのは、
独特の苦労が存在するのも、
また、事実です。
子供への愛情と、
自分のエゴとの綱引きが、
親にあるからです。
子供に至っては、
そういう親に「付き合う」と苦労します。
なので、
早々に自立しなければならないのです。
本作の様に。
確かに、
親に対して、
愛憎半ばする所があるでしょう。
悪い所があるけれども、
でも、
親だから、良い所もあるから。
そういう発想で、
何時までもズルズルと「共依存」するべきではありません。
何も、
親や自分の過去を否定する必要は無いのです。
それがあるから、今の自分がある。
物事の全てを肯定せずとも、
それを、受け入れる寛容さを持つのが理想と言えます。
過去を受け入れ、自己を自覚して、
自分の人生を生きるべきなのです。
親を許さずとも、
否定はしない。
それが、
苦しんで生きた子供時代を、
今の自分に活かす事だと、思うのです。
夢や理想というものは、
高く掲げる程、
地に堕ちた時、凄まじく粉々に砕けてしまいます。
しかし、
その理想が、
何時しか、天の星の如くに、
自分を導く里程標になる。
親との関わりを通じて、
人生と、
自立について語った『ガラスの城の約束』。
多くの人の過去と通じるからこそ、
本作には共感と、
ある種の感動があるのではないでしょうか。
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コチラは原作の自叙伝です
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