映画『シェイプ・オブ・ウォーター』感想  愛の美しさは外見に非ず!!

 

 

 

1962年、アメリカ。航空宇宙研究センターにて夜勤の清掃員として働いているイライザ。ある日、カプセルに入れられた人型水棲生物が運び込まれるところに居合わせる。興味津々なイライザは隙を見てその生物と交流するが、、、

 

 

 

 

監督はギレルモ・デル・トロ
独特な世界観の作品を出す度にファンを増やしている。
監督作に
『クロノス』(1993)
『ミミック』(1997)
『デビルズ・バックボーン』(2001)
『ブレイド2』(2002)
『ヘルボーイ』(2004)
『パンズ・ラビリンス』(2006)
『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(2008)
『パシフィック・リム』(2013)
『クリムゾン・ピーク』(2015)がある。

 

主演のイライザ役にサリー・ホーキンス
出演作に
『ハッピー・ゴー・ラッキー』(2008)
『わたしを話さないで』(2010)
『ブルージャスミン』(2013)
『パディントン』(2014)
『GODZILLA ゴジラ』(2014)等がある。

他、共演に、ダグ・ジョーンズ、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、オクダヴィア・スペンサー等。

 

拘りの世界観を毎回観せてくれるギレルモ・デル・トロの最新作、『シェイプ・オブ・ウォーター』は

ファンタジー・ラブストーリーです。

 

とは言え、そこは拘り監督の作品。

愛し合う二人は青春真っ盛りのキラキラ陽キャという訳では無く、

口がきけない中年女性と謎のクリーチャーの交流がメインに描かれます。

 

恋愛物語は必ずしも美男美女だけの物では無いのです。

そして舞台は1962年。

一昔前だが、むかしむかしと言う程昔ではありません。

しかし、

アメリカのハズなのに、
何処か異国情緒的な雰囲気のある世界観です。

 

何処とも知れぬ、いつかの時代。

これぞ、現代のお伽話。

 

それが、『シェイプ・オブ・ウォーター』なのです。

 

 

  • 『シェイプ・オブ・ウォーター』のポイント

現代のお伽話、異類婚姻譚

居場所の無いもの達の物語

拘りの世界観、クリーチャー造型

 

 

以下、内容に触れた感想となります


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  • 異類婚姻譚

本作『シェイプ・オブ・ウォーター』はファンタジー・ラブストーリーです。

とは言え、イライザが恋するのは水棲生物(正しくは両生生物)

異種族との恋物語と言って思い浮かべるのは異類婚姻譚

異類婚姻譚とは洋の東西を問わず残されている昔話です。

日本では「鶴の恩返し」で有名ですし、
ドイツにもフケーの『水の精』なんて作品があります。

異類婚姻譚にはパターンがあり
1:異種族の窮状を人が救う
2:再び出会った異生物と契りを結ぶ
3:結婚生活において禁忌がある
4:禁忌が破られ、破綻する
という物語の大まかな流れがあります。

本作も異類婚姻譚と言えるのですが、実はこの類型パターンとは大幅にズレたものであるのです。

では、以下でストーリーを追いながらその事を解説してみたいと思います。

 

*以下、内容のネタバレを多く含む部分となります。

 

  • 姫キャラ、イライザ

先ず最初に言いたい事は、イライザ(も、イライザ役を演じたサリー・ホーキンス)は美人です。

ただ、「若さに溢れた美人」では無いというだけなんですよ。

 

単調な毎日を生きていたイライザ。

しかし、謎の水棲生物が現われた事で、彼女の日常が変化して行きます。

水棲生物に興味津々なイライザは、ゆで卵で餌付けして信頼を獲得。

相手に知性があり、交流が可能と知ったイライザは、手話を教えたり音楽を聴かせるのですが、
ある日、生物を解剖するという話を聞いて、とある決意をします。

彼女は、彼を脱走させようと思い付き、それを決行します。

そと時の協力者となるのが、
隣人のジャイルズ、
仕事仲間のゼルダ、
博士のホフステトラーです。

 

  • 社会からのはぐれ者の物語

イライザの隣人のジャイルズは画家です。

どうやら会社勤めの専任広告画家だった様ですが、時代の流れに押され写真の台頭によりリストラされています。

また、店長に好意があり、ハゲ頭にカツラを乗せ、パイのチェーン店に足繁く通っています。
因みに店長は男、ジャイルズも男。

そう、ジャイルズは同性愛者なのですね。

楽しく会話している途中で店長に告白しますが、店長は切れ気味に拒絶します。

さらに、その勢いで店長は、ガラガラの店に入って来たカップルに「お前らの席、ねぇから」と追い返します。

そのカップルは黒人
1963年当時は、まだ、人種差別が根強い時代だったのです。

イライザが最も仲の良いゼルダも黒人です。

そして、ホフステトラーはソ連のスパイ。

しかし彼は祖国の「生物を解剖させる位なら、殺してしまえ」という指令を無視し、
生物を逃亡させようとしているイライザを、これ幸いとばかりに手助けします。

国を裏切ったスパイになるのです。

 

ジャイルズはイライザに逃亡作戦の助力を頼まれますが、一旦は断ります。

しかし、彼はイライザの言葉を思い返します。

「彼(水棲生物)は言葉を話せない人間としてでは無い、ありのままの私を見てくれる
彼を見捨てたら、私達は人間とは言えない

 

カツラを被り、食べたくも無いパイを食べてまで会いに行っても、
世間(店長)は色眼鏡で自分を見ます。

そういう世間の差別的な目線を知っている自分が、
同じく社会から隔離されて、殺されようとしている知性ある異邦人を見捨ててしまう事は、
それこそ、自分を差別している人間と同じではないのか?

ジャイルズはその事に気付き、協力を申し出ます。

 

ゼルダは成り行き上、ホフステトラーは生物を殺したくないので協力しますが、
この二人も世間の目線(常識)から疎外されている存在であるのです。

 

障害者、同性愛者、被差別人種、国を捨てたスパイ。

彼達、社会から疎外感を感じている者達が、囚われの異種族を解放するのです。

 

  • 悪役、ストリックランド

イライザは水棲生物を匿ってから変わります。

ある種の自身を持ち、服も派手な赤い色の物を身につける様になります。

しかし勿論、そのままで済むハズも無く、生物を追いつめる存在としてストリックランドという存在もいます。

ストリックランドは水棲生物を南米から研究所に持ち込んだ張本人。

仕事に殉じたキャラクターと言えば聞こえは良いですが、実際の彼はサディストです。

イライザやゼルダの居る前でションベンをしたり、イライザの喘ぎ声を聞きたいと口にしたり、
臆面も無くセクハラをするマッチョ信奉者でもあります。

そしてストリックランドは、鎖でつながれた水棲生物をいびったり、ホフステトラーの銃創に手を突っ込んだり、
何やら「悲鳴をあげさせる事」に拘りがあります

妻とのセックスの描写では、
相手が「快感の声」をあげれば、傷付いて血だらけの手で口を塞ごうとします。

相手が歓んでいる声は聞きたく無いのでしょうね。
血だらけの手で口を塞げば、悲鳴が聞けるかも?と思っているのでしょう。

 

  • 相手を受け入れるという事

水棲生物を匿っている間、ふと目を離した隙に、ジャイルズは飼っていた猫を食べられてしまします。
さらにその時、逃亡した水棲生物に怪我を負わせられます。

ここは、観客がストレスを感じる場面。

イライザと水棲生物の理解者であるジャイルズが、彼達の敵になってしまうのか?と思ってしまいます。

しかし、ジャイルズは「猫を食べたのは本能だ」と理解を示し、自身が(心身共に)傷付けられた事に腹を立てません

相手を恐れ、不安があれば、人間は拒絶し攻撃します

しかし、ジャイルズは、たった一度の失敗で相手を拒絶する事はせず、相手の立場を理解するという態度を取ります

理解し得ない相手を許し受け入れるのは並大抵の事ではありません。

ジャイルズは、自身が拒絶された人生を歩んできたからこそ、水棲生物を受け入れる事が出来たのです。

 

  • 赤い靴、はいてた女の子

外海へ水棲生物を逃がそうとする、イライザとジャイルズですが、すんでの所でストリックランドの妨害に遭い、
イライザは水棲生物もろとも撃たれてしまします。

自他共に影響を及ぼす「再生能力」を持つ水棲生物は直ぐさま復活、ストリックランドを返り討ち。

水棲生物は凶弾に倒れたイライザを抱いて水へ飛び込んて去って行きます、、、

 

さて、途中からイライザは赤い色の物と身に着ける様になります。

中でも印象的なのは「赤い靴」。

ラスト、水棲生物に誘われ水中に没したイライザは、
異人さんに連れられていっちゃった赤い靴の女の子を彷彿とさせます

「赤い靴」が出て来た時点で、この童謡の『赤い靴』の様なラストを想像出来るのですが、
問題はこの『赤い靴』という動揺が日本産の歌という事です。

1922年に、野口雨情作詞、本居長世作曲で作られたと言われる『赤い靴』。

いくら、ギレルモ・デル・トロ監督が日本贔屓のオタクと言えど、
『赤い靴』をメキシコ生まれの監督や、他の脚本家が知っていたハズは無いと思います。

ですが、日本人だけに通じるネタが意図せず混じっている事に不思議な面白さを感じます。

 

  • 現代に送るファンタジー

さて、ストーリーを見てきた通り、これは類型的な異類婚姻譚ではありません。

普通のパターンでは
1:異種族の窮状を人が救う
2:再び出会った異生物と契りを結ぶ
3:結婚生活において禁忌がある
4:禁忌が破られ、破綻する
というものですが、

『シェイプ・オブ・ウォーター』では
1:(人間側の禁忌を破り)異種族の窮状を救う
2:異種族と契りを結ぶ
3:癒やしと、敵の排除による解放がある
4:去って行き、幸せな結婚を予感させる
という流れになっています。

1と2が同じで、3、4で変化している様に見えますね。

ちょっと解説してみます。

1は、まず類型的な異類婚姻譚では、異種族の窮状を助ける段階です。

本作でもそうですが、
一方、解放者である人間は、自身の窮状に水棲生物を重ね合わせたからこそ、
異生物を助けたのだという側面もあります。

水棲生物の解放は、自身の解放でもあります。

この、「救われる方が、実は相手を救っている」という図式は、水棲生物が「傷を癒やす能力」を持っている事で顕著に表されています。

ジャイルズは途中、水棲生物に傷付けられますが、水棲生物を理解し許す事で、
自身が差別的な世間と違うという証明を立て、偏見や攻撃性からの解放を示します

この精神面の解放は、「腕の傷を癒やす」事と「頭髪の毛根促進」で画的にも分かり易く見せてくれます。

これは「3」の段階。

そして、異類婚姻譚では破局で終わるラストシーン「4」も、
本作においては、むしろハッピーエンドを思わせる余韻を漂わせます。

普通のパターンなら、去って行くのは異種族のみ。

しかし、本作は水棲生物が自分の意思でイライザを連れて去って行くのです。

二人の間には、異種族という垣根は無く、お互いをそのものとして見ていたからこそ、そこに禁忌が存在せず、結果、ラストには悲劇(結婚の破綻)が訪れなかったのです。

また、水棲生物が意図せずとも、自然に存在するだけで、相手を解放するものだった事も大きいです。

(イライザもジャイルズも相手の解放に自己を投影していた)

「鶴の恩返し」の「ツル」の様に、相手を繋ぎ留める為に何かしなくちゃ、とは露程も思っていないのです。

この義務感の欠如、
しかし、自然に相手を癒やしていたという奇蹟こそ、水棲生物が「神」と言われた所以なのかも知れません。

 

  • 出演者補足

悪役ストリックランドを演じたのはマイケル・シャノン
『マン・オブ・スティール』(2013)や『ノクターナル・アニマルズ』(2016)での印象的なバイプレーヤーぶりが光ります。
今後も彼の出演作は要チェックです。

ゼルダ役を演じたオクタヴィア・スペンサー
彼女は『gifted/ギフテッド』(2017)でもチャキチャキのおばちゃんぶりを見せてくれていました。
良く喋る黒人女性枠として今後も活躍しそうです。

そして、水棲生物を演じたのは、ダグ・ジョーンズ
監督のファンなら、水棲生物を一目見て「察し」た事だと思われます。
水棲生物はCGではありません、着ぐるみです。
彼は、監督の作品の常連で『パンズラビリンス』に出演、
『ヘルボーイ』でも本作と似たような半魚人系のクリーチャーを演じていました。

 

 

 

ちょっと昔の現代を舞台にした異類婚姻譚である『シェイプ・オブ・ウォーター』。

それは、世間から疎外された者達が解放を目指す、現代に蘇ったラブ・ファンタジー。

しかし、辛い事があった後だもの。

この後は幸せに生きてもいいじゃない。

後味の余韻がすこぶる良い、観た人に幸せと優しさを届ける作品です。

 

 

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さて次回は、観た人に届けるのは、普通の人が持ちうる勇気、映画『15時17分、パリ行き』について語ります。