シンガーソングライター、ジャック。幼馴染みのマネージャー、エリーの支えで音楽活動に勤しむも、鳴かず飛ばずの日々を過ごしていた。
ある日、全世界が12秒間だけ停電するという怪事件が起きる。夜、自転車で疾走していたジャックは、運悪くバスに轢かれてしまう。幸い大事には至らなかったが、前歯とギターがオシャカになってしまった。
退院後、ギターをエリーにプレゼントされたジャックは、お礼にビートルズの『イエスタデイ』を歌うのだが、エリーも、友人達も、歌に感動するばかりで、ビートルズの事を知らないと言うのだ、、、
監督はダニー・ボイル。
イギリスで、最も成功した監督の一人と言える。
監督作に、
『シャロウ・グレイブ』(1995)
『トレイン・スポッティング』(1996)
『28日後…』(2002)
『スラムドッグ$ミリオネア』(2008)
『127時間』(2010)
『スティーブ・ジョブズ』(2015)等がある。
出演は、
ジャック:ヒメーシュ・パテル
エリー:リリー・ジェームズ
ロッキー:ジョエル・フライ
デブラ:ケイト・マッキノン
エド・シーラン:本人 他
イギリス、リヴァプール出身、
世界的に、最も有名なロックバンドと言える「ビートルズ」。
日本人だとしても、
何かしら、彼達の曲を聴いた事があるでしょう。
私が初めて聴いたビートルズの曲は、「イエスタデイ」。
中学1年生の時、
英語の担当の先生が教えてくれたのを覚えています。
まぁ、超有名なアーティストであっても、
私にとっての思い入れは、その程度。
そんな私が観ても、
本作は、面白いのです。
何故なら、
やっぱり、
”ビートルズ” なんだよなぁ~!!
全然思い入れが無いハズのビートルズ。
しかし、
意識せずしても、
彼達の楽曲は、頭の中に残っています。
プリーズ・プリーズ・ミー
ア・ハード・デイズ・ナイト
ヘルプ!
イエロー・サブマリン
オール・ユー・ニード・イズ・ラブ
ヘイ・ジュード
レット・イット・ビー
ちゃんと聴いた事が無くとも、
何となく、
ノリで鼻歌が歌える感じ。
そんな、
サブリミナル的に、深層心理にまで浸透している、ビートルズの名曲の数々が、
これでもかと、演奏されます。
更に本作、
そのビートルズの名曲を、
ちゃんと役者本人が歌っています。
意外と言ったら悪いですが、
コレが、中々どうして、上手い。
主役を演じるヒメーシュ・パテルが、
歌に、ギターに、ピアノと、
正に、八面六臂の活躍。
ちゃんと、役者が歌って、演奏しているからこその説得力が、
本作にはあります。
退院後、皆の前で、プレゼントされたギターで「イエスタデイ」を歌ったジャック。
しかし、
エリーも、友人達も、「ビートルズ」を知らないと言います。
「誰?それ?」
「音楽オタクは、マイナーなバンドを皆が知っていると思い込んでるからなぁ」
などと言われ、ジャックは不機嫌なご様子。
しかし、
もしかしてと思い立ち、
google で「ビートルズ」を検索、
すると、カブトムシやら、カナブンやら、甲虫が出て来る始末。
コレ、マ!?
もしかして、全世界で、ビートルズを知っているのは、自分一人!?
ジャックは、
「ビートルズ」の曲を自分の曲として歌うのですが、、、
いやぁ、
全世界の人間が、ビートルズを忘れただって?
そしたら、確かに、ビートルズの曲を歌うわ。
誰だってそーする。
俺もそーする。
金も、名声も、ガッポガッポや~!
あなたも、
例えば、明日、
日本中の人間が「CHAGE and ASKA」を忘れたとしたら、どうしますか?
大麻でも吸いますか?
あれ?
コレは例えが悪かった。
例えば、明日、
日本中の人間が「ゲスの極み乙女」を忘れたとしたら、どうしますか?
ベッキーと不倫しますか?
ああ~!
コレも例えが悪いな。
例えば、明日、
日本中の人間が「米津玄師」を忘れたとしたら、どうしますか?
あなたも、「レモン」を歌うでしょう?
…う~ん、
難しくて、歌えそうも無い!!
結局、コレも無理か!?
一方、
ジャックはちゃんと歌えて、演奏も出来る、
そこに、ドラマが生まれるのです。
もう、
この設定だけで、面白いですよね。
しかし、
ジャックのやっている事は、
厳密に言えば、いわゆる「剽窃」。
端的に言うと、パクリです。
その点にフォーカスすると、
作品が重く、暗くなりそうですが、
本作は然に非ず。
意外と(!?)
ギャグというか、ユーモア大目の作りとなっています。
こてこてというか、
最早、吉本新喜劇レベル、
観ている人と、「お約束」の共有するという、
「笑い」に必要な空気感が、全篇に漂っています。
そして、
テーマとして描かれるのは、
「愛」の物語。
勿論、
音楽はガッチガッチにビートルズで固めていますが、
それに加えて、
恋愛という、普遍的なテーマを扱っているが故に、
観客の共感を誘います。
ワンアイディアを活かし、
気軽に観られて、
面白い。
『イエスタデイ』は、
ビートルズに捧げたラブソングであり、
又、
ビートルズを全く知らなくとも、充分に楽しめる作品と言えるでしょう。
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『イエスタデイ』のポイント
ビートルズの名曲満載
ユーモア大目で楽しい
富と名声と愛
以下、内容に触れた感想となっております
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シンガーソングライター、ヒメーシュ・パテル
本作『イエスタデイ』は、
ビートルズの名曲が、多く登場します。
さて、
映画で楽曲を使う場合、
使用料は発生しますが、
アーティスト本人が歌う音源を使わなければ、
特に、許可を得る必要は無いそうです。
そういう意味でも、
役者本人が、
ビートルズの歌を唄う事は、本作では必須。
そういう条件をクリアしたのが、
ヒメーシュ・パテルという俳優です。
イギリス出身ながら、
ルーツはアジア系。
過去に、有名映画作品の出演は無く、
「ビートルズ」の名曲をひっさげて、本作にてメジャーデビュー。
まるで、
役柄のジャックそのままの様な、シンデレラストーリーです。
さて、ヒメーシュ・パテル。
TVの出演などはあったそうですが、
大きい役を演じるのは、今回が初めて。
しかし、
歌えて、楽器も出来る俳優という、
難しいオーディションを経て、役を獲得しているのです。
そのヒメーシュ・パテルは、
幼少の頃、9~12歳の頃まで、ピアノをやっていたそうです。
しかし、
ギターをやりたくなって、ギターの練習を始めたとの事。
若者にありがちな、楽器に移り気を見せる現象ですね。
ピアノも、ギターも勿論、プロ級の腕前という訳では無いのでしょうが、
しかし、
自身が過去に獲得した技術が、
思わぬ所で結実し、役に立つという事が、
人生には往々にしてあります。
ヒメーシュ・パテルは、
そういう自分の過去にて、
今回、チャンスを掴んだと考えると、
感慨深いものがありますね。
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富や名声より、愛
本作は、
ガッツリとビートルズの音楽が使われていますが、
テーマ的に扱われるのは、
人生の物語。
富と名声、そして愛の物語ですね。
そもそも、富や名声は、
何の為に得るものなのでしょう?
贅沢な生活の為?自尊心の為?
そんなもの、必要ですか?
いや、勿論、
安倍晋三とか、ホリエモンとか、前澤友作とかは、必要なのでしょう。
しかし、
何に幸せを感じるかは、人それぞれなのです。
自分の身の丈を知る、
自分の性格、タイプを知る事が、
人生を楽しく、幸せに生きるコツです。
本作のジャックをどういう人間なのかというと、
印象的な場面があります。
クライマックスの、コンサートシーン。
記者会見の場面で、
「黄色い潜水艦」を掲げた人間を、ジャックは見つけます。
これは勿論、
ビートルズの楽曲「イエロー・サブマリン」を意味した行為。
つまり、
ジャック意外にも、
「ビートルズ」を「覚えている」人間が居たのです。
ビートルズの楽曲を「剽窃」して、名声を手に入れたジャック、
当然彼は、断罪される気持ちで、
「イエロー・サブマリン」を持って来た男女を、
楽屋に迎え入れます。
しかし、
「ビートルズ」を覚えていた、男女は、
逆に、ジャックに礼を言うのです。
「ビートルズ」を、この世界に残してくれて、ありがとう、と。
そして、
「ビートルズ」の曲を、上手く使ってくれと託すのです。
やはり、ジャック自身には、
自分の実力では無いという、罪悪感があったのでしょう。
しかし、
同じ境遇の「同士」に、志を託された事で、
ジャックは決心します。
自分の曲には、元ネタがあり、
故に、
曲は、タダで配信すると宣言します。
つまりジャックは、
純粋に、「ビートルズ」の伝道師となるのですね。
本作には、ユーモア感覚と共に、
人が、人たる、倫理観も、同時に持ち合わせています。
ジャックが、
楽屋に来た二人を無碍にしなかった、
彼達の言い分を、素直に聞いたからこそ、
観ているコチラも気持ち良いのですよね。
その上でジャックは、
富や名声より、
自分には、エリーが必要なのだと、
長い道のりで気付くのですね。
正に、
「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」なのです。
やっぱり、
人間、親しい人に愛されるのが、
一番幸せなのだと思うのですよ。
…まぁ、ぶっちゃけ、
「なんでこんな美人を放っておくって、ありえんだろ!」
という、ロッキーのツッコミに、
全観客が、全面同意なのですが。
馴染みのあるビートルズの楽曲、
そして、
誰にでも起こり得る、
愛と人生の幸せに関する物語。
これを、
ユーモアを交えて描くのだから、
面白いのもむべなるかな。
『イエスタデイ』は、
観ると、幸せになれる作品と言えます。
*現在公開中の新作映画作品をコチラのページで紹介しています。
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