どんな人間にも母はいる。そして、母にも歴史がある。駆け出し漫画家、神崎良太(18)は母と二人暮らし。一体、母が18の時はどんな人間だったのだろう?母は語り出す。島亘江(18)の頃の話を、、、
作者は押切蓮介。
初期はホラーギャグというジャンルで活躍していたが、最近はその幅が広がっている。代表作に
『でろでろ』
『ミスミソウ』
『ピコピコ少年』
『ハイスコアガール』
『ぎゃんぷりん』等がある。
本作『HaHa』はその名の通り、
作者・押切蓮介の母の半生の物語である。
実話か?創作か?
しかし、それは確かめようがない。
親からの伝聞となれば、尚更である。
ただ、言えることは
波瀾万丈で面白い、という事だ。
どんな人にも歴史あり。
それは漫画家の母にも、
読んでいる読者の母にもある。
本作『HaHa』を読んで、自分の母の事に思いを馳せるのもまた一興であろう。
以下ネタバレあり
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面白いものを面白く作る事の難しさ
本作『HaHa』は、作者・押切蓮介の母親・亘江の波瀾万丈な若かりし頃を描いた漫画である。
若い時分の誰にでもあって共感でき、それでいて面白く興味深いエピソードで物語を作っている。
しかし、面白い元ネタがあるからと言って、それが必ずしも面白い漫画になるという訳ではない。
作者・押切蓮介は、その工夫として、自分と同い年の時の母の思い出話を語る事で、その対比として母の人生を描いてみせる。
そこに面白さがある。
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受け継がれて行く物
朝からぐうたらしている息子を、母は諫める。
それは、かつて自分が母から毎日賜ったお説教であった。
母は、その母(息子からしたら祖母)より受け取ったいろいろな箴言を、同じように息子にのたまう。
しかし、無論だが母も若い時分にはお小言など何処吹く風だった。
それを、歳を重ね成熟した母がさも悟ったかの如く息子にのたまうのが面白いのだ。
だが人生とはそういう物。
親の立場になって、初めてそういう言葉を言った親の気持ちを知る。
例え、自分自身に、その小言を言う準備が出来ていなくても、自然と出てくる、かつて自分がそう言われた通りに、である。
そしてそこに、「受け継がれる人の営み」みたいなものを感じられて、感慨深いものがある。
…しかし、根がやんちゃな母は、歳を取っても豪快である。
悟った事を言っても、息子と共にうろたえたりするのがまた微笑ましい。
人に歴史あり。
いつも側にいるようで、じつは遠い所から母は来ている。
きっと我々の母もいろんな人生を送って来ているハズだ。
なにせ、私たちを生んでくれたのだから。
だから、いつか、母にその人生を尋ねてみてもいいだろう。
まだ、存命ならば。
そんな気持ちにさせてくれる、
何処かノスタルジックな名著である。
こちらは少年時代のノスタルジー溢れる作品
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さて、次回は何処かノスタルジックな雰囲気の漂うエス・エフ小説『翼のジェニー』について語りたい。