漫画『サイコ工場』谷口トモオ(著)感想  人倫の真逆を行く妄想爆発漫画!!

 

 

 

この3週間連絡の無かった直也との待ち合わせ。会うと、別れを切り出された。他に好きな女が出来たと言う。後を付けてその女の顔を見てやると、なんて不細工な!こんな女に負けるとは許せない、復讐のはじまりだ、、、

 

 

 

著者は谷口トモオ
漫画家引退状態だった所を、今回奇跡(?)の単行本復活を果たす。

 

リイド社の無料漫画サイト「リイドカフェ」(←クリックで外部リンク)にて、「セイギノミカタ」が無料公開、好評を得る。

単行本の刊行も決まり、大幅加筆修正の後、『サイコ工場』「α線」「Ω線」の二分冊にて発売された。

さわりに触れたいなら、リイドカフェ内の「サイコ工場のページ」(←クリックで外部リンク)にて「セイギノミカタ」と「TAXI」の二本が公開されている。
(2017年12月1日現在)

興味があれば、読んで見ると良いだろう。
しかし、注意が必要だ。

本作『サイコ工場』は

理不尽ホラーだからだ。

 

過激な描写、行き過ぎた表現、アサッテの方向へ向かうストーリー、

真面目で普通の人生を送っているタイプの人間が読むと、嫌悪感しか起こらない。

 

しかし、例えばだ、

スーパーでレジ待ちをしていると、自分の列に割り込みをかけてきたアホがいたとする。

「おい、何してんだドアホ!ちゃんと並べ!!」
と、あなたが注意すると相手は
「黙れクズが」と言い返す、
それに対して、「悪・即・斬」とばかりにあなたは相手をぶん殴ると、泣いて謝ってくる。

……そういう益体も無い妄想を爆発させるだけで、ただ黙ってスルーするタイプの

陰キャ御用達の漫画と言えるだろう。

 

大半の人には理解出来ない。
しかし、一部の人には熱狂的に支持されるタイプ。

あなたも怖がってないで、ちょっと覗いて見ては如何だろうか?

 

 

以下ネタバレあり


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  • 妄想爆発厨二漫画!!

本作『サイコ工場』は、厨二の妄想が爆発している。

ストーリー自体は驚きの展開だ。
しかし誰でも、この理不尽な世の中に拳を振り上げたくなった事があるのでは?

ムカツクいじめっ子や
嫌味な上司、
意味不明の客先など、
世間はストレスフルである。

そんな世間やアホ共に、自ら「天誅」を喰らわせられたらどんなにスカッとするか。

せめて、頭の中の妄想でそれを発散させている人が多数だろう。

その妄想を現出させた作品
それが『サイコ工場』と言って良い。

だから、この理不尽なグロさに溢れた作品集を無碍には出来ない。
この暗い妄想は確かに自分の中にもあり、ある種の共感すら感じる部分がある

そこが、本作の魅力である。

 

  • しっかりした「起承転結」と予想外のオチ

本作『サイコ工場』はグロオチ中心の理不尽ホラー作品である。
そのストーリー内容はぶっ飛んでいる。

しかし、構成はキチンとしているので案外読みやすい。
物語の「起承転結」はしっかりと押さえているのだ。

その上で特徴的なのが「予想の付かないストーリー展開」である。

普段、普通に生きていると、いつの間にか意識せずとも「社会のルール」や「人倫に配慮した行動」を取っている。
その意識で『サイコ工場』を読むと、ことごとく裏切られる。

一般的に気持ちの良い展開やラストでは無く、悪意を見せつける様な予想外のオチを晒してくる。

しかし、である。
この『サイコ工場』のオチで驚かされる度に思う。

自分の感性が、「社会のルール」という規範の中に押し込められているという事実を認識せざるを得ないのだ。

だが、その一方で「よくぞやった!」と読んでいて快哉を叫ぶ部分もある。
「やり過ぎ展開」をある意味期待している部分もあるので、人間とは質が悪いものだ。

 

 

確かに本作の内容はぶっ飛んでいる。
だが、『サイコ工場』の作品は、キチンとした「起承転結」による、「意識した理不尽ホラー」である。
つまり、「常識に囚われた感性」を狙い撃ちにしたホラーであるとも言えるのだ。

……とは言え、この『サイコ工場』が楽しめるという事は、自分はまだ常識の範疇に留まっているのだと安心出来るのかもしれない。

もし、『サイコ工場』を読んで、「別に普通だな、驚く所は特に無いな」と思ってしまったら、それはあなた自身がサイコパスであるかもしれませんね。

 

こちらは「Ω線」の方。ちゃんと収録内容が違うので安心して欲しい。


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さて次回は、常軌を逸するほどの情熱を注ぐのは、狂気では無く、夢の為!?映画『火花』について語りたい。