エス・エフ小説『小説BLAME! 大地の記憶』感想 冲方丁を介し表出された『BLAME!』の代理構成体!

 

 

 

男は少年を保護し進んでいた。少年は遙か昔に人類が失った遺伝的特質を保有していた。その少年を守る男の名は霧亥、、、

 

 

 

映画『BLAME!』に合わせて出版されたコラボレーション企画。先駆けの『BLAME! THE ANTHOLOGY』に続き、作家冲方丁により描かれた中編『小説BLAME! 大地の記憶』が発売された。

冲方丁と言えば、SF小説『マルドゥック・スクランブル』『マルドゥック・ヴェロシティ』で名を馳せ、その後『天地明察』『光圀伝』等を発表、マルチな方向性を見せる才能あふれる作家だ。

冲方丁の小説は、感情に添ったウェットな表現がその魅力の一つだと思う。そんな氏が、どこか乾いた様な硬質感を思わせる原作漫画『BLAME!』を小説にしたらどうなるのか?非常に興味深かった。

本作『小説BLAME! 大地の記憶』は、いわゆる原作のノベライズである。
先の『BLAME! THE ANTHOLOGY』は原作の世界観を使ったオリジナルストーリーだったのに対し、本作は

原作の世界観を小説化した作品だ。

 

ストーリーも、原作準拠とオリジナル展開が半々位だ。

また、原作の雰囲気を再現する為か、

ワザと翻訳小説の様な文体を採用している。

 

この文体は好みが別れるだろう。
私個人の意見としては小説としては少々読みづらく感じた。文体で原作に似せようという努力が見られるが、冲方氏自身が本来持つ勢いのある筆致と相性が良くない様に感じたのだ。

以下ネタバレあり


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  • ストーリーについて

ストーリーは、導入部でオリジナル心理描写→それから原作準拠の小説化を経て→原作アレンジ展開、という流れだ。基本的に原作に忠実で、その中での冲方氏自身が考える『BLAME!』を表現した形だ。

冲方氏としては、自身の色を出すより原作の再現を優先したのであろう。
しかし、『BLAME!』ファンであり冲方丁ファンでもある私としては、氏が感情バリバリの文体で『BLAME!』を表現したらどうなるのかを期待していただけに、少し残念ではあった。
ここは難しい問題だ。原作ファンの希望に添いつつ、自身の色をどれだけ出すか、悩ましい所だ。

だが、この原作準拠という厳しい制約の中でも、「霧亥の行動原理」について冲方氏独自の哲学を展開せしめたのは流石の面白さがあった。

  • ここをちょっと見て!

さて、以下は本文の抜粋である。ちょっと見ていただきたい。私のお気に入りの部分である。

「珪素生物が怒りで髪を逆立てんばかりにしている様子を見て彼は不思議な感覚を覚えた。それは今しがた相手が言ったことをそのままそっくり相手に投げ返してしかるべきだといった、あたかも自他が相似となるような感覚だった。」(p.159より抜粋)

私が期待した冲方丁的『BLAME!』はこの様な感じであるが、如何だろうか?

 

 

原作アリ小説に何を求めるか?
原作忠実再現派もいれば小説オリジナル展開派もいる。
双方の希望をちょっとずつとった形の本作。
他人のフィルターで見た『BLAME!』はどんなモノになるのか、それを知る為に読むのも面白いだろう。

 

 


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さて次回は、『はなとゆめ』ならぬ映画『花戦さ』について語りたい。