映画『ドクター・ストレンジ』感想 ここがヘンだよ!?ストレンジ!!

 

 

 

傲岸不遜な天才外科医スティーヴンは交通事故に遭い、手を怪我してしまい精密な手術が出来なくなってしまう。しかし、現代医学では再起不能と目された者が魔術によって復活したとの噂を聞き、自らもその門を叩く、、、

 

 

監督はスコット・デリクソン。過去には『エミリー・ローズ』(2005)『NY心霊捜査官』(2014)等のSFやホラー作品の監督、脚本を手がけている。

主演ベネディクト・カンバーバッチ。BBCのTVシリーズ『SHERLOCK/シャーロック』で人気を博す。他に映画『ホビット』シリーズ、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014)等出演している。

共演にティルダ・スウィントン、キウェテル・イジョフォー、マッツ・ミケルセン、レイチェル・マクアダムス等。

『ドクター・ストレンジ』はご存じマーベル・シネマティック・ユニバースの一作品である。
本作は「ドクター・ストレンジ誕生篇」とも言うべき内容で、とにかくテンポが速い。そして内容を詰め込んでいる。その為ストーリーは若干おざなりだが、そのぶん

ビジュアルのインパクトが凄い。

 

この映画はストーリーなどよりビジュアルに振り切っているので、見た目や美術、衣装、小道具などの作り込みに注目してもらえるとよいだろう。

そしてテーマもまた面白い

登場人物の信条に注目だ。

 

そして、この映画、ツッコミ所が多いのも大きな魅力である。

ヘンな所は思いっ切りツッコんで楽しもう。

 

以下ネタバレあり

 


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  • ルールについて

本作のテーマは「ルール」である。
登場人物達が、ルールについてどの様な立場、信条を持っているのか注目して観ると面白い。

ストレンジの兄弟子のモルド(キウェテル・イジョフォー)はルールを守る者、ルールの守護者である。
決められたルールに則って行動し、秩序を重んじる。それが世界を平和にすると信じている。真面目な頑固者タイプだ。

敵役のカエシリウス(マッツ・ミケルセン)はルールを無視する者、ルールの破壊者である。
ルールを逸脱する事で他者を出し抜き、上に行こうとする。束縛よりも自由選択を選ぶため、自らの力に恃む事になる。その行動は世界に混沌を生み出す。

ドクター・ストレンジと師匠のエンシェント・ワン(ティルダ・スウィントン)はルールを利用する者、ルールの創始者である。
ルールとは自分の為に存在するもの、時と場合によってはルールを書き換えてしまってもやむなし、とするタイプである。
ルールを守るにしろ壊すにしろ、それはルールに囚われているという事である。ルール創始者はそれよりも高見から、ルール自体を総ざらいしてしまう。
だから、その分他者からの反発も多い。実力が無いと只の二枚舌に終わってしまう。

この三者三様の立場に注目し、そしてあなた自身の信条はどうなのかを考えながら観ると、より楽しめるのではないだろうか?

  • ストーリーとビジュアル

良いテーマには良いストーリーがある様なイメージだが、この作品はそうではない。キャラクター性だけでテーマを成り立たせており、こういう作品もあるのかと驚かせる。

ストーリーは兎に角テンポを優先している。
何故マントがストレンジに懐くのか?何故アガモットの目を簡単に使えるのか?そんな事はどうでもいいのである。何故ならストレンジは天才だからである。修行など必要ないのだ。深く考えてはいけない。

しかし、その分ビジュアルイメージが凄い。ビルが折り畳まれたり、重力の方向が変化したり、次元の位置をいじりまくってやりたい放題である。
…しかし、なんとなく『インセプション』で観た、なんてセリフは言ってはいけない。

一つ、特に印象に残ったシーンがある。ネパールでストレンジがエンシェント・ワンの当て身を食らい、意識が宇宙まで吹っ飛ぶシーンである。
もの凄い極彩色とエキセントリックな光景が目まぐるしく迫ってくる。

…私は思った。これは東洋的修行・悟りではなく、いかにも西洋的神秘主義だな、と。

ぶっちゃけ言うと、ドラッグでぶっ飛んでるだけじゃねぇか。舞台が東洋なのに発想は西洋である。アヘン持ち込むなよ!

やってる事は『テッド』や『ソーセージ・パーティー』と一緒である。
しかし、あちらはパロディだと分かり易いが、本作『ドクター・ストレンジ』ではそうだと分かりづらい。特に違和感なく流してしまう人もいるハズである。

「ここはネパールだけど、凄いビジュアル出したいし、エンシェント・ワンはケルト人だから西洋的神秘主義的ドラッグイメージを開陳してもイイよね♡」などと言われた様で、私は観ていて困惑しきりであった

  • 特定国家への配慮

先日、中国批判をした俳優のリチャード・ギア氏がハリウッドから干されているというニュースを目にした。言葉狩りをするほどに、現在のハリウッドは中国市場を重く見ているという事なのだろう。

この映画にも中国への配慮が見られる。

まず、地球を魔術的侵略から守る封印のポイントがイギリス、アメリカ、中国だった事だ。
主演のカンバーバッチの母国イギリス。制作国のアメリカ。そして巨大市場を意識して中国をそのポイントに当てたのだろう。この映画の主要なマーケットを映画の中でちゃんと教えてくれるのだ。大変親切である。

でもこれって、北半球しか守ってないんだよね

そして、最も特徴的なのがエンシェント・ワンのキャラクター設定である。
原作コミックのエンシェント・ワンはチベット人男性である。映画ではそれをネパール在住のケルト人女性にしてしまった。

チベットという設定だけ変更したらあからさまだから、いっそのこと人種と性別も変えて論点をぼかしちゃおう」という魂胆がミエミエである。唖然としてしまった。

 

マーベル・シネマティック・ユニバースの作品群はこれまで一定の水準、世界観を保った質のいいエンターテインメントを提供してきた。しかし、本作『ドクター・ストレンジ』でこの様な徒花を咲かせてしまった。
今後の方向性はどうなるのか、いろんな意味で注目して見ていきたい。

 

しかし、こういう事にツッコミを入れるのも映画の楽しみの一つなのである。私はこの作品大いに楽しんだのだった!!

 
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さて、次回は冷静な心を取り戻し、ワタクシとは関係ない世界を描いたギャンブル漫画『ぎゃんぷりん』について語ってみたい。