映画『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』感想  命懸けの、リアル脱出ゲームの開・催・だ!!


 

DVでストーカー気質の恋人に悩まされているハーパーは、
せめて、ハロウィンの日だけでもと、ルールメイト達と共に、パーティーを楽しんでいた。
同じ大学に通うネイサンとの会話も弾み、お化け屋敷にでも行ってみようと盛り上がったハーパー達6人。
道から外れた場所に、怪しげなお化け屋敷を偶々見つけた6人。
入り口で免責事項に署名し、携帯電話を預けて中に入るのだが、、、

 

 

 

 

監督は、
スコット・ベッグブライアン・ウッズ
このコンビは、脚本を手掛けた作品『クワイエット・プレイス』(2018)にて高い評価を得た。
監督作に、『ナイトライトー死霊灯ー』(2015)がある。

 

出演は、
ハーパー:ケイティー・スティーブンス
ネイサン:ウィル・ブリテン
ベイリー:ローリン・マクレーン
エヴァン:アンドリュー・コールドウェル
アンジェラ:シャジャ・ラジャ
マロリー:スカイラー・ヘルフォード 他

 

 

廃工場を改造した風の、
巨大な迷路状のお化け屋敷アトラクションに侵入した、
ハーパー達大学生6人組。

不快な演出にドン引きする場面もありつつ、それなりに楽しみながら進んで行く。

しかし、ベイリーが腕を怪我し、
迷路の一室に皆が閉じ込められた事を機に、雰囲気は一変。

キャストの一人に、
「とっとと外に出せ」「責任者と話しをさせろ」と問い詰めるが、
そんな若者のがなり声など、何処吹く風。

メンバーの一人がつかまり、
皆の目の前で惨殺される!!

なんと、この施設は、
キャストである
「ピエロ」
「ゴースト」
「ヴァンパイア」
「デビル」
「ゾンビ」
「ウィッチ」達が、
迷い込んだ犠牲者を餌食とする、恐怖の「狩り場」だったのだ!!、、、

 

 

…このあらすじを読んで、どう思われるでしょうか?

ぶっちゃけ、不謹慎だが、面白そう!

 

そう、思ったのではないでしょうか?

本作『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』は、
その印象、期待そのまんまの作品

スラッシャームービーの全盛期だった、
1980年代を匂わせます。

 

時に、批判のラインのギリギリを攻めて来る、過激なストーリー、
ワンアイディアを活かした設定の妙、
血と暴力のゴア表現、
犠牲者(演じる役者は無名)を襲う、サイコな殺人鬼との攻防…

本作は、

ホラー映画に必要な、
あらゆる基本的な設定を律儀に踏襲しているのです。

 

 

絶対安心な恐怖ほど、面白い

これは、真理です。

遊園地のジェットコースターとか、
不倫モノの昼メロとか、
ホラー映画も、そうですし、
そう、本来、お化け屋敷も、そうあるべき存在です。

しかし、
相手の「おもてなし」を期待したハズが、
逆に、自分が相手に饗される側だったという絶望感!!

まるで、
宮沢賢治の『注文の多い料理店』状態!!

 

お化け屋敷に入ったつもりが、
実際出て来たのは、
サイコな殺人鬼!!

どっこい、これが現実!!

ワンアイディアの恐怖を存分に描いた作品、
それが本作『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』なのです。

 

 

  • 『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』のポイント

リアル脱出ゲーム風の、お化け屋敷アトラクションとしての面白さ

ワンアイディアを活かし、ホラー映画の基本を抑えた設定

被害者目線と加害者目線を行き来する、ホラー映画ファンの心理

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 題名について

本作『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』の原題は『HAUNT』。

劇中では、
お化け屋敷への入り口のネオンサインが「HAUNTED HOUSE」だったのですが、
一部が消えており「HAUNT」となっておりました。

 

字義を考慮しますと、
「haunted」だと「幽霊」という意味ですが、

「haunt」では、
「憑く」という、幽霊的な意味合いもありつつ、
「巣窟」という意味も含んでいます。

つまり、
サイコな輩の巣窟だと、暗に意味しているのですね。

 

また、「haunt」から連想される言葉に、
「a」を抜いた「hunt」(狩り)という言葉もあります。

人間狩りという意味も、込められているのではないでしょうか。

 

では、それが何故、邦題にて「ホーンテッド」(haunted:幽霊)になったのか?
本作は、幽霊では無く、サイコな殺人鬼の恐怖を描いているのに?

そこは単純に、字義は全く考慮せず、
「ホーンテッドマンション」という、
ディズニーランドの、お化け屋敷アトラクションを意識しているからでしょう。

こういう、
邦題と原題の違いに注目するのも、
面白いですよね。

 

  • 犠牲者目線と、加害者目線

絶対安全な恐怖こそ、面白い

これは、世の中の真理です。

ホラー映画が面白いのは、
自分は絶対安全な場所に居ながら、
恐怖に戦く犠牲者達の右往左往を、
余裕を持って、優越的な位置から眺められるから
です。

身も蓋も無いですが、
人間の心理として、
それが、真実の一端です。

 

安全が担保されているから、恐怖を楽しめる、
そういうジャンルの例を挙げるなら、

遊園地のジェットコースターもそうですし、
過激で毒舌な漫才とかもそうですし、
バンジージャンプや、スカイダイビングも、そういう側面があると思います。

 

そういう意味では、
「恐怖を楽しむ」というのは、
ある意味、不謹慎なものという謗りは免れません。

しかし、
ホラー映画のみならず、
それらのジャンルには、
また、違った一面も持っています。

 

私は、子供の頃、
ホラー映画を観た日は、
その夜、夢に出て来る位に、うなされ、恐怖を感じていました。

『エイリアン』(1979)
『13日の金曜日』(1980)
『エルム街の悪夢』(1984)etc…

未だ、純粋だった頃、

セックスに勤しむ陽キャも、
おバカな事を繰り返すお調子者も、
死亡フラグを立てるスポーツマンも、

誰も、彼もに感情移入し、
誰が死んでも、自分の事の様に、恐怖と苦しみを感じていました

 

しかし、
ホラー映画を観慣れる内に、
段々と、
「誰が死ぬ」「殺人鬼の行動パターン」「ストーリー展開」が読めるようになり、

そういう段階になって来ると、
逆に、
そういう「ホラー映画のお約束」を見つけたり、見せつけられたりすることが、
楽しみとなって行きました。

 

そこから派生すると、
段々と、
「ホラー映画」においては、死んで当然な死亡フラグを立てるキャラクター、

いじめっ子や、
セックスばかりの陽キャが死ぬ事が当たり前、

むしろ、
「ホラー映画ファン」みたいな、
現実の世界では、
いじめられたり、いじられたり、不満や、不安を抱えて生きて居るような陰キャにとっては、

そういう、パリピの死が、
ある種の清涼剤といいますか、
辛い現実を昇華する、ガス抜きの役割も果たす事になるのです。

 

それは、
ホラー映画を作っている方も意識してやっている事で、
言うなれば、
制作者側と、観客側の共犯関係が成り立っているとも言えるのです。

 

さて、
そこから、
更に派生しますと、

子供の頃は、犠牲者目線で恐怖をリアルに体感していたハズのホラー映画も、

陽キャやパリピ以外の、
好感度の高い登場人物が死ぬ時でさえ、
自らの恐怖への感情移入を拒否し、

むしろ、
恐怖をから逃れる為に、

自分が、加害者目線で、
恐怖を与える者として、
犠牲者の死を楽しむという段階に突入してしまいます。

 

こうなると、
観客自身が、完全にサイコだと言えます。

絶対安全な位置から、恐怖を眺めていたハズが、

心理的には、
知らず知らずの内にも、
加害者として、作品に参加しているのです。

 

ホラー映画には、
恐怖や不満、不安を昇華するという側面がありつつ、

しかし、
他人に恐怖を与える側の目線を、
観客が獲得してしまうという負の側面もあるのです。

ホラー映画ファンは、
その事を自覚し、
一線を越えないように、
常に、意識しなければならないのです。

 

先日、
TV番組の「テラスハウス」というリアリティーショーに出演した女性が、
SNSでの誹謗中傷に耐えきれずに、
自殺した(のではないか)というニュースがありました。

これなどは、
私個人の意見ですが、
正に、
ホラー映画の構図を、リアルに持ち込んでしまった悪例だと思うのです。

 

リアリティーショーにおける「悪役」の不快な言動を受け入れられなかった(耐えきれられなかった)視聴者が、

その不快な鬱憤を晴らす為に、

逆に、自分の不快さを、
相手にぶつけて、
加害者側(ホラー映画で言うと殺人鬼側)として、
SNS上で、相手を非難する(ホラー映画で言うなら殺そうとする)。

自分が加害者となる事で、
不快さ(恐怖)から逃げているのですね。

 

絶対安全な恐怖こそ、面白い。

SNS上で、他人を批判するという行為は、
そういう、
絶対安全な位置から他人に「恐怖」を押し付けるという、

ホラー映画の殺人鬼にも匹敵する行為であるのです。

 

 

恐怖と対面し、
それを乗り越えるという行為は、
言う程簡単ではありません。

本作でも、
主人公のハーパーは、
父親の母親に対するDVの恐怖で、
長年、実家に帰っていないという心の傷が描かれていました。

そのDVの悪夢に悩むハーパーは、
ラスト、
自らの悪夢に、
今回の恐怖体験が加わり、トラウマがパワーアップしてしまった事を知ります。

故に、
加害者に対して、
敢然とカウンターを喰らわせる必要があった。

自分がトラウマを植え付けられた、
実家にて。

しかし、
襲撃者のピエロを罠に嵌めた(=トラウマを克服した)ハーパーの表情は、
あくまでも、苦しそうでした。

 

加害者側として、殺人を楽しむ時と違って、

恐怖を昇華するには、
カタルシスもありますが、にがい後味と苦しみをも伴う

本作は、
ラストのハーパーの表情に、

ホラー映画としての矜持と、良心が込められているのです。

 

 

まぁ、ぶっちゃけ、
地元に、そんな危険なお化け屋敷があったら、

流石に話題になるだろうと、

バレずに、
殺人お化け屋敷なんて、
開催するのは無理だろうと、

そんな野暮なツッコみは措いて、

『ホーンテッド 世界一怖いお化け屋敷』は、

基本に忠実な、
全うな、ストレートなホラー映画と言えます。

王道だからこそ、面白い、
本作は、そんなホラー映画なのです。

 

 

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