映画『アナと雪の女王2』感想  雪の女王 V.S 四大精霊!!今度はバトルだ!!

姉妹の絆によって救われたアレンデールの国。女王のエルサの統治の下、妹のアナや国民は平和を謳歌していた。
しかしある夜、エルサは自分を誘う不思議な「呼び声」を聞いてしまう。
「もう、冒険などしない」そう思えども、未知の世界に憧れるエルサは、その声が呼ぶ北方へと旅立つのだが、、、

 

 

 

 

監督は、前作に引き続き、
クリス・バックジェニファー・リー

 

声の出演は、(オリジナル/日本語吹替え)
エルサ:イディナ・メンゼル/松たか子
アナ:クリステン・ベル/神田沙也加
クリストフ:ジョナサン・グロフ
オラフ:ジョシュ・ギャッド 他

 

 

 

レリゴ~♪
ままの~♪
少しも寒くないわ♪

 

空前の大ヒットを飛ばした「アナ雪」こと、
『アナと雪の女王』(2013)。

印象に残る主題歌と、
女性の解放をテーマに描き、

日本は勿論、
世界中で支持され、
ディズニーアニメ作品史上、最もヒットした作品です。

 

その待望の続篇が遂に登場しました。

しかし、
ぶっちゃけ、
テーマ的にも、ストーリー的にも、
一作で、キレイに完結した作品に、続篇を作る意味、意義はあるのか?

蛇足ではないのか?

また、
日本版のキャッチコピーは
「なぜ、エルサに力は与えられたのか―」というモノ。

こういう、後付けの能力説明みたいな続篇は、
ことごとく失敗するのが恒例ですが、
「アナ雪2」はどうなるのか?

 

 

まぁ、
既に公開から日にちが経ち、
この場末のブログで何を言おうと本作のヒットは動かないので、
ハッキリした事を言うと、

本作「アナ雪2」は、
そのストーリー、設定、テーマは、
前作「アナ雪」と比べると、グチャグチャなものとなっています。

しかし、

それでも、
「アナ雪2」は面白い!!

それは何故か?

先ず、

美術、演出の派手さ、可憐さ、綺麗さが良いのです。

 

 

雪というか、
氷の超能力者であるエルサ。

それ故、
「雪の結晶」を度々使う訳ですが、
そのキラキラ感が凄いですね。

そして、
それに負けず劣らず、
エルサ自身が着るドレスも、
一見、シンプルな感じながらも、
寄ったショットをよく観ると、
非常に凝った作りになっている事が見てとれます。

また、
舞い散る紅葉、
うねり狂う海の大波、など、

3DCGで表現するには、
難しい題材にもチャレンジしており、

ビジュアル面での本気度が伝わってきます。

 

そして、

本作での注目面は、バトル要素!!

 

「は?ディズニーの女子向けのミュージカルアニメ映画でバトル!?」

と、思われるかもしれませんが、

実は本作、
アクション部分がメインの作りとなっているのです。

 

前作「アナ雪」は、
アナとエルサのダブルヒロインという形でしたが、
基本、アナが中心のストーリーでした。

しかし本作「アナ雪2」は、
あくまでも、エルサが中心の物語で、
アナは第二登場人物という位置付け。

エルサが氷の能力を存分に活かし、
数々のアクションを披露するのが、
本作のメインテーマと言える作りなのです。

 

 

守られたり、
救われたりするのがお姫様じゃぁない!!

新時代のヒロインは、
自ら先頭(戦闘)に立って、道(未知)を切り拓く!!

 

そのエルサの活躍に、
胸がすく想いがあるのです。

 

まぁ、しかし、
先にも述べた様に、

本作は、
ヒットした前作を受けて「後付け」で制作した作品であるが故に、

ストーリー、設定、テーマとしては、
前作と齟齬を来しています

なので、
前作を盲信しているファンにとっては、
本作は物足りない部分もあるかもしれません。

 

それでも、
前作とは、また違った面で、
一つの作品として楽しむのも又、
続篇の楽しみ方の一つだと思います。

『アナと雪の女王2』
今更言うまでもありませんが、
ちゃんと面白い作品です。

 

 

  • 『アナと雪の女王2』のポイント

雪の女王のバトルシーン

美術面でのクオリティの高さ

グッチャグチャのストーリーや設定は、むしろツッコんで楽しむべし!!

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • ツッコみたいアナ雪2

『アナと雪の女王』は、そのヒットに、
主題歌の「レット・イット・ゴー」の功績が多く上がられていますが、
テーマ的にも、大変興味深いものを提示していました。

親という、権威に傅(かしづ)く愛では無く、
男性という、異性に対する恋や肉欲を欲する愛でも無く、

姉妹という形で描かれる、
相手を真に思う、無償の「親愛」を描いた作品であり、

それが、
女性の、権威や男性の束縛からの解放という描写に繋がっていました。

 

そういった前作がありながら、

実は本作、

テーマも、設定も、
前作とは矛盾点が多く、

そんな無理を通した為、
ストーリーは疎かな感じになってしまっています。

 

その点を、
前作と比較しながら、ちょっと語ってみたいと思います。

 

  • 両親とエルサ、アナの関係

「アナ雪」では、
ざっくり言うと、
氷の能力でアナと傷付けたエルサは引き籠もってしまっていた訳ですが、

両親は、その状況を、放置する事で、
是正するというより、むしろ推奨していた感があります。

そういう、
本来なら得られるハズだった親の愛を、エルサは得られず、

しかし、
傷付けられた本人であるアナは、
エルサに無償の愛を与えたという事で、

「親子の愛」という典型を超える愛の形を示したと言えます。

 

しかし本作では、
そのストーリー、設定を変えてしまっています。

いつの間にか、
「両親も、エルサを愛した良い人」みたいな雰囲気を演出しているのです。

その所為で、
ストーリー上というか、
エルサの境遇上の悪者が居なくなってしまった

そして、どうしたのかというと、

今度は、祖父を単純な悪人にしているのです。

 

「アナ雪」では、
両親が、アナを守る為に、苦渋の選択をした、
という、
ある種の、常識的な判断故の葛藤が描かれており、

正しい行動では無かったとしても、
悪人ではありませんでした。

それ故、
アナの愛が際立っていたのです。

 

しかし「アナ雪2」では、

祖父を単純な悪人として設定し、

その祖父の因縁で、
エルサが「雪の能力を持った」かの様に描かれています。

その為、
前作では愛の話だったのが、
本作では、先祖の尻拭いの為に、責任を取らされる形になっているのです。

 

エルサは、「アナ雪」で、
あの有名なシーン「レリゴー」の場面にて、
抑圧から解放された、自由な存在としての自分を主張しました。

そしてアナは、
その主張を含めて、エルサを愛した。

だからこそ、
解放された存在としてのエルサは、
アナという存在があるが故に、
逆に、責任と束縛の象徴たる、国の女王の地位に就く事になるのです。

つまり、
自分の自由意志で、責任を背負う事を決意しています。

 

しかし、
「アナ雪2」はそうでは無く、

運命、因縁という形で、
責任が、エルサに押し付けられているのです。

 

  • 上位の存在としての「神」

悪事を働いた祖父。

その象徴たる、ダムを破壊するというミッションを課せられたエルサ。

その為に、
エルサは雪の能力者として生まれたのです。

エルサは、
他の4体の精霊に自分を認めさせる事で、

ノーサルドラの地に平和をもたらす、
「第五の精霊」として、覚醒する。

という、運命というか、使命を課せられているのが、
本作のストーリーとしての流れです。

 

つまりエルサは、何か「上位の存在」により、
責任を強要されていると言えます。

端的に言うと、
「神」ですね。

 

精霊が出て来るという意味においては、
本作は一見、
アニミズム的な思想の作品に、
見えなくもありません。

しかし、
上位の存在から課せられた責任を、
無条件で受け入れざるを得ない

という意味では、
如何にも、
一神教的な思想を持っていると思われます。

 

「親」という上位の存在の束縛からの解放を宣言し、
しかる後、無償の愛の存在を知り、
自由意志にて、責任を負う事を決断する。

束縛と、男性性からの解放を、
「アナ雪」は描いていました。

しかし、
「アナ雪2」は、

上位からの責任の強要、

つまり、
上位の命令を聞かざるを得ないという、
何とも、男根主義的な、

「アナ雪」で描いたものと、
テーマ的には真逆な結果に陥ってしまっているのです。

 

前作の、
最もカタルシスを得た部分を全否定するこの様子に、
内心、忸怩たる思いがするのは、
私だけでしょうか?

 

キリスト教は、
その勢力を拡大する過程で、
土着の信仰の対象を、
「悪魔」と堕する事で、
自らの価値をアゲていた

と、
ゲームの「真・女神転生」で言っていました。

本作で言うと、

自らの意思を責任で「女王」という唯一無二の存在に就いたエルサを、

他から責任を課す事で、
「精霊の一体」に堕とすという描写を描いています。

 

  • 設定ガバガバ!?

さて、
そういうテーマ自体の転向もさる事ながら、

「アナ雪2」は、
「アナ雪」に比べてというより、
物語の設定そのものに繊細さを欠いています

 

先ず、
ノーサルドラの位置ですが、

主題歌の「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」では、
「未知の旅へ踏み出せと」と歌っていましたが、

実際は、
もの凄く近い。

決壊したダムの水が、
直ぐに到達する位近いです。

殆ど、
隣町くらいの距離感。

10キロ離れてない感じですね。

 

そんなに近いところで、
両親の乗った船が座礁したのに、

何故、「南の海で船が沈没した」などというガセネタが流れたのか?

もしかして、
嘘を言った人物が居るのかもしれませんが、
ストーリー上では全くノータッチです。

 

また、
「アナ雪」では、
それなりに、カッコ良い感じの好青年だったクリストフ。

好青年のクリストフではあるけれど、
アナは彼とイチャイチャするより、
エルサ、ラブ!でした。

エロスより、
エルサへの親愛を描いていたのです。

一方、本作のクリストフは、
好青年というより、
何処か、
「旧来の映画で描かれてきた女性像」を付託された存在として描かれています。

プロポーズで悩むのは良いとして、

何か事が起きると、
アナに「ねぇ、どうしたら良い?」と主体性無く尋ねたり、
他人の助言を真に受けて、失敗の繰り返しに陥ってしまったりします。

極めつけは、
本作で、最もインパクトのある場面である、
クリストフのソロ歌唱パートなんかもあります。

この、クリストフのミュージカルシーンは、
まるで、
男性アイドルグループの人気メンバーが、ソロデビューで、シングル曲をリリースするときのプロモーションビデオみたいな気恥ずかしさがあります。

 

女性の、
旧態依然とした男性からの支配、それからの解放を描いた「アナ雪」ですが、

「アナ雪2」は、
そういう、「旧態依然とした男性に支配される女性像」の典型を、
「結婚こそが、目の前の危機より幸せ」みたいな態度のクリストフ
つまり、
敢えて男性に演らせるという皮肉を描いています。

まぁ、
それはそれで、作った側の主張なのでしょうが、
しかし、個人的には、
前作で葬った価値観を復活させている事は、残念に思えます。

 

しかし、
孤独な道を往くエルサと、
自由な思想で、男性と結婚「してあげる」アナという構図は、

ある意味、
女性の人生の多様性を描いているとも言えるので、
一概には、批判出来ない部分です。

 

 

 

まぁ、色々言いましたが、

バトルシーン面白かったのはまた、事実。

特に、
水の精霊ノックとエルサのバトルシーンは、
見応えがありました

その時のエルサの、
まるでフィギュアスケーターの様な衣装も格好良かった!

 

美術的な面、
音楽、
バトルシーンなど、

注力するべき所は、
極端にハイクオリティである一方、

ストーリーやテーマの部分で残念さが目立つ『アナと雪の女王2』。

作品全体の完成度を語るより、
伝えたい事を取捨選択した、メリハリのある作品として、割り切って楽しむものなのかもしれませんね。

 

 

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