映画『バジュランギおじさんと、小さな迷子』感想  越境、越えるのは、国境のみならず、因習!?


 

ヒンドゥー教のハヌマーン神を熱烈に信仰するパワンは、父の死後、その言いつけを守って、就職の為にデリーに向かう。居候先のお嬢さんと仲良くやって、楽しく過ごしていたパワンは、ある日、喋れない迷子の少女に出会う、、、

 

 

 

 

監督はカビール・カーン。
監督作に
『タイガー 伝説のスパイ』(2012)等がある。

 

出演は
パワン(バジュランギ):サルマン・カーン
シャヒーダー(ムンニ):ハルシャーリー・マルホートラ
ラスィカー:カリーナ・カプール
チャンド・ナワーブ:ナワーズッティーン・シッディーキー 他

 

 

インド映画ですよ。

もう、「日本に入ってくるインド映画」ってだけで、
鉄板の面白さが保証されている様なものですよ。

 

さて、
本作『バジュランギおじさんを、小さな迷子』は、
実は、2015年にインドで公開された映画です。

それが、
巡り巡って、
やっと、今更感がありますが、
3年遅れで、日本でも公開されたという事は、

それこそ、本作が多くの人に愛されているという証左なのでしょう。

 

 

ハヌマーン神にお祈りした帰り道、
迷子の少女に出会ったパワン。

少女は喋る事が出来ず、
警察に連れて行きますが、
しょっぱい対応をされます。

仕方なく、居候先に連れ帰り、
成り行きで保護する事になります。

名前が分からず、とりあえずムンニ(お嬢さん)と呼ぶパワン、
しかし、
クリケットのTV中継で、パキスタンのチームを応援していた事で、
その素性が判明、

居候先の家長、ダーヤナンドは、
「ムスリムを我が家に入れるとは、何事か」と激怒します。

パキスタンの大使館経由でムンニを国に帰そうとするパワンですが、
折悪しく暴動が起こり、大使館は閉鎖されます。

パワンは、自分がムンニを国に連れ帰ると決意しますが、、、

 

 

こんな感じでストーリーが進んで行きますが、
そこは、インド映画。

恋あり、
アクションあり、
冒険あり、
そして、歌と踊りと感動あり!

 

兎に角、
エンタテインメントの見本市!

観ていて、楽しい!

ハラハラドキドキ!

ちょっと待ちなよ!とツッコみを入れつつ、

最後には、感動の涙が流れます。

 

映画を観て、
ちょっと良い気分になりたい?

それなら、
本作『バジュランギおじさんと、小さな迷子』を観なきゃいけませんよ!

 

 

  • 『バジュランギおじさんと、小さな迷子』のポイント

観ていて楽しい、王道の展開

可愛い過ぎるヒロイン

ハヌマーン神

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 面白さを支える、細部への配慮

インド映画と言えば、
何となく、歌と踊りのイメージです。

確かに、
インド映画を観る場合、
歌と踊りがいつ出るか、そこに期待しているのは事実。

しかし、
日本で公開される、
有名なボリウッド作品(インド映画)を観て思うのは、

どの作品も、
「観客を楽しませよう」というサービス精神に溢れた作品ばかりだという事です。

一つの映画の中に、
恋愛要素、
アクションシーン、
旅、冒険の様子、

これらを盛り込み、
歌と踊りで彩り、

そして、最後は、感動で締めるという、

正にこれぞ、エンタテインメントと言えます。

 

しかも、老若男女、
国籍を越えて、誰でも楽しめるというのが凄い。

派手な外見に目が奪われがちですが、

実は、丁寧に、
計算され尽くして作っているからこそ、
この面白さがあるのですね。

 

それを象徴するのが、
本作の最初のダンスシーン「Selfie Le Le Re (セルフィーを撮ろう)」です。

セルフィーとは、いわゆる自撮りの事。

最初は、ハヌマーンを讃える歌だったハズが、
いつの間にか、
自撮りの歌になっているのが、
ミステリアスなご愛敬です。

さて、この歌、
携帯などで、自分を映すことを「自撮り」と言うんだよ、

と、わざわざ説明してくれる歌でもあります。

「そんな事、知ってるよ」と思われるかもしれません。

しかし、
自撮りを知らない人もいるかもしれません。

そういうテクノロジーに疎い人は、
後半、TV記者のナワーブが、
「自分を自分で撮影している」行為を、理解出来ないかもしれないのです。

しかし、
「自撮り」という概念がある、
それを、ちゃんと冒頭で説明しているからこそ、

大して説明はされずとも、
何となく感覚で、「自撮り」的な事をしているなと、
誰が観ても分かる作りになっているのです。

 

知っている人なら当たり前の事でも、
知らない人にはちんぷんかんぷん、

そういう事でも、
解り易く説明してくれている、
そういう丁寧な作りだからこそ、
鉄板の面白さを形成出来るのです。

 

他の場面、
例えば、ムンニがムスリムだと判明する一連の流れ。

ヒンドゥー教とイスラム教の事を知らなくとも、

パワンがムンニの行動に、
過剰反応する、

その様子の積み重ねで、
「ああ、ムンニの行動は、パワンにとってはタブーなんだな」と、
話の展開で理解出来ます。

そして、
その流れの締めとして、
「チキン」の歌が流れます。

このシーン、
自分達は食べないけれど、
ムンニに遠慮させない為に、
楽しい雰囲気をパワン達は演出しているのですね。

宗旨が違えど、
相手を理解し、尊重する事が出来る

このシーンは、
そういう心優しいシーンでもあるのです。

 

  • ハヌマーン信仰と多重性

本作の興味深い所に、
主人公のパワンが、ハヌマーンを信仰している、
という設定があります。

ハヌマーンとは、
ヒンドゥー教における、
インド神話の登場人物(というか猿)です。

私にとってのハヌマーンは、
ゲームの「真・女神転生」シリーズにて、
適当に合成しても、毎回出て来てくれる頼りになるヤツです。

 

ヒンドゥー教の聖典、
叙事詩『ラーマーヤナ』では、

ハヌマーンは『ラーマーヤナ』の主人公ラーマを助け、
数々の冒険、活躍をします。

そして、ラーマは、
ヒンドゥー教にて、最も人気があり、重要な神の一人、
ヴィシュヌ神の化身。

 

ハヌマーンの仕えるラーマはヴィシュヌの化身。

つまり、
ハヌマーンを信奉する事は、
ラーマを尊重する事であり、
それはつまり、ヴィシュヌ神を讃える事。

そういう多重性を、
ハヌマーン信仰は内包しているのですね。

 

この、一つのキャラクターが多重性を持つ
というのは、
本作が持つ、重要なテーマの一つです。

ムンニは、
無垢で純真な少女でありながら、
ヒンドゥー教の観点からすると、ムスリムとは相容れない、
つまり、忌避すべき存在

パワンは、
嘘がつけない、真っ直ぐで純粋な男ですが、
一度火が付けば、無敵のヒーローでもあります。

ナワーブは、
パワンを、インドのスパイとしてスクープし、一発当てる事を目論みますが、
彼と接する内に、パワンの理解者として、無私のサポートをします。

 

人は、状況や立場が変われば、
その見え方は、如何様にも変化するものです。

しかし、
人は、人と接する事で、
その違いを尊重し、
お互い、理解し合える

本作は、
その事を描く事に主眼を置いた作品だと言えるのです。

 

 

 

宗教の違い、国の違い、歴史観の違い、、、

様々な違いは軋轢を生みがちですが、
しかし、
それを乗り越えて、人はわかり合える。

『バジュランギおじさんと、小さな迷子』は、
その事を謳った物語であり、

それを、おじさんと、少女の旅の物語にて、
エンタテインメントとして、

誰もが楽しめる作品に仕上げている事に、
本作の面白さがあるのです。

 

 

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