インド人・ドーピンダーが運転するタクシーにて高架線まで向かうデッドプール。彼が付け狙うのは、フランシスという奴隷商人。何故デッドプールはフランシスを追うのか?それは、聞くも涙、語るも涙(?)のラブストーリーであった、、、
監督はティム・ミラー。
本作が長編映画の監督デビュー作。
特殊効果の映像製作会社を設立し、
『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)
『マイティ・ソー ダーク・ワールド』(2013)等の制作に関わっている。
主演のウェイド・ウィルソン/デッドプールを演じるのはライアン・レイノルズ。
本作では制作も兼ねている。
主な出演作に
『ブレイド3』(2004)
『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009)
『[リミット]』(2010)
『グリーン・ランタン』(2010)
『黄金のアデーレ 名画の帰還』(2015)
『ライフ』(2017)
『デッドプール2』(2018)等がある。
共演に、モリーナ・バッカリン、エド・スクライン、T・J・ミラー、ジーナ・カラーノ、ブリアナ・ヒルデブランド、カラン・ソーニ、他。
R指定の映画作品である『デッドプール』。
2016年に公開された本作は、まさかの世界的大ヒット。
R指定映画、そして「X-MENシリーズ」の映画として、
最高の興行収入を記録しています。
(2018/06/01現在)
アメコミヒーロー映画が乱立する昨今。
本作独自の魅力と言えば、
無茶苦茶でハードなゴア表現と
そして、下ネタ含めた多彩なユーモアの両立です。
ちょいエロもあって、グロとバイオレンス。
大人の陰キャオタク向けのキャラクター、
それがデッドプール。
しかし、本作がヒットしたのは、それだけではありません。
確かにオタク向け要素も多いです。
映画ネタ、
下ネタ、
小ネタ、
ギャグ、
X-MENネタ 等々
ユーモア要素多数、
そして、アメコミ映画としての
アクション、
しかし、本作の核として貫かれているのは、
意外かもしれませんが、
ラブストーリー。
この要素があるからこそ、
興行的には不利と言われるR指定での大ヒットとなったのです。
ハードな表現と
アクション
ユーモア、
そしてラブストーリー。
面白い映画とは、こういうもの。
それを体現するのが、『デッドプール』なのです。
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映画『デッドプール』のポイント
独特のユーモアとR指定特有のハードな表現のバランス
時系列をいじった構成
ラブストーリー
以下、内容に触れた感想となっております
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ヒーロー登場!!
本作『デッドプール』はアメコミ映画。
「クソ無責任ヒーロー」
との宣伝文句が踊っていますが、
なんの、なんの。
実際に観てみると、
「デッドプール」こそ、理想のヒーロー像の体現であるのです。
理想の恋人・ヴァネッサと出会ったウェイド。
しかし、末期癌と診断され、藁をも縋る思いで怪しげな「リクルーター」の誘いに乗り、
ヴァネッサには内緒で治療の望みをかけます。
なんとそれは、というか、案の定、
治療法とは名ばかりで、
人工的にミュータント遺伝子を発現させる為に、拷問と人体実験を繰り返し、奴隷として売る斡旋業者だったのです。
そこで不死身の肉体となってしまいますが、
その副作用で全身の皮膚が爛れたウェイド。
彼は実験施設を抜け出し、
その責任者のフランシス、通称エイジャックスにキッチリケジメを付けさせようと、
復讐の鬼「デッドプール」となり、付け狙うのです。
デッドプールは軽口と型破りな行動を繰り返します。
そして、「自分はスーパーヒーローでは無いが、スーパーだ」
なんて言ったりします。
一見チャラい感じですが、
そんな事は全くありません。
むしろ、実は責任感を持った真面目なヤツだと観ていると気付くのです。
フランシスにケジメを付けさせる為の行動力、
そして、
自らの醜くなった外見を気にしてヴァネッサの前から姿を消したのに、
彼女がさらわれたと気付くと、一匹狼を気取っていたにも関わらず、コロッサスに加勢を頼む身も蓋も無さ。
これが、愛と責任感と言わず、何がそう言えるでしょうか?
そして、
素性を隠す意味と、
そして、自らの醜い外見を隠すという意味でマスクを被って「デッドプール」となったウェイド。
残虐性と独特のユーモア感覚を発揮しますが、
それはある意味、自らの不安を覆い隠す「マスク」でもあるのです。
ウェイドはデッドプールとなった後、
恋人のヴァネッサに会いに行かず、盲目のアンと同居します。
自らの外見が醜くなったというコンプレックス、
外見を見られたくないという意思と、
恋人に拒絶されたくないという不安の表われなのです。
冗談とユーモア、そして残虐性にて、
表面的には愉快で余裕のある感じを演出しつつ、
実は自らの辛い状況を覆い隠している。
「デッドプール」とは、屈折し、複雑な感情を持った存在ですが、
そこが魅力なんですよね。
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ラブストーリーは突然に!?
『デッドプール』の映画としての魅力って何でしょうか?
全篇にちりばめられたギャグ、
映画ネタ、
下ネタ、
小ネタ、
X-MENネタ、
残酷ギャグ、
ヒュー・ジャックマン、
様々なアドリブ、
等々。
元ネタを探す楽しみがあって、
何度でも映画を観てしまいます。
そして、魅力的で効果的な音楽の数々。
オープニング曲
『Angel of the Morning』Juice Newton
高架線の戦い、そしてエンディングでも流れた
『Shoop』Salt-N-Pepa
ラブシーンを彩った
『Calendar Girl』Neil Sedaka
「デッドプール」誕生とフランシス捜索の時のノリノリ音楽
『Deadpool Rap』
テーマ曲っぽい感じで、3人で乗り込むときにかかっていた
『X Gon Give It to Ya』DMX
約束された恋人達の来世の音楽
『Careless Wisper』George Michal(Wham!)
どれも素晴らしい楽曲で、
音楽を聴くだけで、映画の場面が思い浮かびます。
R指定の残虐アクションも忘れられません。
R指定ならでは、
血が噴き出し、
殺人にも容赦無し。
しかし、アメコミヒーロー映画乱立の昨今において、
このアンチヒーローぶりが逆に個性となって観客を多く惹きつけたのも事実。
しかし、一番の要素は、
ストーリーの核として映画を支えたラブストーリー要素と言えるのではないでしょうか。
粗暴な感じがあっても、
独特のユーモアとちょっとオタクっぽい感じの趣味も併せ持つウェイド。
割れ鍋に綴じ蓋といいますが、
歪であるからこそ、パズルのピースの様にピッタリとハマった二人。
『カレンダーガール』の曲に乗せて一年中イチャイチャする二人ですが、
ウェイドが癌になった事で物語が進んでしまいます。
癌の闘病に巻き込み、ヴァネッサを失望させたくないウェイド。
彼は単身治療の望みを掛けて人体実験を受け、
癌は完治しても醜い姿となってしまいます。
彼はその外見を気にして恋人に会えません。
ヴァネッサに拒絶される事が怖いのですね。
その一方で、
外見を元に戻す為に「デッドプール」となり、フランシスを追い、対決します。
確かに、アメコミ原作のスーパーヒーローアクション物ではあります。
しかし、ウェイドの感じる
喜びや不安、怒りや羞恥心など、
これは誰もが感じる一般的な感情、
特に、恋愛時に起因するものであるのです。
こういう、誰もが持っている、実生活で抱えている喜びや不安感、
それがラブストーリーと共に描写されるからこそ、感情移入する事が出来るのです。
そして、型破りな方法で、
それらの喜びを表現したり、
不安や困難を打破するからこそ、
デッドプールは魅力的なキャラクターであるのです。
やっぱり映画のラストはハッピーエンド。
これだから、ラブストーリーは面白いのですよね。
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構成の妙
- 本作『デッドプール』は時系列をいじっています。先ず、最初にアクションシーンにてツカミをもっていき、
そして、それを回顧する形で、そこまでに至った経緯を語ります。この高架線のアクションシーンと
過去を行き来する構成が素晴らしいのですよね。
『デッドプール』の基本はラブストーリー。
とは言え、時系列の前半はアクションも無く、
癌や人体実験など暗いシーンが多く、
全体的に重めのトーンとなっています。
時系列後半の「デッドプール」後のシーンでは、
復讐とアクション多めで派手で見映えがする展開です。
この為、映画としての起伏や観客を飽きさせない工夫を考えると、
時系列順では緩急に欠けています。
そこで考えたのは、
アクションシーンと暗いトーンという時系列を二つ用意し、それを交互に進める手法です。
これにより映画に緩急が現われ、
それにプラスしてデッドプールの行動原理が徐々に明らかになる事で観客のテンションも段々と盛り上がって行く事になります。
そして、
時系列が統合される場面が
「起承転結」の「転」の部分。
ここからラストのクライマックスに向かって行く事になるのです。
この、盛り上がりを考えた構成というのも、
本作の魅力であるのです。
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ライアン・レイノルズの執念
映画『デッドプール』の企画が開始されたのは、2004年。
『ブレイド3』(2004)を観た友人が、
君ならやれると『デッドプール』のコミックをライアン・レイノルズに贈った事が切っ掛けだったそうです。
コミックを読んでデッドプールに惚れ込んだライアン・レイノルズ。
『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009)で念願のデッドプール役を射止めますが、
それは原作とはかけ離れたキャラクター。
観客からは「デッドプールじゃない」と批判されます。
2010年には「ピープル」紙が選ぶ「最もセクシーな男」に選ばれますが、
私生活ではスカーレット・ヨハンソン(『アベンジャーズ』のブラック・ウィドウ)と離婚。
離婚理由は恐らく、
スカーレット・ヨハンソンの方が売れっ子になってしまって、
なんとなくギクシャクしてしまったからだと思われます。
2011年にはDCコミックのヒーロー映画『グリーン・ランタン』に出演するも、
これも鳴かず飛ばず。
そんな窮地に陥ったライアン・レイノルズ、
彼の主演で企画されていた『デッドプール』も暗礁に乗り上げたと言われました。
しかし、2011年。
配給会社のFOX用に作った『デッドプール』のプレゼン映像がネット上にリーク。
この映像を観たファンの盛り上がりで、制作にゴーサインが出たと言われています。
実はこのリーク、
制作側が意図して漏らしたものだそうです。
企画が危なかったから、一か八かの賭けに出たのですね。
それでも実際の撮影が始まったのは2015年。
しかし、予算が足りず、
正式な予算が出る前から撮影を開始したり、
そもそも撮影期間も短く、
25時間ぶっ続けで敢行した日もあったと言います。
特に、ライアン・レイノルズは、
その特殊メイク(顔と手)で5時間の時間が撮影前からかかっていたそうです。
(全身の場合は8時間)
そんな苦労が実ったのか、
本作は映画の「X-MEN」シリーズで最も制作費が少ないのに、
最も興行収入が高い作品となっています。
R指定の映画でも、ナンバーワンの興行収入を記録した『デッドプール』。
スターでありながら、
イマイチ評価が追いついていなかったライアン・レイノルズ。
かれの執念が実った作品とも言えるのです。
ギャグ、ユーモア、残酷表現、アクション、
これらを統合する大黒柱のラブストーリー。
様々なネタが詰まっており、
人によって楽しみ方は千差万別。
一見チャラい映画なれども、
この度量の広さが、色々な国でたくさんの人に支持された所以であるのです。
私はドーピンダーが事故を起こすシーンが一番好きですが、
皆さんはどうですか?
へらず口は叩いても、実はセンシティブ。
過激なアクションがありながら、基本はラブストーリー。
これぞ、正にエンタテインメント、
そして誰もが憧れるスーパーヒーロー、
それが本作『デッドプール』と言えるのではないでしょうか。
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サウンドトラックも良い感じ
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