映画『ナイル殺人事件』感想  さまざまなる、愛憎劇の万華鏡!!

莫大な遺産を相続し、大富豪として名の知れる美貌の女性リネット。彼女は親友ジャクリーンの婚約者・サイモンを奪い、彼と結婚してしまった。
そのハネムーン、エジプトを巡る旅に、ひょんな事から同行する事になったエルキュール・ポアロ。
愛憎渦巻くハネムーン、ナイル川を遡る豪華客船の船旅で、殺人事件が起こる、、、

 

 

 

監督は、ケネス・ブラナー
シェイクスピア俳優として有名。
監督作に、
『ヘンリー五世』(1988)
『から騒ぎ』(1993)
『ハムレット』(1996)
『マイティー・ソー』(2011)
『エージェント:ライアン』(2014)
オリエント急行殺人事件』(2018)
『ベルファスト』(2021) 等

 

原作は、アガサ・クリスティの小説、
『ナイルに死す』。

 

出演は、
エルキュール・ポアロ:ケネス・ブラナー

リネット・リッジウェイ:ガル・ガドット
ジャクリーン・ド・ベルフォール:エマ・マッキー
サイモン・ドイル:アーミー・ハマー

ブーク:トム・ベイトマン
ユーフェミア:アネット・ベニング
ロザリー・オッタボーン:レッティーシャ・ライト 他

 

 

ミステリの女王と呼ばれた、
小説家のアガサ・クリスティ。

その数々の小説の中で、
人気シリーズの一つとしてあげられるのが、
エルキュール・ポアロのエピソード群。

その中でも、今回映画化された原作『ナイルに死す』は、
1978年の映画化、
2004年のテレビシリーズに続いて、
3度目の映像化という人気エピソードです。

 

そして、
2017年の『オリエント急行殺人事件』に続いて、
ケネス・ブラナーが監督・主演を兼ね、

立ち位置的には、
連続シリーズものとしても楽しめます。

 

で、本作『ナイル殺人事件』です。

作品としては、
殺人ミステリもの。

いわゆる、

殺人事件が起きて、犯人を探すという、
ミステリの王道展開です。

 

しかし、本作においては、
そのミステリ部分よりも、
ストーリーというか、
テーマ部分が面白く、興味深い所。

それは、

人物毎に描かれる、
様々な、愛憎劇です。

 

先ず、メインで描かれる、

富豪のリネットと、
その(元)親友、ジャクリーンの関係。

リネットの夫サイモンは、
ジャクリーンの元婚約者。

リネットはジャクリーンからサイモンを奪った訳で…。

それ故、ハネムーンに、
もの言わぬジャクリーンが、恨みがましくつきまといます。

で、
ジャクリーンを避ける為に、
豪華客船に乗る訳ですが、
そこで殺人事件発生!!

しかも、
乗客は、一癖も二癖もある人物ばかり。

その相関関係も、
愛憎で繋がっているのです、、、

 

まぁ、
昨今のメタミステリとか、

漫画やアニメになって大人気の『名探偵コナン』なんかを見慣れた人には、

トリックのネタとしては物足りなく思うかもしれません。

何しろ、
昔の作品が元ネタですからね。

 

しかし、
そのドラマ部分が面白いからこそ、
名作の呼び声が高く、

何度も映像化される魅力もあるのではないでしょうか。

 

愛憎を描くからこそ、
老若男女、万人受けする、
『ナイル殺人事件』は、
そういう作品と言えるでしょう。

 

  • 『ナイル殺人事件』のポイント

古典的だからこそ、王道のミステリ

愛憎渦巻く人間関係

様々に描かれる、「愛」の形

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

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  • 様々に描かれる、愛の形

本作『ナイル殺人事件』は、
アガサ・クリスティのミステリ名作、
エルキュール・ポアロが主人公のミステリシリーズ、
『ナイルに死す』の映像化三度目の作品。

 

ミステリ的なネタというか、
トリックは、
まぁ、ぶっちゃけ、
場当たり次第、
都合の良いこじつけ感が否めませんが、

しかし、
本作が名作として人気なのは、

様々な愛憎劇が繰り広げられ、

それぞれの愛の形が描かれている故です。

 

メインに描かれるのは、
略奪愛と、三角関係。

劇中、
親友から婚約者を略奪したリネットは言います。

「愛とは、遠慮しないこと」

傲慢かつ、自信に満ちて、
そして、情熱的な愛です。

 

同じ様な事を、
フラれた(実はフラれてない)
ジャクリーンも言っているのが面白いです。

ジャクリーンは言います。
「愛は死んでいない」

 

この二人で描かれるのが、
愛の情熱なのです。

 

それに対し、
ブークの母であるユーフェミアは言います。

「愛とは冷めるもの」と。
「子供が生まれると、愛は終わる」と言います。

 

これは、ブークに向けて言う言葉ですが、
しかし、
当のブークがロザリーに抱く愛は、

若さに任せた情熱的な、
やがて冷める愛というより、

自分に最適な、
言うなれば「運命の相手」と言える、
もっと、真摯な印象を受けます。

 

まぁ、それも、
年月を経て、色褪せてしまうものなのかもしれませんが、

遊び人のブークを本気にさせた点において、

冷めた後も、
愛を尊敬として、継続させられるかもしれません。

 

他にも本作は、
片思いや、
同性に対する愛などが描かれており、

そして、
主人公兼、狂言回しである、
探偵のエルキュール・ポアロも、例外ではありません。

 

ポワロは、
かつて愛した女性を、
戦場に呼び、死なせてしまったという心の負い目を持っています。

作品の冒頭、
戦場における地雷の影響で、
顔に傷が付いたポアロ。

婚約者は、
「愛があれば、そんなもの気にならない」と言い、
すました感じを装って、
「口ひげでも生やせば?」と流します。

 

ポアロの特徴的な口髭のオリジンエピソードですが、

口ひげを、
映画のラストシーンでは、
剃ってしまっています。

 

過去の愛に、
口ひげにて、「操」を立てていたポアロ。

それは、他人を愛する事を拒絶する、
イコール、
探偵としての冷徹な自分を保ち、
それを演出するトレードマークでもありますが、

しかし、
それを剃り上げたという事は、
自分の虚飾の仮面を取り払ったという事。

もしかしたらそれは、
探偵引退の決意なのかもしれませんが、
同時に、
過去より、未来を目指すという事なのでしょう。

 

この様に、
情熱的な愛、
忍ぶ愛、
片思い、
純愛、
親子愛、

色々な愛の形が描かれ、

その愛憎劇のドラマこそが、
本作『ナイル殺人事件』のメインの面白さと言えるのではないでしょうか。

 

 

コチラが、アガサ・クリスティの原作小説です

 

 

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