映画『ドリームプラン』感想  スポ根こそ正義!?リアル星一徹の頑固すぎる交渉力!!

女子テニス界におけるレジェンド選手、ビーナスとセリーナ・ウィリアムズ姉妹。彼女達が名選手として成功した礎には、父・リチャードの影響があった。
アメリカ、カリフォルニアの貧困地域、コンプトンの公営テニスコートにて独自トレーニングを娘達に施すリチャード。彼には、テニス界で成功する為の78ページに及ぶ「プラン」書があった、、、

 

 

 

 

 

 

監督は、レイナルド・マーカス・グリーン
長篇映画監督作に、
『Monsters and Men』(2018)
『ジョー・ペル ~心の旅~』(2020)がある。

 

出演は、
リチャード・ウィリアムズ:ウィル・スミス
オラシーン・ウィリアムズ:アーンジャニュー・エリス
ビーナス・ウィリアムズ:サナイヤ・シドニー
セリーナ・ウィリアムズ:デミ・シングルトン

ポール・コーエン:トニー・ゴールドマン
リック・メイシー:ジョン・バーンサル 他

 

 

 

かつて、TVドラマや漫画で「スポ根」というジャンルが流行りました。

『巨人の星』『アタックNo.1』など、
1960~70年代の、高度経済成長期、

主人公がスポーツに打ち込み、
努力と根性で勝利を目指すという物語形式のジャンルです。

スパルタ特訓と必殺技の習得、
努力型貧困主人公に、天才型富裕層ライバルキャラ、
どっちかというと、根性論で勝利を獲得 etc…

現代の人間が見たら、
虐待だと卒倒してしまう内容の数々ですが、

これが、
読んでみると抜群に面白かったりするので、始末に負えないですね、、、

 

 

で、『ドリームプラン』です。

一見、
ビーナスとセリーナ・ウィリアムズの姉妹の伝記映画かと思いきや、

本作は、
その姉妹の父親である、
リチャード・ウィリアムズの様子にフォーカスを当てた作品となっております。

 

TVで大金を手にする選手を見て、
「子供にテニスを教えよう」と思い付いたリチャード。

テニス経験が無いにも関わらず、
独自に制作した成功の「プラン」を78ページにまとめあげ、
それを二人の娘に、トレーニングとして施す。

近所のオバサンには虐待だと罵られ、
地域のギャングにはちょっかいを出されぶん殴られ、
お金が無いので、無償でコーチをしてくれる人を探すも、断られる日々、、、

 

そう、本作は、
『巨人の星』で言う所の星一徹、

つまり、

父親、リチャードが娘に施す「スポ根」、
そのコーチ役を主人公にした物語と言えます。

 

 

昔、
セリーナやビーナスのテニスプレイをTVで観ていた時、

解説者がいつも、
「今日も父、リチャードさんの姿が見えます」と言っていた事が疑問でした。

何で、わざわざ、
プレイヤーの父親の存在に言及するんだろうと、
不思議に思っていましたが、

どうやら、
「アクの強い名物」として名が知られていたと、
本作で判明しました。

 

本作では、
アクの強さでマスコミや世間に認知され、
それでいて、二人のレジェンド選手を育てた父親でもあるリチャードの、

その良い面、悪い面の両方を描いており、

キャラクターの面白さ、興味深さにより、

伝記映画特有の、
題材としては面白くとも、
映像化したらイマイチ、みたいな状況にはならず

ちゃんと、
一本の映画として、面白い作品に仕上がっています。

 

 

それまでの世間の評価がどんなものでも、
言ってしまえば、「勝てば官軍」。

関わるのは御免被るが、
傍から見る分には、堪らなく興味深い、

そんなリチャードの物語だからこそ、

本作『ドリームプラン』は、
面白い作品に仕上がっています。

 

 

  • 『ドリームプラン』のポイント

「スポ根」コーチ役の物語

ビーナスとセリーナの幼少期の伝記モノ

意思を貫く事の困難さと重要さ

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

 

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  • 意思を貫く事の困難さ

『ドリームプラン』は、
「スポ根」におけるコーチ役が主人公の物語、

本作においては、
ウィリアムズ姉妹の父親、
リチャードにフォーカスの当たった作品です。

 

で、テニス経験が何も無い人間が、
どうして、レジェンドトッププレーヤーを育てる事が出来たのか?

これは逆に言うと、
自分がプレーヤーでは無かったから、
という事も、先ず言えるでしょう。

つまり、
プレーヤーの苦悩を知らないから、
無理難題を何の臆面も無く押し付けられる
そういう一面が、確かにあり、

それは、
傍から見ると、
虐待に他なりません

 

実際、
作中、近所のオバサンが警察に通報しており、
しかし、
これは、ウィリアムズの家族の問題だ、と、
その時点では、一蹴されております。

確かに、
常識という観点からすると、
近所のオバサンの言う通り、虐待です。

しかし、
何かのジャンルでトップとなる人達は、
幼少期から、そのジャンルに精通している事が大前提。

将棋のトップである、
藤井聡太さんの様に、自らジャンルにのめり込んだという例外もありますが、

スポーツ界では、
その多くが、
親のスパルタ特訓の影響で、
長じて、ジャンルのトップとして君臨している人達が多いのも又、事実です。

有名なものの一つに、
ボクシングの亀田親子とか、ありますね。

 

しかし、
本作におけるリチャードが突出している所に、

その頑固さというか、初志貫徹ぶりがあげられ、
そここそが、本作の面白さの要と言える部分です。

つまり、
自分が作り上げた「プラン」に、
忠実だった所ですね。

 

将来有望だからと、
無償でコーチしてくれる人物を探すというのが、
発想として飛び抜けていますが、

その、
恩あるコーチの指導、支援を反古にしても、

ジュニア時代の、
スポンサー契約を蹴ったりします。

 

また、別のコーチに取り入れば、
そのコーチの意向に反して、
ジュニア大会に出ずに、トレーニングに集中したり、

教育が大事だと、語学や学校の勉強を優先させたり、

漸く、大会で結果を出しても、
破格のスポンサー契約にサインせず、

引き延ばして、
契約金を吊り上げたり、

傍から見ると、
そこで、そうくる?そういう!
みたいな、
驚きの選択が多いです。

 

娘を守る為に、
業界の常識よりも、
一般常識に準じた選択を貫ける所に、
リチャードのバランス感覚の凄さが見られますが、

それは一方で、

アカギの「倍プッシュだ」みたいな感じで、

ポーカーで、
相手のベットを吊り上げるギャンブラーの心理戦よろしく、

生粋の山師の一面も垣間見られる所に、

リチャードの清濁併せ持った魅力があります。

 

 

本作のリチャードが、
何故魅力的なのか、

それは、成功者の魅力というより、

自分の初志を貫徹する、
その精神力に拠る所だと、
個人的には、思います。

 

人は、
日々の生活で、
最初の理想を失って行きます。

それは、
誹謗中傷であったり、
暴力であったり、
社会契約であったりします。

しかし、
他人に何を言われようが、
自らの常識と正義に準じる事こそが、
人生の成功だと、

『ドリームプラン』では描いているのではないでしょうか。

 

原題は、『King Richard』。

人は、自らが、
自分の「王」になるべきなのかも、しれませんね。

 

 

 

 

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