魔王ミルドラースの復活を企むゲマ。魔王を封印した天空人の末裔である、母マーサをさらわれ、少年リュカは、父パパスと共に旅をしていた。パパスは最強と謳われる戦士。しかし、リュカを人質に取られてしまい、、、
監督は八木竜一&花房真。
八木竜一の主な監督作に、
『friends もののけ島のナキ』(2011)
『STAND BY ME ドラえもん』(2014)がある。
花房真は、本作が初監督作品。
脚本は、
総監督も務めた、山崎貴。
声の出演は、
リュカ:佐藤健
ビアンカ:有村架純
フローラ:波瑠
パパス:山田孝之
マーサ:賀来千香子
サンチョ:ケンドーコバヤシ
ヘンリー:坂口健太郎
プサン:安田顕
スラりん:山寺宏一
ブオーン:古田新太
ゲマ:吉田鋼太郎 他
日本において、
TVゲームのジャンルで、最も人気があるのは、
RPG(ロール・プレイング・ゲーム)だと思います。
しかし、
人気があるだけに、群雄割拠。
「ポケットモンスター」
「ファイナルファンタジー」
「真・女神転生」
「Wizardry」
「ゼルダの伝説」
「MOTHER」
「ヘラクレスの栄光」
「貝獣物語」 etc…
様々なシリーズが、多数存在しています。
しかし、
日本で最も有名なRPGは何かと問われれば、
それは、
「ドラゴンクエスト」シリーズと言えるのではないでしょうか。
その、ドラゴンクエストシリーズの中でも、
1、2を争う人気があるのが、
『ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁』であり、
本作
『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』は、
その
『ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁』をベースにした作品です。
まぁ、それは、言わずもがな、
メインビジュアルを見たドラクエファンなら、
誰でも解る事ですが。
さて、
この、超有名なドラクエシリーズですが、
実は、ワタクシ、
ドラクエシリーズを、一本もクリアした事ありません。
プレイした事はあるのですが、
最後まで、終わらせた事が無いのです。
なので、
この映画の感想は、
そんな、ニワカの言葉として、受け止めて欲しいです。
さて、本作、
先ず、
映像クオリティが凄いです。
本邦の3DCGのアニメーション映画は、
ディズニーやピクサーと比べると、見劣りするものも多いですが、
本作は、
映像クオリティという面において、
素晴らしいものがあります。
人物に、
「3Dのアニメ」ならではの、立体的な動きのある魅力があり、
また、背景、衣装、
モンスターの様々な質感、毛皮やキチン質、皮膚の様子など、
ゲームからイメージされたものを、
立体に起こしたら、どの様になるのか?
そういう部分を、
忠実に再現しているのです。
また、
本作は、声優陣も頑張っています。
アニメ映画の場合、
有名な芸能人を声の出演に使わねばならないという制約みたいなものがありますが、
本作に出演している人物は、
ちゃんと、キャラクターを演じている所が、好感を持てます。
ブオーン役を演じた、古田新太なんかは、
最早、声優としても慣れたものですが、
本作で、一番のインパクトがあったのが、
ゲマ役を演じた吉田鋼太郎でしょう。
とても、
御年60歳とは思えぬ声質。
これで、本職の声優で無いというのが、驚きです。
肝心のストーリーですが、
私は、観る前は、
「どうせ、前・後編の二部作で、後出しで続篇の発表をするんだろ?」
と思っていました。
しかし、違います。
本作は、
長大なRPGのストーリーを、
テンポ良く端折りつつ、
原作ゲームの名シーンをちょいちょいなぞりながら、
オリジナル展開にて物語を構成しています。
103分という上映時間に収める為に、
苦心して、まとめて作ったという印象があります。
ですが、
冒険物語として見ると、
キチンと、一本の映画として、面白く作られているのが凄い所。
なので、
原作プレイヤーは、
「あ、ここを使って、ここを省いたか」と、
元ネタとの違いを探して楽しめますし、
ドラクエ自体知らない人も、
グッと来るシーンの連続なので、
充分楽しめるのです。
そう、本作は、レベルの高い、
及第点の作品。
誰が観ても楽しめる作品だと言える、、、
…そう、思っていました、
ラストのオチを観るまでは。
本作、クライマックスの部分が、
完全オリジナル展開なのですが、
このシーン、
観る人によって、評価が分かれる所。
賛否両論あると思いますが、
個人的には、かなりの衝撃でした。
端的に言うと、
私は、否定派です。
観る人によって、評価は分かれましょうが、
3Dのアニメ映画としては、
レベルが高く、面白いのは事実。
ただ観るだけでも価値がある、
『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』はそんな作品です。
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『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』のポイント
クオリティの高い映像、背景
テンポ良く進む、名場面を圧縮したストーリー
オチは、是か、非か
以下、内容に触れた感想となっております
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ドラゴンクエスト
TVゲーム、「ドラゴンクエスト」シリーズ。
日本で、最も有名なゲームと言っても、過言では無いでしょう。
かく言う私も、
今はすっかり「ポケモン勢」ですが、
何を隠そう、
初めて熱中してプレイしたRPGは『ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々』であるのです。
RPGというゲームは、
大きく分けて、二つの派閥があります。
「ドラクエ派」か「FF派」か、です。
この違いを一言で言うと、
「主人公が、寡黙か、喋るか」という点だと思います。
「ドラクエ」や「ポケモン」「Wizardry」は、
主人公が寡黙というか、全く喋らないタイプ。
主役はあくまでも、プレイする人間本人であり、
プレイヤーが、
登場人物達と交流する主人公に成り代わる(ロールプレイする)事に重点が置かれています。
一方、
「FF」などは、
主人公が喋るタイプ、
映画の様に、声優が充てられていたりします。
このタイプは、
会話やストーリー展開が、自然になるので、
より、ドラマティックなストーリーを演出します。
反面、
プレイヤーは、まるで、映画を観ている様に、
第三者目線であるという立場となります。
これは、一概にどちらが上とは言えず、
完全に、好みの問題です。
それこそ、
ビアンカ派か、フローラ派か、と同じです。
私はどちらかと問われると、
「寡黙派」です。
そして、おそらく、
本作の物議を醸すクライマックスも、
そういう、
「プレイヤーが主人公」であるという、
「ドラクエ」の特徴を顕著に表したものだと言えるのです。
-
メタ目線に、何を思う…
本作のクライマックスは、
個人的には衝撃の展開。
以下、オチに触れた内容となっております
ゲマを倒したものの、
魔王ミルドラースの復活を許してしまったリュカ達。
アルスは、天空の剣を「門」に投げ、
魔王の復活を阻止せんとしますが、
そこで突然、
リュカ以外の、世界の全てが止まってしまいます。
そして、降臨するミルドラース。
しかし、
そのミルドラースは本来のミルドラースでは無く、
プログラミングに侵入したバグに犯されたミルドラースなのです。
ミルドラースは、
「処理が重い」と言い、
最終決戦に集まったビアンカやヘンリーなどをポリゴンの破片として消去し、
世界を真っ白にしてしまいます。
そして、
ミルドラースはリュカに言うのです
「大人になれ」と。
衝撃の事実、
なんと『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』の世界は、
「ドラゴンクエストⅤ」の体験型アトラクションを遊んでいる青年の、
映画内ゲームプレイ映像だったという設定なのです。
オイ、オイ! やめろ!!
まさか、ドラクエで、
『代紋 TAKE2』みたいなオチをカマすんじゃねぇ!!
夢オチじゃねぇか!
手塚治虫も「夢オチは駄目だ」と言ってただろうがよ!!
まさかの、メタ目線。
剣と魔法のファンタジー世界に浸かっていた私を、
ミルドラースは、一瞬で現実に引き戻しました。
「さ…醒めるワァ」
いい歳して、ゲームに夢中なんて、恥ずかしいし、無駄な事、
と言うミルドラースに対し、
『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』という映画内では、
リュカは、
無駄じゃ無い、大切な思い出として、残っていると、
なんか、
根性論でミルドラースを撃破します。
そして、
本来ならば、アトラクション中は、その自覚が無いハズですが、
ウィルス感染ミルドラースというイレギュラーがいた為に、
リュカは、自分がプレイヤーであるという自覚を持ちつつ、
ゲーム内のエンディングに向かうのです。
さて、
普段、私は、
自分の感想を書く前に、人の感想を見ない様にしていますが、
本作は、twitter でちょっと確認しました。
どうやら、本作のオチに
「感動した」という人が8割ばかりいるようです。
(*公開初日、8月2日、午後12時当時)
私はと言えば、感動など無く、
何とも言えない無常観、虚無感に囚われてしまいました。
まるで、
『ジョジョの奇妙な冒険』の第6部のラストの様に。
しかし、
「ジョジョ6部」は、受け入れざるを得ないラストでしたが、
本作のラストは、
私には受け入れる事はムリそうです。
クライマックスでの、リュカの根性論「ゲームも、大事な思い出だ」
そして、ラストの
「あなたの人生は、あなただけのユア・ストーリーとして続いて行く」というナレーションに納得出来た人なら、
本作を感動出来るのだと、思います。
しかし私は、
それらの言葉より、
ミルドラースの「大人になれ」という辛辣な台詞の方に、
重きを置いてしまいます。
なんだか、
「いい歳して、ゲームを元にしたアニメ映画なんて観るな」と、
当のアニメ映画から叱られたという事実に、ショックを受けてしまったのです。
私がプレイしたことのある「ドラクエ」は、「2~4」。
しかし、いずれも、クリア出来ませんでした。
私の母は、ゲームが嫌いで、
子供の頃、私がゲームをしていると、
「うるさい」と小言を言い、
わざと大きな音を立て、
大袈裟なため息を吐き、
にらみつけ、
物を投げ、
何が面白いのかと、罵るのです。
私はその圧力に負け、
いつしか、ゲームをプレイする事を辞めてしまうのです、
毎回。
結果、
ゲームをしたい私は、
ゲーセンで対戦格闘ゲームをやったり、
携帯ゲーム機の方に、軸足を移してゆくのですが、
それはまた別の話。
私は、本作のミルドラースに、
母を思い出しました。
私が、ドラクエを熱中してプレイしている所に、
怒り心頭で現われて、
リセットボタンを、ポチッとな!
「冒険の書が!」「リセット押しながら、電源を切らないと!」と、
抗議する私に、
「勉強しなさい!」と、ヒステリックに怒鳴る母。
そう、本作のミルドラースとは、
ゲーマーの敵、「母親」そのもの、
(まぁ、私の母は、どっちかというとボストロールみたいな見た目でしたが)
つまり、
ゲーム(趣味、娯楽)に理解の無い「大人」の化身であるのです。
コチラが、楽しんで、世界観に没頭している時に、
横から現われて、
「それの、何が楽しいんだ」と、
文句だけ言って、去って行く、
そういう人、たまに居ますよね。
自分が好きでやっている事に、
横槍だけ入れて、足を引っ張るの、止めて頂けませんかね?
今なら、ゲームをする事は無駄では無いと理路整然に説明出来ても、
子供の頃の私は、
理論武装でもって、大人を論破する事が出来ませんでした。
そういう幼少の頃の刷り込みがある所為か、
「ゲームをする時間は、無駄」と、
自分の中でも、そう、思う所が確かにあります。
同じ時間、英語の勉強に費やしたら、
今頃私は、英語ペラペラだった、とか、
同じ時間、筋トレに費やしたら、
今頃私は、ドウェイン・ジョンソンだった、とか、
考えてしまう自分が居ます。
事実、そうです。
ゲームの中でレベルを上げるより、
現実の自分を鍛える方が、よっぽど生産的なのです。
何時までも、
ゲームや、映画や、物語なんかに拘る私は、
大人に成りきれていないのか?
そういう、
私が常々考えている、痛いところを、ミルドラースに突かれたのです。
物語の効用とは、
「成りたい自分」の「前例」が、
その中にて、見出せる事です。
格好良い主人公、
思慮深い、上官、
優しく、意志の強い両親 etc…
物語で描かれる、理想の人物像を手本とする事で、
現実世界の自分を、より良く進歩させる事が出来ます。
また、単純に、
ままならない現実世界を忘れる、
純粋なエンタテインメントとしての楽しみ、ストレス発散、逃避としての効用もあります。
しかし、
その物語に没頭している時に、
「現実に帰れ」と言われたり、
これが物語であり、
終わってしまうと、妻も、子供も居なかった事になり、
だから、
「これからは、自分の人生を生きるんだ」などとは、
割り切って考えられない
…
確かに、切り替えは大事です。
『キン肉マン』でも、
悪魔六騎士の首領格サンシャインが言っていましたね、
「都合の悪い事は忘れよ」と、
それが、明日へと繋がるのだと。
でも、それでも、
ビアンカや、息子や、
原作には居たのに、本作では居ない事になってしまった娘の事を、考えずにはいられません。
「ドラクエ」というRPGは、
元々、プレイヤー自身が、主人公であるというスタンスで作られています。
そういうスタンスを、
映画という別ジャンルで踏襲する為に、
本作では、
観客に、上映中にメタ目線を意識させる事により、
映画を鑑賞するという、安全な位置からの第三者目線から、
鑑賞者自身を、物語の当事者にしようとしているのです。
そういう意味では、
本作は、確かに「ドラクエ」的であると言えます。
ムービー的な演出で有名な、
「FF」や「バイオハザード」ならば、
普通の映画で構わなくとも、
こういうメタ目線を入れる事が、
「ドラクエの映画」には必要だったのかもしれません。
しかし、そういう演出的なテーマを継承した反面、
「ドラクエ」という世界観自体を破壊してしまった。
個人的には、
剣と魔法のファンタジー世界に徹して欲しかった、
本作は、
私が期待した、初のドラクエ映画化作品とは言えず、
同じ事をするなら、ドラクエでは無く、オリジナル作品でして欲しかった。
(アニメ『GODZILLA』シリーズを観た時と同じ感覚です)
ドラクエと言えば、RPGの王道、
こんな邪道は、観たくなかったのです。
映像クオリティが高く、
アクションも良く動く、
声優も頑張っており、
長大な原作ゲームのストーリーの、人気エピソードをつまみ上げつつ、アクロバティックにまとめ上げている。
しかし、良い要素が並んでいても、
クライマックスのオチで、
その全てを台無しにしてしまった。
それが、
本作『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』を観た、
私の偽らざる感想なのです。
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