映画『イビルアイ』感想  悪夢の里帰り!!妖怪魔女ババアの恐怖!!

13歳の少女、ナラの妹のノラは難病を患っており、度々発作を起こしていた。医者も手に負えなくなり、父ギレルモは入院を勧めたが、母のレベッカは治療法を求めて実家に行く事を提案、強行する。
母の故郷にいたのは、祖母のホセファ。レベッカとは馬が合わず、お互い憎まれ口を叩き合っている。そんな祖母の下に子供を残して、両親は治療法を探して出掛ける。残されたナラは、意地悪なホセファの家で悪夢的な体験をする、、、

 

 

 

 

 

監督は、アイザック・エスバン
メキシコ出身。
監督作に、
『パラドクス』(2014)
『ダークレイン』(2015)
『パラレル』(2018) がある。

 

出演は、
ナラ:パオラ・ミゲル
ルナ:イバンナ・ソフィア・フェッロ
レベッカ:サマンサ・カスティージョ
ギレルモ:アラップ・ベスキー
ホセファ:オフェリア・メディーナ 他

 

 

夏真っ盛りですね。

皆さんは、
「里帰り」という夏の思い出はありますか?

父か、母か、
どちらかの、或いは両方の祖父母宅にお邪魔し、

いとこと交流したり、
スイカを食べたり、
田舎のイオンを堪能したり etc…

ゲームでも、
『ぼくのなつやすみ』(2000)という、
シリーズ化された人気作品がありますね。

 

…しかし、
「里帰り」に良い思い出がある人ばかりでは無く。

例えば、
親の兄弟の子供、
「いとこ」と馬が合わない人がいたり、
いや、
そもそも、祖父母が嫌いな人だったり、
若しくは、
田舎で家族と居るより、
普通に友達と遊びたい人だっているでしょう。

又、
里帰りとかすると、
兄弟姉妹と喧嘩したり、
親同士が喧嘩したり、
祖父母と親がギスギスしたり、
「何で、気分悪くなりに行かなくてはならないンだろう…」とか、
虚無の感情を抱く事も、ありますものね。

 

そうです。

「ぼくのなつやすみ」が、
有り得なかった楽しい夏の思い出をロールプレイするゲームならば、

本作『イビルアイ』は、

悪夢の里帰りの恐怖体験

 

 

と言った所。

 

スマホぽちぽちが好きなナラは、
電波が届かない田舎に無理矢理連れて来られて、
憮然としたご様子。

それなのに、
両親は子供を置いてどっかにお出かけ。

残されたナラは、
ルナの面倒を見つつ、
ホセファの小言に晒されウンザリするのだが、

そのホセファの言動を訝しんだナラは、
祖母が魔女なんじゃないのか?と疑い始める、、、

 

楽しい里帰りならば良かったのに、、、

実際は、
悪夢の里帰り。

ババァは怪しいのに、
両親は居ない。
妹はヤバイのに、
頼れるのは自分だけ。

そんな状況で陥る、

疑心暗鬼の物語。

 

 

語られる田舎の魔女伝説、
危機的状況での、子供の孤軍奮闘、

本作は謂わば、
ホラー的な「ぼくのなつやすみ」と言った所でしょうか。

 

恐怖のノスタルジックを描く『イビルアイ』。

里帰りに良い思い出がある人も、
嫌な思い出しかないひとも、

悪夢のババアとの交流に打ち震える作品です。

 

 

 

  • 『イビルアイ』のポイント

悪夢の里帰り

子供時代の「嫌な事」てんこ盛り

疑心暗鬼と孤軍奮闘

 

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 

 

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  • 子供の悪夢のてんこ盛り

『イビルアイ』は、ホラー作品。

主人公のナラは13歳の少女ですが、
その年齢ならではの、
様々な悩みを抱えています。

 

妹のルナは謎の持病。
それだけでも心配事ですが、
母のリディアはルナ中心の思考なので、
ナラが放って置かれがち。

祖母のホセファ宅に里帰りしますが、
両親が居なくなり、
ホセファの強権支配で厳しい躾をされます。

まぁ、躾と言えば聞こえは良いですが、
実際は、
放任すると後で面倒臭い事になるので、
最初から「何もするな!」と命令しておく方が楽という方針。

これ、
やられる方は息苦しいンですよね。

 

更に、
ホセファの家で家政婦をしているアビゲイルから、
田舎の魔女三姉妹伝説を聞かされ、
それにあてられたのか、
祖母も魔女の如き邪悪な存在み見えてくる始末。

 

つまり本作は、
親の実家への里帰りが、
必ずしも楽しい思い出だけでは無いという、
謂わば、
夏の苦い体験を描いた作品と言えるのではないでしょうか。

 

  • 裏の裏は表

作品冒頭、三姉妹と魔女の伝説が語られます。

その直後、ナラが悪夢から覚醒するシーンがあります。
そして気付いたら、
妹のルナが発作に襲われていました。

まぁ、普通に考えたら、
ナラの悪夢とは、
三姉妹と魔女の伝説だと考えられますね。

 

しかし、
時系列的に考えると、
ナラがルナと共に、
アビゲイルから三姉妹と魔女の伝説を聞くのは、
祖母ホセファ宅なので、

冒頭にて、
ナラがその悪夢を見たというのは、
矛盾点があります

 

また、
ナラが思春期の少女という事もあり、
反抗期ならではの、
情緒不安定さが描かれています。

ナラはホセファに反抗し、
「クソババアが!」と言わんばかりに、
妹を連れて祖母宅からの脱走を、複数回図ります。

しかし、
その度毎に、
ホセファから「病気の妹を連れて無茶するな」と、
常識的な当然至極のツッコみを入れられつつ、
たしなめられます。

 

両親が居なくなり、
アビゲイルから聞いた話に感化されたナラは、
ホセファが魔女が魔女でノラの血を吸っている様に見えます。

怪しげな祖母宅から脱走せんとし、
彼女の孤軍奮闘が描かれます。

 

しかし観客目線では、
これ、もしかして、情緒不安定なナラが、悪夢と現実をゴッチャにしているだけかも?
とか、
メタ的な思考で鑑賞もするのです。

アビゲイルやペドロ、
村人など、
ホセファが魔女だというナラの主張に耳を貸しませんが、

この奇妙な村人達の行動も、
もしかしたら、普通の行動なのかも?と思ってしまいます。

 

ですが、
ホセファが顔に包帯を巻き始めてから、
漸く、観客も気付きます。
「あ、コイツ、やってるわ」と。

コイツ魔女で
ノラの血ィ吸ってるワ、と。

この時点で、
あ、
母のメディアは「バッカ」を使うつもりだな、
とも気付く訳です。

 

しかし、
私は恥ずかしながら、鑑賞中は気付かなかったのですが、

メディアとホセファ、
そして、家族写真で曾祖母と説明された親子三代が、

実は、
伝説の三姉妹であり、
魔女に精気を吸われた=曾祖母テレサ
魔法を拒否した=祖母ホセファ
魔法を継承した=母メディア
だったんですよね。

バッカを作った影響で、
三姉妹の実の母は死にましたが、

ルナを助ける為に作った今回のバッカでは、
ルナの母親であるメディアが死ぬ事になったという訳です。

 

これってつまり、
一家と同じマンションの住民の子供が病気がちというのは、
メディアが血を吸っていたから
という事ですよね。

更に言うと、
魔女伝説を聞く前から、
何者かがルナの血を吸っていたのを、
ナラは目撃していましたが、

これは流石に
母メディアの仕業とは考え難く、
と、するならば、

ホセファが遠征してルナの血を吸っていたのではないでしょうか。

故に、
医者も投げだす不治の病となり、
そうなれば、
「バッカ」を使う為に、メディアは里帰りするハズ。

そこで、
罠にかけて、
メディアと入れ替わろうとしていた。

今回の悪夢は、
ホセファの場当たり的な犯行では無く、
そういう周到な計画だったと思われます。

 

何か、
魔女伝説を逆手に取って、
実は、主人公のナラが一番怪しいと見せかけておいての、
見た目の印象通りの、
ホセファが黒幕、的な展開。

観客が、
裏の選択肢を予想するように演出しておいて、
実は、
表の選択肢(印象)が正しかったという、ね。

裏の裏は、表、的な。

 

アレですね。
キン肉マンソルジャーがタッグマッチをする時、
タッグパートナーにブロッケンJr.を選んだ様な、
一番ありそうで、
誰も予想していなかった所が、
正しかったという展開です。

 

  • 題名「イビルアイ」

本作の題名は『イビルアイ』です。

とは言え、
題名の「イビルアイ」=「邪視」が、
本篇と何にも関わりが無かったような?
(英語題も「evil eye」)

 

個人的に思うのは、
メディアがエロい感じで夫ギレルモとキスするシーンが多かったですが、

それを見るホセファの視線が、
物欲しげな感じで、

この「羨ましい」感が、
ホセファの動機であり、
題名ともなった、「邪視」なのかもしれませんね。

 

 

 

本作『イビルアイ』は、
皮を剥いだ魔女のビジュアルや、
魔術の小物などもインパクト大。

ホラーっぽい残酷なラストも印象深く、

演出、ストーリー展開の面白さも相俟って、
中々、良質な作品と言えるのではないでしょうか。

ノスタルジックでありながら、
幼少時代のトラウマも刺激する、

こんな良作が突然登場するからこそ、
ホラー映画の定期的な鑑賞が欠かせないのです。

 

 

 

 

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