映画『素晴らしき、きのこの世界』感想  きのこの世界は素晴らしくとも、この映画はどうか?

地球上に数多存在し、しかし、その多くが、未だ名前さえ付けられていない菌類(Fungi)。
本作では菌類の中でも、主に「きのこ」に注目し、その魅力を伝えているドキュメンタリー映画なのだが、、、

 

 

 

 

監督は、ルイ・シュワルツバーグ
ドキュメンタリー作品を中心に、40年近いキャリアを持つ。

 

出演は、
菌類学者:ポール・スタメッツ

ナレーター:ブリー・ラーソン 他

 

 

 

私、
前々から言っている事があって、
それは「スーパーマリオ」って凄ぇ
という事です。

どう凄いのかと言うと、

先ず、
マリオが「きのこ」じゃないですか。
そして、クッパ軍団が、
で、ピーチ姫が、

全部、下半身を暗示させるものが元ネタになっているじゃないですか?

これ、偶然じゃなく、
絶対、意図的ですよね。
完全に、酒場のオヤジのセクハラトークから、企画が始まってるでしょ?

それが、
世界的にも認知されるキャラクターになるってるってんだから、
不思議ですよね。

ですが、
「マリオ」が「男根」主義的な創造物であると、
無意識に受け取ったからこそ、
世の中の「母親」は、
ファミコンをあれほど嫌悪したのではないでしょうか?

 

 

まぁ、それはともかく、
『素晴らしき、きのこの世界』です。

 

「きのこ」って、魅力的じゃないですか。
まぁ、勿論、あんまり好きでは無い人も居るでしょうが、

しかし、
何か、キモ可愛さというか、
独特の魅力がありますよね、
見た目も、味も

 

きのこモチーフのコンテンツと言えば、
ゲームの『スーパーマリオブラザーズ』もそうですし、
漫画の『ドロヘドロ』でも、
ギャングのボスの「煙」の魔法が「きのこ」でしたし、
また、
きのこ映画の名作『マタンゴ』(1963)という作品もあります。

また、きのこたけのこ論争というものもあって、
まぁ、これは、諸説あり、
必ず荒れる話題なので、ここで終わります。

 

そんな魅力的なきのこを、
ドキュメンタリー映画として、81分間も観られる。

これは、興味深いですねぇ。

 

と、言う事で、
楽しみに観に行った『素晴らしき、きのこの世界』。

率直な感想を言いますと、

何か、思ってたのと違う

 

です。

 

 

以下、内容に触れた感想が始まります

 

 

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いやぁ、
「きのこ」のドキュメンタリー映画、
と言われると、

例えば、
きのこの概要から入って、
きのこの生態(?)とか、
きのこの個別の種類とか、
きのこ料理とか、
きのこが歴史上、どの様な役割を果たしたのかとか、
きのこと歴史上の人物とのエピソードとか、
きのこが好きな、各地のきのこ博士的な人の話とか、

何かそういう、
ナショナルジオグラフィック的な物を、期待しますよね

 

確かに、
本作は、そういう要素を網羅しています。

冒頭から、前半部分なんかは、
そういうイメージの作品ですね。

特に、
タイムラスプという撮影方法、
これは、静止画を繋ぎ合わせる事で動画の様に見せる手法で、
いわゆる、低速度撮影の一種。

簡単に言うと、
きのこの生長を、時間を圧縮して観せてくれるので、
まるで、きのこが生きているかの様に、
ニョキニョキとデッカくなっていく様子が描かれます。

 

この部分は、確かに、興味深く、面白いんですよね。

まぁ、
ぶっちゃけ、この冒頭10分くらいが、
この映画のクライマックスと言えますがね!!

 

で、本作の何が引っかかるのかと言うと、

ナビゲーター的な存在で、
本作で、むしろ、きのこ以上にメインにフォーカスされている、
ポール・スタメッツという人物が胡散臭く感じる所です。

 

 

ポール・スタメッツは、
最初は、
きのこ好きが高じて、きのこ学者になった的な人物として登場します。

しかし、映画が進む度に、
どうやら何やら怪しくなって来て、

やれ、
きのこサプリメントで癌が治っただとか、
マジックマッシュルームで、人生幸福になるとか

何か、そういう事が、
ポール・スタメッツをメインに据えて、
映画で描かれ出すんですよね。

言うなれば本作、

「きのこの世界」というより、
ポール・スタメッツという人物の主張にフォーカスしている作品なんです。

 

 

ポール・スタメッツの講演にて
食い入る様な聴衆、
涙を流しながら聴いてる人、
とか映し出されて、

まるで、
スティーブ・ジョブズのプレゼンか?という様な描写もあります。

 

また、
マジックマッシュルームを、
余命幾ばくもない、病気の末期患者に処方する医師が本作に登場するのですが、

その医師の表情とか観ていると、
何だか、宗教的な雰囲気を受け取ってしまいます。

因みに、
日本においては、
マジックマッシュルームを、許可無く所持するのは犯罪です。

 

マジックマッシュルームとか、
そういう薬物でトリップした体験を、
西洋では意識の変容として、好意的に受け取る人物もいますが、

東洋ではむしろ、
そういうインスタントな刺激は、
邪念として、
「悟り」へと至る境地の不純物として捉えられる、

そういう意識の違いも、あるのかもしれません。

 

マジックマッシュルームのトリップって、どういう物なの?

と、思う人は、
映画の『ドクター・ストレンジ』(2016)で、
主役のストレンジがトリップするシーンがありますので、
それが参考になると思います。

 

 

閑話休題。

で、
このポール・スタメッツという人物ですが、

どうやら、
マジックマッシュルームの新種を多く発見しているそうで、

また、
「Fungi Perfecti」という、
きのこ由来のサプリメントを販売する会社のオーナーでもあるそうです。

映画にて、
「カワラタケで癌が治った!」的な事を言っていたのは、
自社製品のプロモーション的な意味合いであると、
受け取れるんですよね。

 

 

何かに夢中になっている人を観るのは、
面白いです。

しかし、その視点を、
一方向のみで描かれるのは、

映画として客観性を欠き、
ただの、個人の主張の礼賛に堕してしまいます

映画に登場する人物の多くが、
きのこ柄のTシャツを着ている事も、
個人的には、気になりました。

ああ、ドキュメンタリータッチに見せて、
言う事、衣装も、
全て、台本通りなんだな、と。

 

私としては、
縄文にハマる人々』(2018)みたいな、
「縄文」という一つの事を扱いつつ、
様々な視点や主張をフラットに並べた様な作品を期待していたので、

本作は、
ちょっと残念に感じました。

 

 

ただ、
面白かったというか、
興味深かったのは、

本作のパンフレットです。

 

パンフレットには、コラムが3つ掲載されており、

それを執筆した三者が三者とも、
「きのこの魅力を伝えたいけれど、映画としては眉唾モノ」だよな、

という事を、正直に述べていたので、
そこに、良心を感じました。

ああ、ちゃんと、
映画のパンフに寄稿する様な専門家は、
解っているんだな、と。

 

 

個人的には、
面白い部分もありつつも、
きのこの魅力を伝えるには、もっとやり様があっただろうに、と、
残念に思う作品であった、
『素晴らしき、きのこの世界』。

しかし、
この作品でも分かる通り、
人に、自分の好きなモノをプレゼンするというか、
勧めるのは、存外に難しいなと、
改めて思いました。

私自身、
本ブログで、映画の魅力を語っているようで、
その実、
個人の主張の垂れ流しになっている部分もあり、

そういう自己満足に終始する事が無いように、
自戒すべきだと肝に銘じておきます。

 

 

 

  • 『素晴らしき、きのこの世界』のポイント

タイムラスプで描かれる、きのこニョキニョキの映像

何とも怪しい、ポール・スタメッツという人物

きのこサプリと、マジックマッシュルーム

 

 

 

 

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