銀行の支店長であり、副頭取とも昵懇の間柄のソンギュ。二人の子供を車で学校に送り届けようとしていると、電話が鳴った。
グローブボックスから見慣れぬスマホを見つけ、電話に出たソンギュ。相手は「車の座席に爆弾を仕掛けた」「離席すれば爆発する」「警察に連絡しても爆発させる」と言い放つ。半信半疑なソンギュだったが、自分と同じように脅されていた副支店長の車が目の前で爆発してしまった、、、
監督は、キム・チャンジュ。
韓国映画にて、編集に長らく携わり、
本作にて、長篇映画監督のデビューを果たす。
出演は、
ソンギュ:チョ・ウジン
ヘイン:イ・ジェイン
パン班長:チン・ギョン
ジヌ:チ・チャンウク 他
引っ越しって、面倒ですよね。
荷物の梱包やら、
役所の手続きやら、
公共料金の変更やら etc…
で、
個人的に一番面倒だったのが、
ネット関係です。
引っ越し先に、
思う様なネットが開通していなくて、
その工事にて、引っ越し直後はネットが使えず、
数ヶ月、レンタルWiFiを使っていました。
で、
このレンタルWiFiですが、
「通信量無制限」を謳っていたのですが、
「但し、一日の通信量が3Gを超えると通信制限がかかる」
というものでした。
私は結構、ネットヘビーユーザーで、
ラジオ代わりにYouTubeを鑑賞しているタイプなので、
毎日、通信制限に引っ掛かっていました。
正直、
全く使い物にならないといった所。
次に引っ越す時は、
その諸々を、考え直す必要がありますね。
まぁ、
それはさておき、
本作『ハード・ヒット ー発信制限ー』です。
邦題からは、
何の映画か分かりませんね。
素直に、
「座席爆弾!!」とかにすれば良いのに。
車の座席に爆弾を仕掛けられた男が、
後部座席の娘と息子の二人の子供を人質にとられ、
犯人の無理難題に苦悶するという、
要は、
限定された状況(アイデア)で勝負する、
ワンシチュエーション系のスリラー映画です。
舞台は屋外ではありますが、
自身は車の中、
犯人の接触はスマホからの電話という、
状況的には、密室状態とも言えるのです。
犯人の要求に従わざるを得ないソンギュ。
事態を打開するには、どうすれば良いのか?
何故、自分が狙われているのか?
スリラー映画としては、
その辺りの「謎」の解決が見所と言えますが、
本作の密室状態は「車」。
つまり、
スリラー的要素がありつつも、
「車」というアクティブな密室であるが故に、
アクション的な要素もふんだんに盛り込まれています。
「乗り物」「スリラー」「アクション」という要素の複合で思い出すのは、
ヤン・デ・ボン監督、キアヌ・リーブス主演の
『スピード』(1994)。
本作は、
そのフォロワーである事は、間違い無いでしょう。
そして、
本作の上映時間は、94分。
コンパクトに、
必要十分最低限にまとまっている、
『ハード・ヒット ー発信制限ー』は、
手軽で見やすいスリラーと言えるでしょう。
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『ハード・ヒット ー発信制限ー』のポイント
乗り物、スリラー、アクションの三色丼
死にもの狂いの一般人は、そこそこ強い
サイコに勝つ!?親子の絆
以下、内容に触れた感想となっております
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相対的に凄く見える、死にもの狂いの一般人
本作『ハード・ヒット ー発信制限ー』は、
「車のシートに仕掛けられた爆弾で身動きとれない」という
ワンアイデア
ワンシチュエーションを活かした作品なのですが、
それが、
「乗り物」「スリラー」「アクション」の三色丼の組み合わせであり、
一本で、沢山の面白さ、美味しさが詰まった作品であると言えます。
そんな本作の主人公は、
SWATでも、殺し屋でも無く、
一般人のソンギュ。
銀行の支店長という事で、
ちょっと尊大な感じがしますが、
まぁ、普通の人です。
で、このソンギュ。
普通の人であり、
危機に際して、映画の間中、常に受け身なのですが、
不思議と、無能には感じ無いのです。
冷静に思い返してみると、
犯人のスマホにヒステリックに
「子供を病院に連れていかせてくれ!」と叫ぶだけで、
事態を打開する様な事は、
何一つしていないんですよね。
で、何故、アホに見えないのかというと、
周りがポカし過ぎて、
相対的に「まだマシ」に見えてしまうのです。
先ずは、
爆弾が本物だと知らしめる役割である、
副支店長夫婦がいます。
その、副支店長の妻が、
ギャーギャー喚いて、
いわゆる「ホラー映画で真っ先に死ぬタイプ」を体現しており、
「ああ、死亡フラグを立てないだけ、ソンギュの一家はまともなんだな」
と、観客に思わせるのです。
そして、作品の中盤、
現場指揮をしている刑事とは別に、
爆弾処理班の班長役のパンが登場します。
颯爽と歩くその後ろ姿、
凜々しい立ち居振る舞い、
「強者感」を漂わせていますが、
コイツが、まぁ、
無能といいますか、
役回りとしては「観客に、状況の後付け解説をしてくれる」ポジション。
ソンギュに「あなたは犯人じゃ無い」(知ってるよ)とか
偽弟(真犯人)が立ち去ってから「ソイツが犯人だ!」(遅えよ)とか言って、
観客に心の中でツッコまれる役どころ。
パン班長は、
ソンギュが渡したスマホが、
犯人とやり取りしていたものでは無く、
ソンギュ自身のモノだと気付かなかったり、
ソンギュの娘のヘインを保護しようとしている時、
自分が気付いていなかった(?)狙撃兵の配置をヘインに見抜かれたり、
遣り手の警官「風」の人が、
死地に追い込まれた「普通の人」の必死さに後れを取る事で、
相対的に、
ソンギュやヘインが凄く見えているのです。
現場の警官役は、一人で十分なのに、
何故、パン班長が出て来たのかと言うと、
まぁ、かませ犬として、
重要な役割があったと、言えるのでしょうね。
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身勝手な男が、父親として目覚める物語
『ハード・ヒット ー発信制限ー』の主人公ソンギュは、
銀行の支店長という事で、
ちょっと尊大な感じがする人物。
神経質に車を磨いたり、
妻を邪険に扱ったり、
子供に「俺が手に入れたサインボール凄いだろ」とか言ったり、
典型的な、
嫌味な成り上がり者的な雰囲気を漂わせています。
しかし、
息子が大量出血してから、状況が変わります。
ソンギュは、
「子供を助けてくれ」「せめて病院に連れて行かせてくれ」と、
まるで、壊れたレコードの様に繰り返します。
彼が元々、
そんなに子供の事を思っていたのかは計り知れませんが、
ナチスの国民啓蒙・宣伝大臣であったヨーゼフ・ゲッベルスが言ったといわれる、
「嘘も百回言えば真実になる」という言葉が示す通り、
ソンギュにとって、子供が
金よりも、自分の命よりも大事なものと、
それが至上命題の様に思えてきます。
それを、間近で見て、聞いていたのが、
娘のヘイン。
見た感じ、
お年頃の娘さんなので、
父親に対しては、反抗期に伴う忌避感があってもよさそうなもの。
しかし、
父を一人にしては射殺されると、
自ら爆弾シーツに座わる蛮勇を見せたり、
その前後のシーンでも、
言わず語らず、父親を全面支援しています。
ソンギュにとっては、
彼の為に、ここまでしてくれる娘の行動によって、
それに恥じない、
父親、人間としての行動が、
自ら、求められているのではないでしょうか。
娘からの信頼と
娘への責任感の相互作用、
人が変わるとしたら、
これが切っ掛けであり、
故に、
ソンギュは、最後の最後に、
改心したとも言える行動に出たのでしょう。
スケール感や面白さで言ったら、
確かに『スピード』には遅れをとるでしょう。
しかし、
コンパクトにまとまった、
エンタメスリラーとしては、
十分に面白い、
『ハード・ヒット ー発信制限ー』は、
そういう作品なのではないでしょうか。
「乗り物」「スリラー」「アクション」の元祖、『スピード』はコチラ
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