映画『忌怪島/きかいじま』感想  ホラー映画の悪い所の見本市

若き天才脳科学者と言われる片岡友彦は、同じ脳科学者の井出文子に誘われ、島全体をVR空間へと移植するプロジェクト「シンセカイ」に参加する。
しかし、片岡が島へ訪れた時には、井出は秘密の実験中に亡くなっていた。その事に興味を覚えた片岡は、ログの映像データを閲覧、そこには謎のバグ?怪しい影が映っていた、、、

 

 

 

 

 

 

監督は、清水崇
監督作に、
『呪怨』(2003)
『THE JUON/呪怨』(2004)
『魔女の宅急便』(2014)
犬鳴村』(2020)
『樹海村』(2021)
牛首村』(2022) 等がある。

 

出演は、
西畑大吾:片岡友彦
園田環:山本美月
深澤未央:生駒里奈
山本春樹:平岡祐太
北島弘治:水石亜飛夢
三浦葵:川添野愛
井出文子:伊藤歩
金城リン:當真あみ
新納シゲル:笹野高史

イマジョ:祷キララ 他

 

 

 

 

かつて、
ジャパニーズホラーといわれたのも、
今は昔。

『リング』(1998)にて一世を風靡した
中田秀夫監督は、
以降、しょっぱい作品を作り続け、
最新作『”それ”がいる森』(2022)という
どうにも擁護出来ようが無いものまで生み出してしまいました。

一方、
『呪怨』の清水崇監督は、
ヒット作以降も、
まぁまずまずの作品を作っており、

個人的には、
「村三部作」と言われた
『犬鳴村』
『樹海村』
『牛首村』(これはイマイチ)は、
楽しく観られました。

 

で、
新しいシリーズを作ろうという魂胆でしょうか、
「村三部作」に代わり、
「島」シリーズを始めたいという事でしょうか?

ヒットしたら、
続篇を作ろうという魂胆見え見えで、
新たなシリーズの第一弾という事で、

『忌怪島/きかいじま』という作品が今回公開されました。

 

 

実は、
ちょっと期待していたのですが、

実際に観た所、本作『忌怪島/きかいじま』は、

 

駄目なホラー映画の見本市の様な作品でした。

 

 

 

特に、悪い訳でも無いです。

ですが、
特に、良いという所も皆無です。

あ、
コンセプトアートは良かったかな。

 

先ず、怖く無い。
そして、何をしているのか解らず、
特にヤバい事も起こらず、話が終わります。

 

 

 

出演者は、
ベテラン、有名所、新進気鋭と、
粒揃いのラインナップですが、

肝心の
ストーリーとテーマが何なのか、
全く伝わりません。

 

ある意味、
この状態がホラー。

 

限りある時間とお金を『忌怪島/きかいじま』の鑑賞に使うべきかどうか、
もう一度、
よくよく考えるべきだと思いますね。

 

 

 

  • 『忌怪島/きかいじま』のポイント

怖く無い

ストーリーもテーマも無い

説明不足

 

 

 

以下、内容に触れた形で、何処が悪かったのかを語ります

 

 

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  • 本作のダメな点

本作『忌怪島/きかいじま』は、
ホラー映画のダメな点の見本市の様な作品です。

具体的に、何がダメだったのか、
その大きい要因は二点。

1:説明不足
2:SFとホラーを混ぜてはいけない

です。

順に説明してみましょう。

 

先ず、ホラー映画、ホラー作品というものは、
基本、「理」を説く事が必要とされていません。

因縁だから、
呪いだから、
はたまた、通り魔だから、

起こる災難や苦悩の、
「原因」の説明よりも、
「事象」の理不尽さの描写に重きを置いているジャンルが、
ホラーであるからです。

 

本作は、
自分がホラー映画というジャンルであるという自覚から、
その説明の手間を省いています。

その判断自体は間違っていません。

ですが、
本作においては、
全てに於いて説明不足の為、
何が起こっているのか理解出来ず、
故に、ホラー現象、描写そのものも、
理解出来ない=怖く無いのです。

 

先ず、初っ端。
チーフの井出が園田哲夫と実験中、イマジョに襲われます。
何故、襲われたのでしょうか?
その理由は明かされません。

そもそも、
イマジョはどうやってデータに入り込んだのか?
そして、
データとリアルを自由に行き来出来るのは、どういう理屈なのか?

一応、
物語後半で、ユタである南トキの説明で
イマジョがもうひとつの、観念世界の「島」に居る的な事を話していましたが、

何故それがVRの「シンセカイ」と繋がっているのか、
牽強付会にも程があります。

これは最早、魔法、
異世界ファンタジーです。

 

そもそも、
VRで「島」を再現するという「シンセカイ」のプロジェクトに、脳科学者が参加するのはいいいですが、
何故、脳科学者の西畑がプログラミングまで出来るのでしょうか?

結局の所、
本作はホラーでありながら「脳科学」とか「VR」とか、
SF要素を物語の重要部分に置いてしまっています。

確かにホラーなら、
説明不足でも、ある程度なら誤魔化せます。

しかし、
SFやミステリというジャンルは、
何故という理屈の解明や、理路整然とした謎解きこそが、
その面白さの一因となっています。

 

つまり本作は、
ホラー映画でありながら、
SF要素を取り扱っている為に、
「説明不足」が成り立たなくなってしまっているのです。

トイレの洗剤も、
「混ぜるな危険」と書かれていますが、
ホラーをSFは、混ぜてはいけないジャンルなのです。

 

他にも、本作には気になる点があり、

過去のイマジョの因縁と、
シゲルの因縁が繋がっているのはいいですが、
それが、
現在進行形の「何か」に繋がっていない為に、
イマジョの復活が唐突に思えてしまいます。

折角、
「金城リン」という魅力的なキャラクターを配置しておきながら、
それを、ストーリーと絡めなかったのは、
失策だと個人的には感じました。

 

又、
クライマックス直前、シゲルがリンに「これからこの島は地獄になる」と言います。
そう期待させておきながら、
地獄の惨劇が起きなかった事も、
ホラー映画としては物足りないものでした。

ラストシーンも意味不明で、
結局、VR世界で、
現実では助かって無いという事でしょうか?

 

そして、
本作の怪奇現象である「イマジョ」という名前も、
どうかと思います。

何だか、
「リケジョ」とか「山ガール」とか「カープ女子」的な、
軽いノリに思えるのは、私だけでしょうか?

 

 

結局
「ホラー」と「SF」という、
混ぜるな危険のジャンルを掛合わせてしまった為に、

ストーリーもテーマもとっちらかってしまった作品『忌怪島/きかいじま』。

 

個人的には、
清水崇監督には期待しているので、
持ち直して欲しい所です。

 

 

 

 

 

 

 

 

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