映画『オーヴァーロード』感想  ハイテンションで生き残れ!!人体実験をぶっつぶせ!!


 

1944年、6月6日、オーヴァーロード作戦決行。ノルマンディー上陸に先駆け、空挺部隊がフランスに降下した。数多の犠牲を出しつつも、辛くも生き延びたボイスは、フォード伍長や他の生き残りと共に、当初の作戦である、フランス・シエルブラン村のナチスの電波塔を破壊せんとするのだが、、、

 

 

 

 

監督はジュリアス・エイヴァリー
他の監督作に
『ガンズ&ゴールド』(2014)等がある。

 

出演は、
エド・ボイス:ジョヴァン・アデポ
フォード伍長:ワイアット・ラッセル
クロエ:マディルド・オリヴィエ
ティベット:ジョン・マガロ
チェイス:イアン・デ・カーステッカー
ジェイコブ:ドミニク・アップルホワイト
ワフナー:ピルー・アスベック 他

 

 

 

「オーヴァーロード」ですか。

「Over Load」とすると「大君主」とでも訳しますか。

アニメの『天元突破グレンラガン』の最終回での、
「ラゼンガン オーバーロード」の活躍が熱かったですね。

 

とは言え、
やはり、オーバーロードと言って思いつくのは、
「Wizardry」シリーズの第一作目、
「Wizardry #1 – Proving Grounds of the Mad Overload」
(ウィザードリィ1 狂王の試練場)ですね。

狂王トレボーの命により、
地下10階に立て籠もっている魔術師ワードナから護符(アミュレット)を奪い、
持ち帰ってくるのが目的です。

若かりし頃、
死ぬほどやった「Wizardry」。

このシリーズの原点となった、第一作目の題名に「オーヴァーロード」という名前が組み込まれています。

 

まぁ、
そんな感じでね、
ワードナの護符を奪取する感じでね、
ナチスの電波塔を破壊するのが目的の

戦争映画かと思いきや、
中盤から、まさかの超展開が始まります。

 

いやぁ、
この転調は、
『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(1996)を思い出しますね。

ああいうノリが好きなら、
本作は楽しめます。

 

 

ナチスの情報網を遮断し、
連合国軍が安全に上陸出来る様に、

村の教会に立てられた電波塔の破壊を目指す、
フォード伍長と生き残りの面々。

村民のクロエの協力の下、
教会への侵入を目論みますが、

そこでは、
ナチスが恐怖の人体実験を行っていた!!、、、

 

 

そう、
実は本作、

B級映画です。

 

ストーリー、
アイディア、
展開、

これ、正に、B級映画のソレです。

しかし、
本作は、潤沢な資金があったのか、
なまじっか豪華な作りとなっています。

最近は、
こういう、
普通にお金を掛けて作ったB級映画みたいなものが多くて、
観る方は困惑してしまいます。

いや、嬉しいんですけどね。

 

お金をかけてはいますが、
本作は紛れも無くB級スピリットを持っています。

出演者が、超有名じゃない、
今から売り出しの役者で、

ギラギラした生の演技が観られます。

 

そして、

無駄にハイテンションなノリが終始続く

 

展開となっております。

ちょっとツッコみ所も多いですが、

そこは、
ノリとテンションでどうでもよくなってしまいます。

戦争中だから!
ナチスが相手だから!

こういう大雑把なノリ、
それが、良いんだよ。

 

とにかく、
無駄に力を込めまくった作品、
『オーヴァーロード』は、
ノリとハイテンションで楽しめる作品です。

 

 

  • 『オーヴァーロード』のポイント

迫力満点の冒頭部分

戦争映画から、まさかの超展開

主人公補正 V.S 死亡フラグ!!

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • つかみはOKの冒頭部分

映画というものは、
どんな作品にも
「起承転結」が明確に設定されています。

逆に言うと、
「起承転結」が明確では無い作品は、
駄作となってしまうのです。

そして更に、
この「起承転結」の前、
冒頭部分に、インパクト充分の「つかみ」も持って来る作品も多数あります。

 

この「つかみ」の部分が良く出来ていると、

一瞬で世界観の紹介が完了し、
ド派手な展開により観客を一気に作品の世界観に没入させるという効用を持っています。

 

戦争映画で、
冒頭の「つかみ」が凄い作品としては、
スティーヴン・スピルバーグ監督の『プライベート・ライアン』(1998)が思い浮かびます。

『プライベート・ライアン』は、
その冒頭にて、
銃弾飛び交う「ノルマンディー上陸」の様子を映し出しましていました。

 

『プライベート・ライアン』の例に漏れず、
「オーヴァーロード作戦」における「ノルマンディー上陸」を描いた作品は多数あります。

しかし、
本作は「海」の様子では無く、

「ノルマンディー上陸」に先駆けて行われた、
空挺部隊の降下の様子が描かれます。

これが、迫力満点。

 

銃弾が、槍衾(やりぶすま)の如くに下から突き上がって来る恐怖。

ナチスの迫撃砲が、航空機に命中するか否かは、
全くの運

自らの生き死にを丁半博打にかける不条理を、
ド迫力のハイテンションで描いています

 

この冒頭の「つかみ」で、
観客のハートをグッと掴む事に成功しているのですが…

 

  • まさかの超展開、発動!!

『オーヴァーロード』の前半は戦争映画です。

しかし、
後半はまさかの転調で超展開、
ゾンビ映画へと変化してしまいます。

 

たった今、観て来た事を話すぜ。

『プライベート・ライアン』を観ていたと思ったら、
いつの間にか『武器人間』(2013)になっていた

何を言っているのかわからねーと思うが、
俺も何を観たのかわからねー。
最も面白いモノの片鱗を味わった感じです。

 

しかし本作、
前半の戦争映画の迫力も凄かったですが、

後半のゾンビ映画のハイテンションも、
これまた面白い。

つまり、
全部面白くて、2度オイシイ作品なのです。

 

まぁ、言っちゃ悪いが、
ゾンビが出て来たら、
忽ち、B級感が漂いだしますよね。

 

人体実験により「不死の兵士」と化す「血清」を開発したナチス、
そして、それを打たれると、
死んだ人間でも生き返って行動します。

しかし、死者に使うと、
その行動や思考が、支離滅裂なものとなるようです。

「血清」を打つのは、
生きた人間でなければならない。

それでも、
正気を保つのは困難らしいです。

「自意識の無い」
「自らの肉体損壊を厭わない」存在となってしまう。

これこそ「ゾンビ」なのですね。

 

  • ゾンビ映画としての『オーヴァーロード』

本作『オーヴァーロード』の、
ゾンビ映画たる所以。

それは、
死人が生き返る、という点、

悪趣味なゴア表現、

そして何よりも、
ゾンビ(本作では血清を使った千年戦士)が特殊メイクだという事です。

 

ゾンビが特殊メイクだとどうなるのか?
CGではいけないのか?

やはり、
ゾンビというのは、元・人間の憐れな成れの果て、というのがポイントだと思うのです。

数秒前まで、
人間として会話していた相手が、
今、別人になったかの様に、襲いかかって来る。

この、
人間でありながら、
人間でないという状態を表現する時、

特殊メイクならば、
人間が演じてはいるが、
人間では無いという、違和感を与えるポイントとなります。

 

確かに、
現在はCGが発達し、
実写と遜色ないレベルにはなりました。

しかし、
人間が、太刀打ち出来そうで、ギリギリ無理なレベルのゾンビを表現するなら、

人間自体が、
それを演じるのがベストだと思うのです。

CGでは、未だ、作り物感が拭えない、
ブラッド・ピット主演の『ワールド・ウォーZ』(2013)が、
ゾンビ映画としては、イマイチ納得の行くものでは無かったのは、
「ゾンビ」という存在が、CGモンスターという存在に堕してしまっていたからなのです。

その点、
本作は、「ゾンビ」として、
個人的には納得の行く、面白い描き方がされていました。

 

しかしその一方、
本作のゾンビは、ナチスが人体実験により生みだした「千年戦える戦士」という設定上、

普通の映画のゾンビより、
更に強い存在となっております。

なので、
ゾンビ映画でよくある、
物量で攻めて来るという描写が無かったのは、ちょっと残念です。

しかし、だからこそ本作では、
自分の意思で「ゾンビ化」出来るという選択肢が生まれ、

短期間限定の、
一度きりの超戦士としてバトルするという、
なんとも厨二的な燃えるバトルがラストで展開されるのです。

 

  • 主人公補正 V.S 死亡フラグ

本作では、
いわゆる「死亡フラグ」というものを、
登場人物が次々と立てて行きます。

 

まず、
戦争の伝記を書いているという兵士が、
「戦争が終わったら、云々…」

と、口にした瞬間に、地雷を踏んで爆散してしまいます。

典型的な「死亡フラグ」と「その回収」ですね。

 

この描写で、
観客としては「あっ」となる訳です。

「本作は、死亡フラグを立てたらヤバいぞ」と。

なので、
その後、登場人物が死亡フラグを立てる度に、
ドキドキしてしまうのです。

やっぱり死ぬの?
辛くも生き残るの?と。

 

戦争記者のチェイスは、
死亡フラグを回収してしまったパターン。

捕虜に一人で近付いて、
死んでしまう役割となってしまいました。

一方、
口数の多い皮肉屋のティベットは、
死亡フラグを立てながら、死ななかったパターン。

子供と交流しつつ、
子供を守って銃火に晒されますが、
撃たれて尚、生き残ります

主人公ボイスの親友のジェイコブなど、
典型的な「かませ犬」役、
…かと、思いきや、
人体実験から救出され、フラフラながらも生き残るのです。

フォード伍長は、
命令を遵守する上官という、
如何にも死にそうな役回りで、
実際に死んでしまいますが、
最高に見せ場があったタイプ。

 

脇役が死亡フラグを立てて、
生き残ったり、死んでしまったりする一方、

主人公のボイスは、
その人の良い性格で死にそうな感じを演出しつつ、

しかし、
ちゃっかり最後まで生き残ります。

まぁ、主人公補正で生き残る訳ですが、
ボイス自身のキャラの好感度が高いので、
生き残った事に不満が生まれない様な感じになっていますね。

 

本作は、
キャラクターが一々立てる「死亡フラグ」の多さが特徴的です。

その、わざとらしくも、ニヤリとする演出がまた、
B級感があって面白いのです。

 

  • 出演者補足

本作は、撮影に入る前に、
出演者が、軍隊式訓練(ブートキャンプ)を行い、
一体感を出したのだと言います。

その甲斐あってか、
若手中心の出演者達「これで有名になってやるぞ」という、
ギラギラした感じが演技に出ていて、

そのテンションが映画に良く活かされていたと思います。

 

また、
出演者も、アメリカやイギリス出身者に加え、

ヒロインのクロエ役をやったマティルド・オリヴィエはフランスの新人、

ナチスの親衛隊将校ワフナーを演じたピルー・アスベックはデンマーク人という、

国際色豊かな配役となっております。

また、
フォード伍長を演じたワイアット・ラッセルは、
元・プロのアイスホッケー選手。

そして、
数々のB級映画で名を馳せたカート・ラッセルの息子なのだそうです。

母親は女優のゴールディ・ホーン。
異父姉に、これまた女優のケイト・ハドソンがいます。

そう言われれば、彼は父の面影がありますし、
チェイスがゾンビに転化するシーンなんかは、

父のカート・ラッセルが出演した映画『遊星からの物体X』で、
ノリス隊員が「The Thing」だと判明するシーンを彷彿とさせます。

異形のモノが現われた時、
一瞬、皆が為す術無く佇んでしまう瞬間の空気感が、
実に、恐ろしくも、共感出来るシーンです。

 

こういうB級映画から、
若手の役者が有名になって、
大作映画に出演する様になる事も、よくあります。

その意味では、
本作の出演者は、今後要チェックしておくと良いかもしれません。

 

 

 

戦争映画かと思いきや、
まさかの転調で、ゾンビ映画へと変化する『オーヴァーロード』。

ハイテンションの演出、
気合いの入った出演者の演技、
「死亡フラグ」立てまくりの展開、

色々と面白いポイントが多い豪華なB級映画、

それが、
『オーヴァーロード』なのです。

 

 

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