突然変異により、人体発火現象を操る人類「バーニッシュ」が突如発生。世界大炎上により世界の半分が焼けてしまってから30年。攻撃的なバーニッシュはテロリスト「マッドバーニッシュ」として取締の対象となっていた。そのバーニッシュ由来の火災を消し止める、それが「バーニングレスキュー」の仕事である。
「燃えていいのは魂だけだ!」、、、
監督は今石洋之。
脚本の中島かずきとのコンビにて、
TVアニメシリーズ
『天元突破グレンラガン』(2007)
『キルラキル』(2013)を手掛ける。
本作が、このコンビによる、初の長篇映画アニメ作品である。
声の出演は、
ガロ・ティモス:松山ケンイチ
リオ・フォーティア:早乙女太一
クレイ・フォーサイト:堺雅人
アイナ・アルデビット:佐倉綾音 他
セガサターンしろ、
セガサターン白、
セガ田三四郎!!
かつて、セガサターンにて、
『バーニングレンジャー』(1998)というゲームがありました。
未来社会における、
危険な火災現場にて、それを鎮火し、
要救助者を発見し、救出するという、
ヒロイック・アクションゲームです。
開発はソニックチーム。
カッコ良いアクションを追求するも良し、
タイムアタックに挑戦するも良し、
BGMや主題歌を含め、
熱く、面白いゲームでした。
まさか、
あの『バーニングレンジャー』が映画化されるなんて!!
と、
一瞬思いましたが、
よく見たら、
別のアニメでした。
…が、
なんと、クリエイターは、
監督・今石洋之、脚本・中島かずき。
あの、
『天元突破グレンラガン』のクリエイター!
メチャメチャ熱いアニメ作品で、
未だにファンも多い作品を作ったクリエイターの、
初の長篇映画作品。
これは、期待せざるを得ません。
しかし、
映画というものは、
観る前に過剰の期待をするのは禁物。
往々にして、
期待は裏切られるものだからです。
そして、本作『プロメア』はどうだったのかと言うと、、、
これが、
面白かった!!
面白くて震えた!!
震えを抑える為、ずっと腕組みしてた!!
いやぁ、本当、
期待を遥かに超えてきましたね。
そして、上映中、
ふと見回すと、
周りの人も腕組みしてました。
画像はイメージです
(『キン肉マン(49巻)』p.166 より抜粋)
最近って、
アニメ映画も、ちょっと大人しいじゃないですか?
大人ぶってヒューマンドラマ的な感じにしたり、
家族の来歴を語って説教垂れたり、
なんか、
昔のトレンディドラマ風というか、
1990年代後半の、TVドラマ風というか、
恋愛要素を入れて、
イチャイチャチャラチャラ、
「恋人するなら加勢大周」みたいなノリだったり。
そういうのもいいですけれど、
今、アニメ映画で、
あまりにも、冒険活劇が無さ過ぎると思うんです。
そんな時代に生まれ出でた、
熱いハートの、アクション活劇!!
そう、これこれ、
コレだよ、俺が観たかったのは、
井之頭五郎ならそう言うね!
とにかく、大満足の本作ですが、
観る前に懸念がありました。
メインキャストの声優が、
本職の人では無く、いわゆる有名人なんですよね。
元々、
有名人をアニメ映画の声優に据える事の走りは、
宮崎駿の映画作品が、その嚆矢だったと思います。
声優のケレンミより、
より、自然な声を求めた、
みたいな事を言っていたように思います。
しかし現在は、ちょっとその目的が違っており、
映画作品にするなら、
有名人を声優に据えて話題性を作り、
メディアの露出を増やしたり、
有名人のファンを取り込んだりして、
観客動員を稼ぐ効用を期待しています。
ちょっと、不純な感じがするんですよね。
それで、本作ですが、
メインの声優が、
松山ケンイチ、早乙女太一、堺雅人。
この3人が並んでいるだけで、
話題性充分ですよ。
そして、
予告篇を観た感じでは、
松山ケンイチ(ガロ・ティモス)の声が、
イマイチ、張れてなかった様に思いました。
「あ~、コレは、本職を使わずに失敗するパターンか?」
少し、そういう懸念があったのです。
しかし、
本篇を観ると、
その懸念は杞憂に終わりました。
ガロ・ティモスというキャラクターを演じるのは、
松山ケンイチで良かった、
私はそう思いましたね。
『天元突破グレンラガン』が好きな人なら、
本作は必ず気に入りますし、
(ガロはどう見てもカミナ)
そうで無くても、
アクション映画好き、
アニメ好き、
なにか、熱いモノが観たい、
そういう人にも、
必ず、響くものがあります。
「プロメテウス」とは、
ギリシャ神話にて、
人間に火を伝えた神の名前。
その「プロメテウス」が題名の由来となっていると思われる、
本作『プロメア』。
プロメテウス宜しく、
観た人間のハートに熱い火を灯す本作、
いやぁ、とにかく、面白い、楽しい、
最初から、最後まで、
111分、ハイテンションで駆け抜けるアクション活劇、
それが本作『プロメア』なのです!!
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『プロメア』のポイント
ハイテンションで駆け抜けるアクション活劇!!
独特の色使い、映像美
躊躇無く正義を行使する、それこそが悪
以下、内容に触れた感想となっております
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有名人の声優起用
本作『プロメア』は、
メインキャストに
松山ケンイチ、早乙女太一、堺雅人という
有名人を起用しています。
この、
アニメ作品に本職を使わず、有名人を起用する事は賛否両論ありますが、
本作では、
成功していると思います。
本篇を観る前、
予告篇を観た感じでは、
ガロ・ティモス(声:松山ケンイチ)の声が、
イマイチ張れていませんでした。
そこに、懸念があったのは事実。
本作の主人公のガロ・ティモスは、
如何にも、アニメチックなキャラクターです。
そして、
「見得を切る」シーンが多数あります。
確かに、
見映えを良くするなら、
例えば本職の声優とか、
歌舞伎役者を使えば、
迫力のある声を演出出来たのだと思います。
実際、
登場人物の一人であるメカニック担当のルチアは、
見た目が幼女であり、
あからさまなアニメ声ですし、
(声:新谷真弓)
メイン以外のキャラクターには、
実力派の声優を多数起用しています。
その中で、
ガロ・ティモスは、
「新人のバーニングレスキューでありながら、熱いハートで突っ切る」
というキャラクターなのですよね。
この、
実力と経験が伴っていない所を、
勢いとハートのみで埋め合わせ、
実際以上の力を発揮する具合を演出する時、
本職や、声優が上手い人間では、
その本質を表現する事が難しい所だと思います。
松山ケンイチは、
本作の脚本を務める中島かずきが、
同じく脚本を務める「劇団☆新感線」の舞台『蒼の乱』に出演した時、
毎回、アニメ『天元突破グレンラガン』の最終回を観て、
テンションを上げて出演していたと言います。
演劇の出演経験が乏しくても、
気持ちのみで乗り切っていた、というのです。
それは、本作でも同じ。
アニメ作品での声優経験が無くとも、
松山ケンイチは、気持ちで乗り切ろうという気構えがあった。
だからこそ、
本作のガロ・ティモスを演じるのは、
彼しかいなかったのですね。
それは、
本作のもう一人の主人公・リオ・フォーティアを演じる早乙女太一も同じです。
リオ・フォーティアは、
実力はあれど、
その見た目は中性的で、一見、頼りなく見えるかもしれません。
しかし、
周りには、彼を信頼するマッドバーニッシュの仲間がいます。
本作では、
そのマッドバーニッシュの仲間に、
実力派の声優で、
過去の今石洋之、中島かずき作品に出演した経験のある、
檜山修之(ゲーラ役)、
小西克幸(メイス役)の両名を配置しています。
実力のある者が、
葛藤しつつ、立ち向かう主人公を支える、
この構図に、
ピッタリと嵌るのですね。
そして、
本作の黒幕というか、悪の親玉、
クレイ・フォーサイトを演じるのは堺雅人。
普通に上手くて、
安定している演技が聞けます。
実写でいつも観ている堺雅人の人となり、
それが思い浮かぶ位、
安心感があります。
…それが、
段々と、クレイ・フォーサイトの、
「人に信頼される司政官」というペルソナが剥がれ、
暗黒面が露出して行くにつれて、
感情が声の演技に反映されて行くのです。
このテンションが徐々に跳ね上がって行く感じ、
そして、
クライマックスで爆発する感情のほとばしりと轟き!!
これが凄いですね。
本職の声優でも、
これ程の叫びとテンションを発揮出来るのか!?
もの凄いものを聞かせて貰いました。
堺雅人は、パンフレットのインタビューで、
「クレイを演じるには、一年位体を作って、彼に似合った筋肉を付ける必要があるのかな」
なんて事を言っています。
アニメの声優には、まだ理解が浅いが、
もし、自分が舞台でクレイ演じるならその必要があると、
堺雅人は語っているのです。
そのちょっとズレたクソ真面目な発想が、
如何にもクレイ・フォーサイトっぽくて、興味深い感じがします。
本作では、メインの声優を、
そのキャラクター性に似合った人間が演じている、
そこの所が面白いですね。
-
独特の映像美
『プロメア』を観て、
先ず思うのは、
その映像の独特さです。
画面がまるで
ゲームの『マインクラフト』の様な感じ。
人物はちゃんとヌルヌル動いていますが、
背景が、カクカクのポリゴン風味があって、
この違和感が独特の雰囲気を作り出しています。
また、
色調も、
なるべく同じ色をベタ塗りし、
奥行きや影を、
グラデーションで表現する。
この手法も、
如何にもゲーム的なんですよね。
実は、
その表現には一定のルールがあります。
プロメポリス側の背景、演出、キャラクターは、
四角、
バーニッシュ側は、
三角になっているのです。
プロメポリス側は、
その機械、装備、船、ロボットそして、
光を演出してレンズフレアまでも、四角。
バーニッシュ側は、
炎や鎧、レンズフレア、
そして、バーニッシュを代表するリオ・フォーティアの体型までも、
シャープな三角な感じです。
面白いのは、
プロメポリス側のガロと、
バーニッシュ側のリオが共同で動かす「ゼウス・X・マキナ」は、
そのデザインが丸い感じになっている点。
デザインを担当したコヤマシゲト曰わく、
三角と四角が合体したから、
その象徴として丸い感じにした、
との事。
とは言え、
丸い感じではイマイチ格好良くないので、
最終的には「リオデガロン」という、
シャープで、どう見ても「グレンラガン」にしか見えない体型に変化するのは、ご愛敬です。
本作、
四角と三角が入り交じり、
そして、
ラスト、プロメアが本来の次元に帰った後は、
映像が、
普通のアニメ的な色調になります。
レンズフレアも、
ラストシーンのみ、丸になっているのです。
この見慣れた感じの開放感は、
感覚的にも、物語の大団円を感じさせるのですね。
-
躊躇無く正義を行使する、それこそが、悪
正義とは何か?
悪とは何か?
本作『プロメア』を観ると、
そんな事を考えてしまいます。
同じ行為や事実であっても、
立場の違いで、
正義と悪が反転してしまう、
本作においては、
「マッドバーニッシュ」という存在と、
それに対処する人間達の様子が、
それに当て嵌ってしまいます。
しかしです。
善悪が立場で変わるというのは、
まだ、表層的な意味合いでの話なのです。
真の悪とは、
正義を躊躇無く行う事。
本作では、
その事を描いているのです。
絶滅を回避する為に、
ほんの少しの選ばれた人間だけでも、救う。
例え、どんな犠牲を払ってでも、
大多数を、見捨てる事になっても。
この事は、
一定の理に適い、
苛烈な決断を信念の基に下す、
ある種の正義である様に、一見、思えます。
本作のクレイ・フォーサイトや
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)のサノスの主張が、それに当たります。
因みに、
フォーサイトは英語で書くと「foresight」。
訳すると、「予知、予見、、千里眼、先見の明」という意味になります。
クレイは、
その先見の明により、人類の未来を思い、行動している、
という意味が、その名前に込められています。
しかし、
一部の権力者や国家が、
他者に対して自らの主張を、
有無を言わせず従わせる事、
そこにどんな正当性があっても、
それは、正義とは言えないのです。
何故ならそれは、結局の所、
自分というエゴを世界そのものまで拡大解釈した傲慢な自己実現に過ぎないからです。
他者という多様性を排し、
自分と、その主張を、世界そのものと同化させる。
それは、思想のホロコーストであり、
意思の大量虐殺、
ナチスがやった事と、何ら変わる事がありません。
例えクレイやサノスが望む世界が実現したとしても、
その世界は、
画一され、方向性が固定された、多様性が死滅した世界。
変化に乏しく、また、変化に弱い世界は、
一度崩壊へ向かうと、それを留める術がありません。
世界を救う為に一部を切り捨てるという方法論が、
そのまま、
世界の崩壊と直結しているという矛盾を孕んでいるのです。
結局は、
子供じみた、感情的な主張が、
真っ直ぐであるが故に、
意外と、物事の本質を直感的に掴んでいる事もあります。
人を救いたいという、
ガロとリオの想いが、
そのまま、
地球規模まで拡がる本作は、
そのスケール感、
疾走感、勢いで、爽快感があります。
相手の屁理屈を、
真っ当な主張が撃破する。
それが、本作の気持ち良さではないでしょうか。
いやぁ、
面白い、
兎に角面白い、
そして、熱い!!
私は、こういう作品をこそ、待っていたのかもしれない。
思わぬ邂逅に、
感動の震えが止まらない!!
それが、『プロメア』なのです!!
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今石洋之、中島かずきのコンビ、TVアニメシリーズの名作『天元突破グレンラガン』です
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