映画『岸辺露伴ルーヴルへ行く』感想  マニア向け漫画、オシャレ映画へ異世界転生!?

人気漫画家、岸辺露伴。彼は、他人を本にして、その記憶を読むという特殊能力をもつスタンド使い。
ふとした事が切っ掛けで、デビュー当時に話に聞いた「黒い絵」の事を思い出した露伴。オークションで落札したモリス・ルグランの「画」から、「黒い絵」がフランスのルーブル美術館に所蔵されている事を知る、、、

 

 

 

 

 

 

 

監督は、渡辺一貴
TVドラマシリーズの「岸辺露伴は動かない」シリーズの演出を手掛ける。
長篇映画監督は、本作が初。

 

原作は、
荒木飛呂彦の漫画『岸辺露伴ルーヴルへ行く』。

 

出演は、
岸辺露伴:高橋一生
泉京香:飯豊まりえ
奈々瀬:木村文乃
岸辺露伴(青年時代):長尾謙杜
辰巳隆之介:安藤政信
エマ・野口:美波 他

 

 

 

皆さん、好きな漫画は何ですか?

私の場合、
若き頃、一番好きだった漫画は、
『ジョジョの奇妙な冒険』と言えます。

ぶっちゃけ、
人間形成に多大な影響を与えていると言っても、
過言ではありますまい。

 

そんな「ジョジョ」が実写映画化。

しかも、
第4部ベースが映画化されるのは、
今回で二回目。

(忘れているかもしれませんが、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(2017)という映画がありました)

私の若い頃、
「ジョジョ」はジャンプのメインストリームからは外れた「メジャーマイナー」
みたいな感じだったのですが、

その頃の作品評価から考えると、

隔世の感がありますねぇ。

 

さて、
そんな、長篇漫画「ジョジョ」は、
連載開始から37年ほど経過しておりますが、

中でも
屈指の人気キャラとして挙げられるのが、
第4部出身の「岸辺露伴」です。

「岸辺露伴は動かない」という、
露伴が主人公のスピンオフ漫画シリーズがあったり、

他の作家の手掛けた短篇小説シリーズの
「岸辺露伴は動かない」があったり、

それらを原作にした
TVドラマシリーズがあったり。

 

そして、
そのTVドラマシリーズの
スタッフ、出演者が再結集する形で作られたのが、

本作『岸辺露伴ルーヴルへ行く』です。

 

さて、
ドラマシリーズは未鑑賞ですが、
漫画「ジョジョ」ファンが観たら、本作はどういう感想なのか?

 

本作『岸辺露伴ルーヴルへ行く』

へ~、
キチンと作ってあるジャン!!

 

という印象です。

漫画原作の映画化作品って、
結局、何か、
違うンだよなぁ~ってなる事が多いです。

 

最近でも『聖闘士星矢』とか、
その昔には、
『北斗の拳』とか『ドラゴンボール』とかもありましたよね。

原作に忠実で、
妙なアレンジをしていなかった
『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』も、
悪くはありませんでしたが、
「まぁ、これくらいか」という期待値を超える程ではありませんでした。

 

原作を活かしつつ、
実写としての良さを引き出すというのは、
存外に、難しいもの。

特に、漫画はそう思います

 

さて、
その意味で於いて、

岸辺露伴を演じた高橋一生の存在が大きいです。

 

かつて、
『陰陽師』の映画化版を観た、
原作者の夢枕獏は、
「映画を観て、安倍晴明のイメージが(役を演じた)野村萬斎になった」
という旨の発言をしていました。

本作を観て、
岸辺露伴=高橋一生というイメージになる人も、
いるでしょう。

岸辺露伴を演じた高橋一生が
漫画のキャラクターを、
現実に落とし込んだらどうなるのか?
その点を突き詰め、意識して演じている様子が観られ、

そういう細かい、役の作り込み、
面白さに気付くのではないでしょうか。

 

さて、
作品自体の評価ですが、

本作は、
ミステリー的、サスペンス的な展開であり、

アクション漫画である
原作的な展開というより、

しっとり、ジックリしている印象。

そこは、
時間と予算が潤沢である「映画版」という媒体を考えて作ってあるのかな、
と思います。

 

…が、
個人的には、
もうちょっと上映時間をコンパクトにして、
ド派手なシーンも欲しかったなぁ~

 

と思いました。

まぁ、そこは、
アクション映画に脳を侵食されている私個人の好みと、
少し違ったという所です。

 

全体的には、
ホラーサスペンス的な原作を、

オシャレサスペンス的に実写化しています。

確かに、
ジョジョ8部の「ジョジョリオン」辺りの雰囲気を考えると、
そういう映画になるのも、
間違いでは無いでしょう。

 

原作漫画と、
どこが同じで何処が違うのか、
そういうのをチェックしながら観るのも、
面白いかもしれませんね。

 

 

 

 

  • 『岸辺露伴ルーヴルへ行く』のポイント

オシャレ風サスペンス映画

探偵とバディの掛け合いも魅力

「ジョジョ」もこんなにメディア展開される時代なんだなぁ…

 

 

以下、ジョジョファンが本作の事について徒然なるままに語ります

 

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  • ジョジョのブレイクまで

本作の主人公である岸辺露伴は、
原作漫画の『ジョジョの奇妙な冒険』の「第4部:ダイヤモンドは砕けない」に登場する、
作中でも屈指の人気キャラクター。

スピンオフの漫画や小説も沢山あり、

人気のみならず、
露出が多い分、知名度も高いです。

 

さて、
現在アニメとかにもなって「ジョジョ」を知っている人も多いですが、

掲載誌である「ジャンプ」系列の雑誌においても、
「ジョジョ」はメジャーマイナーというか、

圧倒的な人気投票を獲得する訳では無いが、
常に、一定の固定層が支持し続けるという、
アベレージヒッターの様な、いぶし銀の活躍の作品でありました。

 

「第3部」が「スーパーファミコン」にてRPGになったり(1993)
一部のエピソードがオリジナルビデオアニメになったり(1993)
また、カプコンの対戦型格闘ゲームになったり(1998)

「第5部」が
これまたカプコンが家庭用のアクションゲームとして製作したり(2002)

「第1部」がダイジェスト的に
劇場アニメ『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』(2007)が公開されたりしました。

 

しかし、
「ジョジョ」が一般的にヒットする切っ掛けになったのは、
私が思うに、
一番くじ「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」(2009年6月中旬)であります。

今まで、
ジョジョのデキの良いフィギュアというのは少なく、
当時、
一番くじのフィギュアは、今より出来が良かったというのもあり、

また、
グッズ展開が過去にも少なかった「第4部」作品という事で、

「一番くじ」を展開したコンビニなどで、
争奪戦が勃発、

各地で、瞬く間にくじが瞬殺される事態が起こりました。

 

あれ?実はジョジョって、潜在的なマーケティングチャンスが眠っている?
という事に気付いたのか、

「超像可動」という関節が動くフィギュアシリーズを出していた「メディコスエンタテインメント」も、
「ジョジョ」シリーズを大展開。

第一弾の「スタープラチナ」(2009年1月)から、
人気の第3部の主人公パーティーと、
ボスのDIOのスタンド、本体を相次いでリリース、
コチラも大ヒットした事も併せ、

「ジョジョのグッズは売れる」という事が認知されました。

 

そりゃあね、
今まで、
同年代の『ドラゴンボール』とか『スラムダンク』とかは
凄い目立ってましたが、
「ジョジョ」は長らく、冷や飯を喰っていましたからね。

滅多に出ないグッズが出たら、
ファンが発狂して買い漁った、という訳です。

「これを逃したら、もう二度と、手に入らねぇ」と…

 

…しかし、
商魂たくましく、

その後、フィギュアシリーズは色を変えて同じ造型、キャラクターのものを大量発売。

そして、遂に、
『ジョジョの奇妙な冒険』がTVアニメシリーズとして製作、放映されたのが、
2012年10月5日~2013年4月5日。

第一部と二部が、
全26話で製作されました。

そこから3部~6部まで、
コンスタントにアニメ製作がなされ、
現在、それなりの認知度を獲得しているという訳です。

 

…私も一時期まで、
ジョジョのグッズを買い漁り、
フィギュアも全部持っていましたが、
クソ狭い家のスペースを圧迫し、
生活スペースまでも浸食し始めた為に、
断捨離を決行。

買ったフィギュアを全部売って、
以降「ジョジョグッズは買わない」(漫画は買う)と決心しました。

その決心をしたのが、2012年。

私の場合、
アニメでジョジョが一般にもウケるその時に、
ある種の
ジョジョからの卒業が成されたのです。

 

  • 褒めたけれども

さて、閑話休題。

本作『岸辺露伴ルーヴルへ行く』。

前説では、
割と褒めましたが、
まぁ、
率直に言いますと、
特に、良くも悪くも無い、
普通の薄い味噌汁の様なオシャレ映画でしたね。

まぁ、
これまたぶっちゃけますと、
ハッキリ言うと、
原作漫画の「岸辺露伴ルーヴルへ行く」の方も、
まぁ、
それ程、面白くは無かった…

それを映画化したとて、
まぁ、
それなりだったというだけです。

 

しかし、
私が個人的に残念だった点が三つあって、

その一つが、
岸辺露伴の「ヘブンズドアー」を「スタンド能力」と言わず、
「特殊能力」として誤魔化している点です。

そりゃぁ、
一般ウケさせるなら、
前知識が必要な「スタンド」という特定単語を使わず、

「ある種の超能力である」という曖昧さで誤魔化した方が、
適切でしょう。

しかし、
「最早、何を描いてもスタンド」と言われる荒木飛呂彦において、

そのドラマ化作品で、
スタンドという概念を放棄してしまうのは、
横暴だと思うのですが、どうでしょうか。

 

二つ目は、クライマックスシーン。

閉鎖された地下区域で黒い絵を目撃した露伴達は、
それぞれの過去の因縁に襲われます。

そのシーン。

露伴や警備員、辰巳やエマなど、
因縁に襲われますが、
何と、皆がパントマイムをするだけ。

は?
意味不明なんですけど?

 

その前段階。
黒い絵を奪ったカワイは車に轢かれ、
ルーヴルのベテランキュレーターは甲冑に襲われ

…た、らしい様子が推測されました。

 

で、クライマックスです。

因縁に襲われたら、命に関わる、
という推測を散々させて、期待させて、
溜めたのに、

それを、クライマックスで、
ド派手に爆発させない…って!?ドウイウ事!!?

ここは、
ビジュアル的に、
全員の因縁が大暴れしている「画」を披露する場面でしょう。
それが、映画のケレンミってやつでは?

結局、画的に面白い、
因縁の襲撃を描かないというのなら、
何故、映画化したの?って思ってしまいます。

 

三つ目は、
クライマックス後、
奈々瀬の過去エピソードの部分。

私が思うに、ストーリー的には、
編集者の泉には「黒い絵」が効かなかった、
という所で、
キチンとオチが付いたと思うのですが。

父が訪れたルーヴルで、
同じ構図で写真を撮った泉。

そういう、
先祖を敬う心があれば、
因縁が発生しないとか、何とか。
スッキリ、オチが付いたじゃないですか

 

それなのに、
何でまた、
過去の因縁を描くのかな?

まぁ、
「黒い絵」製作の秘話と、
奈々瀬自体が、露伴と因縁があったというオチを描きたかったでしょうが、
それは、
墓参りでサラっと描くだけでいいのでは?

大体、

同じ様なネタが、
原作漫画の杉本鈴美のエピソードで語られていましたし…

私的には、蛇足に感じました。

 

 

まぁ、
主演のイケメン、高橋一生と、
そのファンを考慮し、

ふわっとオシャレ路線で映画を製作したのは、
間違いでは無いと思います。

しかし、
映画としてのエンタメも、
個人的には大事にして欲しかったと思うのが、

『岸辺露伴ルーヴルへ行く』という作品から、
私が思った事です。

 

 

 

コチラが、原作漫画の『岸辺露伴ルーヴルへ行く』です

 

 

 

 

 

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