映画『カーズ クロスロード』感想  皆平等!!いずれ来る衰えにどう対応するか!?

 

 

 

トップレーサーのライトニング・マックイーン。レースでその名を馳せた彼だが、超新星ジャクソン・ストームの登場によりレースに全く勝てなくなってしまった。それに伴い、かつてのライバル達も次々引退・解雇の憂き目にあう。世代交代に抗うべく一人奮闘するマックイーンだが、シーズン最終レースにてクラッシュしてしまう、、、

 

 

監督はブライアン・フィー。本作が監督デビュー作である。

日本語版声の出演に
ライトニング・マックイーン:土田大
クルーズ・ラミレス:松岡茉優
ジャクソン・ストーム:藤森慎吾
メーター:山口智充
サリー:戸田恵子 等。

 

『カーズ』という作品は挑戦的なシリーズだ。
1作目と2作目は大分雰囲気が違う作品だった。
そして、3作目の『カーズ クロスロード』も前2作とはまた毛色の違った作品となっている。

自らの衰えに直面したとき、人はどういう決断と行動を取るべきなのか?

 

それが『カーズ クロスロード』のテーマである。

1作目ではロードレースを。
2作目では冒険アドベンチャーを。
そして、本作は

ロードムービー的雰囲気を漂わせている。

 

ストーリーの構成もしっかりと作ってあり、流石、安定のピクサーだなと思わせる。
ピクサーの映画は子供のみならず広い世代に楽しめる作品が多いが、『カーズ クロスロード』はとりわけ

中高年、人生のベテラン以上の世代に波及するストーリーとなっている。

 

アニメ作品なのにその対象年齢は高めだ。

とはいえ、迫力のレースシーンを随所に配置してあるのでアクション方面でちびっ子も楽しめる。
子供と一緒に観に行って、むしろ親の方が楽しめる。
そんなレベルの高いファミリームービーだ。

 

 

以下ネタバレあり


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  • 練りに練られた構成

本作『カーズ クロスロード』の素晴らしい点は、この構成がしっかりしている所だ。
物語の起承転結を忠実に展開している

起:レースで自らが通用しないと悟るマックイーン。
承:新しい環境で特訓を開始する。
転:旅をしてレベルアップを図るが芳しい結果にならない。
結:レースに挑む。

テーマの選択、ストーリーの上手さ、どれもレベルが高いが、それを支えるのがこのしっかりした構成である。

自分が通用しないという、ちょっと重くなりがちな話でも、起承転結のそれぞれにアクションとユーモアを挟むことで悲観的にならずに楽しんで観る事が出来る。

まずは冒頭の派手なアクションで観客を掴む。
そして、ラストのレースへ向けて話が徐々に盛り上がって行き、クライマックスへと話のピークが設定されている。

バランスを考えた非常にクレバーな構成であると感じた。

 

  • 公平な伏線だからこその感動

クライマックスのマックイーンの決断が感動的で説得力があるのは、そこに至るストーリー上の伏線に無理が無いからだ。

マックイーンは自分の特訓のハズが、むしろクルーズを鍛えるかの様に走り方を教示する。
クルーズは自分がレーサーになりたくて挫折した過去を告白する。
女性ベテランレーサーが自分を認めさせたエピソードを語る。
そして、常にマックイーンの修行にクルーズが付き添う。

こうして列挙したら明白に見えてくるが、観客は常にマックイーン視点で物語を観るので、クライマックスまでその選択が意識の表層まで浮かばないのだ。

しかし、別段に隠す事無く伏線を張っているので、「おーっ!そう来たか!」と観ていて感動出来るの。

これが分かり難い場合は「は?何でだよ」となってしまう。

あからさま過ぎても駄目だし、難し過ぎたら納得出来ない。
丁度良いバランスの公平な伏線であったと思われる。

 

  • 人類皆平等、老いと衰え

これに直面した時、人はどういう選択を為すべきなのか?
いつまでも今の地位に拘るか?
潔く身を引くか?

今の日本はむしろ老害を引退させないようなシステムを奨励しており、下の世代を圧迫して泥船を沈むに任せている状態だ。
まぁそれは別の話。

マックイーンは自分が時代遅れで、努力の結果がレースのラストチャンスに届いていないという事が明白に分かった。

その時、万が一という可能性に懸けるより、彼は新しい希望を拓く為に道を譲る選択をする。
これは熟慮した結果というよりも、いかにも勝負の世界で一瞬を争うアスリートならではの直感的な選択である。

しかし、自らのエゴを捨て、それよりも可能性のある新人に道を開き背中を押してやるというこの選択は、実際は難しいものである。
だからこそ、感動的なのだ。

 

  • 師と弟子

マックイーンがそれを選択出来た理由は色々ある。
だが、その最たる理由は自分自身が「いい師」に恵まれていたからであろう。

自分が師から譲り受けた恩は、次は自分が弟子に授ける
「師」がいいと自然とこの思考に辿り着く。

しかし、「師」に恵まれなかったり、自己研鑽のみで物事を達成してきた者は自己保身のエゴが強くなってしまい、人に奥義は教えず、自分の努力が結局は自分と共に埋もれてしまう。

だが弟子がいれば、自分が引退したとしてもその技術は継承されて第1線で活躍し続ける。
これは、ある種の生まれ変わりで感動的なものがある。

しかし、実際はいい師、いい弟子に巡り会うこと事態が難しい。
マックイーンはその一期一会をまさに掴んだのだ。

 

 

人間は必ず老い、衰える。
その時、自分は何をすればいいのか?

あくまで抗い続けるのも一つの道である。

しかし、引き際を自ら選択する事で、また違った道が拓ける事もある。
それを『カーズ クロスロード』は教えてくれるのだ。

 

こちらは第1作目

 

 

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次回はドラマ『ツイン・ピークス』第27章について解説したい。