転校生・広瀬康一がヤンキーに絡まれている所に偶然行き会った同級生・東方仗助。仗助はヤンキーをスルーするが、髪型をけなされ豹変。一瞬でヤンキーをぶっ飛ばすが、次の瞬間にはヤンキーの鼻血は止まっていた、、、
本作『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない第一章』は漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部を映画化したものである。
作者は荒木飛呂彦。
もうジョジョだけでも30年続いている。
そして、遂に実写映画化である。
監督は三池崇史。近作に
『十三人の刺客』(2010)
『一命』(2011)
『悪の教典』(2012)
『無限の住人』(2017)等。
主演の東方仗助役に山﨑賢人。
なんと今年だけで主演映画が三本も公開される。本作と
『斉木楠雄のΨ難』(2017)
『氷菓』(2017)である。
共演に、伊勢谷友介、神木隆之介、小松菜奈、山田孝之、岡田将生、新田真剣佑、観月ありさ、國村隼等。
長きに亘ってファンに愛されてきたジョジョ。
25年前、4部が始まった時、まさか実写映画化されるとは夢にも思っていなかった。
しかし、実現したのだ。
『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない第一章』との題名通り、第4部の導入部の映画化だ。
ファンならではの細かいツッコミはいろいろあるが、実に無難に映画としてまとめている。
とりあえず一見して気になるのは髪型である。
全員、なんというか、カツラが不自然である。
い、いや、お前の頭をけなしている訳じゃねぇ!!
ドオォォーン(時を止めてかわす)
みたいなスタンドバトルがCGで再現されている。
その懸念のスタンド描写だが、
結構頑張ってアクションしている。
CGのレベルはまだハリウッドクラスではないが、
半透明とオーラを使って見た目遜色ないレベルに仕上げている。
実際、満足いく出来である。
そして、豪華な役者陣も頑張っている。
衣装のコスプレ感はしょうがないとしても、
役者の演技に文句は何一つない。
映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない第一章』の中で、そのキャラクターにマッチしている。
初見では、仗助や承太郎のマッチョな肉体を役者が再現出来るのか不安だったが、
「今の画風の仗助、承太郎」だと観客が自ら脳内変換すれば問題ない。
正直、「特別に面白い映画か?」と聞かれると、まぁ普通に面白いですと言う感じである。
敢えて言う不満点としては
日本が舞台の話なのに町並みが日本じゃない事位か。
しかし、
いろいろな意味で実現不可能だと思われていた事が、今、目の前に繰り広げられている、それだけで感無量の涙が出る。
長年のジョジョファンの皆に、この感動を味わって欲しい。
以下ネタバレあり
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頑張っている役者陣
皆、コミックを読んで予習しているようで、イメージを崩さない方向の演技を心がけていた様に思う。
東方仗助(山﨑賢人)
可愛い顔をしているが、思えば原作も高校1年生である。
巻き舌、顔芸、ニラミ、色々駆使して頑張って仗助を再現していた。
「ドラララ」
「グレートだぜ」等のセリフも決まってたのがポイント高い。
空条承太郎(伊勢谷友介)
彼は映画『あしたのジョー』で力石徹を演じている。
そして今回の承太郎である。
正直、羨ましいと言うしかない。
一歩引いた年長者っぽい雰囲気が出ていた。
広瀬康一(神木隆之介)
安定の神木君である。
「こういう同級生いたよ」と思わせる。
特にいいのが虹村京兆に反抗したシーンだ。
その時の拳が「にゃんこ握り」(拳を握った時に人差し指が出ている握り方)である。
暴力を振るった事がない人間が勇気を振り絞っている感じがよく出ていた。
山岸由香子(小松菜奈)
うざいヤンデレキャラ。
まさに小松菜奈にうってつけの配役である。
笑顔から急に真顔に変わる演技は流石である。
虹村京兆(岡田将生)
なんだか原作より顔がかっこ良く見える。
キャラの方も妥協せずに嫌な性格の京兆を貫いていた。
それがいいのだ。
虹村億泰(新田真剣佑)
眉毛、声、表情、実際に億泰がいたらこうじゃないのか?
まさにイメージ通りだった。
東方朋子(観月ありさ)
若い。未だに可愛い。
東方朋子のヤンママ具合を役者本人の若さで再現するという離れ業である。
東方良平(國村隼)
最早安定しすぎて怖い位の素晴らしい演技である。
片桐安十郎(山田孝之)
アンジェロに使うのは勿体ない気もする。
しかし、犯罪者の恐ろしさと情けなさを共に表現していたのは流石である。
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スタンド描写で言いたいこと
公開前に一番恐れていたのがスタンド描写である。
実際に観てどうだったのか?
いい面と改善面があった。
いい面は、CGを頑張っていた所だ。
お金を掛けるほどCGは出来がよくなるという。
しかし、邦画の場合はハリウッド映画ほどの予算はないので、どうしてもレベルは下がってしまう。
しかし、スタンドを半透明にし、オーラをまとわせる事で、細かい部分より全体の印象で勝負しているのはいい。
大変だったハズの「バッド・カンパニー」のミニチュア具合も良く出来ていた。
改善面としては、アクションにためがなかった所だ。
原作ではスピードを際立たせる為の「ため」のコマがある。
(アクション漫画ではみな多用する手法だ)
しかし、映画では素早い動きでCGを誤魔化したかったのか、スタンド同士がどっしり対峙するシーンがなかった。
顕著なのが「スタープラチナ」と「クレイジーダイヤモンド」のバトルシーンだ。
ほとんど康一君目線で何が起こっているのか、一瞬しか観せてくれない。
(それでも原作読者にはバトルの詳細が理解出来るが)
しかし、折角重量級の主人公同士のバトルなのだ。
もっと、拳がぶつかった瞬間だけビシッと止まって、除夜の鐘がゴォ~ンとなる様な、そんなバトルも見せて欲しかった。
そして、もう一つ。
京兆の「バッド・カンパニー」の弾痕の描写は素晴らしかった。
それだけに、もっと建物の破壊過程も緻密に描写してくれたら、尚一層クライマックスはいいシーンになったと思う。
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続きモノ?ラストの改変
『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない第一章』ではアンジェロ篇と虹村兄弟篇を描いている。
原作ではラストで「レッドホットチリペッパー」が乱入してくるが、そこを「シアー・ハート・アタック」に改変している。
正直、それは違う。
「レッドホットチリペッパー」を省いたのが悪いのではない。
「吉良吉影」は絶対にそんな事をしないからだ。
彼は徹底して目立つ事はしない。
攻撃より、対応や防御が中心である。
そして、唯一の例外が「殺人」という設定のキャラクターであるハズだ。
人気キャラであるが故に、そこの所の芯は変えないでもらいたい。
しかし、勿論その思いも、本作がヒットして続篇が作られたなら、という前提ではある。
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私の不満点
この映画に不満点があるとすれば、ロケ地の事である。
「日本人が出ていて日本が舞台だから映画化しやすい第4部」だったハズが、スペインでロケをしてしまったら本末転倒である。
一目で日本じゃないと分かる。
そして、杜王町のイメージではない。
私の中では、「綺麗に区画整理された、元田舎町」という感じである。
壁にラクガキし放題、ベタベタポスター貼り邦題の土地ではない。
こんな町は「住みたい町」には選ばれないぞ。
…しかし、パンフレットを見ると役者はスペインロケを喜んでいる様だ。
「イメージ通りの土地が日本になかった」
「ロケ地のスペイン・シッチェスがイメージ通りだった」
「非日常の奇妙な雰囲気を演出したかった」
というよりむしろ
「予算を使ってスペイン旅行したかった」というのが本音だろう。
だが、スペインをロケ地に選んだ事によって役者のやる気を引き出し、良い映画にしたとなればそれは監督の手腕である。
これで良かったのかもしれない。
それともう一つ。
もっと劇場版グッズが欲しかったな。
公開前は不安でしかなかったが、実際は安心して観る事が出来た。
兎に角、なるべくイメージを壊さず、あからさまな不満点をださない無難な作りになっていた。
映画独自の冒険はしていないが、これでいいのだ。
世の中には冒涜的な原作付き映画も多数存在するのだから。
私にとってこの『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない第一章』は、夢にも思わなかった事が現実になったという奇跡であるのだ。
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さて、次回は『ツイン・ピークス』旧シリーズ~映画版までの総評をしてみたい。