小説家の一色正和と若妻の亜紀子は鎌倉で新婚暮らしを始める。鎌倉は時間の流れが独特。そして、妖怪とも、あやかしとも、幽霊とも共に暮らす不思議な土地である。死神や貧乏神そして、亜紀子を狙う(?)怪しい輩もいて、、、
監督は山崎貴。
VFXを駆使し、安心して観られる売れ線映画の職人である。
代表作に
『ジュブナイル』(2000)
『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005)
『永遠の0』(2013)
『STAND BY ME ドラえもん』(2014)
『寄生獣』(2014)
『海賊とよばれた男』(2016)等がある。
原作は西岸良平の漫画『鎌倉ものがたり』。
因みに原作者は『三丁目の夕日』の作者でもある。
一色正和役に堺雅人。
ご存じTVシリーズの『半沢直樹』(2013)で大ブレイク。
映画出演作に
『ゴールデンスランバー』(2010)
『ツレがうつになりまして。』(2011)
『鍵泥棒のメソッド』(2012)等がある。
一色亜紀子役に高畑充希。
舞台では『ピーターパン』役を演じていた。
主な映画出演作に
『女子ーズ』(2014)
『アズミ・ハルコは行方不明』(2016)
『ひるね姫~知らないワタシの物語~』(2017)等がある。
他共演に、堤真一、中村玉緒、安藤サクラ、田中泯、古田新太、等、豪華キャストが勢揃いしている。
何処か見た事ある、懐かしい様でいて幻想的な鎌倉の描写。
本作『DESTINY 鎌倉ものがたり』はファンタジーである。
物の怪や幽霊が普通に存在している点は勿論、
お目々くりくりで天真爛漫なお嫁さんと、
優しく鷹揚で自分を愛してくれる夫。
この幸せな結婚生活自体がファンタジーであり、
新婚のラヴラヴ注意報にニヤニヤ出来る作品であるのだ。
そう、この映画で描かれるのは
人がうらやむ理想郷。
こういう人とこういう場所でこういう生活がしてみたいという願望充足映画である。
これは現実逃避か?
否、違う。
現実が辛く厳しいからこそ、こういう映画を観て、自分の理想像を確立し、そこを自らも目指さねばならないのだ!
という、幸せな妄想に一時浸れる『DESTINY 鎌倉ものがたり』。
偶にはこういう作品も良いだろう。
以下ネタバレあり
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職人の作品
山崎貴という監督は、しっかりとした仕事をする印象だ。
自分の強みを意識しつつ、それを利用し結果を出し続けている。
これは凄い事である。
山崎貴監督の強みとは、勿論VFX(特撮技術)である。
3Dを利用した映像表現を映画作りに活用している。
映画の内容は、
ジュブナイルだったり、
ノスタルジックだったり、
ドラマティックだったり、
SFアクションだったり、
ジャンルは関係ない。
どの映画も、映像に説得力を持たせる、その為の技術であるVFXを積極的に活用する。
このスタンスが変わらない。
また、映画公開時期も徹底している。
『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(2010)以降に監督した劇場公開作は、映画の書き入れ時の12月~1月公開を目処にしている。
(『STAND BY ME ドラえもん』は観客層を意識して8月公開)
公開時期を決めているという事は、製作工程も徹底しているという事である。
つまり「締め切り」に常に間に合う映画作りを、一定のクオリティを保ちつつやっているのである。
これは凄い事である。
作家性を出して個性的な作品を作る監督もいる。
現場調整だけが上手く、肝心の作品がイマイチなのに、いつも仕事がある監督もいる。
そんな中で、プロの仕事に徹するこの姿勢、
「人から期待されるものを、時間内に仕上げてみせる」という監督のスタンスは称賛に値するのだ。
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親切にすれば、報いがある
さて、お話自体はファンタジー、日本人的理想郷の具現化といった印象を受ける。
可愛いお嫁さんと、優しい夫。
趣味の部屋があり、仕事を手伝ってくれる先輩家政婦さんもいる。
不思議な町で、見慣れぬ怪しい夜市が立って、ちょっとした刺激もある。
生きているだけで幸せなら、貧乏神様が憑いたって、親切にしちゃうよ。
この作品は、最早うらやむよりも、この幸せにあやかって自分も浸る方が正しい鑑賞方法のような気がする。
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気になる小ネタ
一色正和と一色亜紀子はどうやら生まれ変わっても何度も夫婦となっている様だ。
そして、その度毎に、天頭鬼が横やりを入れている。
その事は、作品内の掛け軸やお盆や置物でその歴史を表していていたが、一つ気になる点がある。
それは、貧乏神様の荷物の中に入っていた、根付けというか、白く小さいフィギュアだ。
どうやらそれも、正和と天頭鬼の争いを表すアイテムの一つのようだ。
では何故、貧乏神様がそれを持っていたのか?
実は、貧乏神様は正和や亜紀子と昔から浅からぬ因縁のある存在なのかも知れない。
だから正和の姿を見つけた時、彼に憑いたのでは無いのか?
そしてラストの介入は、必然だったのでは無いのか?
そんな事も少し考えてしまう。
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出演者補足
キン役を演じたのは中村玉緒。
なんだか、一回り縮んだ感じがして心配だ。
特殊メイクなのか?
死神役を演じたのが、安藤サクラ。
恥ずかしながら、私は安藤サクラさんを存じ上げておらず、
作中ずっと「男?女?」と判断が付かずにいた。
可愛い顔してるケド、こういう感じの声と動きの中学生男子いるよなぁ、と思っていたのだ。
どうやら中性的な感じを出したかったらしく、私はまんまとその演技に紛らわされてしまっていたのだ。
しかも、妊娠中だったというから驚きである。
いやぁ、良かった。
男相手にカワイイとか思ったんじゃ無くて、、、
『DESTINY 鎌倉ものがたり』はファンタジーだ。
監督と、出演者と、スタッフと、皆で作り上げた理想郷である。
なにせ、黄泉の国ですら、イメージ的には中国の神仙が住まう館の様な雰囲気であった。
だから、人の幸せにイライラせずに、偶にはキレイな心で純粋に作品に浸ってみないか?
邪念しかない私には、そんな事を言われている様な印象を受ける映画であった。
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さて次回は、「It is a destiny」という訳で、映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』について語りたい。