映画『ワイルド・アット・ハート』感想  バカップルのバイオレンス・ハッピーツアー!!

 

 

 

セイラーとルーラは恋人同士。だが、ルーラの母マリエッタはセイラーを嫌悪しており、ヤクザ者をけしかける。そいつを返り討ちに殺害し、約2年収監されたセイラー。仮釈放され、再びルーラと荒野へ飛び立って行くが、マリエッタが追手を放つ、、、

 

 

 

監督はデイヴィッド・リンチ
本作『ワイルド・アット・ハート』にて1990年のカンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した。

映画監督作に
イレイザーヘッド』(1977)
『エレファント・マン』(1980)
『デューン/砂の惑星』(1984)
ブルーベルベット』(1986)
『ワイルド・アット・ハート』(1990)
ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』(1992)
ロスト・ハイウェイ』(1997)
『ストレイト・ストーリー』(1999)
マルホランド・ドライブ』(2001)
インランド・エンパイア』(2006)がある。

TVシリーズ監督作に
ツイン・ピークス』(1990、1991、2017)
『オン・ジ・エアー』(1991)がある。

 

主演のセイラー役にニコラス・ケイジ
この時点から、ちょっと髪は薄い。
映画出演作に
『初体験/リッジモンドハイ』(1982)
『リービングラスベガス』(1996)
『ザ・ロック』(1996)
『フェイス・オフ』(1998)
『ゴーストライダー』(2007)
『キック・アス』(2010)等がある。

…しかし日本ではパチンコのコマーシャルが一番印象に残っているだろう。

 

ルーラ役にローラ・ダーン
デイヴィッド・リンチ作品の常連である。
主な出演作に
ブルーベルベット』(1986)
『ランブリング・ローズ』(1991)
『ジュラシック・パーク』(1993)
『インランド・エンパイア』(1996)
『ザ・マスター』(2012)
ファウンダー ハンバーガー帝国の秘密』(2016)
『スター・ウォーズ/最期のジェダイ』(2017)等がある。

 

他共演に、ダイアン・ラッド、ウィレム・デフォー、イザベラ・ロッセリーニ等。

 

本作『ワイルド・アット・ハート』は一言で言えば、

バイオレンス・ラヴ・ロマンスである。

 

身に掛かる火の粉を払いながら、

バカップルが荒野を旅する物語である。

 

だが、この映画、あまりにもバカバカし過ぎて

観た後に真似したくなる。

 

とにかく直感に訴えてくるアホさ加減が最高に気持ちいいのだ。

ジャーン、ジャン、ジャン、ジャンとかいう音楽と共に、跳ね回ったり、SEXしまくったりする。

青春の一瞬を恋人と共にバカ騒ぎするDQNカップル。

 

それが、この映画である。
そして、この意味不明なエネルギッシュさは一見に値する。

バイオレンスシーンが多数あるが、その点で観る人を選ぶだろう。
しかし、『ワイルド・アット・ハート』は、

特に何も考えずに、ただ観たままの疾走感に身を任せる、

 

そういう風に楽しむ映画なのだ。

 

 

以下ネタバレあり


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  • オズの魔法使い

本作では『オズの魔法使い』のオマージュが多数入り込んでいる。

深い意味があるのかもしれないが、特に意味は無い様にも思う。
ルーラという大人になりきれていない少女の目から見る世界が、『オズの魔法使い』なのかもしれない。

母のマリエッタはルーラにとって「西の悪い魔女」である。
マリエッタ(母の支配)を打ち倒した先に、ルーラが望む「虹の彼方に」、つまり幸せがあるのだと思っている。

言わば、『ワイルド・アット・ハート』は少女の独り立ちを描いた作品とも言えるのだ。

全ての人間が、親になろうとして成っている訳ではない。
恋人と楽しい時を過ごして、その結果としてイキナリ現実を突き付けられるという人も多いだろう。

前半のはしゃぎ回るバカップル行も、
後半、妊娠の事実がもたらす責任に二人が感じる不安も、
等しく若者が享受する人生の醍醐味である。

その人生の旅を経て、ルーラは大人へと成長するのだ。

 

  • ニコラス・ケイジのセイラー

本作のセイラーというキャラクターは、多分にニコラス・ケイジ本人の成分が含まれている。

セイラーがヘビ皮のジャケットを付けているのは、ニコラス・ケイジのアイデアだと言う。

また、ニコラス・ケイジはエルヴィス・プレスリーのファンであり、プレスリーグッズを集めるコレクターでもあるという。

それが嵩じて(?)プレスリーの娘のリサ・マリー・プレスリーと結婚した。(既に離婚済み)

作中で2曲もカラオケを歌って、きっとご満悦だろう。

 

  • 顔面力高い!!ウィレム・デフォー

ウィレム・デフォーという俳優は、兎に角顔面力が高い

『ワイルド・アット・ハート』では、ただでさえ高い顔面力が、ニヤニヤ笑いとストッキングでさらにパワーアップしていた。

そして、頭が射精の如く勢い良く吹っ飛ぶシーンは、精子をモチーフにしていると思う。

映画という物はイケメンのみで作られるに非ず。
こういう個性派な顔面力をもっている役者もまた必須である。

ウィレム・デフォー
スティーヴ・ブシェミ
ベニチオ・デル・トロ
デイン・デハーン

彼等が出てくると嬉しいのは私だけであろうか?

 

  • ツイン・ピークス的キャスト

『ワイルド・アット・ハート』(1990)はその制作期間がTVシリーズの『ツイン・ピークス』(1990、1991)とかぶっている。

監督のデイヴィッド・リンチは、TV局側の要望に応え『ツイン・ピークス』の「犯人明かし」をせざるを得なかった状況に反発し、後半は『ツイン・ピークス』の制作から遠ざかっていった。

その結果なのか、それとも「ワイルド・アット・ハートの制作に忙しい」という事を言い訳に使ったのか、
デイヴィッド・リンチは『ワイルド・アット・ハート』の方に注力していたようだ。

とは言え、『ツイン・ピークス』を無碍にしている訳でもなく、その出演キャストの多くを『ワイルド・アット・ハート』にも採用している。

役者名は太字
『ワイルド・アット・ハート』の役は
『ツイン・ピークス』での役はで表わしたい。

ハリー・ディーン・スタントン
ジョニー・ファラガット
カール・ロッド

シェリリン・フェン
事故に遭った女性
オードリー・ホーン

グレイス・ザブリスキー
ジュアナ(仕事人)
セーラ・パーマー

デヴィッド・パトリック・ケリー
ドロップシャドウ
ジェリー・ホーン

ジャック・ナンス
OO・スプール(ボージス・スプール)
ピート・マーテル

フランセス・ベイ
マダム(役名無し)
トレモンド夫人

エド・ライト
ホテル事務員
デル・ミドラー(銀行事務員)

シェリル・リー
良き魔女
ローラ・パーマー

フランク・シルヴァ
*役ではないが小道具係の責任者
キラー・ボブ

エリック・ダ・レ
*役ではないがキャスティング・アシスタント。
レオ・ジョンソン

 

見落としがあるかもしれない。
探してみるのも面白い。

 

 

『ワイルド・アット・ハート』を見るのに、ガタガタ吐かす御託はいらない。

兎に角勢いに任せて楽しめば良いのだ。

いちいち音楽と合わせるSEXシーンに笑いを吹き出し、銃の暴発で頭が勢いよく吹っ飛ぶシーンに驚愕し、
そして「ラヴ・ミー・テンダー」を愛する人に歌ったならば、それが『ワイルド・アット・ハート』の正しい楽しみ方なのであろう。

 

収録作は『イレイザーヘッド』『エレファント・マン』『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』『ロスト・ハイウェイ』『マルホランド・ドライブ』『インランド・エンパイア』の6作品

 

 

 

 


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さて次回は『ロスト・ハイウェイ』について語りたい。
デイヴィッド・リンチ流精神世界への誘いの始まりだ。