幻想・怪奇小説『淵の王』舞城王太郎(著)感想  ノリノリの疾走感で書かれるホラー!!

 

 

 

中島さおり。彼女の成長を、私は見守る。恋愛し、受験をして、東京に行って普通に過ごしていた彼女の日常に、地元福井の友達から電話が掛かって来る。「杉田、彼女殴ってるらしいよ」。杉田とは仲の良かった男友達だったが、、、

 

 

 

著者は舞城王太郎
学歴、職歴を非公開にしているそうだ。
代表作に
『煙か土か食い物』
『阿修羅ガール』
『九十九十九』
『好き好き大好き超愛してる。』
『ディスコ探偵水曜日』
JORGE JOESTAR』等がある。

 

舞城王太郎と言えば、

リズミカルな口語文による、圧倒的リーダビリティ

 

が特徴の作家である。

いつもは、日常から突如転変するミステリ的な作品が多いが、

今回転変する先はホラーである。

 

そして、ホラーとは言え、いつもの舞城節というか、

SFなのかファンタジーなのか、
ちょっとよく分からない謎の現象が起こる。

 

しかし、舞城王太郎の勢いのある文体でホラーになるのか?と思われる方もいるかもしれない。

なるんです。
言うなれば、

ジェットコースター・ホラー

 

と称すれば良いのか?
とにかく勢いで押し切るホラーである。

そして、

口語体がホラーと合っている。

 

何をやっても、面白くなる、器用で力のある作家なのだなと、改めて思わせる作品である。

 

 

以下ネタバレあり


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  • ミステリからホラーへ

舞城王太郎と言えば、
ノリノリの口語体を駆使したスピーディーでリズミカルな文章を駆使して日常をハイテンションで描いていたかと思ったら、急に摩訶不思議な事件が勃発した!的な作風の作家である。

その事件を、SFともファンタジーとも言える超展開で解決するというのがいつものパターンである。

しかし、そういう事件が解決する展開は「ミステリ」的な文脈である。

本作『淵の王』はホラー。
いつもは事態を解決させるハズの超展開が、本作ではバッドエンドへ向かうという「ホラー」的文脈が採られている。

 

  • 口語文と「怪談」

舞城王太郎の文章には勢いがある。
とにかく力強い。
そして読み易い。

だが、そのノリ重視の文体がホラーに合うのか?

合うんです。
しかもバツグンに。

著者の文体は口語体が多い、
簡単に言うと会話文が多いのである。

そして、ホラーと言えば、その主流ジャンルに「怪談」がある。
勿論、怪談は口語文学

考えてみれば合わないハズが無いのである。
というか、ピッタリだ。

その上で、スピーディーな文体であるので、
ジトッとした感じではなく、ジェットコースター的な勢いのホラーとなっている。

いわば、ジワジワ恐怖を煽るというよりは、
高速で飛ばしている車体の窓の外に、一瞬凶行が垣間見える様な感じと言おうか?

瞬間で通り過ぎるが、「ん?」と違和感を感じて、戻ってみると恐ろしかった、みたいな感じである。

この、思わず二度見してしまう「見返り恐怖」とも言える現象を小説で再現しているのが本作『淵の王』である。

 

  • 読者の作品参加

舞城王太郎は一筋縄では行かない作家である。
作品に「メタ目線」を積極的に導入してくるのだ。

『淵の王』においても、それが見られる。
本作は連作中篇3篇で構成されているが、そのいずれにも「謎の第3者目線=事態の傍観者」が語り部的に存在している。

そして、この「傍観者」は勿論「読者」の事である。

そして、面白いのはその役割が各章で違う事。
「中島さおり」篇ではホラー演出として使用し、
「堀江果歩」篇では理不尽さに憤る読者を代弁し、
「中村悟堂」篇では物語のカタルシスとして活躍する。

口語文の親しみやすさと、カジュアルな内面吐露で、作中最も感情移入しやすいのがこの「傍観者」達であり、そういう読者意識を喚起して作品を構成するという作者の計算が凝っているのである。

そして、ホラーにバリエーションを用意している。

「中島さおり」篇は、本筋もゾッとする「人間怖い」系のサイコホラーであるが、
さらに「メタ目線」を利用した、いわゆる読者に呼びかける「死ぬのはお前だ!」系のオチを持ってきている。

「堀江果歩」篇では、不条理且つ、理不尽さがそのままホラーへと直結する。

「中村悟堂」篇では、呪いと思いの恐ろしさ、
そして恐怖に対する事や、執着自体が怪異を生むという話である。

 

 

本作『淵の王』では、著者の舞城王太郎のホラー表現を色々試してみたいという欲求が見て取れる。

それが、作中に様々なホラーのバリエーションを生み、濃縮した読み味を生み出している。

常に読み易い文章で書きつつ、それでいて読者をビックリさせる仕掛けを毎回用意するその姿勢は流石である。

『淵の王』は、作者のファンは勿論、怪奇小説ファンの欲求も満たす面白い作品であるのだ。

 

 


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さて次回は、こちらもメタネタ!?小説『誰がスティーヴィ・クライを造ったのか?』について語りたい。