カナリア諸島にて母エリナ、姉代わりのリサリサと共に暮らしているジョージ・ジョースター。そこで彼は、日系人の同級生・加藤九十九十九(かとうつくもじゅうく)と出会う。名探偵を自称する九十九十九と知り合いになり、ジョージ・ジョースターは奇妙な事件に巻き込まれてゆく、、、
荒木飛呂彦の原作漫画『ジョジョの奇妙な冒険』を大胆アレンジ。
著者は舞城王太郎。代表作に
『煙か土か食い物』(2001)
『阿修羅ガール』(2003)
『九十九十九』(2003)
『ディスコ探偵水曜日』(2008)
『淵の王』(2015)等。
本作『JORGE JOESTAR』の発売は2012年。
『恥知らずのパープルヘイズ』『OVER HEAVEN』に続き、ジョジョ連載25周年記念として企画された有名作家によるノベライズの第3弾だ。
(最も、年が変わり、画業30周年記念の年になっていた)
原作付き作品を作る場合に、方向性は大きく分けて2つある。
原作の世界観を忠実に再現するか、
原作の世界観のみを使い、自分の持ち味をだすか。
前者が『恥知らずのパープルヘイズ』だとすると、
後者は本作『JORGE JOESTAR』となる。
本作『JORGE JOESTAR』は
『ジョジョ』の世界観を使って「俺ならこういう物語りを作るぜ」という主張が爆発している。
まず、圧倒的なのがその量である。
第一部~第7部までを包括し、各部の大ネタ、クライマックスを物語りに組み込んでいる。
なので、『JORGE JOESTAR』を真に楽しむには前提として
原作漫画の単行本104冊分を読了している必要がある。
その上で、『ジョジョ』の話ではあるが、それを大きく逸脱している。
それは最早『ジョジョ』というより、
『ジョジョ』の名前だけ借りて舞城王太郎が自らのベストを尽くした作品
と言える。
数々の改変は気にしない。
兎に角面白ければ良し。
そういう方には絶対的にオススメする。
ある意味、ノベライズの究極形とも言える作品だ。
以下ネタバレあり
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SF?メタミステリ?ジャンル分け不能の怪作
本作はノベライズである。
その基本に漫画『ジョジョの奇妙な冒険』があるが、ジャンルとしては「エンタテインメント」としか言い様がない。
『JORGE JOESTAR』という名前の通り、ジョナサンの息子、ジョセフの父であり、原作では殆ど語られなかった人物である「ジョージ・ジョースター」の話である。
「ジョージ・ジョースター」のあり得たかも知れない話に、著者・舞城王太郎のキャラクターである名探偵「九十九十九」を絡ませたのがストーリーラインA。
それに加え、失われたグレートブリテン島から脱出したイギリス人・ジョースター家の養子として貰われた日本人「ジョージ・ジョースター」が名探偵として活躍するストーリーラインBがある。
「ジョージ・ジョースター」の青春ストーリーとしてのストーリーラインA。
こちらには原作漫画通りのキャラクターが出る。
一方ストリーラインBにおいては原作『ジョジョ』のキャラクターに似た別人達が杜王町に集結。
ドタバタメタミステリを繰り広げ始める。
この並行して語られる二つの物語が交わるとき、物語の世界が爆発的に拡がってゆく。
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起承転結
「起」の部分でストリーラインAとBが始まり、
「承」においてストーリーが進む。
それが、「転」においてAとBが交わり出すと「世界線」「時間軸」「並行世界」を縦横に行き来し、世界の枠組みが爆発的に拡がる。
おそらく、この「転」の部分がこの作品のキモである。
本作『JORGE JOESTAR』はストリーラインAの部分だけでも十分に面白かった。
ここは、正に「ジョジョノベライズ」部分である。
加えて、メタミステリ部分のストーリーラインBを用意した。
この「B」部分は著者・舞城王太郎の得意分野である。
この「A」と「B」が「転」にて交わる事で、「ノベライズ」という枠を踏み越え、『ジョジョ』を自分の作品として昇華させようとしている。
つまり、『ジョジョ』の第一部~第7部を全てまとめ再編集、部の分け隔ての無い新しい物語りとしての『ジョジョ』を自らの持ち味で以て作り上げたのがこの『JORGE JOESTAR』である。
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ストリーラインBのジョージ・ジョースター
その象徴が「ジョースター家に養子として加わったストリーラインBのジョージ・ジョースター」である。
「日本人の捨て子でジョースター家の養子で名探偵。君はこの世界に一度しか生まれず、他のどの宇宙にも、どの並行世界にも、君の代わりはいないんだ」(p.673より抜粋)
上記のセリフはつまり、「原作漫画『ジョジョの奇妙な冒険』には存在せず、この『JORGE JOESTAR』という話の中にしか存在しないストリーラインBのジョージ・ジョースター」という意味である。
なので、あくまでジョースター家の本流でなく、名前だけ「のれん分け」された存在、「外伝だけどジョジョ」という事を表す為に養子という形を取ったのだろう。
ストーリーは大胆なのに、細かい所で控えめである。
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妄想爆発!誰が一番強いのか!?
本作『JORGE JOESTAR』のクライマックスで描かれるのがボスラッシュである。
『ジョジョ』を読んだ人間誰もが思う事、「最強は誰だ!?」に挑んでいる。
究極生命体カーズ
ザ・ワールド
キラー・クイーン バイツァダスト
キング・クリムゾン
ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム
メイド・イン・ヘブン
D4C
「兎に角戦ってみろや」と言わんばかりにぶつかる。
その中でも、「究極生命体カーズ」の扱いが一番笑えるのだ。
カーズこそは、「ビヨンド」に散々こき使われる「物語を進める為の都合のいい道具」である。
確かにある意味究極だ。
(似たような存在に『リフトウォーサーガ』の「ドラゴン」、『ハイペリオン』シリーズの「シュライク」等が思い浮かぶ)
兎に角もの凄い作品である『JORGE JOESTAR』。
あの長い『ジョジョの奇妙な冒険』をまとめ上げただけでも大したものだが、読んで面白いのがまた凄い。
「世界観を使って自分の物語を作る」系の原作付き作品の究極形と言って差し支えないだろう。
とは言え、やっぱり一番面白かったのは「ジョージ・ジョースターAの青春部分」だと思った私はやっぱり原作原理主義者なのかもしれない。
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さて、次回は「ビヨンド」とか言うから思い出しちゃった作品、映画『ビヨンド』について語りたい。