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人気アイドル人見舞の影武者クローンを作れないか?それも、バーチャルとして。そのプロジェクトを現実にすべく、タカナカヒトシは舞の外見、モーション、声、そして脳のマッピングをコンピュータ内に再現、AIという存在を創造する、、、
著者は渡辺浩弐。
ゲームやサブカルメディアで活躍している。
代表作に、
『1999年のゲームキッズ』
『BLACK OUT』
『プラトニックチェーン』
『iKILL』
『死ぬのがこわくなくなる話』
『中野ブロードウェイ脱出ゲーム』等がある。
本書『アンドロメディア』は1997年刊行の作品。
SFを中心に、
ボーイミーツガール、サスペンス、アクション、アイドルなど、様々なジャンルを楽しめる作品だ。
20年前の作品である本作。
しかし、
そのSF設定は全く古びていない。
むしろ、今読んで見ると著者の先見性に驚く部分が多数ある。
本書は、著者の初長篇の作品。
とにかくエネルギーがある。
面白いものを詰め込んだから、読んでくれ!
という声が聞こえてきそうな、真っ当なSFエンタテインメントである『アンドロメディア』。
むしろ、今だからこそ本作の面白さが理解出来ると言えるだろう。
以下ネタバレあり
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時代を先取り!?SFガジェット
20年前の作品である『アンドロメディア』。
今読んで見るとSFネタの先見性に驚かされる。
今では普通になった携帯端末。
本作では腕時計型で描写されるが、現在、ほとんど同機能の「Apple Watch」が存在する。
ゴーグル型のヘッドセットを付け、VRのCGゲームをする場面もある。
これは、昨今、いよいよ普及して来た印象がある。
対戦格闘ゲームのネット対戦は夢の技術だったが、現在は当たり前のものとなってしまった。
「バーチャルアイドル」として映像投影技術を使う場面もある。
これは「初音ミク」を思わせる場面だ。
また、文庫版p.229には「ビデオ・オン・デマンド」という単語が出てくる。
映像エンタメ視聴の新しい方法として注目を集めている市場だが、現在使われているのと全く同じ意味の単語として20年前に存在していたという事実に驚かされる。
自動車の自動運転こそまだ実現していないが、東京オリンピックでのパフォーマンスに向けて法整備を進めているという話を聞く。
技術的には既に可能なのだ。
刊行は1997年。
舞台設定は2005年であるが、もう少し先の未来を想定して描かれたのが本書である。
過去から見た未来を、
未来である現在から答え合わせするこの不思議な感覚。
むしろ、「今現在刊行された小説」として見てもなんら違和感ない所に、凄さを感じる。
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ジャンル混交作品の面白さ
『アンドロメディア』は基本SFである。
しかし、その内容はボーイミーツガール、サスペンス、アイドル、アクションと色々なジャンルを詰め込んでいる。
第1章タカナカヒトシではSF。
第2章人見舞ではサスペンス。
第3章の小林ユウではボーイミーツガール。
第5章AI/舞/ユウではアクションと、
章毎に読み味を微妙に変え、ジャンルを横断しながら統一感を保つという器用な事をしている。
また、その構成も見事である。
プロローグ、第1章、第2章で続きが気になる形で終わらせた展開を第3章にて統合し、ラストは第5章にて怒濤の展開を見せる。
起承転結がそれぞれ、第1、2、3、5章と対応しており、読みやすいのも素晴らしい部分だ。
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ヒロイン、オルタナティブ
さて、本書『アンドロメディア』はダブルヒロインである。
人見舞とAI、あなたはどっち派?
幼馴染みの初恋(?)相手か?
新しく絆を結んだ無邪気な娘か?
作中でユウは、AIと交流しておきながら、高中逸人の話を聞くと、アッサリAIを切ってみせる。
一見、別れっぷりのいい、男らしい態度に見える。
だがその実、自身が行ったAIのセキュリティ解除や制限解除が事態の混乱を招いた真の原因ではないかと疑念を持ち、証拠隠滅の為にAIを葬ったという打算も見える。
避妊具無しで性行為を行った直後に別れ話を切り出すウェイ系の思考だが、
ヤリ捨てされた結果闇堕ちしてAIがヤンデレと化したとも考えられないだろうか?
『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジや
『君が望む永遠』の鳴海孝之の様にウジウジ系も困りものだが、アッサリし過ぎでも問題があるのだろう。
いやぁ、恋愛って本っ当に難しいもんですねぇ。
20年前に近未来を描いた『アンドロメディア』。
今読むと、遂にSF設定が時代に追いついた感があって、感慨深いものがある。
むしろ現代の物語として問題無く通用し、その物語の面白さはいささかも色褪せていない。
そう、『アンドロメディア』は今まさに読むべき作品であり、だからこそ『中野ブロードウェイ脱出ゲーム』が書かれたと言えるのかもしれない。
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さて次回は、今まさに読むべき本、それは羽生永世七冠の本だ!!という事で『決断力』について語りたい。