小説『カモメに飛ぶことを教えた猫』ルイス・セプルベダ(著)感想  寓話であるが故の、優しさと面白さ!!

港町ハンブルクに住む、でぶ猫のゾルバは、飼い主の少年が旅行出かける為に家でお留守番。バルコニーで日向ぼっこに勤しんでいる所に、息も絶え絶えのカモメが飛び込んでくる。そのカモメは、初対面のゾルバに3つの願い事をするのだが、、、

 

 

 

 

著者は、ルイス・セプルベダ
1949年、チリ生まれ。
ドイツのハンブルクを拠点に作家活動を行う。
代表作に、
『パタゴニア・エクスプレス』
『センチメンタルな殺し屋』
『ラブ・ストーリーを読む老人』 等がある。

 

 

ゲンガー。

ポケモンの初代を代表するゴーストポケモンの一体です。

初代でも活躍しましたが、
メガシンカを獲得する事で、
大幅パワーアップ。

現在においても、
人気、レートの使用率、共に高いポケモンです。

 

最新作の『ポケットモンスター ソード/シールド』は、
多くのポケモンがリストラされるとの事ですが、

ゲンガー(ゴース/ゴースト)の去就はどうなるのか、
今から思いを馳せています。

 

 

ハイ、
という事で、
本作『カモメに飛ぶことを教えた猫』です。

もう、
題名からして、面白い!!

 

本にとって、
初見が、本を手に取る時に、
表紙のデザイン以上に重要と言えるのが、
「題名」

『人は見た目が9割』という本が流行りましたが、
本における「見た目」とは、
表紙というより、題名だと言えるのです。

 

本書は、
その題名のインパクトがピカイチ。

え?
どういう事?

いやいやいや、
無理っしょ!?
猫、空、飛べませんよ!!

そもそも、
港における、カモメと猫の関係って、
犬猿の仲ではないですかね?
魚を取り合ってるイメージですよ。

もう、題名を一目みただけで、
興味津々。

 

 

瀕死のカモメのケンガーは、
自分の生命が尽きるその直前に、
偶然、ゾルバに出会います。

 

…お気づきでしょうか。
冒頭の意味不明な前置きは、
カモメの名前からの連想だったのですねぇ。

これぞ、完璧な伏線(?)

 

それはさておき、
ケンガーは、ゾルバに3つの頼み事をするのです。

(以下、本文抜粋箇所)

「どうか、わたしが産む卵を食べないと、約束してください」
カモメは、目をしっかり開いて言った。
「約束する。卵は食べない」
「そしてひなが生まれるまで、その卵のめんどうを見てください」
頭を起こして、カモメは続ける。
「約束する。はなが生まれるまで、その卵のめんどうを見る」
ゾルバがこたえる。
「最後に、ひなに飛ぶことを教えてやると、約束してください」
カモメは、ゾルバの瞳をじっと見つめて言った。

(以上、本文p.37 より抜粋)

 

私は、この帯に書かれてあった抜粋箇所で、
どうにも、内容を読まずにはいられませんでした。

 

そんな本書は1996年に刊行されて以来、
ヨーロッパにて、ベストセラーになっているとの事。

そんな本書を端的に言うなら、

老若男女楽しめる、
ヒューマンドラマな寓話です。

 

 

猫達が活躍する物語とあって、

読み易く、
会話も軽妙でユーモラス、

そして、
寓話であるが故に、
物語を、素直に受け入れる事が出来ます。

 

ほら、猫って、どことなく、
超然とした雰囲気を醸し出しているでしょう?

ふと気付くと、
見知らぬ家の二階から、こちらを眺めるデブ猫の、
あの、哲学者の様な眼差し…

我々の知らぬ所で、
猫は、猫らしい、誇り高い生活を送っている、、、
そう言われると、何処か、納得する所があり、

それを、我々人間の生活にも当て嵌める事に、
奇妙ですが、
違和感が無いのです。

 

20年前に書かれた物語ではありますが、
むしろ、
今の世相を反映していると思わせる所もあります。

そうした、
世代、年代を超えた、普遍的なテーマを備えている本作。

誰が、何時読んでも面白く、
興味深い作品、
それが『カモメに飛ぶことを教えた猫』なのです。

 

  • 『カモメに飛ぶことを教えた猫』のポイント

猫が活躍する、軽快でユーモラスな寓話

違いを受け入れるという事

一歩、飛び立つ勇気

 

 

以下、内容に触れた感想となっております

 


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  • 寓話という物語の普遍性

本作は、
ドイツの港町、ハンブルクに住むゾルバ達、
魅力的な猫が活躍する寓話です。

「寓話」というのは、簡単に言うと、
物語を、比喩によって描く事で、
道徳的な訓話、教訓を与えるもの。

よくある例としては、
動物を擬人化して、人間社会の模様を描く事が多いです。

 

本作『カモメに飛ぶことを教えた猫』は、
正に、寓話の良き手本とも言える物語。

ともすれば、
鼻白んだりもする、説教臭いテーマでも、

「猫」というだけで可愛い感じがし、
軽妙でユーモラスな会話も相俟って、
物語を素直に受け入れる事ができます

 

そんな本作は、
色々な教訓が含まれています。

「約束を守るという、仁義の必要性

「一人では一見無理そうな事でも、仲間と協力する事で、不可能を可能に出来るという友情の強さ

自分と全く違うものを受け入れるという寛容

「上手く出来ない事、初めての事、怖いことでも、一歩踏み出そうとする勇気

 

テーマだけ抜き出すと、
まるで、少年漫画の様な様相ですが、

こういう、ストレートでシンプルなストーリーにこそ、

時代や場所、老若男女を越えた、
普遍性が含まれているのです。

 

2005年に書かれた後書きを読むと、
引き籠もりという社会問題と絡めて、
一歩踏み出す勇気の必要性を感じて欲しいと書かれています。

しかし、今読むと、
自分と違うものを排除しようという、
世界的な風潮に対する、アンチテーゼの部分に目が向けられます。

 

しかし、
本書が書かれたのは、1996年。

優れた物語、寓話というものは、

読まれる時代が変わる事で、
読者に訴えかける部分が違い、

しかし、
そういう幅広さを持つからこそ、
時代や年代、国境を超えた普遍性を持っているのです。

 

 

本作のゾルバは、
まるで『ジョジョの奇妙な冒険』の主人公の家系、ジョースター家の様に、
体に、星形の文様を背負っています。

初めて出会った一見のカモメの遺言を律儀に守り、
「猫がカモメに飛ぶことを教える」という不可能性に挑む事で、
そのカモメの子供の将来に、
自分達の希望すら見るという精神に、

まるで、ジョースターの家系の様な、
精神の気高さを感じます。

 

しかし、
その気高い精神は、
別に特別な事では無いのです。

猫にだって、出来るんだ、
我々人間でも、覚悟を決めたら、誇り高い希望を持つ事が出来る

その事を、
『カモメに飛ぶことを教えた猫』は、
読者に教えてくれるのです。

 

 

 


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