映画『海獣の子供』感想  これぞ、観るα派!!究極の映像美が奏でる子守唄!!

14歳の夏休み初日。琉花は、部活のハンドボールで危険プレーを行い、出禁を言い渡される。腐った琉花は、別居中の父・正明が働く水族館に行く。彼女はそこで、不思議な少年・海と出会う。彼は海中にて、ジュゴンに育てられたというのだ、、、

 

 

 

 

監督は渡辺歩
TVアニメシリーズの『ドラえもん』にて、
作画監督やキャラ設定などを担当、
他に、
『謎の彼女X』
『恋は雨上がりのように』等の監督を手掛ける。
劇場長篇アニメーションの映画としては、
『ドラえもん のび太の恐竜2006』等を手掛ける。

 

原作は五十嵐大介の『海獣の子供』。

 

声の出演は、
琉花:芦田愛菜
海:石橋陽彩
空:浦上晟周

ジム・キューザック:田中泯
アングラード:森崎ウィン
デデ:富司純子
安海正明:稲垣吾郎
安海加奈子:蒼井優 他

 

 

 

五十嵐大介の『海獣の子供』。

コミックを持っているのですが、
なんか、分厚くて、テーマが面倒くさそうで、

買っていながら、
読まずに置いておいた作品。

完結したら、
まとめて読もうと思い、
しかし、
そのまま、読まずに塩漬けしていた作品です。

それが、今回、
映画化されたという事で、
重い腰を上げて、

映像なら、観る事が出来るだろうと、

そういう想いで、
映画館に足を運びました。

 

しかし、
原作者の五十嵐大介と言えば、

漫画界でも、
唯一無二とも言える画風の持ち主。

これを、アニメ化するなんて、
無謀ではないのか?

期待半分、
不安半分で観に行った本作の印象は如何に!?

 

いやぁ、凄いですね。

本作、

アニメーション長篇映画としては、
過去最高の映像美を誇ります。

 

五十嵐大介の画風というのは、
「漫画」といいう媒体が持つ、
二次元という、平面である事を最大限に活かしたケレンミに溢れた作品です。

それが、
2.5次元とも言えるのか、

動きの付いたアニメーションという媒体において、
違和感が無く、
五十嵐大介の画風のキャラクターが動いている事に、
まず、驚かされます。

 

しかし、です。

そんな、キャラクターの魅力以上に目を惹くのは、

背景の映像美のすさまじさです。

 

街並み、
建物、
植物、

そして、何よりも凄いのが、
海の生き物
水の様々な表現方法
光の煌めき

これらを、どう観せたらいいのか、

そこに、心血を注いだ作品と言えるのです。

 

本当に凄い、映像美。

画面から、α派が放出されている感覚です。

 

ストーリーも、

海と地球と宇宙を巡る、
生命の物語。

壮大な大自然を描いており、
完璧なリラクゼーションに鑑賞者を誘います。

この大自然を、
劇場の快適な座椅子、
快適な温度、
薄暗い空間にて鑑賞するのです。

間違い無く、
心地良すぎて、眠くなりますね。

 

私など、
3回くらい、意識が飛びました。

ストーリーの内容も相俟って、

自分がまるで、
生まれ変わったような印象すら受けます。

 

なんだか、
殆ど話題になっていない印象ですが、

本作をスルーするのは、
あまりにも、勿体ない。

是非、
劇場でご覧になって頂きたい逸品、
それが、『海獣の子供』です。

 

 

  • 『海獣の子供』のポイント

完璧なリラクゼーションを演出する、究極の映像美

地球と宇宙と生命を巡る、壮大なファンタジー

原作の持ち味を活かした、独特のキャラクター像

 

 

以下、内容に触れた感想を書こうとしたのに、
大して意味の無い、徒然なる印象を綴っています。

 


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  • 芦田愛菜、恐るべし

本作の映像がもの凄いのは、
前書きで述べた通りです。

本作の映像美は、100点満点中、
120点だって付けられると、
本部以蔵なら、そう言うでしょう。

 

とは言え、
劇場のアニメーション長篇という媒体においては、

映像と同じ位に、
「声」に独特の懸念が生じます。

何故なら、
メディアに取り上げられないといけない為、
劇場長篇アニメーションは、
有名人をメインキャストに据える傾向があるからです。

映像が凄くても、
声優が下手っぴなら、
折角の世界観が、台無しです。

 

では、本作はどうか?

声優の演技に対する不安は、
全くの杞憂に終わりました。

 

先ず、主演の琉花役を演じた芦田愛菜

全く、事前情報抜きで、私は観たのですが、
てっきり、本職の声優が演じているとばかり思いました。

それが、
リアル14歳(2004年6月23日生まれ)が、
14歳の役を演じているという、この奇跡。

アニメーションの声優という、
キャラクターの味を活かす、
抑える所は抑えつつ、且つ、ケレンミも要求される難しい「声」の演技を、
必要充分に演じきっています。

 

先に上映された『プロメア』という劇場アニメでも、
堺雅人が声優として、その実力を示した通り、

演技において一芸に秀でた者は、
声優として演じても、
優れたものがあるのだと、
改めて感じさせます。

「驚異の子役」として一世を風靡した芦田愛菜ですが、
その実力は、健在と言えますね。

 

本作の主役である琉花に対し、

ストーリー的な謎を引っ張るメインの役どころである、
海を演じるのは、石橋陽彩

彼はピクサーの『リメンバー・ミー』にて、
主演のミゲル役を演じただけあって、

声優としてもさる事ながら、
歌手としても評価を受けています。

彼も、
2004年8月24日生まれという、
芦田愛菜と同級生のリアル14歳。

この二人がメインの役どころを、
声優として演じきったからこそ、

本作は素晴らしい作品に仕上がっていると思います。

 

メインを支えるサブキャラでも、
蒼井優や富司純子など、
役者として、声優としても実力派を揃えている所に、
本作のキャスティングの良心を感じます。

 

  • 究極のリラクゼーションムービー

本作『海獣の子供』のストーリーは、
壮大な、
海と地球と宇宙を舞台とした、
大自然を巡る、
生命の物語

ともすれば大仰で、
サブカル感溢れるテーマですが、

それを嫌味に感じさせないのは、
凄まじいとも言いえる、
究極の映像美にあります。

 

水族館にて、
光輝くジンベイザメに始まり、

水面をジャンプ(ブリーチング)する、ザトウクジラ、
誕生祭にて存在感を示す、不気味なミツクリザメ、
群れで動くイワシ、

ジュゴン、ウミガメ、エイ、イルカ etc…

活き活きとした海の生き物の描写

海、
水族館、
雨、
深海、

うねったり、光ったり、凪いだりする、
様々な表情を見せる、水の描写

花や葉っぱ等の、
色鮮やかな植物の色彩

そして、
建物や船に至る、人工物の描写でさえも。

本作は、
背景美術の造型、演出、色彩、観せ方、

それが、本当に素晴らしいです。

 

あまりに美し過ぎて、
本作を観ていると、
ネイチャー番組と言いますか、
環境音楽的と言いますか、

画像から、α派が放出されているかの如くに、
リラックス出来ます

私など、
リラックスし過ぎて、
3回くらいは、意識が遠のきましたね、ええ。

 

でも私、
こういう感じの、
深夜に、半分寝ながら観るのに適したアニメって、好きなんですよね。

上手く言えないのですが、
分かりますか?

壮大なテーマを、
しかし、
何も考えずに、受け入れられるという、
矛盾を可能にした作品と言いますか、

だからこそ、
睡眠導入に適した作品と言いますか。

 

こういう作品は、
何回観ても飽きる事が無く、

それでいて、
観る度に新たな発見があるのです。

 

最近で言えば、
ペンギン・ハイウェイ』(2018)などがそれに当たります。

そして、
私的に、睡眠導入リラクゼーションアニメの名作と言えば、
『銀河鉄道の夜』(1985)が挙げられます。

本作も、
それらに並ぶ、
個人的な、新たなる名作と言える作品に仕上がっていると感じます。

 

  • 招待客の正体!?

さて、
あまりに個人的な感想ばかり言うのもアレなので、
ここらで一つ、ちょっと思う所を解説してみたいと思います。

 

本作のクライマックスは「誕生祭」。

宇宙から流れて来た「隕石」という生命の源が、

星の持つ「海」という触媒を介して、

新たなる[生命宇宙]の創世と成る。

それが、本作のメインストーリーです。

 

本作の「隕石」は、
生命を生む「源」となるもの。

いわば、
惑星の海が「卵子」なら、
隕石は「精子」なのですね。

 

そして、
「海」と「空」は、生誕祭の先触れ。

彼達自身、
「隕石」として、他の星にて「精子」の役割を担う事も、
「卵子」として、当地にて「卵子」の役割を担う事も可能なのでしょう

 

海が、
流れ星の事を「ヒトダマ」と呼んだのは、

その流れ星=隕石が、
何処かの星の生命の成れの果てである事を物語っています。

そして、
空は、
流れ星として、
何処かの星へと、飛んでいったと思われます。

 

さて、本篇中、
しきりとデデなどが、
「生誕祭に、招待客が呼ばれる」と言っています。

その、招待客(ゲスト)とは、一体誰の事なのでしょうか?

 

ぱっと見た感じ、
それは、琉花の様に思えるかもしれません。

しかし、
琉花はゲストではありません。

むしろ、
「生誕祭」における依り代
新たな生命=宇宙を生む、子宮の様な存在であると言えます。

つまり、
「生誕祭」の当事者なのですね。

最も、
本篇においては、
琉花ではなく、土壇場において、海がその役割を果たすというのが、
本作のクライマックスとなっております。

 

その証拠に、
ラストシーン、
琉花の母・加奈子が子供を産んだ場面において、

琉花は、
臍帯(へその緒)を切る役目を担う事になります。

つまり、
傍観者でありながら、
生まれたての生命をこの世に迎えるという最後の場面にて、決定的な役割を担うという点において、

生誕祭にて、琉花が担った役割と被っているのですね。

 

では、生誕祭に呼ばれた招待客とは一体誰なのか?

それは、
映画を観ている、我々観客自身と言えるのではないでしょうか。

 

確かに、
我々は、物語を外から眺める、全くの第三者です。

しかし、
生命の誕生を寿ぐという意味なら、
それは、
観客であっても、出来る事なのです。

 

新しい生命の誕生に介入出来なくても、
生まれたモノ達の未来の幸せを祈る事は出来ます。

それこそ、
本作を観た我々が出来る、
唯一にして、絶対な事。

自然と宇宙と生命を祝福する
それこそが、本作が描く、メインテーマなのだと、
私は思うのです。

 

 

 

 

アニメーションとして、
究極の映像美にて、観る者を圧倒する『海獣の子供』。

話題になっていないのが不思議なくらいの名作です。

…でも、
世間的には、ラブストーリー要素が無いと、
やっぱり、観客動員は難しいのでしょうかねぇ、、、

 

しかし、
一芸に秀でた作品は、
それだけでも、評価出来る素晴らしさがあります。

本作が提供する究極のリラクゼーションを、
是非、劇場の大画面と音響にて体験して欲しいものです。

 

 

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五十嵐大介の原作漫画『海獣の子供』です。
映画化の影響で、いつもの如く、1巻は売り切れなので、最終刊の5巻を紹介します。



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